My favorite disk

chick corea / return to forever



 海面から切り立った岩肌は険しく高台まで続いているが、そこからは湿った地面が現れ青く萌える草原が広がっている。紺碧の空の中をいくつかの点が動き、それは海に向かって寝転がっている僕の視界の中に突然大きくなって飛び込んでくる。  単純にアルバムジャケットの景色を拡大して描写したわけではなく、これは”カモメのジャケット”で有名なこのアルバムの中でも特に僕が好きな2曲目の「クリスタル・サイレンス」を聴くときのサウンドイメージと完全に一致した風景なのである。”静寂”なエレクトリックピアノの中に入ってくる突き抜けるような透明感のあるソプラノサックスの音は心の中を隅ずみまで洗い流してゆくばかりか恍惚感さえ感じさせてくれる。それはまさに海の見える丘で横になり時を忘れ去った頃に目の前を突然横切る”カモメ”であり、ハッとさせられる一瞬。これこそチックが希求した”永遠への回帰”なのだ、と僕は確信している。

リターン・トゥ・フォーエヴァー
/チック・コリア with リターン・トゥ・フォーエヴァー

実はこの原稿は大昔に、某地方新聞に掲載されたものです。でもこの思いは変わっていません。もう一度紹介したいと思い掲載しました。



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