映画とノヴェライゼーション

映画は僅か2時間15分、観客を釘付けにするノンストップ・アクション・ムービーで、興奮して面白い反面、ストーリーに無理が感じられたり、ご都合主義だと思うような箇所もなきにしもあらずです。

もちろんここには1933年にジェットエンジンなんてないよ、とかジャングルの中でずだぼろになった熱気球なんて直せっこないとか、更にミイラが蘇りっこない、なんて野暮な指摘は含まれません。
その辺りは全て「おおらかな娯楽大作」「超A級のB級作品」と大目に見て、大いに楽しみましょう。

しかし、この映画の脚本がよく練られて居ると実感するのは、話の繋がりが悪かったり、どうしてそんな台詞が出たのか、理解に苦しむところが、(映画には描かれていないが)ソマーズ監督の脚本を元に書かれたノヴェライゼーションを読むと見事に解決することです。
映画を補うノヴェライゼーション、映画によって生気を吹き込まれるノヴェライゼーション...理想的な両者の関係がここにはあります。
もちろん全て読みながら思い出してにんまりできるところ、納得できるところばかり。
それを思いつくままに列記していきます。参考のために原文も付記、邪魔な方は試訳の方をどうぞ。

例のハム1のセルフ・パロディ、遺跡の円柱の将棋倒しのシーン 壁を破る奔流から逃げるアレックス

Not surprisingly, the lad lost the fight, and the pillar went tumbling toward the wall that bore the hieroglyph mirroring his fgather's tatto --- marinre's compass and falcon wings forming a pyramid with an eye in the middle ---and pillar collided wite that wall

────...少年が無駄な抵抗をやめたのも驚くことではなかった、おもむろに柱は壁に向かって倒れていった。その壁には彼の父の刺青と全く同じ文様が描かれていたのだ・・・中央に目のある羅針儀と鷹の翼で作られたピラミッドの文様・・・そして柱は壁を一撃した...

リックの素性はまだ闇に包まれています。ハムナプトラ1ではイリノイ州シカゴ出身とはっきり書かれていますが、2ではそれも怪しい。映画ではカイロで孤児の頃に刺青をされた言っていますが本では香港。しかしエジプト象形文字とカルトーシュは、どう考えても香港でいれられた刺青という説明にはそぐいません。やはり、カイロへの変更で正解でしょう。実はこのリックの刺青については、まだまだ細かい記述が出てきます。

・・when Ardeth Bay suddenly, dramatically, clutched him by the wrist, as if O'connell were the one wearing the Braqcelet of Anubis.
"What?" O'connell said, crossly.
"You are marked!" Ardeth Bay was staring at the pyramid-shaped tattoo with the eye of Horus, which O'connell had carried since childhood.

────突然アーデス・ベイは劇的な身振りで、まるでリックがアヌビスの腕輪をしているかのように彼の手首を掴んだ。
「何だ?」
「印がある!」アーデス・ベイはホルスの目のついたピラミッド型の刺青を凝視した。それはリックが子供の頃から入れられていたものだった。


Respectfully, even reverently, and with a spooky intensity, the warrior said, "Were I to say you, my friend, 'I am a stranger traveling from the east, seeking that which is lost... ' "
Without thinking, in a somewhat robotic fashion, O'connell said ----and heard himself saying, as if from a distance, "I would reply, 'I am a stranger traveling from the west. It is I whom you seek'"
"How do you know this?"
O'connell was slinging on the guns. "I don't know. It's some saying I've known since I was a kid. Long as I can remember."
Before he could remember...
Ardeth Bay bowed his head. "Then it is true...You are a Knight Templer."
O'connell blinked. "What am I?"
"You bear he Masonic mark."
"This thing?" He held up his hand. "This got slapped on me back inthe orphanage, in Hong Kong."
Ardeth Bay pointed at the tatoo. "That sacred mark means that you are a protector of man... a warrior of God..."
Lightning flashed again, as if God agreed with this assessment.
But O'connnell didn't. He merely smirked, said, "Buddy, you got the wrong guy."....

────尊敬のこもった、恭しいとさえ言える奇妙な熱っぽさを込めてメジャイの戦士は言った。
「友よ、もし私が'私は東から来た旅人だ、無くしたものを捜している’と尋ねたら...」
何も考えずに反射的にオコンネルは言った。自分が話しているのを遠いところから誰かの声が聞こえてくるかのように聞いていた。
「こう答えるさ、’私は西から来た旅人、あなたが捜しているのはこの私だ’」
「どこでそれを知った?」  
オコンネルは銃を吊した。
「分からない、小さい時分から知っていたことわざだ。思い出せる限り一番昔の頃だ」
いや、彼が思い出せない昔からだ・・・アーデス・ベイは思った。
アーデス・ベイは頭を下げた。 「では、言い伝えは本当だった・・・君は神の戦士だ」
オコンネルは目をぱちくりさせた、
「僕が何だって?」 
「君は秘密の印章を身につけている」
「これのことか?」 手を上げながら言った。 「ずっと昔ホンコンで孤児だったときにいれられたんだ」
アーデス・ベイはその刺青を指さした。 「その聖なる印は君が人類の守護者だと言う意味だ...神の戦士なのだ」
再び稲妻が閃いた、まるで神がその推測に頷いているようだった。
しかし、オコンネルはその考えは気に入らなかった、彼はただ苦笑いをしただけだった。 「残念だが人違いだ」...

どうですか? 面白いでしょう? この部分は二人のやり取りがかなり深い意味を持っているのにも関わらず、映画で見ただけでは、誰でも知っていることわざを言い合っているようにしか聞こえない、それどころかうっかりすると見落としてしまう短いシーンです。
この「秘密の印章」については「メソニック・テンプラーの謎」をご覧下さい。

ところで話が前後しますが、アレックスが柱を倒したところにリックとエヴィが濁流と共に流れ出します。それに目を丸くしたアレックスが、

"Mum... Dad... Count to ten.... I can explain everything."と言います。10まで数えろと言われても... リックとイヴリン

映画では count to ten は言っていませんでしたが、「10まで数えて..」と言うこ とで子供が言い訳をするときや大人がたしなめるときに使う言い回し。インディ3でもヤング・インディが父親に十字架のことを急進したいのに「十まで数えろ、ヘブライ語で」(違ったっけ?)と言われていましたね。つまり「ママ、パパ、怒らないで、十まで数えて気を落ち着けて。全部説明するから!」と言った所なんでしょうか、いかにもいつも言われていることが口から出たというという調子でかわいかったですね。 
 (2001/06/29(金) 記)