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太鼓持ちと言われる語源

 

 



 

 

「太鼓持(たいこもち)でございます」と申し上げましても現在ではほとんど使われない言葉なので、単に日本語では「太鼓を持つ人」と言う意味ですから、日本人でも楽器の太鼓(たいこ)を持つ太鼓演奏者だと思われる方が一番多くて、「お座敷で叩くと響きませんか?」とか「お部屋へ入りますか?」とか心配顔で今でもお聞きになられる人が多いです。

gion shopping
太鼓持あらい 2000年撮影
京都の夏、祇園祭でのお買い物
 では何故、太鼓も持たないし演奏もしないで、お客様を主役に引き立てて楽しく遊びが出来、芸者さんにも好かれる状態に持って行き、お客様を喜ばせる職業を「太鼓持ち」と言うのでしょうか。

 本来「太鼓持ち」は通称でして、正式名称は「幇間(ほうかん)」と申します、「幇(ほう)」と「間(かん)」の二つの言葉から成り立っていて、「幇(ほう)」は日本語では助けると言う意味があり、「間(かん)」は人と人の間、則ち人間関係を表す意味を含んでおり、その二つの言葉が合わさって出来た言葉でして、人間関係を助けるとの意味になります。

 宴席で接待する側とされる側の間、お客様同士やお客様と芸者の間、雰囲気が途切れた時楽しく盛り上げる方向につないで行く間などを助けて、楽しく充実したお遊びになる様に持って行くのが幇間業、則ち「太鼓持ち」です、と言う意味になります。

 では何故「幇間(ほうかん)」が、日本語では太鼓を持つ人と言う意味の「太鼓持ち」と言われる様になったのでしょうか。

 

 



 

 

 一つには、武士で最初に日本を統一した豊臣秀吉(とよとみひでよし)様(1536〜1598)は、1585年に天皇様から関白(かんぱく)の位を頂いたのを養子の秀次(ひでつぐ)様に1591年に譲り、太閤(たいこう)となられ太閤様と呼ばれておりましたので、お側衆(おそばしゅう)が太閤様のご機嫌が悪いとご機嫌伺いをして、太閤様のご機嫌良くするのを日本語では「相手を持ち上げる」とも言いますので、「太閤」と「太鼓」や「持ち上げ」と「持ち」は日本語の発音が非常に似通っているので、太閤様のご機嫌を良くする意味の「太閤様を持ち上げる」を縮めて「太閤持ち上げ」やがて「太鼓持ち」となったとか。

 二つには、太鼓演奏の名人が太鼓を演奏しやすい様に持つお弟子さんが居て、常に師匠から演奏の時には持つ様に指名されたので、他のお弟子達は嫉妬して彼奴は師匠の太鼓を持つだけの人間だから「太鼓持ち」だと言われ、相手を気分良く満足させので「太鼓持ち」となったとか。

 三つには、1678年に書かれた日本全国の色里案内書「色道大鏡(しきどうおおかがみ)」に文献では始めて太鼓持ちの説明が有りますが、お遊び感覚で書いてあり、日本では多いに遊ぶ事を「ドンチャン騒ぎ」とも言います、日本語では太鼓の音は「ドン」と鉦の音は「チャン」と表現し、「鉦」は「お金」と同じ発音なのでお金を出して遊ぶ人がお客様で、お金は無く「太鼓」を持って「ドンドン」と面白く騒ぐので「太鼓持ち」と言われる様になったとか。

dengaku dance
田楽踊り
 四つには、日本は古来から稲作中心の農業国、機械も無かった昔は農作業は大変な重労働で、種籾の芽が出て15センチ程成長すると数本事に等間隔で植えなければ実りが少なく収穫が落ちますので、春には水田の中を一列に並んで腰を屈めて稲苗を植える「田植え」を村事に行なう時に、辛い労働を皆が心一つにして少しでも和らげ調子良く作業がはかどる様にと、男達が太鼓を打ち鳴らし唄を唄い舞う「田楽(でんがく)」から、お賑やかに囃し立てる人を「太鼓持ち」と言われる様になったとか。

 他にも諸説色々有って面白いのですが、これらが複合的な要素で幇間を通称「太鼓持ち」と言われる様になって行ったのだと思われます。

 「太鼓持ち」と言う言葉は現在ではほとんど使われなくなってしまいましたが、現在では時折人間関係を良くして雰囲気を盛り上げる人と言う意味では無く、人様の意見に反論もせずただ従い、唯々諾々にヘラヘラと笑って付いて行く人を蔑んで「彼奴は太鼓持ちの様だ」とバカにした時に使われる事があります。

 

 



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