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ちょっと真面目な太鼓持ち論

(3)男芸者の太鼓持ちは何をするの?

 

 


 

 

 「太鼓持ち(たいこもち)」を簡単にご説明申しますと、お客様に呼ばれて、日本文化の中心・京都のお茶屋(遊ぶ為のお部屋を貸しサ-ビスを行う業)さんや全国の料亭・旅館・ホテルさんなどのお座敷にて、お客様の間・芸者衆の間・お酒の間・お座敷遊びでの全ての「間(ま)」を助けて、芸者衆やお客様の中を取り持ち、楽しくお遊びを盛り上げますので、助けると言う意味の「幇(ほう)」の字を当てて正式名称を「幇間(ほうかん)」と申します。

 武士社会が安定した江戸時代(1603年〜)にはお遊びやご接待の企画を立案実行などもしておりましたが、今ではお座敷遊びの仕方が分からないお客様に基本的な事をお教えしたり、講演してお座敷遊びの歴史・文化・心得をお話したり、お遊びのお客様をご指南しお助けしながらお座敷遊びの伝統的芸を披露し、嫌らしくも無く風流に楽しくしかも艶っぽく、当意即妙に応えてはお客様のいかなるお話にも対応もし、お酌もしながらお賑やかに座持ちするのがお仕事でございまして、各地でいろんな呼び方がございますが、通称「太鼓持(たいこもち)」とか「男芸者(おとこげいしゃ)」等と呼ばれておりますが、これでも解る人は今や日本人でも少なくなって来ております。

 では何故、艶っぽいお話や芸をするのかと申しますと、日本国は近年を除いて長い間稲作中心の農業国でしたから、季節に合わせて農作業をしないと食べ物が無くなる冬を越す事が出来無いので食糧確保が重要でした。

 その食糧とは植物では花が咲き雄蕊の花粉が雌蕊に受粉する事で果実が実り、動物では雄と牝が交尾する事で増える、一番美しく重要な行為により食糧も確保出来、来年の食糧の元となり次世代につながって行く重要なもので、それらが又我々の子孫の繁栄にも成りますので、艶っぽい行為は幸福につながると古代日本人は考えたのだと思います。

 普段は真面目に一生懸命働く日を昔の日本では「褻(け)」、お休みを「晴(はれ)」と言っておりました、その「晴」の日は一段落した農作業を地域の皆で喜び、普段の真面目さを解き放ち多少の羽目を外して一緒に美味しい食事やお酒を頂き楽しく過し、明日からの仕事の英気を養う行為が宴会の始まりであり、宴会の時にだけ艶っぽい話や芸で楽しむ事を許されたのが太鼓持ち芸として伝承されて来ましたので、どちらかと言うと伝統文化でも裏面と言いますか、日本人の本音の部分なので表には出難くく保護される事も無く、外には漏れないお座敷の中での遊びの一つとして伝えられているのでしょうね。

 日本文化としていう所の「遊び」の言葉の中には、自分の自由意志と好みや興味に従って好きな事をする本来の「遊び」他にも、現実と違う虚構の世界の中で狂人ぶる「戯れ」や、極端に至る様な凄まじさの「荒ぶ」が含まれていて、その遊びに到達するまでの過程を、お茶やお花を習う事を「茶道」「華道」と言う様に、歩く為の「道(みち)」の字が付いていますのは、目的の遊びの奥義に到達するまでの過程をも楽しむ、むしろ到達はしないがそこへ向かう一歩一歩が大切との意味が含まれているものと思います。

 又、お茶は飲んでしまえば終りであり、お茶碗は割れてしまえば終わりであり、お花でもどんなに完全に活けてもその姿は崩れ花はしおれてしまうもの、いずれ消え去る運命の中の一時の出会いへの感動、日本文化の中には仏教文化の思想の一つ「あわれ」(自然は常に変化し生き物は人も含めて全て死ぬ方向に動いていて、それを止める事は誰にも出来無い宿命を受け入れ、その中で自分自身も生きている現実を知り、今こうして自分が生きている有り難さや命ある限り精一杯生きる事への努力をするが、全ては無になるはかなさをも又含んでいるのを感じるもの)が表現されているようにも思います。

 この様に永年に渡り培われて来た日本の文化や行事を基本として、歴史や文化を比喩して楽しいお遊び芸に造られ、時代に磨かれて完成された艶っぽいお話や芸を交えながらお客様のお相手をし、お仕事を忘れて楽しんで頂くのが太鼓持ち業なのです。

 時折お間違いになるのに雑誌などで紹介されている中に、京都の花街で舞妓さんのお着物の着付けを手伝ったり、始めてお座敷に出られる「お店出し」や芸妓さんに変わる「衿かえ」(舞子さんの時は着物の下に着る「長じゅばん」の衿の色は赤系だったのを、芸妓さんになると白色に変わりますのでこの様に申します)の行事の時に一緒に付いて挨拶回りをされる男性の「男衆(おとこし)」さんは女性達の裏方のお仕事で、お座敷には揚がりませんので、「太鼓持ち」とは違い全く別のお仕事となります。

 

 



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