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獅子の王国(六田登)

My favorite manga3



 もう始まってずいぶん過ぎてしまったけど、いま注目なのは、ビッグコミックスペリオールで始まった六田登の「シネマ」だ!その名の通り映画のことを扱った漫画だが、この作品はちょっと違う。主人公のサバニは非常にワイルドなキャラクターだが、右肩に近年流行りの小さいビデオカメラを常時縛り付けているのだ。機種はキヤノン製のminiDV機だと思われる!そして、街の中で、歩きながら、飯を食いながら、用を足しながら、パチンコをしながら、「元気があってたいへんよろしー!」と叫びながら”元気のあるもの”を手当たり次第に撮りまくっているのだ。今撮っているのは近所の暴力団爆風商会のケンカシーン。あちこちでまきおこるありとあらゆるケンカシーンを、殴られ、しょんべんをかけられながらも文字どおり体を張って撮り続けた!

 このサバニ、父が映画監督だったらしく、その父の遺言で、経営が傾いている”江の島名画館”を自分が撮ったフィルム(ビデオ)で救済してやるのだ、という意気込みでここへ乗り込んできた。江の島名画館では経営建て直しのためポルノを始めようとしていたが、サバニが撮った「爆風商会のケンカ」を上映して、なんと爆風商会から好評を得て、経営も建て直した、という話!(絶賛連載中)

 近年インターネットが日常化して、従来個人は受動的にしか情報を扱うことができず、大手資本から流される情報をただ受けるだけだった時代から、自分が欲する情報を能動的に受信し、さらには個人が簡単に情報を発信することができる時代が来た、とおおきく注目されているところだが、そんな時代に、新たに始まったマンガが小汚い映画館を舞台に家庭用ビデオカメラで映画を撮る話、ということに少なからぬショックを受けたが、よくよく思わされたのは、情報発信ができるようになった、なんて言わなくても、そもそもインターネットなんかなくてもやる気さえあればいくらでも情報なんか発信できるんだってことだ。折しも大学の映研がけっこう元気があると聞くし、実は私の近くにもつい先日映画を撮ろうという若者がいたし...問題は、撮る気があるかってことだ。多少なりともビデオに関わっている私には非常に刺激的な話だった!ま、ビデオに限らず”情報発信”のあらゆる形を考えてみたい。



 もう一つ気になるマンガは、ビッグコミックスピリッツの「IWAMAL」(玉井雪雄)だ。獣医のイワマルの活躍を描いて、現代のペットに対する考え方、ひいては自然環境に対してのあるべき接し方を考えさせてくれる。



 似た路線で、ビッグコミックオリジナルに「ケントの方舟」(作/毛利甚八・画/魚戸おさむ)というのがあった。残念ながらもう終わってしまったが、主人公の森野賢人はゴリラの研究をしているサル学者で新米の区議会議員で、東京の真ん中にある森を、野生のゴリラが棲む森にしようと考えるが、さまざまな要因で実現はしなかった。その理想を語る姿がいまの世の中に必要だと思わされることと、人間の生態をゴリラのそれと比較して描いて非常に興味深かった。                    ('98.5.19)




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