おっと、まだ一つ書き忘れていました、敵役の存在です。ブルック・チャン、オビ=ワンと同じ最上級生でなかなか腕も立つ好敵手なのですが、 いかんせん狡猾で狭量、弱者いじめが大好きという、ダークサイド転向候補生みたいな少年です。いかにフォース・センシティヴ(JAシリーズではこの用語を好んで用います、 「フォースに感応する」くらいの意味)とはいえ、よくこんな子が選ばれて最上級になるまで訓練を続けてこられたなと思うのですが(もしブルックの真の姿が見抜けなかったと するなら指導者のジェダイも大したことないですね)、とにかく、彼もまだパダワンになる見込みが立っていません。オビ=ワンよりは誕生日の訪れが遅いようですが、 ブルックとて焦燥に駆られている事に変わりはありません。 そもそもオビ=ワンとの確執は些細な事から起こったのですがブルックの側にオビ=ワンに対する対抗意識が相当あったと思われます。裏を返せばブルックも オビ=ワンに優るとも劣らない実力の持ち主だったということでしょう。しかし、知らず知らずのうちに、その素質をダークサイドに向けて伸ばしており、 周囲がそれに気付かなかったのには疑問が残ります。「いじめっ子」グループを作ってオビ=ワンにあだ名を付け、禁じられた私闘へオビ=ワンを誘い込み、 偽りの負傷でオビ=ワンを密告(タレ)こんで、まんまと競争相手を排除したつもりでいましたが、さすがにそこはヨーダの慧眼のお陰で、オビ=ワンの汚名は晴れる事になります。 この後公開試合でオビ=ワンは見事にブルックに勝利しますがその戦い方に問題があるとクワィ=ゴンに指摘されたのは述べたとおりです。 この後ブルックは#1のみならず#6でクワィ=ゴンと練習試合をしたり、#7では更に重要な役どころで登場することになります。こういった主役に匹敵する敵役は物語には必須です。 ブルックの#1の様子を見ているとあのハリー・ポッターの敵役、ドラコ・マルフォイを連想する方も多いことと思います。 さらに、単に敵役というだけでなく、その末路まで書くことでオビ=ワンとの永遠の確執、オビ=ワンがいつまでも自責の念に駆られる(苦労人オビ=ワンの萌芽でしょうか)くだりが余りしつこくない筆致で描かれています。
お世辞にも快適といえない輸送船、モニュメント号には辺境の惑星バンドミーアへ行く二つの組織のスタッフや労働者が乗っていました。 一方はオフワールド鉱産、辺境惑星の鉱山開発を長らく手がけている老舗的な存在、しかしトップは闇の存在で、その経営方針も明かではなく、 かなりあくどい搾取や、恐喝、果ては殺人まで行われている節があります。もう一方はアルコナ鉱山開発、これはバンドメーア地元産業公社。 共に反目しあっているので船内を二分して互いに相手の領域には立ち入らない様にしているといった念のいれようです。 ジェダイ聖堂に生後6ヶ月でやってきたオビ=ワンは、情けないほど一般社会の事情に疎く、もちろん船内の微妙な力関係に気付くはずもありませんでした。 早速迷い込んだオフワールド側のハットに叩きのめされて、骨折と打撲傷を受けてしまいます。 この傷が悪化して船医の手に負えなくなったときに助けてくれるのがクワィ=ゴンなのですが思わぬ邂逅に淡い期待を抱いたオビ=ワンをクワィ=ゴンはまたも冷たく突き放します。 船内には一触即発の緊張した空気が漂い、しかも掘削機械へのサボタージュが起こって、オビ=ワンは傷がまだ癒えないのに、持ち前の正義感から今度は敵地に潜入する事に なります。
冗談に「ご学友」と書きましたが、JAシリーズで満足のいかないところがあるとすれば、各巻に必ず登場する「お友達」の存在です。 大人社会の中のオビ=ワンをもっとシリアスに描くのも一つの物語の方向だったと思うのですがJA シリーズの主眼はそちらにはなく、緩衝地帯として同年輩の友人を配してオビ=ワンが必要以上に内向して深刻にならないように意図したものと思われます。 アルコナ人は卵生で同時に孵化した一群は、一生昆虫のアリのように集団生活をして、集合意識を持つといわれています。実際シ・トレンバは 常に"we"を一人称に使っていますし、アルコナ人は「個」の意識を持たない、と書かれているのに、では全ての個体が個々に持つ経験が一種の テレパシーのようなもので共有されるのかと言えば、そうでもないらしい。アルコナ人で名前を持ったキャラクターとして登場するのは、このシ・トレンバだけで 比較の対象がないので、断定は出来ませんが "I" の代わりに "We" を使ってはいるものの、トレンバは「個」としての行動・発言をどんどんしています。 好意的に見ればシ・トレンバはアルコナ人の中では特異な存在だったのかも知れません。まあ、余り追求しないでおきましょう。
オビ=ワンとトレンバのオフワ-ルド領域に潜入の際にトレンバが捕まってしまいます。責任を感じたオビ=ワンは一人で助けに戻り( かなり殴り込みに近いことをして)トレンバを救出します。出過ぎたまねをしたとクワィ=ゴンに謝りに行ったのですが、ここでもオビ=ワンは自分の甘さを思い知らされる ことになります。トレンバを救出した功績は一顧もされず(言われたのは自分の撒いた種は自分が刈り取れということだけ) 船内の微妙な力関係のバランスを崩したと 叱責されます。実はクワィ=ゴンはオビ=ワンの危機に際して、緊密な関係にあるジェダイ同志でしか感じないような一時的なエンパシーを感じているのですが、 それはおくびにも出しません。あくまで自分とオビ=ワンの間には何の特別な関係もないと、思い込みたい無意識の抑圧があるのでしょうか ところがここで椿事出来、宇宙海賊が船に侵入してきたのです。"Pirate" もちろん海賊なのですが宇宙空間で海賊もおかしいし、かといって宇宙海賊では 少年少女SFのようで間延びしてシリアス味に欠けます。宙賊ではヘルメットをかぶってブラスターを構えているねずみを連想しませんか。もちろん日本語として馴染みもありません。 "mine"これもは「地雷」ですが宇宙航路で地雷でもないので一応「機雷」で妥協しました。同様に、後出の"torpedo"「魚雷」も「爆雷」( こんな用語ありましたっけ)としました。余談ですが、スタートレックに登場するエンタープライズ各号や他のスターフリート船もすべて「フォトン・トルピード」 を標準装備していました。映画第2作"The Wrath of Khan"でスポック遺体を乗せて打ち出したのもトルピードでした。ちなみにその訳は「光子魚雷」でした。 宇宙船=船の連想からpirate、torpedoなどの用語が抵抗なく持ちいられたのでしょうが、どうも漢字で海賊・魚雷と書くと、かえってイメージの固着を招くような気がします 。カタカナで発音のまま表記するのもそういったイメージが固定化した物の連想を避けるという意味で仕方のない妥協であるように思います。 他の例としては、震動ナイフ(バイブロ・ナイフ/ブレード) 浮遊機(フローター) 力場槍(フォーズパイク)などです。 |
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