中川一政


巨匠 中川一政    山崎谷間

 

「私の考える画家はまず生きていなければならぬ」

「私の考える美術はとにかく生きて脈打っていなければならぬ」

「鼓動が打っていなければならぬ」

画家中川一政の言葉である。

父は金沢、母は松任出身である。氏は晩年を神奈川県真鶴町に住まいした。真鶴町松任市に記念美術館がある。私は金沢方面へ出かけるとき、時間があれば必ず立ち寄ることにしている。画伯の絵とか書から受ける印象は四角い顔の古武士的なイメージ、あるいは宗方志功のようなイメージを持っていたが、NHKの日曜美術館に登場した氏の顔はまさに公達そのもののような端麗な面立ちであった。以外であった。そのビデオテープは松任市の記念美術館にある。

同氏のテープはその他に十巻ほどある。私は記念館に立ち寄って、そのテープをみるのが好きである。絵が描けなくなるとそのテープを見たい気持ちにかられる。それをみても氏の技量に近づけるなどとは決して思わないけれど、なんとなく勇気を与えていただけるのだ。私も絵を始めて十五年を迎えるが、ようやく絵の厚み、薄みが分かりかけてきたように思える。

生意気にも人様の絵をみて、あーだこーだとのたまわっている。過去に描いた絵を見て恥ずかしい思いをすることがあるが、これを進歩と言うにはあまりにも不遜であろうと思う。

今描いている絵を来年見たとき、同じように

恥ずかしく思うかも知れない。今はただ、生涯一点でよいから、残して恥ずかしくない絵を描きたいと願っている。そして、中川一政のような絵を描きたいと、無理を承知で願っている。