あぜみちの会ミニコミ紙

みち26号

(2000年夏号)


シグナル26

福井市 中川清


今年も、この春四月から、孫の通っている近くの清明小学校二年生の児童たちとの「お米作りの教室」を担当している。まず春の種蒔きから始まり、田起こし、代かき、枠を転がしての手での田植え、草取り、水管理や溝切り作業。稲の穂が出来たときの肥料のやり方、そして稲刈り、籾摺り精米収穫への感謝祭、最後に秋起こしなど来年への取り組みまで一連のことを、有機栽培で、しかも出来るだけ分かりやすくと思っている。
 いつも子供たちから、いろいろな質問攻めにあう。そして、その会話が実に楽しい!
 そのいくつかを紹介する。
@何故毎年田植えをしなくてはならないの?うちのお婆ちゃんらは「畑の草は毎年生えて困っている」と言っている。そんな稲はどうして出来ないのか?「SOS? 試験研究機関の方々なんとか応えて…」
A何故田圃に水を入れておくの? 保温のためだというけど、僕ら今水に入ると冷たくて寒いよ!「?……。」
B中川さんはいつもニコニコして仕事しているけど、楽しいのか?「うん、君たちみんなが見ていてくれるからなぁ!」と、返事したら ボクの家の父さんら少しも楽しそうでないよ! あれはボクらが仕事しているところを見て応援しないからかなぁ?
 五月中旬、地区の体育会に小学校へ行ったら、「あっ! お米の中川先生だ!」と子供たち何人にも声をかけられた。この子たちとこれから 秋過ぎまでの教室は続くのである。
 なにか今年も楽しいことが一杯ありそうだ。思わず頬がゆるむ思いがする。


あぜみち中川賞原稿募集のおしらせ
あなたの”夢”のものがたり募集します
支援金30万円を手にしてください


 今年の「あぜみち中川賞」の原稿募集を行います。あぜみちの会では、これから始まるあなたの「ものがたり」をお待ちしています。
 夢を持って農業に取り組まれている方、ぜひあなたの夢や思いをつづってください。
 応募者の中から選考の上、1名の方に夢を実現するための支援金として30万円を贈呈します。
 文章を書くことは、多少面倒かもしれません。でも、漠然としていた夢を文字にすることで、これからの目標やそこまでの道筋が明確になるでしょう。こうした経験は決して無駄にはならないと思います。この機会にぜひチャレンジしてみてください。
 あぜみちの会では、「みち」の読者の方々のご協力も得ながら、この賞を契機に大きく羽ばたくことのできる若者を育てていきたいと思っています。
●応募資格
福井県在住の農業者(個人)で50歳末満の方
●応募方法
 あなたが目頃から実現したいと考えている夢について、その思いをつづってください。
 そのような夢を持つにいたった理由、その実現のための具体的な方法なともあわせて書いてください命なお、受賞された方の原稿については、当ミニコミ誌「みち」に掲載します。
原稿…イラスト図表を含めて4000字程度。必ず住所氏名、年齢、連絡先電話番号を明記してください。原稿は必ず応募者本人が書いてください。
原稿受付期間…5月1日から8月末日まで。
提出先…〒910-0803 福井市高柳町3−8 あぜみちの会事務局 安実正嗣まで
●選考・審査・発表
 作文の内容による審査と対面による調査を行い、夢の内容と意欲、実現性等を審査し特に今後の発展が期待できる方1名を選考します。審査の結果は「みち」誌上において発表し、表彰は11月23日に開催されるあぜみちの会収穫祭会場において行います。
●問い合わせ先
安実正嗣
 TEL:0776-54-7565
 FAX:0776-54-8075
前川英範
 TEL:090-4327-1354
 E-mail maegawa@po3.nsknet.or.jp
●賞の運営について
 この賞は、中川清さんをはじめとする有志の方のご寄付により運営されています。
前回受賞者の声
長尾伸二さん(池田町)
(みち24号より抜粋)
「今回『あぜみち中川賞』の応募で、自分自身の農業に対する夢や家族に対する夢について書きつづるうちに、漠然とした夢が少し現実に近くなったように思います。普段何となく考えることが、自分の気持ちの整理にもつながり、自分自身への励みとなり、いつしか夢の中にいる自分を考えていました。
収穫祭において、表彰していただいたときに、私達若手農業者に対するご支援、ご期待を痛切に感じました。あぜみちの会の皆様の気持ちに応えるよう、一歩一歩ゆっくり広い視野を持ち、夢の実現へ向け、家族とともに農業や自然を愛して行こうと思います」

あぜみち中川賞は
毎年同じ時期に原稿を募集しています。


農業者にとって情報が糧(バート2)

福井市 義元孝司


 「ビジネスチャンス」という言葉は経済新間やビジネス誌の中に度々登場する。その意味合いは私達が通常している仕事を通じて得られる情報を元に新たな仕事を創り出す契機と解釈している。少し回りくどい解釈の仕方かもしれないが「情報」がないと新しいビジネスはうまれない。
 農業の視点で「ビジネスチャンス」といことを考えてみたい。
 ビジネスチャンスはビジネスモデルを創り出す事から始まる。ビジネスモデルが考慮されないビジネスは必ず破綻する。元来、農業を取りまく環境ではビジネスモデルが出にくい状況にあった。これは農業が産業としてとらえるには、他の産業、例えば化学産業や自動車産業、住宅産業などとの「大量生産」が可能な産業との違いがあったからである。
 農業の生産現場をみてみるとその根源的な他産業との相違が理解できる。例えば、北陸の稲作は{年一回しか生産できないし、十アール当たり六百キロを超えて収量を上げることは難しい。ところが、自動車産業では、1年の生産台数を1万台から2万台にすることは可能である。それには、資金、設備、人員を駆使して「ビジネスモデル」を組み立てているからである。
 農業者としてこうした経済の仕組みの違いを認識しながらも、あえて農業に係わろうとする意識の中には「儲けよう」という事以外に、「別の意識」が存在するからではなかろうか。強引な解釈になるかもしれないが、「共生」の意識が農業という産業を支えているのではなからうか。
 私なりにこの「共生」という言葉をどのようにとらえているかといえば、人も作物も自然と共に生きる事ととらえている。そこには「無理」のない関係が存在する。お互いが争い、破壊し、勝ち残る社会には「共生」はない。共生の世界は弱者も強者もお互いが共存する社会、破壊の無い社会、再生産の社会である。
 昨今の情報化社会の到来は人と人が共生できるその可能性を秘めた環境にある。
(次号に続く)


読者の声


拝啓
 緑の美しい季節になって参りました。
 長い間ご無沙汰しておりますが、ますますお元気で頑張っておられるご様子、本当に嬉しく思います。
 いつも「みち」を送っていただきまして有り難うございます。仲間の皆様の土を愛し、いのちを愛して精進しておられる真摯なお姿がいつの紙面にも溢れていて、それでいて固くなく、むずかしさもなく、文学性もただよっていて読みやすく、ただただ感心して読ませてもらっています。
 いろいろなすばらしい実践活動のご様子が写真でも紹介され、とても親しみやすいですね。昨年の茂さんの農場の秋の収穫祭……特になつかしい思いで読ませていただきました。
 いつの間にかすっかり年を重ねてしまい、事ある毎に遠い日の思い出を懐かしみつつ日々を過ごしています。
 今頃茂さんの田や畑は愛情をいっぱい受けてすくすくと育っていることでしょうね。
 どうぞお体に注意されて奥様ともどもお元気でお過ごし下さいね。
敬具


編集後記

屋敷紘美


 現在の平成天皇が皇太子の時、彼の英語教師であったアメリカ人婦人(名前は失念した)に「将来何になりたいか」と聞かれて、「私は天皇にならなければならない」と答えたという。
 40、50歳代以上の、多くの農家の長男にとっては、多分平成天皇と同じ心境で農家を嗣いだのだと思う。しかし、彼らが自分の息子達に自分と同じ道を歩めと強制できるほど、自分達の今の状態に確信を持っていないことも事実であろう。
 かくて、現在の良家の長男たちは、農民の歴史上初めて、自らの意志と価値観に照らして農民たることを選択できることになった。平成の皇太子と違う幸せを享受できていると言える。その条件の下で農民たることを選択した長男達は、これまでの世襲の農民と違った主体性のある革新的な農業、農村を創り出してくれるだろうという期待がある。また、この農村にある一種自由な雰囲気は、非農業者の農村移住、就農を容易にした側面もある。もちろんこの裏側には農村の荒廃があることも認めざるをえないのだが。
 ともあれ、このように農民を生活として、職業として選択した彼らは、新しい感性と伝統にとらわれない生活意欲が、今後の農業、農村を変えていくことは間違いのないところだろう。おおげさにいえば戦後の農地改革に匹敵する「遅れてきた農村の意識革命」となる予感がある。
 どのような農業・農村に変化するか期待するところは大きいが、「共生」、「民主主義」といったキーワードが要であるような地域になるよう願っている。
 この度、あぜみち中川賞を受賞された長尾、稲澤両君はあらゆる意味で農業農村再生の最先端に位置することは衆目の認めることだが、この賞の受賞はあらためてこのことを追認したことでもある。両君に大きな拍手と激励を差し上げたい。


このミニコミ紙は年間1000円で購読できます。メールでも購読申込みを承ります。

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