自治大学校卒業生同期ホームページ管理者各位
 お元気でご活躍のことと存じます。自治大学校麻布校舎の研修も3月14日までとなりました。3月24日からはいよいよ立川校舎での勤務となります。麻布校舎から最後のメールをお送りします。添付ファイルの原稿を『校友だよりNo.78』(平成15年3月)に掲載しました。貴同期ホームページでの掲載等でご活用いただければ幸いです。
 立川校舎にも是非お出かけください。
 では益々のご活躍を期待しています。
平成15年3月10日
自治大学校 副校長 山谷成夫
〒190-8581東京都立川市緑町3591番地
TEL:042-540-4500
FAX:042-540-4510
Email:yamaya-s@soumu.go.jp
『校友だよりNo.78』(平成15年3月)掲載
自治大学校創立五〇年、立川校舎開校
 | 新たな半世紀への飛躍 |
自治大学校副校長 山谷成夫 
 校友会会員の皆さんこんにちは。
 自治大学校は、本年一〇月に創立五〇年を迎えます。昭和二八年七月に自治大学校設置法が制定(現在は総務省組織令(政令)で総務省の施設等機関として規定)され、一〇月に開校しました。現在の校舎は昭和三六年に、麗沢寮は昭和三四年に、洗心寮は昭和四六年にそれぞれ完成しました。
 開校や施設建設の当時の記録を読むと、自治庁や地方六団体等の関係者の、自治体職員の研修に対する並々ならぬ熱意が窺えます。
 以来五〇年、自治大学校は、自治体の幹部となる職員の研修機関として、約四万八千人の卒業生を輩出しています。この中には、知事になった方が九名います。現職の市町村長は、一八五名います(平成一二年三月現在)。
 自治大学校は、研修環境の充実を図るため、本年四月から立川に移転します。現在の麻布校舎での授業は三月一四日までとなります。
 四月一四日に立川校舎開校式・創立五〇年記念式典を実施し、新たな半世紀が始まります。
 卒業生の皆さんからは、「麻布校舎・寮が在るうちに訪れたい、同期会を行いたい」等とのご要望が多く寄せられました。学校当局としても、事後研修、見学、同期会等にできるだけ便宜を図りました。麻布・広尾で寝食を共にした仲間とのネットワークが卒業後も絶えることなく続き、自治大学校に一方ならぬ愛着を抱いていただいていることを、大変うれしく思います。
 皆さんが親しんだ麗沢寮・洗心寮という名称は新しい寄宿舎の名称に引き継ぎます。自治自律を旨とする自治会が主体となった旧来の良き寮運営を受け継ぎながら、バス・トイレ付き個室というプライバシーが確保された快適な居住環境を生かした寮運営が実現されるよう期待しています。
 自治大学校における研修課程・内容は、戦後の地方自治の進展と軌を一にし、否むしろ先取りし、常に見直されてきました。第一部・第二部・第三部という一般研修課程は昭和三〇年度以降、基本的には変わっていません。その後、主に女性職員を対象とする第一部、第二部の特別課程が設けられました。専門研修課程は、時代の要請に応じて適宜、新設・改廃されています。各課程の研修内容は、講義方式の授業に加えて、研修生が主体的に政策を考え、互いに議論し、結論を導くという演習方式の授業を充実させています。
 しかしながら、研修課程や内容の見直しは、施設設備に制約があったため、必ずしも十分なものであったとは言えません。
 来年度からは、施設規模が拡大し、教室や寄宿舎の収容定員が増加し、演習室・自主討議室が十分に確保されます。教室設備も向上します。したがって、これまでのように教室の後部席では板書が見えにくい、食堂や図書室でグループ討議をせざるをえない、というような不便を掛けることはありません。
 一般研修課程では従来、定員に制約があることから、都道府県・指定都市の職員を対象とするものと、市町村職員を対象とするものとに分けて実施してきました。しかし、都道府県職員と市町村職員が合同で研修を受け、相互に交流しながら、都道府県と市町村の連携についても考えることにより、さらに研修効果が高まるものと思われます。このような観点から、来年度は第一部特別と第二部特別を統合します。また、第一部と第三部(都道府県・指定都市コース)に中核市、特例市等の職員を積極的に受け入れます。将来的には、都道府県職員、市町村職員という区分は廃止すべきである、と思います。総務省の実施する国家公務員研修との連携も検討すべきでしょう。
 第二部では、公共政策、政策法務という選択制を導入し、政策立案演習や条例立案演習を行います。各課程とも今後は、可能な限り講義・演習ともに選択科目も増やし、個々の研修生のニーズに応じた科目を提供することが望まれます。さらに、少人数クラスにより、講師を交えた討議が十分にできるような演習運営を行います。危機管理演習では住民対応、マスコミ対応等のロールプレイイング(役割演技)も取り入れます。
 専門研修課程では、来年度から税務専門徴収事務コースを実施します。これは、税徴収事務の管理職員を対象として、実践的なマネジメント能力を養成するための研修です。全国税務協議会の協力を得て、講義と演習が一体となったカリキュラムとします。納税交渉等を想定したロールプレイイング等も取り入れます。
 今後は、徴税事務に限らず、例えば危機管理、行政評価、人材マネジメント等、全国の自治体が共通で直面している、その時々の行政課題の解決をテーマとしたコンパクトな二週間程度の研修課程を実施する必要があります。もちろん、内容は実践的で直ちに役立つものとし、講師と研修生が相互に研鑽し合うような運営が不可欠となります。
 自治大学校に限らず自治体職員の研修の目的は、いまだに学校教育と同じように捉えられることが多くあります。つまり、高度な知識を習得したり、新しい情報を理解したりすることが研修の目的であると考えている人が多いということです。高度な知識や新しい情報を身に付けていても、それが日々の仕事の中で行動として現れなければ、宝の持ち腐れです。研修の目的は、課題解決のために行動する能力(コンピテンシー)を身に付けることです。つまり、研修生が自治大学校への入校前に比べて、コンピテンシーをいかに高めて卒業していくか、という観点に立って研修カリキュラムを常に見直し、改善していかなければなりません。
 自治大学校は、皆さんによって培われた五〇年の歴史と伝統、そして自治体職員研修に関するノウハウの蓄積があります。しかし、単にそのことに甘んじていれば、自治大学校は施設が新しくなっても過去の遺物としてしか評価されないでしょう。
 地方分権改革、構造改革等の時代の要請に応じ、また、自治体職員に必要とされる能力や研修ニーズを見極めながら、自治大学校の研修を充実・強化していくべきだと思います。
 校友会会員の皆さんのご支援とご協力をお願いするとともに、ご活躍をお祈りします。
 本稿は、拙稿「最近の授業風景」『校友だよりNo.70』、 「自治大生の満足度と自治大研修の評価」『校友だよりNo.73』と合わせて3部作となるものです。