平成10年10月4日
 
 生徒会主催での討論会を
                        若狭高等学校教諭 渡辺久暢
 
 
 (この文章は、平成9年7月2日 福井県高校教育研究会 指導部会の講師として呼ばれた際の、発表メモです。 
  したがって、「論文」ではなく、「発表メモ」としてお読みください)
1 生徒会行事の意義
 
 
 生徒会行事は、生徒たちの主体的な企画から始まるという事で、一人ひとりの生徒の持つ個性的な能力や可能性を、生徒自身に発見させることのできる機会を提供してくれる。
 さまざまな役割を生徒一人ひとりが果たしていく過程で、生徒たちは自らの有用性を認識し主体性を高めていく、ここにまず一つ目の生徒会行事の意義がある。
 
そしてもう一つの意義
 
学校行事の意義・・・月刊HR ’94 10月号 
    「学校行事にホームルームはどうかかわるか」 岡昌春氏の論文より引用
 
  生徒にとって学校行事とは、各教科・各科目及び特別活動の他の分野(HR活動・生徒会活動・クラブ活動)などにおける日常の学習の成果を生かし、総合させ、発展させる体験的な活動である。
 この活動を通して、生徒は集団生活に必要な基本的な行動様式を身につけ、人間関係や社会性を育み、協同することの尊さや創造することの喜びを味わい、人間としての在り方生き方についての考えを深め、自らをバランスよく向上させることが期待されている。
             中略
 
 最近、学校の個性化・特色化ということが強調されているが、学校行事などの価値ある活動を通して、独特な校風や伝統が築かれる中で、個性化・特色化が図られていくことが望ましい。
 このような考え方に立って少し日月をかけて樹立した特色のある学校にすることが、長い目で見れば、市民から信頼される学校になるであろう。偏差値が高く、知識の詰め込みに生き甲斐を感じている学校であっても、行事に対して生徒たちの若いエネルギーを適切に燃焼させ、バランスのとれた人間形成に力を注ぐことができないのであれば、将来大成する若者を育成することはたやすくはないだろう。
 大切なことは、各教科・科目などで学習したことを学校行事を通して総合させ、生徒一人ひとりのばらばらな知識や学習した力を、行事をまとめさせ総合的な能力に高めさせ、併せて、在り方生き方をも含めて、心身ともにいっそう逞しい若者へと導いていくことができるようにすることである。
                         引用終わり 
 
 完全週五日制導入をにらんで、学校のスリム化が叫ばれている中、「授業時数確保」の名の下に、学校行事を削減しつつある学校が増えてきている。しかし、学校の活性化・特色化には学校行事削減はマイナスである。
 
むしろ、新しい時代をにらんで、新しい行事を創設するべきではないか。
 
 
  Cf 中教審 第二次答申(6月26日発表)
 
 豊かな成熟社会の実現を目指して、我々は、今後、子どもたちが、主体的に生きていくための資質や能力を身に付けながら、自立した個を確立し、自己実現を図っていくことができるよう、教育の改革を進めていく必要がある。そのために、まず、教員や保護者をはじめ、社会全体が、子どもたちの多様な個性を認め、それぞれの差異を尊重するという意識や価値観を持ち、教育にかかわっていくということが最も重要なことである。
      中略
 
これからの我が国社会は、国際化、情報化、科学技術の発展、さらには高齢化・少子化などといった急速な変化に直面し、先行き不透明な厳しい時代を迎えることとなる。こうした社会の変化に柔軟に対応できる、個性的な人材や創造的な人材を育成することは、我が国が活力ある社会として発展していく上で不可欠である。特に、経済や科学技術などの様々な面で、我が国が自ら新しいフロンティアを開拓し、国際社会に貢献していく必要性が高まっており、個人の多彩な能力を開花させ、創造性、さらには独創性を涵養していくことは、教育における極めて重要な課題となっている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3  ”是非生徒会主催で「討論会を」”  
ア)若狭高校が考える教育的意義
 
「異質のものに対する理解と寛容の精神を養う」という本校の伝統的教育目標を達成するための一つの手だてとしてディベートに取り組んでいる。       
 本校では、ディベートを「一定のルールに則って行われる対立形式のコミュニケーション」と定義し、以下の3つの能力の育成を主たる目的としている。
    ・相手の意見を正確に理解し、分析する能力。
    ・論理的発言内容を組み立てる能力。
    ・チームとしての意見を分かりやすく表現する能力。
 個人の価値観が多様化してきた現代にあっては、今までの日本社会で行われてきたような、「以心伝心的コミュニケーション」は必ずしも効果的ではない。現代日本人には、相手の価値観や意見と、自分との違いを明確にし、そこから、論理的な議論をかわすことによって様々な問題を解決していく能力が不可欠になる。
論理的議論の進め方、批判的思考、問題の調査・分析、口頭発表などのコミュニケーション能力の育成を主たる目的としている。
 また、以下のことを副目的とする。
    ・必要な資料を探索し、それを活用できる情報活用力を養う。
    ・テーマに関する学習を通じて社会的事情について関心を持つ。
    ・異なる立場の意見についても検討できる複眼的思考力を養う。
    ・主体的な自分なりの意見を持てるようにする。
 
 ディベートに特徴づけられる思考やコミュニケーション能力は今日の社会において不可欠である。社会事象に対しての関心が薄れがちな昨今、まず新聞・書籍等から必要な情報を探し出し、その情報を活用する能力を育成することは、急務であると考える。
 ディベート体験を通して、生涯学習の社会に適応し、自己啓発型の人間となり、かつ国際的に活躍し得るような人間の育成を図りたい。
 
 
 以前に組合の生徒会担当の話し合いがあったときの話題「後期生徒会としてどんな行事を?」ということで、後期生徒会が暇を持て余すという意見あり。
 
 
そこで、生徒会後期の新行事として「討論」に取り組まれることを提案したい。
ディスカッションでもディベートでも良いが、ゲームとして確立しているのはディベートか。特に一方的に自分の主張を主張するのではなく、相手の意見をよく聞いてそれに対して反論する、という訓練をさせるにはディベート形式の方がベターか?
 
・クラスの代表が出場するものと、ほぼ全員が出る方式との違い
 準備・教員に対する負担は大きいが、ぜひ全員参加の方向性が望ましい。
 福井県内における実践例
 
  武生高校・藤島高校・金津高校
   (学校祭でのパネルディスカッション・ディベート等を企画)
  金津高校、美方高校・他
   (学年会主催によるLHRを利用したディベート大会)
 
小学生でもできるディベート
実際はそれほど難しくない。
時期的には2月or3月が適当か?
 
 
 
 
 
 
4. 若狭高校討論会の歴史
 
 昭和27年以来昭和47年まで、何度か行われなかった年があるものの、継続してHR対抗形式で行われた。生徒数の急増によって、運営が困難になったため、昭和48年から62年まで中断するが、63年より復活する。
 平成6年度よりクラス制となり、HR対抗からクラス対抗にと変化はしたが、現在までルールを変更しつつ継続している。
 
 
 
5. 平成9年度討論会の概要
 
ア)対抗形式:  全学年(1・2年生)混合による、クラス対抗
 
イ)チーム編成:  ・各クラス1〜3のテーマにつき肯定、否定側各1チーム、
           計6チーム。(クラスから30人が出場)
          ・1チーム5人編成。(立論・質問・第一反駁・第二反駁・最終弁論の各ステージを担当。ただし、立論者は、相手の質問に答えなければならない。その他の生徒は当日、役員として参加してもらう。)
 
ウ)当日役員:  第一論題だけは審判員3名(教員+生徒2名)、そのほかは教員2名による審判 
         司会・計時各1名づつ(生徒)
 
エ)対戦形式:  学年に関係なく各テーマごとに肯定・否定側に分かれて対戦。
 
オ)表彰:     クラスの合計勝数で行う。   6勝0敗 → 金賞
                        5勝1敗 → 銀賞
                         4勝2敗 → 銅賞
                    
カ)当日の日程   2限終了後、11:00より第一試合。以下13:00、
          14:20よりより第二、第三試合を行う。、
 
キ)テーマ   1)日本国は選択的夫婦別姓を認めるべし
        2)日本国は少年法を改正すべし
        3)日本国はもんじゅを廃炉にすべし
 
3.事前準備
 
 11月〜12月  執行部を中心にテーマ設定・ルール作成のための準備に入る。
         
  テーマ決定のためのアンケートを教員・生徒に実施
  8つほどの候補を、討論会実行委員会で検討し、上記の3つに決定
 一年生の実行委員が、3つのテーマについて基礎的な知識を盛り込んだ新聞を作成
  生徒全員に冬休み中に新聞などを注意してみておくように指導
 
  冬休み       執行部生徒と、生徒会担当教諭で、定義・プランづくり
 
 1月 8日     クラス担任会議
           (生徒会担当による説明)
 1月27・28日  実行委員会による、各テーマの資料づくり
 1月31日     教職員による模擬討論会
           (小体育館に1・2年生全員を集める。)
 2月 6日      クラス内模擬討論会
           (LHRを6限目にし、課外の時間と2限続きで行う)
 2月12・13日   課外カットで、討論会準備(他クラスとの練習試合等)
           (途中生徒会新聞を発行し、意欲をもり立てた)
   13日      司会・計時講習会(生徒対象)
   14日      大会 (民放2局・福井・朝日・中日・毎日の各紙からの取材)
 3月22日     JDA日本語ディベート大会参加
 6月        甲子園ディベート北陸予選優勝
 8月        全国甲子園大会BEST8進出
 
 
ちなみに、ディベート導入初年度は、もっときめ細かい準備を行った。
 
11月初旬より、執行部を中心にテーマ設定・ルール作成のための準備に入る。
 12月13日     金津高校訪問、金津高校におけるディベートの取り組み
            について、教えていただく。
    14日     金沢大学付属高校でのディベート講習会参加
            (執行部・一般生徒25名の参加)
    17日     テーマ決定のためのアンケートを教員・生徒に実施
    19日     テーマ決定。(アンケート結果によって執行部が決定)
            生徒全員に冬休み中に新聞などを注意してみておく
            ように指示
 
  冬休み       執行部生徒で討論形式を研究
           (ディベート研修の影響からか、メリット・デメリット方式<以下MD方式>をアレンジして行う。)
            生徒会担当教諭を中心に、定義・プランづくり
 
 1月 8日     クラス担任会議
           (生徒会担当による模擬ディベートを行い、MD方式の 説明)
 1月17日     代議・文化合同委員会で、執行部生徒が各委員にMD方式とテーマを説明(生徒による模擬ディベートと解説)
 1月24日     1年生LHRで討論会選手・役員決定
    同       職員会議で要項の検討(模擬ディベートを行う)
 1月27・28日  文化委員会による、各テーマの資料づくり
 1月31日     教職員による模擬討論会
           (小体育館に1・2年生全員を集める。)
 2月 7日      クラス内模擬討論会
           (LHRを6限目にし、課外の時間と2限続きで行う)
 2月10日      教員対象審判講習会
 2月12・13日   課外カットで、討論会準備(他クラスとの練習試合等)
           (途中生徒会新聞を発行し、意欲をもり立てた)
   13日      司会・計時講習会(生徒対象)
   14日      大会 (丸岡・大野・金津高校からの学校訪問
                NHK・福井・朝日・中日・毎日の各紙からの取材)
 2月25日     金津高校訪問(LHRにおけるディベート大会)
 3月22日     JDA日本語ディベート大会参加・一般の部で優勝
 
 
 
 
 
4.実施における留意点
 
 
1 生徒に対する意欲づけ
 
  生徒会主催にする以上、生徒が「やろう」と言ってくれないと話にならない。ただ、生徒(特に執行部の生徒には)この意義は分かってもらえるのではないかと思う。{教員よりはわかってくれるかもしれない}
 それでも無理だという時には、
  ア) 受験ネタでのせる
    大学入試・就職試験等で、いかに必要な能力であって、それを企画できることの    すばらしさを訴える。
  イ) 後期生徒会の取り組むべき課題の解決方法として
     校則改正・自販機設置等などとからめて、
 
2 全校教職員の協力を仰ぐ。
 
  生徒会主催とはいえ、全校教職員の協力がなければ、この行事は成功しない。
  しかし、ディベート教育の必要性は、どの教師も感じているのではないだろう か?そういった先生方を中心に少しずつ協力体制を整えていけば、可能であると考える。多くの先生に多大な負担をお願いする関係上、全校職員が協力してくだされば、この企画はほぼ成功に終わるだろう。そのための根回しとして
 
たとえば、
ア)進路指導室とのタイアップ(これはあんまり露骨にやりすぎると、「試験のためのディベートか」と批判されてしまうが・・・)
 
・進学校では、国公立大学で後期試験が本格化し、面接小論文対策を検討している学校は多いはず。しかし、現実的には付け焼き刃的指導しかできていないのが現状。このような大会を催すことで、論理構成力・人前で話すことの訓練等多大な効果が期待できる。推薦入試・就職試験では必須とされている面接・作文対策にももってこいである。
 
という意見を展開し、進路指導部とタイアップする。
 
 
イ)指導部とのタイアップ
 
  テーマを「△△高校において、○○を認めるべきである」是か非か
      
  ○○の中身は、@アルバイト A原付免許 B茶髪・ピアスCカラオケボッ  
  クスD自動販売機の設置など、何でもよい。また、「○○を廃止すべきである」と  して、@課外補習  A制服  B部活動   としてもよい。
  とにかく生徒が疑問に思っていることについて、考えるきっかけにする、ということで企画すれば、協力してくれるのでは?   
   後期執行部の仕事は、校則問題について考えたり、学校生活の不満について考えたりすることが多い。生徒総会等でなかなか意見が出にくい昨今、ディベートで考えさせたり、それが無理ならディベート方式によるパネルディスカッションとして、全校生徒の前で代表者が討論する、とかでもよい。
 
ウ)保健部とのタイアップ
 
  同様に、テーマを保健関係のテーマにすることで、保健部とのタイアップを  はかる。「校内の清掃は業者に委託するべきである」「校内に自動販売機を設置するべきである」などが考えられる。若狭東高校では先日「高校生の喫  煙」をテーマにして、パネルディベートが行われたようだ。
 
エ)図書室とのタイアップ
 
  図書室利用者が激減している中、ディベート準備期間は本校の図書室は大忙しである。新聞記事の問い合わせ、「こんな資料を探しているのだが・・・」といった質問など、担当の先生を手を煩わせることになるが、「図書管理用の推進」のためにはきっと協力してくださるであろう。
 
オ)人権委員会とのタイアップ
 
  人権週間になると作文を書かせるとか、いうことをLTでさせることなんかもあるが、それよりはディベートを。外国人差別の問題で「外国人にも公務員受験資格を与えるべし」女性差別で「ミスコンテストを禁止すべし」等、これをきっかけに人権問題について考えると言えば、きっと協力してくださる。
 
 
 
カ)各教科とのタイアップ
  ディベートの論題は多岐なものにわたっている。(小論文と同様)そこで、授業内容と絡めることで、各教科の先生の協力を仰ぐ。「喫煙」等の時には保健体育、あと「夫婦別姓」「介護保険」等は家庭の分野である。環境問題は、理科、国語や社会(公民は特に)は当然、それ以外でも多くの教科内容と密接に関わっているものが多い。(だから、授業でディベートを実践されている先生は最近急激に増えてきている。)その先生方に協力をあおげば、きっと快くお引き受けくださるだろう。
 
キ)若手教員の結集(何歳までを若手というかは?)
 
  本校でも模擬討論会は、全員25歳までの教諭・実習助手の先生の手によっ  て行われた。(指導部長らも審査・公表・司会の役を引き受けてくださった  が・・・)。若手が動けば学校は動くのではないでしょうか?いつも受け身でいることが多い生徒たちに対して歯がゆく思っている先生は多いはず。
 
 
 等のように、いろいろと方策はあると思うが、肝心なのは管理職や部長級からのトップダウンではなく、中堅・若手教員からのボトムアップによって協力を仰いでいくことが大切なのではないか、ということである。基本は生徒会主催、「生徒のために」というときに、それを支えるのは我々生徒会担当。そんな企画を提案するときに校長から「これをやりなさい」では、ちょっと意欲がそがれると思いませんか?
 
 
 
3 ルール(形式)・テーマ、は学校の実状に合った形で。
 
 ディベートにはいろいろなフォーマットがあります。甲子園ルールのように、試合規則を厳格に決めてあるものから、自由討論を取り入れたディスカッション形式のものまで、いろいろです。生徒のレベル、目的に併せてルールは決めていけばよいのではないかと思います。
 
本校では、1・2年生のほぼ全員が参加するため、ディベート甲子園で使われているルールをそのまま採用することは難しいとかんがえて、金沢におけるディベート講習会でお世話になった講師の先生にeーmaleでご指導を仰ぎながら、生徒と共にルールを作成した。
 ルールのベースはディベート甲子園のものである。そのルールからの変更点は
 1 5人1チーム 
 2 立論・反駁の時間を削減 
 3 各ステージごとに作戦タイムを取り入れる
 4 最終弁論を付け加える。
 5 定義・プランはあらかじめ決めておく
 6 M・DMとも、2つまで。
 
 
 
・ テーマについて
 
 テーマは先ほどのものとか、いろいろある。生徒会と教員で決めれば?
 その他の論題 「我が国は高校を義務教育化するべきである」
        「大学入試センターは成績を本人に公表すべきである」
        「選択的夫婦別姓制度を容認すべきである」
        「医師に癌告知を義務づけるべきである」
   本校の論題 平成8年度
         1) 消費税を廃止すべし
        2) 在日米軍は日本から撤退すべし
        3) 日本の学校は週5日制を導入すべし
        平成7年度「もんじゅは永久凍結すべきである」
              「死刑制度は廃止すべきである」
              「日本人の朝食はご飯がよいか、パンがよいか」
           6年度「脳死状態における臓器移植を容認すべきである」
              「日本人の便器は洋式がよいか、和式がよいか」
              「これ以上の原発の増設は凍結すべきである」
 
・審判について
 
 当日出張等の教員を除く全員が審判を行う(担任は1回・それ以外は2回OR3回)ため、MD方式を全教員に分かってもらう必要がある。そのために、今年は3つの段階を踏んだ。
1 クラス担任会議 2 教員による模擬討論 3 審判講習会(全教職員)
1では、まず担任に対して模擬ディベートを見せ、ルールの概略を理解してもらった。そして、不都合な点を指摘してもらい、ルールの改訂を行った。
2では、若手教員を10名つのり、体育館における模擬ディベートを行ってもらった。生徒会担当で作った台本をベースに、討論の概略を生徒向けに説明すると同時に教員にも概略をつかんでもらった。
3では、ディべート甲子園の中学校決勝の記録をもとに台本を作成し、フローシートの書き方、ジャッジの仕方、コメントの仕方を説明した。
 
 
3資料の収集について
 700人近くの生徒が、一度に資料を収集する方法は皆無に等しい。そこで、本校では次の3つのステップを取った。
1 執行部による収集 2 文化委員による編集 3 クラス生徒による再収集
1 まず執行部の生徒を中心に、冬休みを使って資料の収集に努めた。そして「こういう資料がないか?」というものを、教員がインターネット等を使って収集した。
2 集めた資料をもとに、各クラスの文化委員を3つに分けテーマごとにクラスに分ける資料を作らせた。
3 文化委員による資料を各クラス4部づつ渡すことで、クラスでの基礎資料とした。
 この資料を基に、さらに必要な資料を自分たちで図書館等を利用して収集した。
 文献のコピーについては、生徒会室のコピー機を無料で使わせている。
 
4.ワークシートの準備
 やはり何らかのワークシートはあった方が、準備はしやすいようである。立論用シート・反駁用シートを準備した。そこで、予想される相手側の立論や、反駁を考えることで、複眼的な見方を養えるのではないかと考える。
 
5.本校における今後の課題
 
 この討論会によって、全校生徒が「ディベートを経験した」ことの意義は大きいと思う。ただし、果たしてレベルの高いものであったかは全く別である。このディベートのレベルの向上に向けて、昨年の3月にディベート同好会を設立した。底辺を拡大しつつ、一方で質の高いディベート教育を行う。そして、例えば他校との試合を文化祭や春の文化部総合発表会で一般生徒や教員に見せることで、「質の高いディベートとはどういうものか」を肌で触れさせる機会を持てないかと考えたからである。
 ただし、現在の所まだ、他校との試合を全校生徒の前で展開すると言うことには至っていない。なんとか、この春に行われる発表会でそれができないかと考える。
 昨年度のJDA大会の優勝・二年連続の甲子園予選の優勝、そして今年、開成等の超進学校を撃破しての、BEST8進出によって、「ディベート」という言葉が本校生に違和感無く使われることとなっている。と同時に、教員間でもディベートに対する理解が徐々に深まっていき、協力していただけるようになってきたことは、喜ばしい限りである。
 
 
           平成9年度 討論会 要綱
 
 
   目的: 以下の3つの能力の育成を主目的とする。                        
          相手の意見を正確に理解し、分析する能力。
          論理的発言内容を組み立てる能力。
          チームとしての意見を分かりやすく表現する能力。
 
        主目的とする能力の育成を通じて、以下のことを副目的とする。
        ・必要な資料を探索し、それを活用できる情報活用力を養う。
        ・テーマに関する学習を通じて社会的事情について関心を持つ。
        ・異なる立場の意見についても検討できる複眼的思考力を養う。
        ・主体的な自分なりの意見を持てるようにする。
 
   日時:  1998年 2月13日 (金) 2限目終了後
 
   会場:  1号館、2号館の教室
 
 対抗形式:  全学年混合
 
チーム編成:  ・各クラス1〜3のテーマにつき肯定、否定側各1チーム、計6チーム。        
          ・1チーム5人編成。(その他の生徒は当日、役員として参加してもらう。又、試合の補佐。)
 
 当日役員:  第一論題のみ審判員3名(教員+生徒2名)
        その他の論題は教員2名による審判
        司会・計時各1名づつ(生徒)
 
   判定:   「メリットとデメリットのどちらが大きかったか」 によって決定される。
        ( 反駁において、 それぞれ相手にメリットやデメリットを攻撃されるが、 その結果、 立論で主張したメリットの重要性やデ         メリットの深刻性が消えたり、 小さくなる。 後に残ったメリットとデメリットを比べて、 大きい方を勝ちとする。 )
   表彰:   クラスの合計勝数で行う。
 
            6勝0敗 → 金賞
            5勝1敗 → 銀賞
            4勝2敗 → 銅賞
 
   形式: 《形式》
 
       1 肯定側立論   …3分。
         ・内容 定義、プラン、メリット2点
                   (どのように生じるか、どれほど重要か)
       2 作戦タイム   …否定側1分。
         なお、この規定された作戦タイムとは別に、合計5回分(1回30秒)         のタイムも連続してとれる
       3 否定側質問   …2分。
         立論者に発言内容の確認
       4 否定側立論   …3分。
 
      5 作戦タイム   …肯定側1分。
       6 肯定側質問   …2分。
       7 作戦タイム   …1分
       8 否定側第1反駁 …3分
                相手の議論の間違いを証明する
       9 作戦タイム   …2分
       10 肯定側第1反駁 …3分
                相手の議論の間違いを証明し、自分の議論の正しさを証明する。
       11 作戦タイム   …1分
       12 否定側第2反駁 …3分
                  相手の議論の間違いを証明し、自分の議論の正しさを証明する。
       13 作戦タイム   …1分
       14 肯定側第2反駁 …3分
                  相手の議論の間違いを証明し、自分の議論の正しさを証明する。
       15 作戦タイム   …1分
       16 否定側最終反駁 …4分
                  今までの議論の流れをまとめる。
       17 肯定側最終弁論 …4分
                  今までの議論の流れをまとめる。
       18 講評の準備時間 …10分程度。別室で審議を行う
       19 判定/講評   …10分。



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