「ヌイゴほうき」

 

 終戦間もない頃、私は小学校6年生であった。

当時、工作の時間に“ヌイゴほうき”の作りを習った。

今想うと出来はともかく、当時の歳でよくやったものである。

時代の差である、いまどきの同年代ではどうだろうか・・・

お陰で、その頃わが家のホウキは、すべてわたしの作ったもので用足しをしていた。

 

先般、福井市で農業を営む姉を訪ねた。ヒョンナことから“ヌイゴほうき”を作ることとなり、姉の協力を得て50年ぶりに挑戦してみた。

 

あらためて認識したが、近年のワラは昔のワラと随分と違う。

まず、昔はワラがズーと長かった。そして、ヌイゴ(穂先)も当然に長かった。

さらに、ワラそのものが、もっとシナヤカダッタような気がする。

結局は、倒伏の防止のため、あるいは大粒化のため改良を重ねた結果、ワラの背丈を抑えさらに相当に太くなった。

このたびの、“ヌイゴほうき”を作るにあたり、まことに作業のしにくいこととなってきた。

 

このため、本来なら名前のとおり、ワラからヌイゴだけを抜き取って束ねていくのだが、それだけの丈がないのでワラをつけたままで束ねることとなった。

結果は“ヌイゴほうき”ならず“ワラほうき”である。

 

我々が物心ついた頃からここ数年来、生活様式は激変した。“ほうき”の類は電気掃除機に、ソロバンは卓上計算機にかわった。

すっかり文明社会に浸っていると、ややもすると昔から伝えられていた貴重なワラ文化を忘れてしまう危険がある。

これからも、技術も科学も一層生活に浸透してくると思われるが、ワラの編む・綯う()・包むの文化は正しく伝えていくべきものと強く感じている。

 

これを機に、先人たちがたぶん苦労に苦労を重ね、ようやくこの形をあみ出したその尊さと、それを営々と伝えてきたことに大きな敬意を感じ、さらに気を引き締め、作業をしなければならないと肝に銘じているところです。

 

仙人堂住人 山田 武治

 

材料

  ワラの(たば)      10束

 麻縄(1mm)    5メートル

  芯にする棒切れ   20ミリ丸 × 250ミリ

ナイロン紐     4ミリ × 2メートル

 

 

 1 ワラを、穂先から50cmくらいで切る。

 

2 1のワラを、太さ1.3cmくらいを束として、10束に分ける。

 

3 2の束を穂先から15cmのところで、ヌイゴを堅く巻きつける。

 

4 3の束を、穂先が平らになるように束ね、芯の丸棒を入れて(掃きやすいように加減する)堅く括る。

 

5 穂先の乱れや全体のネジレを調整して、完成としたい。