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#2 The Dark Rival                by    Jude Watson
ダーク・ライバル; 闇のライバル
 第二巻、この巻から以下すべて上記のJude Watson の手によります。
まず解題から。
表紙にある大首絵はザナトス、マスタークワィ=ゴンの(2人目?)のパダワンです。最初のパダワンは女性だということですが詳細不明です。とにかくザナトスはオビ=ワンの直前のパダワンだったことは確かです。
 
直接ザナトスの名が現れるのは1巻の最後。 無事惑星バンドメーアに到着したクワィ=ゴンの元に先回りするように一通のメッセージが届いています。そこには旧交を温めるような挨拶とザナトスの署名があります。

それを見てクワィ=ゴンの心は穏やかではありません。オビ=ワンこそ知りませんでしたが、この先のパダワンは表向き使命を果たす途中で殉職したことになっていますが、実は肉親の情と権力欲に負けて土壇場でクワィ=ゴンを裏切ったのでした。離反するだけでは無く、クワィ=ゴンを親の仇と私怨を交えて憎む事になります。

そもそもザナトスを聖堂へ連れてきたのはクワィ=ゴンという設定です。
テロスという進んだ科学技術を誇る惑星へ出向いた折りに出会った政府の首長クリオンの長子がザナトスです。
ザナトスに大きな可能性を見いだしたクワィ=ゴンは父親にザナトスを聖堂に連れ帰って訓練を受けさせることを提案します。クリオンは辺境の一惑星の統治者の地位より更に大きな力と知識を身に着けられると判断してザナトスをクワィ=ゴンに託しますが、そこには後ろ髪を引かれる強い我が子への愛着があったことは否定できません。この執着こそが何年か後に禍根を残すことになるのですが、残念なことにクワィ=ゴンにはその予想がつきませんでした。
アナキンを見いだして連れてきたのもクワィ=ゴンでしたが、アナキンは奴隷で母親も貧しく、子供の可能性を実現してやるには手離さなければならないのは当然と親も(悲しみながらも)納得したのですが、クリオンの場合には、ジェダイの道を歩かせなくても一惑星の長の地位と富を与えられるのですから惜しんだのも無理からぬ事です。
しかし、原作には述べられていませんがクリオンとしては銀河中核世界への足がかりが欲しかったのではないかとも考えられます。息子をジェダイに、そして元老院の中枢への接点とする壮大な計画がクリオンの心中にあったのかも知れません、がこれは想像の域を出ません。
見込みのある若者として聖堂へ来たものの、ザナトスは性質に陰湿さを持っていました。たとえば自分の出自を最大限に利用すること。名家の出身であることを引き合いに出して貧しい名も無い出自の生徒を嘲ったり脅したりします。
しかし常にザナトスを贔屓目で見てしまったクワィ=ゴンにはその実体が見えてきません。確かに欠点も多いけれど年長になるに連れて克己心が育っていくであろうとザナトスを多めに見てしかも過大評価してしまったのです。ザナトスもうまく立ち回ってクワィ=ゴンに対しては熱心で一途な有能な少年の仮面を被り続けます。

ザナトスの本性に最初に気づいたのはやはりヨーダでした。最初からこの少年の将来には翳りがあると見てはいましたがどのような形で翳りが現れるかまでは見通していません。ただクワィ=ゴンがいよいよザナトスを正式にパダワンに選ぼうとしたときにヨーダは最後のミッションを与えます。この使命を見事果たしたら許可を与えると。それがザナトスの故郷テロスの内乱を鎮める仕事だったのです。このときまでにヨーダにはザナトスがクワィ=ゴンとジェダイを捨てて親のクリオン側に付くと予想していたのでしょう。

放漫な政治と混乱を招き、私腹を肥やすために星間戦争まで引き起こそうとした統治者、クリオンに対して蜂起した市民を助けて正常な民主主義を根付かせるのがクワィ=ゴンとザナトスの今回の任務でしたが(なにやらブッシュ政権のアメリカは世界の警察的な胡散臭さが臭ってきますが)、あくまでも非を認めず調停者のジェダイまで暗殺しようとしたクリオンに制裁を加えたのがクワィ=ゴンその人でした。
ザナトスはテロスに帰って来て以来心穏やかではありませんでした。豊かな物質社会、それを我が物とする権力者の父、その父から跡継ぎとなるべくジェダイを離れマスターのクワィ=ゴンを暗殺するよう耳打ちされ、自分がジェダイとなるために失った物の大きさに愕然となりその原因となった、つまり自分を連れ去ったクワィ=ゴンへの恨みを急激につのらせたのでした。

事態は最悪の展開をたどって、クワィ=ゴンはクリオンをザナトスの目の前で殺すことになります。そのときザナトスは一線を越えてしまいます。倒れたクリオンが嵌めていた指輪、それはクワィ=ゴンのライトセイバーに両断されてしまったのですが、燃えさかる火の中からそれを拾い上げてザナトスは自分の顔に押し当てます。この熱さ、この痛みを生涯忘れないために。永久にクワィ=ゴンへの憎しみを萎えさせないために。

こうしてザナトスの顔に割れた円環の跡が永遠に刻まれることになります。この割れた円環は後日ザナトスが総裁となるオフワールド鉱産のロゴマークにもなっています。
オビ=ワンはこうした一連の過去をまったく知りません。ただクワィ=ゴンがパダワンを持とうとしないのは、一代前のパダワンを失ったせいで、それをマスターは自分の責任と捉えているからだと噂で聞いているだけです。
物語の冒頭ではまだザナトスが何者なのか、なぜクワィ=ゴンが平静を失っているのかまったくわかりません。それよりもオビ=ワンはやっと当初の目的地に着いたものの、やはり行き先は農業団、クワィ=ゴンに認めてもらえたかもしれないというのも淡い期待に終わって、自分の未来が暗澹としたものであることを半ばあきらめの境地で認めかけています。そんなオビ=ワンにザナトスの手が伸びてくるのです。クワィ=ゴンを倒すという目的のために。

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