Music Column
小栗克裕ピアノリサイタル
絵はここからもらいました。

ピアノリサイタル
The pianoforte and the computer



 今日は宣伝です。来る'97年11月29日(土)、福井県立音楽堂「ハーモニーホールふくい」で小栗克裕、土田英介ピアノデュオリサイタルがあります。入場料は、前売り2,000円、当日2,500円です。くわしくはこちらをご覧下さい。

 で、宣伝だけではおもしろくないので、昨年12月18日に行われた「小栗克裕ピアノリサイタル」のことを書くと、そもそもこの人は作曲家で、単純にピアノソナタとかを弾くわけではなく、オーケストラ曲やピアノ協奏曲といった本来大勢の楽器で演奏する曲を、自分で勝手にアレンジしてピアノ一人で弾いて見せてくれるというコンサートだったのです。曲目は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、これをピアノだけで弾くんです。すごいです!!第一部の最後は、ワーグナーのニュールンベルグのマイスタージンガー、前奏曲、あのワーグナーもピアノだけで、それも一人で、複数の登場人物のメロディーが行き交う後半の盛り上がる部分も、指技巧みに一人で弾いてしまいます!!

 なかなか刺激的なコンサートでした。二部ではラプソディー・イン・ブルーなんかも。
そして、もうひとつこのコンサートで非常に興味深いイベントがあったのです。それは、コンピューターミュージックと生身の人間の共演です。どういう内容かというと、コンピューターのシーケンサーで作って、電子音源で鳴らされる伴奏に合わせてピアノソロを弾くという試みです。しかしそれもハンパな曲ではありません。チャイコのピアノコンチェルト1番です!!そうです、彼は第一部でこの曲をピアノ単独で弾いたあと、同じ曲で第二部ではコンピューターと共演したのです。まあこのコンピューター伴奏は別の人−この演奏会の企画者−が作ったのですが、それもニフティーのFMIDIでいろいろ情報交換している人で、当日もFMIDIの人たちが”オフ会”とばかりに集まってました。

 さてこの人と機械の共演ですが、いまの機械では当然、機械の方が加減をして人に合わせてくれるってことはないので、人が機械に合わせるという不自由さはたしかにありました。オケを鳴らすタイミングも、アタマの部分はいいですが、途中、ピアノだけの部分がしばらくあって、途中からオケが合流して入ってくるっていうような部分ではもう、同期のしようがないので、コンピューターのオペレーターがピアノ演奏を聴いていて、タイミングを見計らってコンピューターを再びスタートさせるという操作が必要で、このときに、タイミングがずれないかというのが最大の問題点だったりしました。それでも何回かの練習の末、バッチリ合うようにはなりましたが、操作をした人は「心臓が飛び出すぐらい緊張した」と言ってました!

 肝心の演奏そのものについてですが、まあ、おおむね安心して聞いていられるものでした。十分にすばらしい演奏を聴くことができたと思います。ただ、問題点は、機材的なことになるのですが、オケを鳴らすスピーカーがチャチだと言うことです。これは実は致命的だったりします。だって、生の楽器に機械が迫ろうとしていて、その演奏テクニックやアンサンブルについてはコンピューターのいわゆるプログラミング(打ち込み操作)を検討したり、音源を工夫すれば解決できることですが、最終的に聴き劣りのしない音が出せるかどうかというのは再生装置にかかって来るからです。会場にはPA用のスピーカーが備え付けてはありましたが、機種、ワット数は見ていませんが、これが、生のピアノに負けないくらいの音量を出そうとすると、もう音が歪む寸前のようになってしったのです。まあソロのピアノに見合う程度のオーケストラ全員分の音なわけですからピアノ単体よりもかなり大きな音が出せる余裕が必要ということでしかたない気もしますが。ですから、逆にすこしピアノが音量を落とし気味で演奏しようということになってしまいました。生で楽器が鳴ることと、それを再生装置で鳴らすことにはまだまだこんなに隔たりがあるんだなぁと言うことを感じ、うれしいような残念なようなおもいでした。まあライブ・アンダー・ザ・スカイに使ってたくらいのPA機材揃えれば平気かもしれないけど。

 というわけで、宣伝モードにもどると、この演奏会を今年もやろうと言うわけで、midiとの共演はありませんが、今度はピアノ2台で、ベートーベンの「運命」、ブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」、ドヴォルザーク「スラブ舞曲」より、ラフマニノフ「組曲第二番」等をやります。どうかみなさん聴きに来て下さい。

 チケットをプレゼントしたいところですが、それはちょっとむずかしいので、メールを下さった方に、当日、前売り料金で入れるように致します。どうぞその旨お書きになってメールを下さい。


'97.9.29




takaya@mitene.or.jp