Miscelaneous

今まで一連のテーマ毎に関連したシーンを映画とノヴェライズから取り出して比較してきました。この辺で単独の気になる場面を取り上げたいと思います。

○古代エジプト語

イムホテップは古代エジプト語を話しています。映画「ハムナプトラ1,2」でも発話はエジプト語、意味はサブタイトルで表されていました。
余談ですがアメリカの映画は外国語の扱いにかなり鷹揚なスタンスを取っています。例えば「レッド・オクトーバー」ではショーン・コネリー演ずるソビエト海軍潜水艦艦長は最初の2、3言のみロシア語で後は英語に切り替え...つまり観客にこれはロシア語を話しているんだぞと暗黙の了解を求めています。

さて、イムホテップがミーラや、大英博物館館長と話すときには古代エジプト語でスーパーインポーズ付きなのですが(もしくはレッド・オクトーバー方式)、問題はイムホテップがアレックスと話すときです。
確かにアレックスは母親のイヴリンからヒエログリフの読み方を習ってはいますが、古代エジプト語を自在に操れるほど精通しているとは思えません。これをどの様にフォローしているか見てみましょう。

Imhotep spoke, and at first Alex couldn't understand his words...
"Keetash issirian ibn..."
...and then it was as if the creature had begun to speak in English, though Alex knew that wasn't so, yet at the same time he could understand everything Imhotep was saying.

────イムホテップは話した、初めはアレックスは彼の言葉が理解できなかった...
「キータシュ イッシリアン イブン...」
しかし 、そのうちにアレックスには未だにそれは英語ではないと分かっているのに、その怪物が英語で話しているかのように聞こえてきた、そして自分がその意味を全て理解しているのに気がついた。

この場面ではこれしか説明されていません、いわば不思議なことです。なぜならイムホテップは古代語で話し、アレックスはその意味を理解するのですから。
この謎解きはずっと後になって明らかにされます。
イヴリンが殺されて、アレックスが「死者の書」に望みを繋ぐ箇所です。話しているのはアレックスとジョンです。

With a sad little grin, Alex nodded, saying "Mum taught me well...I just wish I hadn't tossed away that God-darn bracelet."

..... "Why is that?"
"When I wore it, I could understand ancient Egyptian...I could even speak it!"
"No!"
"Yes!"
"Do you think any of it stuck?"
"Maybe... between what I learned from Mum, and speaking the tongue like a native...we should do all right, Uncle Jon."

────少し悲しそうな笑いを浮かべてアレックスはうなずいた。「ママはよく教えてくれたよ、でも、あのくそったれの腕輪を外さなかったらよかったなあ」
「どうしてだい?」
「あの腕輪をはめていた時には古代エジプト語が分かったんだよ、話すことだってできたんだ」
「まさか!」
「本当だって!」
「少しはその残りがあるかい?」 
「多分ね...ママが教えてくれたことと、ぺらぺら話せたことで...きっとうまくいくよ、ジョンおじさん」

実に上手く処理しています。アヌビスの腕輪のお陰で着けているときは古代エジプト語を自由に話せて、外した後も、イヴリンから習った知識と腕輪を着けていたときの記憶で、何とか読めるだろうと、非常に理にかなった説得力を持っています。
荒唐無稽な中にも一貫性のある理論の構築は楽しみをますます深めてくれます。

○テムズ川のタワーブリッジ

アーデス・ベイの"My first bus ride"のシークエンスの直後、ほっとする間もなくアレックスがロック・ナー一味にさらわれます。場所はテムズ川で二つの塔の間にかかっているタワーブリッジ・・・これは開閉鏡として名高い橋です。
アレックスの載せられた車を懸命に走って追いかけるリック、しかし敵の一味は係員を昏倒させて、自分たちの車が渡りきったところで橋を上げだします。
中央で別れて傾斜する橋を必死で駆け抜け・・・確かに画面ではリックは空間を跳び越えて、あちら側の橋の先端に飛びついた・・・ように見えましたが、その後大写しになると、確かに橋の断面が顔と同じ向きでしたので手前にぶら下がっている状態でした。
跳び越えたところの映像はないので、滑り落ちそうになったのをこちら側の先端に向かって飛びついたとしか考えられません。

しかしその後エヴィ達と合流してすぐにエジプト行きを決めるのには、あちら側にいたのでは事が面倒になります。万障繰り合わせて考えると、やはり手前にぶら下がっていたと解釈した方がいいのではないでしょうか。

○地下神殿の幻影
セティ王暗殺を目撃するネフェルティリ=イヴリン
テーベの神殿地下室でエヴィが幻影を見ますが、アヌビスの腕輪が安置してある部屋の中から出てきた女性はエヴィの前身のネフェルティリィでした。

その理由として、まず、セティ1世が殺されたのを目撃していたときのネフェルティリと衣装が同じ、それにアヌビスの腕輪を守るのは彼女の役目でしたからあの部屋に自由に出入りできたと考えるのが適当。さすがに顔はぼかして誰か分からなくしてありましたけどね。

彼女の動作を見てイヴリンは部屋へはいる鍵の開け方を知るわけですから、これは単なる巡合わせと言うより、なるべくしてなったという予定されていた出来事なのかもしれません


○ハムナプトラ2; トレイラーのちょっとしたいたずら
ぼくのパパがお前なんか・・・ Mu daddy will kick you....
ハナプトラ2の公式サイトでDLできるトレイラーがあります。
その中でアレックスがイムホテップに向かって「僕のパパがお前なんかけとばしてしまうぞ」と言うシーンがあります。

映画では "My daddy will kick your ass." と言っていますがトレイラーでは "My daddy will kick you." で上手く後ろの「下品な」言葉をけしてあります。トレイラーを最初に見たときにちょっと言葉が後へ続ような違和感を感じたのはそのせいでした。
何度もTVや予告編で流すトレイラーですから、エヴィから "Alex, language!"(アレックス、言葉に気をつけなさい!) と叱られるような言葉をを言ったらいけませんね。

○時速1000マイルの命がけの疾走朝日の昇る前に黄金のピラミッドに! オヤジはつらい

最初にこの映画を見た時から思っていたのですが、リック親子が命がけで(時速1000マイルで(笑))ピラミッドに走り込んだ後の会話、

"Not always easy, being dad."
"You're not so bad at it."

「パパであるってことは楽なもんじゃないな」
「でも、パパはよくやったよ」

...ここはほっとして静かに楽しみたいところなのに、大抵ここで笑う人がいます。
私としてはこの直後にリックが息子の「悪くないよ」に対して"thank you "と言うところで思わず笑ってしまいます。
意識しないで答えているからです。英語はこのようなところは大変律儀な言語です。

○意味ありげなアナクスナクン

これ見よがしに「死者の書」を見せるミーラ=アナクスナムンアナクスナムン=ミーラがイヴリンを刺した後ピラミッドへ入っていく時アレックスに向かって手を振ります(本では投げキスをするのですが)。

手を振るのにわざわざ荷物を持っている手を振る人も少ないと思うのですが、彼女は「死者の書」を持っている手を挙げて指でバイ、と合図しています。

とりも直さず「死者の書」を印象づけるため。つまりアレックスが母を救うために必要なのは、 "the book" と気が付く伏線になっています