LOREENA McKENNITT ----------

COURTYARD LULLABY

Wherein the deep night sky
The stars lie in its embrace
The courtyard still in its sleep
And peace comes over your face.

"Come to me," it sings
"Hear the pulse of the land
The ocean's rhythms pull
To hold your heart in its hand."

And when the wind draws strong
Across the cypress trees
The nightbirds cease their songs
So gathers memories.

Last night you spoke of a dream
Where forests stretched to the east
And each bird sang its song
A unicorn joined in a feast

And in a corner stood
A pomegranate tree
With wild flowers there
No mortal eye could see

Yet still some mystery befalls
Sure as the cock crows at morn
The world in stillness keeps
The secret of babes to be born

I heard an old voice say
"Don't go far from the land
The seasons have their way
No mortal can understand."

奥庭の子守歌

深い夜空の奥に
星はそのかいなに抱かれ
奥まった庭はまどろむ
安らぎがおまえの顔に浮かぶ

安らぎは歌う
"わがもとにおいで
大地の鼓動をお聞き
海原はおまえの心をいだこうと
飽かずたゆたう"

糸杉をふるわせて
ざわと風が吹きゆけば
夜啼き鳥も歌をやめ
思い出の衣をかき寄せる

昨夜夢のことを話してくれたね
東の方に森が広がり
おのがじし鳥は囀り
一角獣も宴に加わる

片隅には
溢れんばかりの野の花の中に
石榴の木が立っていた
けれど人の目には見えないのだ

されど暁に鶏が時を告げるごとく
新たな不思議が訪れる
しじまに浸った世界は
まだ生まれぬ赤子の神秘を抱く

古の声が聞こえる
"大地より離れることなかれ
時の巡りには人には見えぬ
理があるのだから"






Loreena McKennitt Website(オフィシャル・サイト)からmp3,wave等で試聴ができます---CD画像をクリック
The photographs which appear in this booklet were taken at Quinta das Torres, a 16th century hunting lodge near Azcitao, Portugal, where Elisabeth Feryn and I stayed for a week. Within the lodge was a courtyard, marked at each corner by orange trees. The feel of the place reminded me of the Unicorn tapestries which hang in The Cloisters in New York City. The tapestries and the lodge are both rich with earthy, pre-Christian iconography--depicting the mysterious life and death cycle of the seasons. It was in this courtyard that this piece was conceived.--- L.M.
クインタ・ダス・トーレスの風景囚われの一角獣、クロイスター
この小冊子に載せている写真はポルトガル、Azcitao(発音不明です)近くの、16世紀の狩猟館、クインタ・ダス・トーレスで撮ったものです。エリザベス・フェリンと私はこの地に1週間滞在しました。狩猟館には中庭があって、四隅にはオレンジの木が植わっていました。この場所の雰囲気に私はニューヨークのメトロポリタン、クロイスター*美術館の有名なユニコーンのタペストリーを思い出しました。そのタペストリーと建物には、季節の巡りの生と死の神秘的なサイクルを描いた素朴なキリスト教以前の図像が数多く見られます。他でもない、まさにこの奥庭を散策していた時、この曲がわたしの心に浮かんだのでした。
――――ロリーナ・マッケニット

* クロイスター [cloister]  修道院・教会・大学などの中庭を囲んだ回廊。
(私記)
2004年9月にポルトガルへ旅行しました。残念ながらこの"クインタ・ダス・トーラス"という国営の宿泊施設(いくつかの歴史的建造物を原型を保存したまま高級な宿泊施設にしている)を訪れる機会はありませんでしたが、代わりにいくつかの大きな寺院にある回廊(クロイスター)と回廊に囲まれた中庭を心行くまで味わってきました。上記の写真では簡素な中庭に見えますが、リスボンのジェロニモス修道院、バターリアの勝利の聖マリア修道院、アルコバッサの僧院それぞれで見た回廊は壮大な規模のものでした。

正方形の中庭を囲んで石造りの通路が巡らせてあります。回廊への出入り口はわずかに1,2か所、つまり回廊を歩くと何周しても常に歩き続けるという不思議な感覚に襲われます。回廊の片方は壁、または隣接する部屋への小さな入り口があり、他方は中庭に向かって開けています。回廊の天井はマニュエル様式ゴシック建築で4部のリブが続いています。片方で閉じていて、片方で開いている空間です。中庭には中央に直交するように二本の通路があります。中央に噴水のあるもの、4つに区分された正方形を低い生け垣でさらに正方形に囲んでそれぞれの中央に糸杉を配した物、いずれも、どの方角から眺めても自分の立つ回廊のアーチの透かし彫りを通して、中庭の樹木と対辺の回廊のアーチを望むことができます。

閉じられていながら開かれている空間、切り取られた有限の空間であるのに永久に終わることのない通路、どちらから見ても鏡を見るような整合性を持った静謐な空間。つかの間の人生を生きるわたしたちにこの回廊と中庭の空間は何を語りかけてくるのでしょうか。何百年も前に同じようにこの回廊を歩んだあまたの人々、その心を満たしたであろう信仰心、猜疑心、失望、憧憬、愛憎、一陣の風のごとく通り過ぎていく人の生ではあっても、それらの思いは回廊に共鳴しながら、いまだにここを歩む者の心にふと触れかけてくるような気がしてなりませんでした。
マッケニットが散策した奥庭もこのような感慨をもたらしたのではないかと想像を逞しくしてみるこのごろです。
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