雪山童子
(せっせんどうじ
) 関連語句 帝釈天。不自惜身命。 釈尊が過去世で菩薩行を修行していた時の名で、雪山婆羅門・雪山大士ともいう。『涅槃経』巻十四・聖行品には次のように説かれている。雪山(雪のある山の意で、主にヒマラヤ山脈を指す)で一童子が菩薩の修行をしていた時に、帝釈天が童子を試みようとして羅刹(鬼)に化身して童子のもとに現われ、過去仏の説いた偈を「諸行無常・是生滅法」と半分だけ唱えた。これを聞いた童子は喜んで、ぜひ残りの半偈を説いてくれるよう乞うたが、羅刹は「飢えのために心乱れて説けない。人の血肉を食べれば説くことができる」と答えたので、童子は半偈を聞いたならば我が身を捨てて羅刹に食せしめようと約束した。すると羅刹は「生滅滅已・寂滅為楽」の後半の偈を唱え、それを聞き終えた童子は所々に偈を書きつけた後に、約束通り高い樹に登り樹上から身を投じたところ、羅刹は帝釈天の姿に戻って童子の体を受けとめ、その不惜身命の姿勢を讃歎して未来成仏を保証して姿を消したという。この雪山童子は後の釈迦牟尼仏であり、法隆寺の玉虫厨子の施身問偈図はこの話を描いたものである。不惜身命の求道心の理想として『妙一尼御前御返事』〔20863〕等、御書の中に数多く言及されている。 |