an opinion
絵はここからもらいました。

'98に感じたこと



 さて、とりあえず私も'98のまとめのようなものを残しておきたいと思ったので書き留めておくことにしました。私が98年に感じたことは、たくさんある中で一つ挙げるとすれば、「組織の言うことは当てにならない」ということです。組織と個人というのは日本社会では良く取り沙汰されることだし殊更言うほどのことでもない、また、一昨年から自分の立場が変わったことで考えることになったからとも言えますが、昨年ほど組織の言うことが当てにならないと感じた年はなかったと思います。政府、銀行、大蔵省、防衛庁は言うに及ばず、マスコミの報道、裁判所の判決、果てはダイエー、全日空&佐藤工業...。ま、どの事件も今に始まったことじゃないし、私が今ごろ気が付いただけなのでしょうけど、組織はほんとうに責任をとらないし、その所在さえはっきりさせない。これからは個人の発言以外は信じないことにしようと本気で思います。個人の発言は”個人”によるものであるなら、たとえ嘘であっても信じても良いような気がする。ま、人を見て決めることだけれども、騙されてもそれは個人と個人のコミュニケーションの結果だと思う(諦める?)ことができる。

 先に挙げた中で少しでも光明があったと感じたのは、寺西和史・仙台地裁判事補が組対法反対の集会で発言したことに対する「分限裁判」の話で、結果的には最高裁大法廷は「『積極的な政治運動』を禁止することは憲法に違反しない」という判断を示した、ということなのですが、たしか判決に当たった裁判官の内、かなりの数の裁判官が反対意見を述べたと聞いた。(マスコミのニュースでだけど!)過半数に満たないので退けられはしたが、少しは良識ある裁判官もいるのかと内心少しほっとしました。(ウラをとってないので正確にはなにも言えないのだけど!)
 神坂直樹さんの任官拒否問題のこともあり(この人には直接会って話を聞く機会があったが、ホントにひどい話)、法曹界も全く信用できないと思ってはいたところでした。

 そして、もう一つ記しておきたい話は、小林よしのりの「戦争論」のことである。昨年10月30日にこの話題で「朝まで生テレビ」が放送された。これについては書こう書こうと思いつつ、機を逸してしまっていた。このときの放送で、初めて最初から終わりまでこの番組を見た!ちなみに参加者は小林よりのり(漫画家)、井尻 十勇(拓殖大学教授、拓殖大学日本文化研究所長)、姜 尚中(東京大学教授)、金 美齢(JET 日本語学校校長)、坂井三郎(著述業、元海軍中尉)、高野 孟(「インサイダ−」編集長)、辻元清美(衆議院議員・社会党)、涛川栄太(作家、新松下村塾塾長)、松井やより(ジャーナリスト)、宮崎 哲弥(評論家、中央大学講師)。印象に残ったのは姜さんのクールで的確な発言!ちょっとカッコイイ!!議論が白熱したときでも相変わらずクールなのでちょっとさみしくなることもあったけど。あとは宮崎さん。この人はわかってるね。あと、昔から応援していた辻本清美。社会党の議員という立場からは精いっぱい健闘していると思いました。立場は立場なんだからしかたないってかんじ。

 私は実は当のその本をまだ読んではいないので、文章を書く資格もないかも知れないが、番組から受けた印象を書くと、「戦争はいけない」という、戦後の日本人誰もが教わり、唯一信じられるもののように受けとめてきた”真理”も、実は社会体制によって受けた洗脳だったのかも知れない!、と、考えることもできる!、ということである。小林よしのりのすばらしい点は一貫して全ての定説を疑ってかかることだ。そして自分が”個人”の責任に置いて検証し咀嚼して表現していることだと思う。その結果従軍慰安婦問題ではちょっとどうかと思う展開にもなっていたけれども、ま、この「戦争論」も十分どうかと思う展開ではあるのだろうけど、日本人誰もが疑わなかった”真理”にまでそのメスを入れたことについては、「さすが」と賞賛を贈りたいと思う。私がここで言いたいことは、結局、戦争を体験した”個人”がその傷ましさを語り反戦を説くことに異論を唱える人は誰もいないと思う、けれども”組織的”に「戦争はいけない」と洗脳のように教えられることは実は信じられないかも知れない、ということなのだ(いや決して私は戦争を賛美はしませんよ)。

 それにしても少し残念だったのは、番組でのインターネット経由のアンケート結果で、戦争を否定しないという人が過半数を超えていたことだ。いやその事実が残念なのではない。以下は私の全くの推測だけれど、常識的に冷静に考えて、戦争肯定が過半数というのは信頼できるデータとは言いがたい。インターネット投票と言うことだが、これは小林よしのり信奉者がこぞってネット上で投票をした結果と見るのが妥当と思われるが、当の小林は徹底して常識を疑って、自分の目で、耳で、感覚で、そして頭脳で判断を下せと言っているのだと思うのだが、ここに投票した人たちは信奉する小林がそう言うからそうなのだ、という単なる追従しかできていないのではないかと感じられるからである。

                          ('99.1.14)




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