LOREENA McKENNITT ----------

THE LADY OF SHALOTT
Music by Loreena McKennitt. Words by Alfred Lord Tennyson

On either side of the river lie
Long fields of barley and of rye,
That clothe the world and meet the sky;
And thro' the field the road run by
To many-towered Camelot;
And up and down the people go,
Gazing where the lilies blow
Round an island there below,
The island of Shalott.

Willows whiten, aspens quiver,
Little breezes dusk and shiver
Thro' the wave that runs for ever
By the island in the river
Flowing down to Camelot.
Four grey walls, and four grey towers,
Overlook a space of flowers,
And the silent isle imbowers
The Lady of Shalott.

Only reapers, reaping early,
In among the bearded barley
Hear a song that echoes cheerly
From the river winding clearly
Down to tower'd Camelot;
And by the moon the reaper weary,
Piling sheaves in uplands airy,
Listening, whispers "'tis the fairy
The Lady of Shalott."

There she weaves by night and day
A magic web with colours gay,
She has heard a whisper say,
A curse is on her if she stay
To look down to Camelot.
She knows not what the curse may be,
And so she weaveth steadily,
And little other care hath she,
The Lady of Shalott.

And moving through a mirror clear
That hangs before her all the year,
Shadows of the world appear.
There she sees the highway near
Winding down to Camelot;
And sometimes thro' the mirror blue
The Knights come riding two and two.
She hath no loyal Knight and true,
The Lady Of Shalott.

But in her web she still delights
To weave the mirror's magic sights,
For often thro' the silent nights
A funeral, with plumes and lights
And music, went to Camelot;
Or when the Moon was overhead,
Came two young lovers lately wed.
"I am half sick of shadows," said
The Lady Of Shalott.

A bow-shot from her bower-eaves,
He rode between the barley sheaves,
The sun came dazzling thro' the leaves,
And flamed upon the brazen greaves
Of bold Sir Lancelot.
A red-cross knight for ever kneel'd
To a lady in his shield,
That sparkled on the yellow field,
Beside remote Shalott.

His broad clear brow in sunlight glow'd;
On burnish'd hooves his war-horse trode;
From underneath his helmet flow'd
His coal-black curls as on he rode,
As he rode back to Camelot.
From the bank and from the river
he flashed into the crystal mirror,
"Tirra Lirra," by the river
Sang Sir Lancelot.

She left the web, she left the loom,
She made three paces taro' the room,
She saw the water-lily bloom,
She saw the helmet and the plume,
She looked down to Camelot.
Out flew the web and floated wide;
The mirror cracked from side to side;
"The curse is come upon me," cried
The Lady of Shalott.

In the stormy east-wind straining,
The pale yellow woods were waning,
The broad stream in his banks complaining.
Heavily the low sky raining
Over towered Camelot;
Down she came and found a boat
Beneath a willow left afloat,
And round about the prow she wrote
The Lady of Shalott

And down the river's dim expanse
Like some bold seer in a trance,
Seeing all his own mischance -
With a glassy countenance
Did she look to Camelot.
And at the closing of the day
She loosed the chain and down she lay;
The broad stream bore her far away,
The Lady of Shalott.

Heard a carol, mournful, holy,
Chanted loudly, chanted lowly,
Till her blood was frozen slowly,
And her eyes were darkened wholly,
Turn'd to towered Camelot.
For ere she reach'd upon the tide
The first house by the water-side,
Singing in her song she died,
The Lady of Shalott.

Under tower and balcony,
By garden-wall and gallery,
A gleaming shape she floated by,
Dead-pale between the houses high,
Silent into Camelot.
Out upon the wharfs they came,
Knight and Burgher, Lord and Dame,
And round the prow they read her name,
The Lady of Shalott.

Who is this? And what is here?
And in the lighted palace near
Died the sound of royal cheer;
And they crossed themselves for fear,
All the Knights at Camelot;
But Lancelot mused a little space
He said, "She has a lovely face;
God in his mercy lend her grace,
The Lady of Shalott."

シャロットの姫君



川の両岸には大麦とライ麦の畑がかなたまで
広がり、空と交わっている
畑の中に一筋の道が
塔のたくさんあるキャメロット城へと続く
百合が一面に花咲くのを見やりつつ
人々は行き交う
川に沿って下手にあるのが
シャロットの島


柳は白い裏葉をひるがえし、
ポプラは小刻みに風にはためく
夕暮れの微風は、とこしえに流れ続ける
流れとともにうちふるえる
キャメロットへと続く
川中の小島に
4つの灰色の城壁と4つの塔が見おろす
花咲く庭、この孤城にただひとり
シャロットの姫君は住んでいる

朝まだき、芒長き麦のさなかに
麦刈る人だけが
軽やかに響く歌声を耳にする
キャメロットへと曲がりくねって
下る清らかな流れのかなたに
月の光に、疲れた刈り人は
麦の束を積み上げながら
高台の風に通う歌声を聞いてつぶやく
「これがあのシャロットの姫君か…」と

そこで姫は夜となく昼となく
色も鮮やかな織物を織る
耳元で声がささやく
もし手を止めて
その目でキャメロットの方を望めば
一つの呪いが降りかかると
その呪いが何であるかも知らず
織り続ける、心に何の憂いもなく
シャロットの姫君

昼も夜も前に一面の鏡が吊してある
そこに様々な外の世界が映る
鏡の中に姫はキャメロットへと続く
近くの街道を眺めやる
時には、青みを帯びた鏡には
騎馬の騎士の姿が、二人、また二人
真心を捧げてくれる騎士もまだない、
シャロットの姫君

しかし、織物の中に鏡に映る
魔法のような景色を織り込んで
彼女の心は慰められた
時には、静かな夜、羽根飾りと松明を
ともして楽の音にキャメロットへと
下る葬列を見た
ある時、天高く月が昇る頃
新婚のむつまじい二人連れの姿に
いみじくもつぶやく
「影のような生活にはもう倦み疲れた」

彼女の部屋の軒から矢の届くほどの距離、
積み上げた大麦の束を抜けて馬は進む
太陽は燦々と木の葉越しに輝き
真鍮に脛当ては燃えたつ光りを放つ
勇敢なランスロット卿
その盾の表には赤い十字架の騎士が
佳人の足下に跪く姿
人里離れたシャロットの島の外
黄金の畑に盾はきらめく

広く涼やかな額は陽光に輝き
磨き立てた蹄で軍馬は歩む
兜の下から流れ出る
漆黒の巻き髪、馬の歩みに連れて
キャメロットへ向かう道すがら
川の畔、岸辺より
その姿は清澄な鏡の中に映じる
川のほとりで、
「ティラ、リラ…」と歌を口ずさむ
ランスロット卿

織物の手を止め、機もうち捨て
姫は進む、部屋の中を3歩
その目で咲き誇る睡蓮を見、
ランスロット卿の兜と飾り羽を見た
そしてキャメロットを見おろした
織物は突然独りでに広がって
糸は千々に乱れた
鏡は真横にひび割れて
「ああ、呪いが私に降りかかった」
シャロットの姫君は叫んだ

嵐の東風が吹き荒れ
生気の失せた木々は枯れ萎んでいく
広い川面は不安に波立ち、岸を洗い
低く垂れ込めた空からは雨が滴る
塔の並び立つキャメロットめがけて
さまよい出た姫は柳の下に
寄る辺なく浮く孤舟を見つける
舳先に記す、シャロットの姫と

冥く広がる川面彼方のキャメロットを
あたかも大胆な予言者が恍惚の極みに
うつろな面もちでおのが凶運を見るがごとく
姫は見やった
日も暮れかかり、舟の舫を解き
小舟にうち伏すシャロットの姫君を
川の流れは滔々と彼方へ流した

賛美歌の調べ、悲しげに、また神々しく
あるは高らかに、あるは密やかに
歌う調べを耳にした
やがて血は緩やかに冷えて
塔のあるキャメロットを望んだ
その目は暗く、虚ろになった
波に乗って漂い着いた前に
水際の一軒の家
低くいまわの歌を歌いつつ
みまかったシャロットの姫君

遙かに塔の見おろす下、露台の下
庭園の壁、回廊を過ぎて
はかない光りを宿して
なきがらは漂った
軒高い家の狭間を
青ざめて言葉なく、キャメロットまで
人々は舟場に集まる
騎士も町人も、貴族も貴婦人も
舳先に読めるその名は
シャロットの姫

これは誰? なぜここに?
ほど近い、灯火で輝く王宮も
王侯のさざめきも絶え果てた
おそれて十字を切る者もある
キャメロットに集う大勢の騎士達
されどランスロット卿
しばし瞑目した後に
いみじくもこうつぶやいた
「神のおん恵み、
うるわしのシャロットの姫君に
垂れたまわんことを」




  
   Loreena McKennitt Website(公式サイト、日本語ページ)からmp3,wave等で試聴ができます---CD画像をクリック

<参考に>
19世紀のイギリス桂冠詩人アルフレッド・テニスン(1809-1892)による"シャルロットの姫君"(1932)に曲をつけたものです。(原詩はもっと長いのですが、いくらか省略されています)

・・・・・・シャロットの姫君

アーサー王の居城があるキャメロット、その川上の島シャロットにある孤城に一人、日夜織物を織って暮らすシャロットの姫君。 呪いのために外を見ることも叶わず、機の前に吊ってある鏡に映る外界を、色鮮やかな織物に織り込んでいる日々は永遠に続くように思われました。
しかし、ある夜、恋人達の連れ添う姿を見て、思わず「こんな半分影のような暮らしはもう嫌になった……」とつぶやきます。
期せずして鏡に映ったのが、アーサー王の円卓の騎士の中でも第一の勇者、サー・ランスロット。 
その鎧と兜は陽光にきらめいて、宝石をちりばめた馬勒は黄金の天の川のよう、キャメロットをさして逞しい馬を駆るとき、鈴の音は楽しげに鳴りひびき、兜の下に風に靡く美しい黒髪も、姫の見つめる清澄な鏡の中に悉く映し出されて輝いています。ランスロット卿はついに川のほとりで「ティラ・リラ・ティラ・リラ」と歌をくちずさみます。
姫はたまらず、呪いの降りかかるのも忘れて外を見やります。 途端に織りかけの織物は勢いよく飛び散って糸は乱れて、鏡は真横にひび割れてしまいます。
(余談ですが、アガサ・クリスティの推理小説、『鏡は横にひび割れて』はこの一節から題名を取っています。)

嵐が起こり、東風が樹木を折らんばかりに吹いて、光が褪せた森はただどよめきのあるばかりです。
城楼そびえるキャメロットにも篠突く雨が降り注いで、さながら墨絵のような風情である。呪いが降りかかったことがわかったシャロットの姫は城を出て、波に漂う捨小舟を見つけます。
舟の舳先に"シャロットの姫"都名を書くと鎖を外し、舟に伏すと死出の旅へと赴きます。暗夜の川を漂い下る姫の白衣に木の葉が舞い散って、姫のいまわの歌は低く途絶え途絶えに続きます。

やがてその歌声も途絶えて緩やかに冷たい死が姫に訪れます。舟は流れ流れてキャメロットの城内にたどり着きます。多くの人々が集まって、これは一体誰であろうと訝しがって、恐れの余り十字を切る者もある中で。ランスロット卿は
暫し瞑想した後、「神よ、この美しい乙女に憐れみを垂れたまえ」と敬虔な祈りを捧げます。

付録
The Lady of Shallot にはいくつかの訳語があります。問題なのは "Lady" で、現代の私たちが思うような、貴婦人や姫君とはニュアンスが違っています。
アーサー王物語に登場する "The Lady of the Lake" は湖の姫とか妖精とか貴婦人とか、これまた微妙にニュアンスの異なる訳し方をされていたりもします。アーサーに剣を授けランスロットを育てたダム・ド・ラック、マーリンの恋人ヴィヴィアン(ニーム)なども Lady of the Lake の一人です。
それで「シャロットの姫君」、「シャロットの女」、坪内逍遙の訳では「シャロットの妖姫」などと種々ありますが、「女」では負の響きが大きいので、敢えて「姫君」を採りました。

                         参考文献 「テニスン研究 −その初期詩集の世界」 西前美巳著 中教出版

・・・・・・ラファエロ前派とシャロットの姫君

テニスンが1832年に発表した(42年。改訂)短編詩「シャロットの女」を基にして、ラファエル前派の画家たちは非常に多くの絵を残しています。
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス、ウィリアム・ホルマン・ハント、アーサー・ヒューズらの絵が有名です。特にウォーターハウスは、この主題を好んだのか、シャロットの女を三度に渡って描いています。その中でも代表的なのが、次の絵です。

ホルマン・ハントとアーサー・ヒューズの作品


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・・・・・・ランスロットとエレーン


テニスンは他にも、アーサー王伝説を元に長編詩『国王牧歌』(1859)の中でという詩を書いています。 ここに現れる乙女エレーンは「アストラットの百合の乙女」と呼ばれる美しい娘で、騎士ランスロットを恋するあまり死に、父や兄弟によって遺体を小舟に乗せられ、口のきけない老いた召使の舵(かじ)とりで川を流れていき、キャメロットの城のアーサー王や騎士たちに見つけられることになります。
モントゴメリーの『赤毛のアン』の中でアンが小舟に乗って演じるのがこのエレーンです。
『シャロットの姫君』はエレーンに先立つ同モチーフの女性として描かれますが、エレーン(実は2人いるのですが)が
一途に純愛を貫く乙女であるのに対して、シャロットの姫は更に"鏡の呪い"という運命のモチーフが加わります。

・・・・・・アーサー王伝説


この詩を読むのに、背景として簡単に、アーサー王伝説、円卓の騎士とはどのようなものか調べてみましょう。
5世紀頃のブリテン島には、大陸からアングル族、サクソン族らが侵入の機会を狙っていました。これらの侵入民族と勇敢に戦った英雄がブリトン人の中にいたらしく、その伝承が九世紀に著された『ブリトン人の歴史』の中ではじめてアーサーという名で出てきます。
また、同時に妖精や魔法、呪い、禁忌などの超自然的な現象が多く語られているので、アーサー王はケルト系のブリトン人らしいとされてきました。

12世紀の『ブリテン列王史』にもアーサー王の名が出て来ますが、その頃イタリアのモデナ大聖堂の彫刻には、アーサー王と騎士たちの姿が彫られているので、その伝説はすでにヨーロッパに拡がっていたと見られます。
それらの話がまとめられたのが、1467年にサー・トーマス・マロリーが著した『アーサー王の死』でです。
マロリーは貴族ではありましたが、窃盗から強姦、脱獄までした犯罪者で、この本は獄中で書かれたといわれています。
そして、この本こそ、その後のアーサー王物語の種本となる貴重な本になりました。その後もしばしばアーサー王の話は語り続けられました、そして19世紀、ヴィクトリア朝になって突如爆発的な人気をよぶことになりました。

アーサー王物語には、騎士として、ケイ、ランスロット、トリスタン、ガウェイン、ガラハット、パルシファル、ボース、ベイリン、モードレッド、ベディヴァーレなどが登場します。
特にお馴染みなのは、"湖の騎士" ランスロットやトリスタンとイゾルデのトリスタン、聖杯の騎士パルジファル、それに"All Souls Night"の緑の騎士の項でも出てくるガウェインなどでしょう。

・・・・・・夏目漱石とテニスン


夏目漱石の初期の作品集『漾虚集』の中でももっとも難解な『薤露行』に、ランスロット、シャロットの女、ギネヴィアなどの名前が見え、第2部「鏡」でテニスンの詩の内容を用いています。

この項は調べると書かねばならないことがますます増えるようで収拾がつかなくなりそうです。
一応このくらいにして、マッケニットの歌を楽しむことにしましょう。


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