藤田一郎 川柳の世界へ ようこそ

平成4年9月ー平成5年6月までの中から

○ ひたむきに生きた男の美学聞く

○ 自分史に悔なし変化球がない

○ 定年で胸の日記を消しました

○ サラリーマン終えて往く道迷い道

○ 日記には書けぬページもありました

○ 肩の荷を降ろして妻の拍手聞く

○ がむしゃらに生きたあなたの背が丸い

○ 夫婦茶碗いくつも割って平和です

○ 家計簿にはさざ波もなし宝くじ

○ 何か言いたそうに揚羽蝶が来る

○ 幸せが一つになったシルエット

平成6年前半の作品からご紹介します  

○ 癇癪を起こしてからのタイミング   

○ サラリーマン美田を残す位置にない

○ 自分史に少うし泥を混ぜてみる

○ 共稼ぎして中流の舟をこぐ 

○ 度忘れと短気仲良く日向ぼこ

○ 新築の居心地弥陀に聞いてみる

○ 人生の無駄が効いてる処世訓

○ 唯我独尊程にはなれぬ気の弱さ

○ お賽銭小吉程の祈願する

○ テレビ診断呆けの兆しが二つ合う

○ 面影が遠い女に似て揺れる

○ 腹の底知らぬが握手しておこう

○ 夢芝居そこまで変わる女形

○ 旅にでてシナリオに無い薔薇を嗅ぐ

○ 蜂の巣に同居の秘密聞きました

○ 父権健在蔭で軍師が汗を拭く

○ 双方の言い分聞いてから迷い

○ 三十年オンナが下手な妻といる

今回は、氏がある新聞に載せた随筆をご紹介します

もぐらの戯言

家の中では極端にワンマンのくせに、一歩外へでると他人には気許り遣い、

交際を大事にし、よく遊びよく働く、そんな現役生活が五十年も続いた。

続いた裏には言いようもない忍耐を強いられた蔭の犠牲が存在した。

ワンマンへの気苦労・気疲れ・子育て・自分も職業婦人でありながら家事一切を

全面委譲され続けてきたのだから、並大抵のことではなかったろうと思う。

  糟糠の妻の心にある踏み絵

  キリトリ線歩いたこともある夫婦

  飲み込んだ言葉はマグニチュード六

判る。判る。全く遅きに失したが、現在は只々お詫びと悔恨の心境に徹している。

つもりで居る。

  よく折れた白墨でした半世紀

でも時々

  お家ではおしどり仮面脱ぐのです

  鬼よりは少し優しい妻と居る

ニンゲンであるから心情即行動とは結び付かない時もある。

機嫌の悪いときだってある。時偶の噴火は感情が生き物である限りお許し願わねば。

  妻 母 女 姑 お婆をこなしてる

立派!立派!とてもとても男には至難の限りである。

  空気のような妻が良いとはご無体な

いいえ、いいえ。とてもそんなことは申しません。こちらだって遅きに失した非を悔い

乍ら、三つになろうとする孫と一生懸命につき合ってやり、二所帯用の食料品調達

運転手を毎日努め、家の掃除・調理の介助等々励んでいるのであります。

  良妻賢母も少し疲れて来たようだ

ムリもない。長かったからなア。加えて二所帯の気苦労が加重されたからなあ。

が然し

  愚痴がチト多い賢母としておこう

これ亦、偽らざる関白殿の心境であります。

そんなこと言うなら私にだって言い分がある。

  愚痴短気コンビの疲れどうと出た

寝込んでもらっては一大事!

  お互いの労わり合いがすれ違う

後では判るのだが。で、もぐらの人生、結局はこう言うことになるのかな?

  まアこんなものだナ妻と半世紀

いやいや!もう一つ加えておきます。

  終章に満足できる妻がある

平成6年後半の作品を紹介します

* 腹の底見えぬが握手しておこう

* 目から火が出たのにウロコだけ残る

* 初舞台踏んだ時から敵役

* 人生を諸行無常と知る余裕

* 大海の藻屑気ままに浮いてます

* 声落とす話じゃないだろに

* もうダメよもう一本の土俵際

* ライバルの握手意外な暖かさ

* スケジュール通り歯科医科泌尿器科

* 糟糠の妻です田舎育ちです

* 夕焼けが男挽歌の背を映す
 
* フルムーン何か忘れているでしょう

* 泥水を黙って飲んでくれた友

* 宇宙から三途の川が見えますか

* おしどりの足跡きっとまん丸だ

* 青い空愚痴は忘れることにする

* 巣作りが下手な女に惚れられた

* 満月が羞じかんでいる露天風呂

* 夫婦善哉愚痴と短気で折り返し

* 再会の女一人で居るという


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