Music Column
絵はここからもらいました。

ジャコパス・トリビュートアルバム



 ジャコ・パストリアスの名前をこの夏3回耳にした。最初は大工仕事を一緒にやった某ベーシストとギタリストの会話でジャコパス・トリビュートアルバムというのが出ていることを聞いた。2回目は、大学時代に一緒にバンドをやってたベーシストの友人が、今ジャコパスの本を読んでいる、と言う話。「こいつやっぱり天才やぞぉ...」。3度目は知人からのメール、古いビデオを整理してたらジャコパスのビデオにカビが生えとったぁ、どーしよー...、今年は梅雨が明けなかったから...。

 で、アルバムはさっそく買ってきました。いわゆるトリビュートアルバムで、タイトルは「Who Loves You」、ジャコパス(ウェザーリポート)の名曲を、当代の名アーチスト達がカバーしているわけです。
 参加アーチストは(有名どころずらりです!)ランディ・ブレッカー、ビル・エヴァンス、ディヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカー、ボブ・ミンツァー、マイク・スターン、ハイラム・ブロック、ボブ・ジェームス、マーカス・ミラー、ウィル・リー、ヴィクター・ベイリー、ジョン・パティトゥッチ、マーク・イーガン、ジェームス・ジナス、スティーブ・ガット、ピーター・アースキンほか といったところ。(アルバムの宣伝文に掲載されているとおり)

 とはいえ、ジャコ・パストリアスは当時革新的なジャズミュージックを披露してくれたウェザーリポートというバンドで、やはり革新的なプレイを聞かせてくれたからこそ、ジャコ・パストリアスだったと実感できるので、このトリビュートアルバム全体について感じるのは「カバーはカバー」というに尽きます。革新的なプレイの、音色や雰囲気だけ似せて(似せてというのは参加ミュージシャンにはあまりに失礼ですが!)作っても、ジャコパスを偲ぶ、って気持ちにはなれませんね、正直言って。

 普段は曲名など気にせずCDを聞くので、初めてかけたときに2曲目を聞いてドキッとしました。僕がものすごく好きだった曲が入っていたのです。ウェザーリポートのアルバム「ヘヴィー・ウェザー」に入っている「お前のしるし(a remark you made)」です。これはジョー・ザヴィヌルがジャコパスのために作った曲ということでしたが、それだけにベースに美しいメロディーラインがあります。この曲を、トリビュートアルバムでは、ビル・エバンス(ts)、マイク・スターン(g)、ギル・ゴールドシュタイン(kb、accordion)、マーク・イーガン(b)、スティーブ・ガット(ds)、ドン・アライアス(perc)、マイケル・コリーナ(add kb)というメンバーで演ってます。マーク・イーガンという人はジャコの生徒らしく、ま、それなりにフレットレスできれいに弾いてます。前半のウェイン・ショーターのサックス、ジョー・ザヴィヌルのシンセの、メロディーなのかインプロヴィゼーションなのかわからいところを(当たり前だけど)ビル・エヴァンス、マイク・スターン、ギル・ゴールドシュタインが分けて担当しています。
 前半はまるっきりバラードなので、ま、それなりに美しく、普通にやってます。しかし問題は後半クライマックスのジョー・ザヴィヌルのシンセです。ここは前半美しくゆったりと進行させながら徐々に気分を高めて行き、やっと到達した高みにおいてジョーが最高に緊張感溢れるプレイを聞かせる場面です。さて、誰が、と思えば、マイク・スターンのギターが聞こえてきました....。しかし、結構マイクはリラックスしてゆったりしたフレーズなんか弾いてます...。うーん、それじゃあちょっと物足りないなぁ...。前半のバラード調から抜けないままで終わってしまいました。もっと弾きまくってくれればいいのに...。ここはミュージシャンがおもいっきり”自分”を出すところだと思うのに...。



 結果、オリジナルのウェザーリポートのバージョンを聞きたくなって8年ぶりくらいに「ヘビーウェザー」を引っぱり出して聞きました。うーん、やっぱりいい。(実は1曲目の「バードランド」が聞きたくて買ったアルバムなのですが、この曲ではジャコの天才的プレイが聞けます。いきなり最初のメロディーで変幻自在に操られるハーモニクス!!上の画像のページへ行くとそれだけでバードランドがMIDIファイルで聴くことができます。でもMIDIファイルからはジャコの天才的プレイは今一つわからないけれど)
 こちらも2曲目に入っている「お前のしるし」。クライマックスのジョーのシンセです。うん、久々に背筋にゾクゾクが走るくらいに緊張感溢れるジョーのインプロヴィゼーション。こいつ、ジャコのために書いたとかいいながら、実は自分のために書いたんじゃないのと思うくらいすばらしい。完成されたユニットで自分でやらんとする表現をそのまま形づくる、そうでないとこれだけ完成度の高い曲は作れない。図らずもジャコパストリビュートアルバムからジョー・ザヴィヌルの凄さを再認識、というか思い出させられてしまいました。

 と、トリビュートアルバムのことは良く思ってないみたいですが、これで結構聞いてるんです。この手のカバー曲ものって、ここはこうやれば、あるいはこうアレンジすればおもしろいかも!と、自分では出来もしないことでも想像をかき立てられるおもしろさがあります。
皆様も是非!御一聴あれ。

 折しも、9月24日はジャコの命日だったらしいのですが、それまでにアップしたかったのだけど...

                        98.10.24





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