新潟県におけるノジコの標識記録と生息分布域との関係

                                渡辺 央

 ノジコは東北から中部地方にかけて生息しているホオジロ科の小鳥で、現在のところ繁殖が知られているのは世界で日本だけである。その意味では世界的にも重要な地位を占めるが、その日本における繁殖分布や渡りの様相はこれまでほとんど調査されていない。
 その中で新潟県はノジコの生息密度が高い地域といわれており、事実、秋期における標識調査の結果をみても、1990年から1999年までの新潟県におけるノジコの標識数は全国の44%を占めている。また、新潟県の中でも生息数が多いといわれる魚沼地方では、ノジコがホオジロ、ヒヨドリ等と並んで優占度上位5種に含まれる地域も少なくない。新潟県野鳥愛護会は、県内におけるノジコの分布を明らかにするため、今年度から2年間かけてノジコの分布調査を計画し、今回その1年目の結果を中間報告としてまとめた。
←ノジコが繁殖している調査地

 それによると各地域の生息密度(個体数/q)は、上越頸城地域2.7羽、十日町魚沼地域1.5羽、長岡刈羽地域3.3羽、三条南蒲地域1.3羽、新津東蒲地域0.4羽、新発田北蒲地域0.1羽、村上岩船地域0.4羽であった。これまで新潟県におけるノジコの生息分布は県下一様ではなく、南部の上越地方から中部の中越地方にかけて多く、北部の下越地方では少ないか、地域によっては生息しない地域も多いといわれてきた。それが今回の調査によって初めてその傾向が具体的に明らかにされた。また日本標識協会新潟グループでも県内における分布と渡りの様相を知るため、県内各地の標識結果を持ち寄り検討が加えられた。
 標識調査は各地域によってそれぞれ調査内容に差があるため一律の比較は難しいが、秋期の標識調査をみる限り新潟市の海岸林などでも標識されているものの、標識数が多いのは中越地方の長岡市信濃川河川敷や柏崎市悪田、下越地方の佐潟や福島潟などのヨシ原であった。中でも長岡市の信濃川河川敷で標識数が多かった点は、繁殖期の生息密度が高い地域との関係も考えられるが、今のところ秋期の渡りに際しては県内のヨシ原を広く利用するのではないかと思われる。今回は生息地が局地的とされながら、日本の繁殖種の中ではあまり注目されてこなかったノジコをとりあげ、新潟県における生息状況と併せて秋期の渡りの様相を標識調査から報告したい。

写真提供:渡辺央

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