「竹ボウキ」

 

 当神明には、どの集落にも竹薮がある。

 今は、どの集落でも山も藪も拓かれてきた。当然、竹や雑木では経済的な足しにはならないことからである。

 また、昔と違って、どの家でもうっとうしいのは時代に合わず嫌われる。特に若い者は、ただでさえマンションでの別居へ傾こうとするとき、玄関先や窓辺に枝先が被っていては苦痛であろう。

 我々の年代になると、冬は別として夏の炎天下では、涼しさだけだなく長閑ささえ感じるものであるのだが・・・

 

 この竹薮、所有者も管理にはかなり苦労をしている。近年は雪国といわれながら、ズーと大雪はなかった。しかし、2001年の幕開けは15年ぶりの大雪に見舞われた。

 どこの家でも、久しぶりの屋根雪下ろしにかなりの労力を費やした。不景気といわれながら、スコップやママさんダンプさらに長靴が品切れとなった。わたしも、アルミのスコップを2店目で手に入れた。

 娘も長靴が要るといって、ようやく手に入れたとのこと。値段は、9,000円といっていたが、われわれの世代では長靴が9,000円とは間違いのように感じて仕方ない。

 

さて、その大雪の中での竹であるが、チョウド稲穂を大きくしたようなもので、目いっぱいにタワミ、大地に畳まれる程に背をひくくし、まるで強弓が限界まで引かれたようなものである。

 そして、その限界を超えたら花火が炸裂したような音を発して落ち込む。

 さらに、隣あう竹も引っ張られるように次々と折れていく。雪が降っている最中は、手の施しようもなく、ただただ止むことを待つのみである。電線を切断したり道路を遮断したりしたら近所中から大不評をかうこととなる。

 

春先は、まず雪での倒伏した竹を始末することが最初の仕事となる。

この倒伏した竹は、髪が絡んだようで非常に面倒である。また、切り出しても裂けてしまっているので、その使い道もママならない。風の無い日を見計らって野焼きするだけである。

 

竹の使い道は、仙人堂の「竹炭づくり」の項でも出てくるが、なかなか重宝である。人間との長い付き合いのなか、これからも幅広く役立ってくれることであろう。

 

そこで今回は、野焼きするような小枝から、庭を掃く“竹ボウキ”を作ろうと、思いたったものである。見てくれが悪かったり使い勝手悪かったりしても、手塩にかけたホウキなら庭を掃くにも苦にならないだろう。


                                  仙人堂住人 佐々木 薫

  
作り方

材料

  芯(持ち手)の竹         1メートルくらい × 1本

穂先につかう枝(孟宗竹の上部)  1本分

 鉄線(#15#20               2メートル

1  芯の竹に小枝を巻くので、グラグラ動かないように、先端部にストッパーの用足しにする目釘を刺す
2  穂先の枝  長い(上に包む方) 1メートル × 24〜26本
                 60cm  × 60〜80本

3  最初に芯の竹に短い穂先を芯に10cmくらい重ね、包むように巻き、動かないようにしっかりと鉄線で括る。このときの作業がしっかりしていないと、グラグラして使い物にならないので、確実に作業をすることが肝要。穂先は、いずれも内側に向けて巻くこと。
4

  3の束の上に長い穂先を、先に巻いた穂先と揃えて巻きつけるように包み、鉄線で括りつける。シッカリ締め付けて鉄線を括ることがポイント。

  

 

竹は・・・

日本中に竹があるという。

孟宗竹は温暖な春夏に養分を吸収し、寒い季節になると身を引き締めるように成竹となる。

 

このあたりは、竹薮がどこにでもあるが、まず孟宗竹である。

竹肉が厚く、節間も近い。重いし加工もし辛い。

これに比して、真竹(まだけ)はひ弱い感じで加工竹向きである。孟宗竹より重宝されるが、ひ弱である。特に、真竹の藪に孟宗竹が進入してくると、しばらくで真竹は絶えてしまう。

 

また、身近な竹に不思議なことがある。

めったに巡り会うことは無いが、花が咲くことが在る。細かい稲穂のようである。

80年に一度らしい。

そして、この花が咲くとまもなく枯れていく。そして、その竹薮も絶えていく。