第17回ちょっといって講座    

 

 

どうする公共事業  

「地方財政危機と公共事業のあり方」

           小西砂千夫 関西学院大学教授

 

                 2000年10月13日(金)午後6時〜

                 場所:国際交流会館

 

 

 

 

 

 

 

高原正典福井県自治研究センター副理事長挨拶

 ちょっといって講座も17回ということで、この間いろいろな課題で学習しているところです。金融とかゼネコンについてはわれわれの税金を湯水のごとく遣いながら、国民の要求には厳しい状況です。国・地方合わせて膨大な借金があります。自民党では先の衆議院選挙の反省もあり、公共事業の見直しということを打ち出しました。しかし、一方では景気対策として公共事業を10兆円もしなければならないといっている人もいます。総合的な評価の制度のあり方等についても議論していかなければならないと思っています。

 

小西砂千夫教授

はじめに

講演では関西弁で通していますのでお聞きづらいかもしれませんが、本音をずけずけ言おうとすると関西弁は便利です。

今日のタイトルでは、公共事業がやり玉にあがっていますが、財政屋から見ると福祉も教育も公共事業も、無駄とはいいませんが、財政危機という観点からは「贅沢」です。贅沢か贅沢でないかは財布の中身で決まります。

 

1.財政問題の解決には

財政問題の解決は、歳出を歳入で縛ればよい。制約をかければよいわけです。財政危機はなぜ起きるかというと、使える金がいくらあるかという制約で、予算を組んでいないわけです。県の予算編成は、歳入の縛りの中で各政策分野にどれだけ予算を割り振っていくかという発想ではありません。そのようにしようとすると、役所は大改革をしなければなりません。かろうじてできつつあるのは三重県だけです。三重県庁は目立っています。同じように目立っているのは高知県ですが、どうもここは知事が決めるという発想あるようで、役所全体として決めていくという発想ではないようです。兵庫県の知事査定は、知事が本当に一件一件査定すると聞いています。一件査定の積み上げが予算ではないと考えるのが三重県のやり方です。

歳入がいくらで、どう割り振るかを決めなければ歯止めが効きません。役所でも家庭でも同じです。自治体の財政危機は、さらに国が景気対策をしいたとか、そもそも、地方財政は景気対策ができるような仕組みにはなっていない。地方財政は景気対策ができない体質です。県地方債の償還ですが、地方債の償還期間が10年の場合には特にそうです。最近は20年債を混ぜていますから、平均すると15年くらいになります。10年債で景気対策をすると、ある時に景気対策をやって起債をすると、償還のやまができます。そのときにたとえば公務員の給料を減らすなどということは出来ません。では国はどうやって景気対策を可能にしているかというと、60年償還にして償還の山をもってこないようにしている。それでも無理なので赤字国債を出している。償還のピークを思いっきり引き伸ばすか、赤字公債を出さない限りは吸収できません。思い切りアクセルを踏んだ後に、思い切りブレーキを踏むという予算など組めるはずがありません。組めない中で、その分のつけが回ってきたわけです。

対策としては、赤字地方債を出すという方法があります。これをまじめに考えなければなりません。予算を組むための現金が足らないわけです。現実には赤字地方債は出せませんから、建設地方債しか出せません。そこで、予算額を確保しようとすると、やりたくもない公共事業の玉をあげなければならない。そうなれば最悪です。公共事業は地方財政制度がのゆがみをもたらします。どんどん起債していかない限り、景気対策をやったところはその反動で現金が足らなくなりますから、足らなくなった現金を調達するために、建設地方債を出し続けるという形になります。

これが典型的に現れているのが神戸市です。震災復興で10兆円近くのの公共事業をしています。そうすると、交付税算入部分があるとはいいながらもしんどい。起債制限比率をオーバーしてしまいます。起債制限を緩和してくれということで自治省に陳情したのはそのような理由からです。

 

 

 

 

2.地方交付税の思想

交付税制度は良くも悪くも戦後思想です。市町村合併を促進するために交付税で締め上げるというのはだめです。与野党を問わず国会議員の先生からはそのような意見はあるようですが、そんなことは不可能です。交付税は制度の趣旨として、締め上げる手段としては使えない。

交付税特別会計の赤字とは、

 

歳入

歳出

12兆〜13兆円

8兆円借入

21兆円

 

 

 

 

です。

歳入である国税5税の一定割合は12〜3兆円に対して、財源不足額は21兆円で8兆円足りないわけです。これを民間借入で借入れているわけです。この残高が今年度末で38兆円の赤字が積みあがります。この借入金を返す方法はありません。地方交付税制度は既に事実上、破綻しています。

制度として破綻しているものが、なぜこんな状態になっているかですが、大蔵省が悪いともいえるし、自治省が悪いともいえるし、自治体自身の当事者意識のなさともいえます。財源不足額は、国が政策立案をした結果として、後追いで求まるものです。措置制度として法律で決めたもの、地方単独事業でやってもらうというのもあります。公共事業のように5カ年計画でやるのもあります。短期の経済対策として上から政策として降ってくるものもあります。それが、内閣か、国会か、「閣議決定」か、「法律」かで政策は最終的にはオーソライズされていくわけです。その中には、国が直接自分でやるものもあり、地方団体を通じてやるものもあります。補助金を地方団体に渡すものもありますし、交付税で渡すものもあります。

制度をつくるといくらいるかが決まります。国がコミットした政策を金銭で換算するといくらになるか。それと国税と地方税の合計を比較する。すると、圧倒的に税が足りない。国が約束した何等かの形でオーソライズされた政策から出てくる財政需要に対して、国税・地方税が圧倒的に足らない。これを、国の赤字国債・建設国債、地方の建設地方債と交付税特別会計の借入れで埋めている。

国と地方との関係でいえば、国がやると決めた政策は基本的には全部交付税に落とし込まれている。交付税の「単位費用」なり「基準財政需要額」に正確反映されているかどうかは別として落とし込まれている。それを「基準財政収入額」と比較したときに財源不足が出てきます。この財源不足額と国税5税の21兆円を比較して財源不足額が大きかったときは財政不足額に合わせるというのです。国がオーソライズされた政策は金がなくても自治体に渡すというものです。基準財政需要額の中には福祉も教育も公共事業も等しく入っています。

文部省が「30人学級」をやると府県の「基準財政需要額」膨大に増えます。財政的には困る。どの政策も単体をとればいいものばかりです。フグも食いたい、おこぜも食いたい、鯨のおのみも食いたいわけです。だからこそ、財政問題は財布で縛っていくしかないわけです。

交付税のアンバランスが日本の地方の財政問題の全てを現わしています。地方団体はこれだけ無理して交付税をもらいながら、なお且つ、財政危機だというのです。これまで、21兆円を無理してもらっているから財政危機を避けられていますが、これが12兆円に下げられると財政危機に陥りますというのならそうだと思うですが、これだけ無理して交付税をもらいながら、平成17年には大阪府は予算が組めないというのです。これは困ったことです。

 

3.交付税によりかかった発想をやめるには

県は宿命的にしんどいわけです。知事より建設省が恐かったりするわけです。P県の行革の会議で、公共事業が集中砲火を浴びたわけですが、そのとき、土木の課長は県へくる公共事業のシェアは変わらないから、財政課と予算折衝をする前段で、先に建設省と話をしても問題が無いといったわけです。しかし、交付税による「裏負担」があるから、たまたま予算が組めているだけであり、交付税に寄りかかった発想ですと批判したら、課長はそのとき何を言われたかわからなかったわけです。このように交付税は土木課に錯覚をもたらしています。

交付税は思考停止させる仕組みです。国のいうとおりやっていれば予算を組めたわけです。自治体が予算を組めないのは、過去の景気対策のつけが回ってきたからです。それでもまだ予算は組めているわけですから、本格的な危機にはなっていない。本当の危機が来る前段で予算が組めないといっているわけです。歳入が前年よりプラスにならない。地方債の償還は前年より増える。公債費に取られる分だけ事業費はマイナスになる。自治体は昨年と同じ分だけ事業費を割り当てておいて、あまった分を調整財源にするという予算の組みかたをしているところが多い。県は中央省庁の下請け機関の性格がありますから、「地方財政計画」と著しく違う計画を県は組めないわけです。そんなことをすれば市町村が怒ってきます。地方財政計画に反映されたものが県を通して市町村に下りてくるからです。

予算編成のあり方では、三重県だけは改革に意欲があります。三重県では「行革熱病患者」が50人ほどいます。議会事務局長にも、元気のある人を置いて、議会の圧力をむしろ期待している。行革をまともにやろうとすると議会を揺さぶるしかない。三重県議会では政策論をやっています。変な議会です。議会は利益誘導するところという方がむしろ普通のような気がします。三重県では歳入で歳出を縛ろうという発想が根づいてきたのではないかと思います。市町村でも首長や総務課長がやる気になれば同じことができます。

三重県は財政課を「予算調整課」という名前に変えて、査定はしない、予算の調整をするというのです。査定しないのは、総合計画をベースに、財政会議という幹部会で歳出の分野別の配分を決めてしまう。シェアリングを決めてしまう。個々の担当課から見ると、予算が枠で配分され、そこに個別事業をはめ込むことになる。そのとき財政課は担当課へのコンサルティング業務をすることになる。

財政課の中で、公共事業はなんぼにしよう、福祉はいくら、教育はいくらにしようというのは本来決められるはずがありません。そのような権限はありません。財政課は木だけみて森を見ません。大きな政策論議は財政課の担当レベルでは出来るわけがありませんから、落とすためには、一件査定の中でやっていくしかありません。落として行かなければ歳入と歳出のギャップが埋まらないわけです。無理矢理でもなんでも落としていって、また、昨年と同じ要求なら、みすみすダミーの予算と分かっていても、一々査定していられませんから、通すことになるわけです。政策論もなにもあったものではない。役所が政策論をしていないわけですから、議会と政策論が出来るわけがない。

地方債の償還により歳入が実質ベースで落ちてくる分だけ、これまでの職人芸では予算が組めなくなる。そこで、財政調整基金を取り崩すことになる。調整能力がないわけです。公共事業は落とせる。やめてしまえばいいのです。かろうじて調整できるのが公共事業です。福祉や教育は法制度の裏付けがあり、政治の圧力も大きく落とせません。

公共事業の担当者から見れば、景気対策だといって無理矢理仕事をさせられて、こなされないくらいの事業が来て、人数が増えるわけでもないのたくさんの仕事をさせられていたのに、予算がなくなってくると、やっても無駄などといわれる。

建設省の人と研究会をしたとき、建設事業は後に残るものですが、教育や福祉は消えてなくなるものですといわれました。しかし教育がなくなるというのは失礼な話ですが、ともかく消えてなくならないのでよいものという感覚があるようです。ただ、後に残るだけに維持補修が大変だし、ランニング・コストはどうするということになります。博物がないのに博物館を作ったりします。何を見るのか、建物を見るというものがたくさんあります。福祉も教育も公共事業もどれが悪玉ということではなく、歳入に対して歳出制約ができていなければどれも贅沢です。

 

4.意思決定のやりかたを変える・情報公開のやりかたを変える

しかし、いま直ちに、歳入を歳出で縛るだけの自由度が、県という立場で、あるかどうかといえばないでしょう。地方財政計画でイメージされている歳出の構成と著しく違った予算のシェアリングはできません。「行革」という言葉は量的ですが、最近「行財政システム」という言葉が使われますが、「システム」つまり、“意思決定”のやりかたを変える、“情報公開”のやり方を変えるというのが「システム」という言葉が入った本来の意味です。

歳入で歳出を縛った予算を組んで、それが本当に県民に喜ばれるかどうかを、選挙のときだけではなく、常にチェックを自ら受けようというのが情報公開です。土地開発公社をどうしようという発想とはちょっと違います。役所でも失敗することはたくさんあります。土地開発公社の含み損がどれだけあるということが問題なのではありません。地方債の残高とは比べ物にはなりません。情報公開が重要であり、どうやって責任をとるかです。

発生主義決算ですが、作っただけではほとんど意味がありません(詳しくは、私のホームページを参照)。監査法人や民間企業の方は民間を習えといいますが、民間は民間でもっといいかげんな面も多いわけです。たとえば、日本の金融機関はこのプロジェクトがどのくらい儲かるかという判定をする能力がない。プロジェクト・ファイナンスの審査能力が金貸しの技術力であり、銀行はそこで儲けるべきですが、プロジェクト・ファイナンスの能力がなく、見ているのは担保だけです。金融機関の人に冗談で「担保を審査する能力があったらこんな風にはなっていませんよ」といわれましたが。

 

行財政システム改革の完成した姿は、具体的にどんな意思決定になるかですが、この完成形はイメージされていません。三重県はこのままいけば10年後にはここまで行くだろうという行革の完成型をイメージして100項目のチェックリストにあげています。100項目のチェックリストで100点をとった場合を完成形としています。関西広域連携協議会で、この100項目の深化を自治体の方と一緒に組み立てています。

 

 

 

 

 

質問

経営マネジメント

Q1 経営マネジメントということで、岩手県、三鷹市がやっていますが。

A1 行財政改革をやろうとすれば、まともな総合計画を作るべきです。総合計画というのは夢だから、いうだけいって、きれいに化粧をして、実際の予算のときには横に置いておいてやろうというものですが、総合計画をいい加減にするというのは堕落の始まりです。総合計画をスリムにしたうえで、さらに毎年の財政状況に応じて修正するというのがまともな政策論のスタートです。そこから始めなければなりません。

民間は住民がいませんから、そのようなことは分かりません。消費者と住民は違います。いろんな改革がある中でいいものは残っていくと思います。岩手県のアプローチは、それとはだいぶ違うのではないかと思います。

 

総合計画と実施計画

Q2 総合計画に携わっていますが、10年間の総合計画を作ろうとということですが、10年間の財政計画というのは正直言ってできません。財政需要も介護保険とか見えてきません。とりあえず、財政は横において、実施計画で縛ってやっていくしかないかということですが。

A2小西 常識的にはそうです。しかし、財政計画は行政の中だけであり、総合計画は住民をたくさん入れてやります。開かれた県政だということですが、財政計画は住民は入れませんから、自ら晒す気がないのです。総合計画を筋肉質に作って、それを毎年修正するというのは、すごく腕力のいることです。その意識があるのは、私の知っている限りでは、三重県と長崎県です。

長崎県もある思いをこめて総合計画を作っています。実施計画は本音で行政内部だけで行いますが、議会にかけ毎年修正していく。そこをふんばれるかどうかは首長次第です。

Q3 経済界の人はしぼれ、しぼれといいますが、各界の代表の人が出てくると、「教育は譲れません」とか、「福祉だけは譲れません」とか、「年寄りをなんやと思っているんだ」とかいって、結局総花的になってしまう。

A3小西 そこでまともにけんかできなければ、あとは“なあなあ”でやっていくしかない。毎年、政治姿勢で修正していくというのが筋で、それが日本ではなぜできないのか。できないから、そろいもそろって金がないということになる。総合計画をやめてしまった県もあります。作ったら毎年の予算のときに邪魔だというのが停止の理由だとすれば、これは開き直りの論理です。

 

交付税制度

Q4 交付税制度の発端ですが、なぜそういう形なったのですか。

A4小西 近代国家を建設しよう・効率的に行政をやっていこうという雰囲気の昭和30年代からですが、効率的に近代国家を足並みをそろえてやっていくには交付税制度は有効です。それが戦後思想です。キャッチアップ・追いつき型政策では有効です。交付税制度・論理を読めば読むほどそうです。

Q5 そういう理論はわかっていたのですか。

A5小西 当時の社会的気分を端的に表しています。交付税の中身まで見てくると、そこには驚くべき“戦後的気分”があるということです。だから大変なのです。戦後社会のコンセンサスを潰すという話になります。私は交付税をつぶすとはいっていません。交付税は入りが12兆円で出が21兆円です。10年前は出が10兆円でした。景気がよくなれば国税5税の収入は15兆円くらいにはなるでしょう。15兆円でがまんできれば交付税問題は解決します。3割の事業費を落とさなければなりません。しかし、交付税は落としかたがない。やると決めたことを落としようがないわけです。公共事業は5カ年計画ですから、10カ年計画に先延ばしできますから可能です。しかし、教育や福祉は法律を変えなければなりません。提案しているのは、交付税の需要額を『必修科目』と『選択科目』を分けてはどうかということです。金のある範囲でやるということですが、これは戦後的約束の崩壊です。交付税の思想にいかにメスをいれるかです。

『選択科目』を選ぶというのが自治です。やれない事業も出てきますが、NPOとか他のやり方なら出来るものもあります。地方の目的税もあります。NPO・PFI・増税はどうだとかという“棘の道”ながら、“美しき”地方自治のスタートとなるのではないでしょうか。

 

 市町村合併と兵糧攻め

Q6 市町村合併に乗ってこない市町村に「兵糧攻め」といこともあるのでしょうか?

A6小西 過疎対策や半島振興をやめるというのは兵糧攻めの感じはありますが、交付税はそれができません。歳入で歳出を縛るという思想であり、交付税を組み替えようというのが『選択科目』と『必修科目』の構想です。合併は、思想の変更と比較すると小さな問題です。市町村合併というのは自衛策・危機管理です。交付税の思想改革をすれば減りますから、減ったときに少しでも早く合併しておいた方が得だということです。交付税で締め上げて合併するという話ではありません。

 

 交付税の補正係数

Q7 補正係数での操作は

A7小西 補正係数はあやしいですが、本当的な面もあります。最後は数字合わせです。そのときに補正係数を触るわけです。係数の操作が決定的とは思いません。

Q8 国税のパーセントは

8小西 交付税はもともと国税3税で減税するときに、その見合いで入れています。その2年間だけでみれば減収見合いです。2税も消費税のときに入れています。

 

 税制調査会の議論 

Q9 税制調査会での議論でですが

A9小西 税制調査会の議論ですが、需要がこれだけあって、収入がこれだけですから、国税・地方税を組み替えても財源不足額の8兆円はなくなりません。問題は8兆円をどうやってなくすかです。8兆円をなくしてからは、組み替えるなら、組み替えてもよいわけです。これをいっしょくたに議論をしてはいけません。交付税はばらまきで、交付税で締め上げられると思っている人がいるからです。自治省の裁量で交付税の配布額が決まるわけではありません。福井県は組み替えたら損です。組み替えで特をするのか都道府県では東京だけです。

 

 公共事業の実態

Q10 公共事業ですが小さな300mの道路工事を小さな業者に100mづつ分割発注してやっているのですが。

A10小西 分割発注は中小企業優先の政策の結果ですが、それがいいかどうかを見るためには情報公開で正面からやっていくしかない。区間を分けるのが、本当に中小企業にメリットになるかどうかというのは難しいです。下請けにふるわけですし、談合があることも否定できませんから。

 

 

 

 

 

 

 

 

講師紹介

小西砂千(こにしさちお) 氏

1960年 大阪市生れ

1983年 関西学院大学経済学部卒業

1992年 関西学院大学助教授

1998年 関西学院大学教授

研究テーマ

国と地方の行政改革、発生主義会計、 地方自治体の予算決算制度、震災復興、税金、財政投融資、地方行財政、関西経済、東南アジア・東アジアの財政・脱税・腐敗問題、過疎問題、市町村合併、消防団・自治会・町内会・ボランティア、介護保険

主な著作

「転換期の財政投融資」「財政システム」「日本の税制改革」等多数

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考資料

地方交付税の算定

 

基準財政需要額

        ┌ 基準財政収入額      ┐

特別

普通

地方譲与税

80%(75%)

20%

(25%)

超過課税

法定外普通・目的税

国庫補助負担金

使用料など

地方交付税

標準地方税収入

 

 基準財政需要額が標準地方税収入額の80%(都道府県の場合。市町村の場合は75%)と地方譲与税の合計である規準財政収入額を上回る地方団体には、その差額(財源不足額)が普通地方交付税として交付される。

 

 

 [基準財政需要額]

 意  義

 基準財政需要額とは、各地方団体の財政需要を合理的に測定するために、当該団体について交付税法第一

一条の規定により算出した額である。

 ここで、基準財政需要額は、各団体の個々具体的な財政支出の実態を捨象して、その地方団体の自然的・

地理的・社会的諸条件に対応する合理的でかつ妥当な水準における「あるべき財政需要」として算定され

る。従って、基準財政需要額は、各地方団体の支出の実績(決算額)でもなければ、実際に支出しようとする

額(予算額)でもない。これは、地方交付税が、各地方団体の財源不足額を衡平に補てんすることを目的とし

て交付されるものであるから、仮に具体的な実績をその財政需要の算定に用いることとすれば、個別の事情や独自の判断に基づく要素を取り入れることとなり、不公平な結果をもたらすからである。

 算定の基本

 基準財政需要額の算定は、各「行政項目」別にそれぞれ設けられた「測定単位」の数値に、必要な「補

正係数」を加え、これに測定単位ごとに定められた「単位費用」を乗じた額を合算することによって行われ

る。これを算式にすると次のようになる。

  (「測定単位の数値」×「補正係  数」) × 「単位費用」

 

 [単位費用]

 @ 意  義

 単位費用とは、各行政項目ごとの、測定単位一単位当たりの単価(一般財源所要額)である。交付税法

上は、単位費用は、道府県及び市町村ごとに、標準的条件を備えた地方団体が合理的、かつ妥当な水準にお

いて地方行政を行う場合又は標準的な施設を維持する場合に要する経費を基準とし、特定財源(補助金、負担

金、手数料、使用料、分担金その他これらに類する収入及び地方税の収入のうち基準財政収入額に相当するもの以外のものを財源とすべき部分(目的税等))を除いて算定した各測定単位の単位当たりの費用で、普通交付税の算定に用いる地方行政の種類ごとの経費の額を決定するために、測定単位の数値に乗ずべきものとされる。

 

 [補正係数]

 補正係数とは、地方団体の置かれた自然的・社会的・制度的条件には種々の差異があることから、その差

が生ずる理由ごとに測定単位の数値を割増し又は割落しするために、測定単位の数値の補正に用いる乗率で

ある。

 補正係数は、基準財政需要額の算定に当たり、各地方団体の実情に応じた公正妥当な算定を行うために必

要である。すなわち、基準財政需要額の算定は、各地方団体について、各費目ごとに測定単位の数値に単位費

用を乗じたものをもって表すことができるが、実際の各地方団体の測定単位当たりの行政経費は、各地方団

体の人口規模、人口密度、都市化の程度、気象条件の違い等によって大きな差異があるため、すべての地方団

体について同一の単位費用を適用することが必ずしも適当でない。従って、各地方団体の規模・種類ごとの

条件の差異を基準財政需要額の算定に反映させるために、測定単位の数値について何種類かの補正が行われるのである。

『自治実務セミナー 2000年11月号』チャレンジ・セミナーより抜粋

 

 

 

 

ちょっといって講座実行委員会

 

(http://www.mitene.or.jp/~ryuzo   mail:  ryuzo@mitene.or.jp)

連絡先: 福井市松本3丁目16−10 пi0776)27-2442