自治労年金集会

 医療・介護保険制度をめぐって

1997年4月16〜18日 於:秋田市文化会館小ホール他

記念講演1

「社会保障は経済に活力を与える」 奈良女子大学助教授 木村陽子氏

記念講演2

「少子高齢化社会の進展と社会保障の課題」一橋大学教授 高山憲之氏

1997.4. 17

2分科会  医療・介護保険制度をめぐって

       助言者 地方自治総合研究所研究員 池田省三氏

       自治労本部  藤井博健康福祉局次長

 

記念講演1

「社会保障は経済に活力を与える」

奈良女子大学助教授 木村陽子氏

   1997.4. 16

T 社会保障が大問題に

1.財政危機で社会保障費が大きな問題に

 社会保障が経済の停滞の原因になるのか、あるいは経済の起爆剤になるのかです。

 社会保障が先進国では大きな問題になっています。フランスではゼネストが行なわれました。公務員の年金支給の開始年齢を遅らせるというのが原因です。なぜ、そのようなことになるかというと、どの国も財政危機だからです。ECは2000年に通貨の統合を目指していますから、財政赤字の残高を6割ぐらいに縮め、大きな社会保障費を圧縮していこうというものです。福祉国家が危ないとか、福祉国家は終ったとかの議論がされています。

我が国も大きな曲がり角に立っています。その中で、社会保障は矢面に立っています。厚生年金が必要かどうかも1999年の年金財政見直しの時には俎上に上るといえます。スウェーデンでは2階建て部分を廃止し基礎年金だけにしてしまいました。

 社会保障が変わらざるをえないところまできたのはここ20年来で初めてのことです。1つは財政危機です。平成9年1月に、将来推計人口が発表されました。1億3000万人が日本の現在の人口ですが、2050年には1億人程度になるといわれます。小子化の傾向です。今の赤ちゃんが30歳になるころには年金負担は30数%となってしまいます。財政的にやっていけるのかです。

2.社会保障は本当に公正な制度か

 社会保障は本当に公平な制度かです。アメリカの研究ですが、黒人で未熟練労働をしているものほど国の年金に入ると不利との結果です。国の年金は強制的に入らされるが、長く働かされる職種は、平均寿命が短く、年金をなかなかもらえずに死んでいくというものです。独身者も増えてきましたが世帯単位の給付でいいのかどうかという問題もあります。経済効果の問題もあります。給付水準が上がると人が働かなくなるのではということです。また、経営者はコストが増えるのでなんとか切り下げたいと考えています。

3.社会保障費に無駄はないのか、ダブりはないのか

 社会保障費は60兆円ありますが、無駄はないのか。ダブりはないのか。同じ目的で、税制の軽減措置もある(税制の場合には貧しい世帯が措置から漏れることになります)のに、また、社会保障では異なった制度であるといようにです。また、福祉の分野では、公務員のヘルパーというのが私たちの頭にあるわけですが、ケア供給主体の多元化=営利団体、非営利団体でも供給主体になりうる。そこで、福祉国家では、このままで財政的に大丈夫なのか、経済に対してマイナスはないのかと悩みだしたわけです。

U 社会保障は経済停滞の原因か起爆剤か

  1. 社会保障は個人個人の生活を支える欠くことのできないものでは、

1 社会保障とはなにか?

2 経済にはマイナスか?を考えてみたい。

 89歳の私の父親は入院しています。子供は共稼ぎで父の面倒をみられない。そこで、社会保障が仮に突然なくなってしまうとどうなるかです。医療費が毎月50万円いる。これを子供たちがお互いに負担しあわなければならない。国民年金がなくなると、親に仕送りをしなければなりません。私たち子供も10年先には退職ですから、自分たちの生活で手一杯になります。社会保障が全くないと生活に対する影響は非常に大きいわけです。

国の年金がないと、自分でどれだけお金を貯える必要があるか。何歳まで生きるかという予測は難しい。1月のどれだけの生活費がかかるかの予測も難しい。老後に一番恐いのは若い人との生活水準の格差が開くことです。若い人の保険料が老齢者の年金に行くことによって、生活水準の格差を是正しているわけです。民間で賦課方式はできない。社会保障が個人個人の生活を支える欠くことのできないものであることは先進国では一致している。         

 社会保障は貧しい人たちだけの制度ではなく、普通の人たちの生活設計に入り込んでいます。ジュリアン・ルブラン(ロンドン大学)も言っています。

 しかし、どの程度がよいか。

2.社会保障は経済を駄目にするのか

 それでは、社会保障を攻撃する人が言うように、本当に経済を駄目にするのか。

 社会保障を重くすると本当に働かなくなるのか。研究者の立場からはおもしろい結果が出ています。負担が重くなり税金がとられるようになると、働かないという意志決定をするとわかっているのは専業主婦、高齢者で自分の仕事時間を決められる人たちにははっきりでています。経営者がよく持ち出すのに、アブセンテイズム(無断欠勤)があります。病気のときに診断書なしに始めの3日だけ休むことができる制度です。スウェーデンでは一時期、労働者1人当たり20日もありました。これは、社会保障のマイナー部分を大きく取り上げたものです。普通のサラリーマンが働く部分を短くするのか。しかし、その結果は明らかでない。社会保障をそうしたネガティブな面だけで見るのかどうか。給付がはっきりしていれば,国民の合意・スウェーデンの様に給付がはっきりしていれば、税金がこれだけ取られていても、戻ってくるからということで国民の合意がとられているところもあります。

3.社会保障は大きな雇用の場、再分配の場となっている

 ところで、社会保障は日本では非常に大きな雇用の場になっています。地域の経済を活性化する、経済の起爆剤にもなる。全国の公務員は300万人以上になります。年金・医療・介護で60兆円の規模ですが、その裏にはいろんな人が働いているわけです。社会保障全体での雇用は医療保険では150万人、公務員の社会保障関連で60万人 、福祉福祉施設に70万人、医療機器を含め総雇用のの5ないし10%になってきます。単に金食い虫ではなく、大きな雇用の場になっているわけです。

 かつて、どれだけ国民年金の収納率を高めても、首長はあまり評価しないということを職員の人から聞きました。30兆円の給付があり、お年寄りの数に応じて配分されるわけですから、購買力を高めるだけでなく、地域間の配分にも貢献している。これから、介護保険でも医療保険でも年金から保険料を出すことになります。高齢者が購買力をもっていないとうまく進みません。

 通産省が今力を入れているのは、福祉機器の開発です。医療福祉関連の産業が大きな産業になると考えています。アジアも好むと好まざるとに関わらず、高齢化してくるわけで、大きな市場があることになります。介護の分野は国としてもおいし分野になるわけです。

4.社会保障で満足なサービスを受けているか

こうした雇用吸収力の大きい分野で1人1人が満足なサービスを受けているかです。日本の医療費は27兆円です。そのうち薬剤費は3分の1です。フランスでは1.7錠ですが、日本は4錠です。ところが日本の医薬品は国際競争力がない。医療機器も国際競争力がないわけです。しかも、たとえば痴呆症の薬は効き目がない。それを穿ってみると開業医の収入になっているからだといいます。介護も注意しないと、薬とか医療機器のようになってしまいます。

5.高齢化社会は大きなマーケット

 介護保険は高齢化率が進んだ段階で、地方自治体がサービスの責任を担うとして法律を整備してきました。地方分権に適合するものです。

 現在、連合総研の調査で、老人福祉計画の上で何がネックになっているかをヒアリングしています。お金の問題だと答えられたところには、敬老祝金は縮小されましたか等とお聞きしています。怖くてカットできないと答えられるところもありますが、介護保険が出てくると、目的が同じものはそちらの方へ固めてしまうか、施設の整備に回してもよいわけです。施設が出きると雇用の場もでき、地域興しにもなります。

 山口県の東和町は日本でもっとも高齢化率の進んだ町です。65歳以上の人口が半分です。世界的にも珍しいものです。そこでは、365日のの昼食弁当を配っています。ホームヘルパーが老人宅を訪問したときに、風の日とか雨の日は何も食べずに過ごすということだったわけです。高齢化率が高い地域で雇用者が見つかるかもわからないなかで、ともかくやってみようとということで始まったわけです。そこでは、民宿で弁当を作ることになりました。ランチボックスもお金がないので日本生命財団に申請してお金をもらった。弁当を配る人もいないので、ボランティアを募った。よく新聞などに出ておられる人は84歳の人です。老人車で配っている。行った先々で話をしてニーズを汲み取りながら帰られるわけです。

 2025年には3人に1人が高齢者になりますが、そうするとどうやって高齢化社会に対応するかではなく、高齢者自体が町の中で大きな役割を果たしていくことになります。

 高齢者の多い町は、福祉機器に頼ることも必要です。眼鏡、補聴器、介護用ベット、家の改造なども入ります。現在これは6500億円ほどの市場規模です。こうした、分野は規制が多く発展しないと思われていました。ところが、大きなマーケットになりつつある。日本の3大産業育つ可能性が大きい。電動車椅子は、スウェーデンからの輸入がほとんどですが、そのようなものを開発すれば大きなものになる。介護保険は4兆円でその全てが介護機器に流れるわけではありませんが、2010年頃には介護機器の市場は6兆円くらいの規模になるといわれています。

 介護した人は不満をもたれたことはないですか。車椅子は軽いが、お墓に行くときの砂利道は体に直接響くなど不便な点は多々あります。技術革新の可能性は大なのです。しかも、こうした分野は中小企業が多くを担っています。ハイテクはいらないのです。うまく使えば町おこしにもなり、輸出産業にもなる。介護保険でカバーされれば大きな可能性のある分野です。

V 日本の経済構造を変える上でのネックは

1.国際競争力のない日本の医薬品産業

 薬の問題ですが、日本の医薬品産業は9兆円といわれ、規制産業で最後の護送船団などといわれています。病院で薬をもらうわけですが、こんなに貰って大丈夫なのかと心配しますが、それは医療保険で賄われています。保険料が無駄になっているわけです。フランスでは3兆円、英国では1兆円、米国は9兆円です。日本は米国と並ぶ薬大国です。ところが、薬の銘柄では上位10位には日本の薬は1つも入っていません。英国、スウェーデンなどです。外国では通用しない薬が日本では多く出回っています。日本の薬の輸出は輸入の3分の1です。英国の輸出額の3分の1、ドイツの輸出額の4分の1です。国際競争力がないわけです。毒にも薬にもならないある薬は300億円もあります。基準が甘く国際的基準を満たしていない薬が多いのです。

 これから社会保障を梃子にして、国の産業構造まで変えていきたいわけですが、薬剤費経験を見なければなりません。薬剤費は、申請すれば医療保険でカバーされる制度になっているからです。自分のところは新薬を開発せず、後発で少し改良すれば医療保険で見てくれる。粉薬をカプセルにすれば認められる。内部の市場は大きいので、開発費を投入して新薬を開発しようなどというインセンテイブがなくなってしまうわけです。こうした結果、こうした分野を改革しなければならないということで、医療保険改革では議論されていますが、一番安い薬を医療保険で見て、それより安い薬を患者負担にするとかです。医薬分業は2割くらいです。医者が薬を出しやすい構造も影響しています。医療保険や介護保険のように、お金が自動的に流れる構造ができたときそれを生かすも殺すも、私たちの責任です。

W 本当の福祉国家の危機とは

 社会保障は私たちが高齢化社会で選択の自由をフルに利用して生きていくための大事な社会的インフラストラクチアです。

福祉国家の危機といわれていますが、福祉国家は生活保護の分野では、酒飲であろうと何であろうと理由は問わず貧しく、また、働くことができないとなればナショナルミニマムを保障しようということです。これが制度になったのはここ50年くらいのことです。思想が出てきたのも100年前くらいです。人間はどうやってがんばっても、貧しくなることがある。これを国家の責任で保障するという思想です。ウェブ夫妻などです。教育も保障します。自由勝手な経済ではなく、総需要管理政策もします。公共部門がコミットするということです。最初から手厚い保障から始まったのではなく、1950年代60年代の高度成長の分け前を労働者に分配しつつ福祉国家が出来上がってきたわけです。福祉国家の危機とは、今、議論されている給付水準の見直しとかは福祉国家の危機とはとらえていません。デンマークで1つのアンケートがありましたが、充実したい制度と縮小したい制度を聞いたわけですが、充実したいものには年金とか介護が、縮小したいものには生活保護とか失業保険があげられました。社会保障システムは国民の連帯の中で生活を守っていこうということです。給付を貰う人が分断されると、たとえば生活保護を貰う人はずっともらうことになると、自分がほとんど貰う可能性のないものには支持をしなくなるということです。 

 昨年、米国のクリントン大統領はシングルの母親が子供を育てるときに貰う生活保護を、生涯で5年間にするという法律に署名しました。これは非常に驚きです。いつでもナショナルミニマムを保障するということではないわけです。後ろ盾を切るということです。この裏にはたとえば、親子3代生活保護で暮らしているとか、求職活動をしないとかの給付に対するモラルの低下とか、誰が優遇を受け、誰が保険料を払うかというところに分断が起こった場合、連帯が失われる。北欧や英国のなどでもこうしたことが行われると本当の福祉国家の危機だといえます。

 

記念講演2

「少子高齢化社会の進展と社会保障の課題」

一橋大学教授  高山憲之氏

T はじめに 人口高齢化の「時限爆弾」

 人口高齢化の時限爆弾という表現が新聞紙上などを賑わしています。第二次世界大戦が終わったあと、ベビーブームがありました。この世代が65歳になる時期をいいます。各国は人口高齢化社会への対応をこの間苦しみながら試みてきました。高度成長期は将来に楽観的見通しがあり、財源的にも問題にならなかった。ところが、1973年以降、サラリーマンの月給はあまり上がらない時代になってきました。高齢者に約束した寛大な給付を賄うために、相当な負担を現役の労働者にお願いしなければならなくなってしまった。

U.3つの基本的論点

1.各国の試み

@英国の年金改革の結論

 この間各国で試みてきたことの結論がそろそろ出てきたかなというところです。これまで、高齢化とは高齢者が増えることが問題だとしてきました。支えるのが大変だとづうーと言ってきたわけです。ところが、高齢者が増えることは実際には問題ではないということがわかった。英国などでは今の制度でも実質的に負担を減らしていくことが可能な段階に立ち至っています。英国の公的年金は労使で20%ほどですが、もう引き上げません。将来、公的年金を維持するコストは下がるといいます。18%から16%になるといいます。基礎年金があり、その上に報酬比例年金があります。1階部分の年金はサッチャーが政権について以降、79年より物価スライドをしていません。この間、賃金は上昇しています。だから年金の給付水準は対賃金比でいえば下がってきています。労働生産性は1・5%ほどありますから、その分年金が実質的に減価してきているわけです。そうすると、現役の負担が下がるわけです。2階部分は長期的には6割カットすることになりました。それでも英国人は文句を言っていない。英国では年金受給者の15%は生活保護を受けています。年金だけで生活保障をしようということは事実上諦めてしまった。年金では出来ることだけをやろうということです。

A米国の事情

 米国はこの20年間で、賃金が実質上上がった人は20%しかいません。ダウンサイジングの嵐の中で、成長感なき社会が25年間続いている。そうすると、なぜ親のために保険料や税金を出さなければならないのかという疑問を持つようになった。自分たちは親の世代よりも豊かになれないのではないかという思いがつよい。絶対増税は認めない、年金保険料の引き上げは認めないということです。1983年の年金改革で14・5%の保険料を75年間固定することを決めました。これはすごいことです。給付で調整するしかないといっている。

Bスウェーデンの場合

 スウェーデンは、マイナス成長になった。失業率14%にもなった。物価スライドもできなくなった。現役の生活水準が下がっているのに、OBの生活水準を上げられるかですが、これはノーです。子育ての支援策も育児休業期間の賃金保障も90%から75%に切り下げられました。年金については1994年に与野党合意で1つのアイデアが出されました。掛け金立てで公的年金制度で給付を計算しようということを決めました。財形年金と同じ考え方です。自分が積み立てた年金をどう寿命に応じて取り崩していくかということです。他人から助けて貰うという考えを否定した考えです。基礎年金部分は給料とは関係なしに一律6万5000円というように、どれだけ保険料を納めたかということと関係なく給付額を決めるというのがこれまでの普通の国の年金制度です。まず、どのような生活水準をするにはどれだけ年金が必要かということで、給付を決めてその給付のためにどれだけのお金が必要かということで、負担額を決めるわけです。スウェーデンはこれをひっくり返したわけです。年金保険料を18・5%で長期固定したわけです。実際は年金会計に積立金はほとんどありませんから、そのままOBの懐へいってしまうわけですが、恰も個人の勘定があるかのように掛け金立てで運用しようというものです。それをたとえば65歳で貴方の年金額は○○円担っていますから、自分の余命に応じて崩してくださいといいう考えです。見なし運用利回りということです。賃金の支払いの増大率を持って運用利回りとしようという案が出ています。経済が拡大しない場合、利回りは出てきません。

2.社会保障と国内経済の調和をはかる

 社会保障は国内経済とは無関係に走るわけにはいかないわけです。経済の動向が思わしくなければ、それに併せて社会保障給付も調整せざるを得ない。であれば高齢者がいくら増えても、経済の実態との関係で高齢者の支え方も決まるわけです。しかし、社会全体で高齢者の生活の基礎的な部分を支えあうということで、高齢者を見捨てるということはしない。支え方は経済の実態に併せざるを得ない。それで皆が納得すればよい。そうすると、高齢者が増えることが問題ではない。

 欧米では高齢者が増えることは問題だとは言わなくなった。日本はまだそういうことをずっとと言い続けています。制度の中で若い人との所得との折り合いが付けばよいという、20年にわたる苦い経験からの結論です。

 要するに、現役の所得が増えていけばそのうちの一部をOBに回してもよいという納得は得やすい。バブルがはじけるまで、日本では確実に税や保険料の負担率は上がってきたわけです。そんなに強い反対はなかった。親の世代よりも確実に良くなってきたという実感があった。前回の年金改正の時には労使がそろって負担増もやむなしといったわけです。私は非常に意外な感じでした。そのようなことが今後ともずっと可能かです。経営者側はあのとき年金の引き上げを認めてしまったので、今介護保険で反対などと江戸の敵を長崎でみたいなことをやっていますが、介護保険の負担などというのは大した負担ではありません。次回以降もずっとやれるかというとそうはいえません。今の給付を維持しようとすれば保険料をこれだけ上げなければなりませんと、勝手に絵が書いてあるわけですが、なぜ給付を維持しなければならないかです。親の世代と現役の世代の生活バランスがあるわけです。家族ならこうした調整はすぐ出来る。しかし、一旦国の制度になるとこうした調整が難しい。しかし、自ずから出来てくると思います。

 日本の場合、生産性の上昇の可能性はまだあると思います。そのような形での妥協ですから、米国やスウェーデンのような極端なことにはならないと思います。

3.「高齢者の位置づけ」を変える必要

 高度成長期に、日本は高齢者への配分のシステムがうまくいっていなかったので、高齢者が手元不如意で怯えていた時代が過去にあった。高齢者は経済的に恵まれていない、かわいそうだという話になって、給付は寛大にという政策になった。しかし、それから20数年たち、確実に恵まれている高齢者がでてきた。月給で支払えない住宅ローンや子供の教育費で悩んでいるときに、高齢者からその金が回ってくる。高齢者の位置づけが変わってきた。特別な人だけに制度をつくればよい。高額医療費の制度もある。国民健康保険では保険料を減免する措置もある。高齢者だからといって特別なことをしない。今は高齢者だからといって特別なことをしている制度が沢山ある。病院の窓口負担、年金給付の税金、地方公務員で夫婦の場合2人で40〜50万円を貰っているしかし、所得税を払っていない。若い人では40〜50万円の所得があって税金を払っていない人はいません。昔と状況は変わっている。相対的に高すぎると思われる給付は遠慮してもらう。まず、介護保険ですが保険料を払う、年金から天引きする。そこで給付を受ける資格をつける。医療費も同じで、金額の一定額を超えれば高額医療にする。高齢者が負担に参加しな い限り、若い人たちをいじめることになってしまう。シュピーゲルという雑誌がありますが、高齢者は若い人を破産させるのかというショッキングな見出しがでていました。

V.社会保障における今後の課題

1.社会保障給付の相互調整と行政コストの節約

 一律に年金を下げるという話ではなく、高い年金を貰っている人から少し調整に入るということではないか。今の年金制度は男が外で働いて、奥さんは専業主婦であるというのがモデルになっていますが、共働きが一般化すると、2人分を足すと相対的に大きなものになります。共働きの年金水準は高いということにもなります。どこかで調整せざるを得ない。その理論をどうつけるかです。

 病院に入院している人の生活費は本当は年金で払うべきなのです。ところが病院入れてしまうと、部屋を使う、電気料、食事などを含めて丸抱えで医療費で支払う制度になっています。そうすると、年金は遺族が貰う制度になっています。

 イギリスでは病院は治療する場で生活をする場ではないということが徹底しています。年金受給者長期入院すると、6ヶ月を越えた段階で年金の最低額を変えてしまいます。3分の1カットです。さらに1年を越えて入院すると8割カットです。2割しか年金を出さない。刑務所に入る年金受給者もいるわけですが、刑務所も生活保障の場です。入ると8割カットされます。日本はそういうことをやっていません。しかし、動機不純の人が喜ぶ制度はおかしいわけです。

 失業保険を貰いながら年金を貰う制度は平成10年の4月からなくなります。

 行政コストの節約は、たとえば年金給付の振り込みは年6回です。4月で給付の改訂をします。物価スライドです。年金給付の支払い通知を各国はどうしているかというと、年1回しかしていません。ところが、日本は会計法上の縛りがあるということで、全く同じ金額を年6回通知しています。かなりのエネルギーを使っているわけです。国民年金の保険料ですが、なぜ、国民健康保険料と抱き合わせで保険料が取れないのかです。同じ厚生省の所管です。市町村民税と都道府県税は合算で徴収しています。医療保険は若い人も怪我をしますから、入りたいわけです。年金はよく分からないからとさぼっている人がいるわけです。別々にさせるから大変な思いをして、保険料の10%にもなるような経費をかけて徴収をしているわけです。各国の保険の徴収コストは1%というのが常識です。国民年金だけが10%も使っているということは制度がおかしいということです。

W.少子化対策

1.日本の総人口は10年後から減り始め、100年後には4割(または6割)減となる

 出生率がなかなか下げどまらない。平成6年がボトムになってその後反転するとの予想でしたが、一向に下げどまらないわけです。100年後には日本の人口が6割になる。

 人口が減る方が地球環境にとってもいいことだという言い方がありますが、本当にそうかということです。日本は子供が産まれない。中高年が増えていく社会です。労働者の数も減ります。図の1ですが、2000年がピークで若い人は激減します。若い人が減る社会で日本の活力が維持できるかです。若い人と中高年では絶対的違いがあると思います。適応スピードの違いです。

最近インターネットとかが席巻していますが、若い人が飛びつき、中高年でやっているのはオタクだけです。優秀な若い人が部下にいると、全て部下にやらせ、自分はワープロも打たない。中高年は新しい技術に後れをとる。 日本経済はそういう意味で徐々に衰えて行かざるを得ない。日本では過疎地がそれです。お祭りをやろうにも担ぎ手がいない。高齢化対策ということで、高齢者対策しかやってこなかった。

2.人口減少社会:イマジネーションが乏しく、それへの対応は皆無に近い

 子供が何人欲しいかというアンケートをとると、平均で2・6人くらいにはなります。実際は1人でやめてしまう、全然つくらないということになっている。本当に子供がほしいなら、それができるような社会にすべきです。人口が減ることへのイマジネーションが決定的に欠けているわけです。マスコミを含め、人口が減ることはいいことだという論理があるが、非常におかしい。

3.出生率低下の原因

 出生率の低下は、石油ショック以降に下がりました。表2です。かつては男女間賃金格差2倍ありました。それが現在は1・3倍にまでなりました。出産を契機に妻がリタイヤすると、1・3倍くらいしか夫は稼いでこないわけです。収入が激減し、出費が増える。それに耐えろといっても、イヤですよということになります。そこで、生活水準を下げないという選択をとるとすると、働き続けるしかない。ところが、今の日本の環境は働き続けることを容易にしてくれないわけです。日本人の働き方は高度成長期に出来上がった、男は家庭を顧みず、時間制限で会社に全てのエネルギーを捧げるというシステムです。会社にいる時間で会社への貢献度を測るといシステムを作ったわけです。女性がそういう社会に入っていくと家庭を顧みずですから、子育てができないわけです。結局、家庭と職場が両立しないという制度を高度成長期に作ったわけです。この仕方を変えなければならない。

4.出産・子育て支援策の具体例

 昔は子供がいないと大変だったわけです。年をとったら誰に面倒を見て貰うか。社会は当てにならない。今は年金制度、医療保険もある、介護保険もできるということで、最低であってもの安全ネットが作られているわけです。今は困らない。子供がいれば無制限に時間もとられ、エネルギーもとられ、金もとられるわけです。どうして子供を産んで苦労を背負うかです。子供を産まず育てない方が楽だ、得だという社会を日本は放置しているわけです。そのインセンティブを変えない限り、日本の出生率の反転はないと思います。

 男女の固定した役割分担の意識を変える。家庭と仕事を両立をするには、男の働き方を変えなければなりません。今の男の働き方を放置したままで、育児休業制度を充実しますとしたところで、そんなに子供は産まれないと思います。変えなければならないのは男の働き方です。会社に長くいたら会社に貢献したとする評価制度を止めなければなりません。何をしたらということを厳格に評価して昇進をさせるということにしなければなりません。仕事はヘッドワークが多いわけです。ヘッドワークは時間と場所を選ばないわけです。仕事に仕方、評価の仕方を変えなければならない。会社の拘束時間で評価しなければ今よりももっと子育ては容易になります。これは労働組合には大変なことを申し上げているのかもしれません。超過勤務手当を50%増しにしたらどうか。そうすると、企業はそれに見合う人しか雇わないということになります。朝からぼーっとしていては困る。仕事の効率も違ってくるでしょう。25%という中途半端な手当だからだらだらとやっている。

 徴兵制度が昔ありましたが、兵役から帰ってきた人が元の職場で給与の面でも、ポストの面でも不利益を受けたかというとそういくことは聞きませんでした。日本は子育て兵役の任務に似ています。兵役から帰ってきたときに、不利益になる制度を作っておくのはおかしい。

 

 2分科会

「医療・介護保険制度をめぐって」

地方自治総合研究所研究員 池田省三氏

自治労本部  藤井博健康福祉局次長

 

T.今なぜ介護保険なのか

1.立ち遅れた高齢者介護政策

 介護保険がなぜ、急速に創設に向かって動いているかですが、第一の理由は高齢者介護政策があまりにも立ち後れている現実です。図表1に現在65歳以上の高齢者は1700万人います。全人口に占める割合は15%を超えたところです。そのうち介護を必要とする寝たきり者は90万人、地方高齢者10万人で65歳以上の高齢者の6%です。家事援助の必要な要支援の虚弱高齢者は100万人で併せて高齢者の12%です。介護保険はそれほどお金のかかるものではありません。年金は65歳以上の方全員が対象になります。医療もそうです。介護は限られた人間になりますから、それほど大きな金額にはなりません。現在標準的サラリーマンの年金保険料は月額5万円程度です。労使折半ですから、掛け金は25000円程度です。医療保険は3万円ですから、掛け金負担は13000円から15000円です。これに対し、介護保険は西暦2000年から実施が予定されていますが、保険料は2500円です。介護にかかる費用は桁違いに少ないわけです。

2.病院に社会的入院をする要介護高齢者

 2番目の棒グラフは、介護を必要とするお年寄りがどこに住んでいるかを示したものです。病院に28万人です。これは6月以上の長期入院だけを取り上げた数字です。基本的には在宅でホームヘルパーなどの支援を受けて生活していくことが望ましい。あるいは特別養護老人ホームのような施設に入って生活することが望ましい。ところが、ご存じのように、施設の定数は絶対的に不足しています。在宅でといっても独居老人や家族が働いている場合もあります。行き場のない介護を必要とする老人の受け皿となったのが老人病院です。老人病に入院している人は幸せかということですが、これは「20世紀のスキャンダル」です。介護を必要とする人はより質の高い生活を維持するということです。しかし、病院は生活する場所ではありません。病気や怪我を相手にするところです。医者の命令は絶対で、刑務所と同じ生活です。病院は要介護高齢者には全く向いていない場所です。介護の手はありませんから、基本的には寝かせっきりになり、しなくてもいい投薬や検査、診療を行うことになります。某公的病院の看護婦と会う機会がありましたが、公的病院でも徘徊する老人を縛っているとのことでした。病院に社会的入院している状況は幸せとはいえません。

 施設に入っている方は26万人です。特別養護老人ホームが19万人、老人保健施設が7万人ということです。老人病院よりははるかに恵まれてはいます。介護の手がありますから、生活らしいものはあります。しかし、雑居部屋が中心です。個室は2%れいどです。65歳以上の老人が介護を必要とするようになったとき、なぜプライバシーを奪われなければならないかです。特別老人ホームに入った場合持っていける荷物は段ボール箱2個です。人生70年の思い出を2個にまとめるということは捨ててこいということです。ヨーロッパの介護施設ですが、ドイツのトリアーという町ですが、介護保険が導入される以前のドイツでは施設にはいるのは全額自己負担でした。月45万円かかります。家屋敷を売り資産を処分して費用に充てます。なくなると社会扶助を出してくれます。介護施設に入っている老人の80%は社会扶助の対象です。その社会扶助を受けておられる婦人の部屋には、シャワーがあり、おおきなベッドがあり、部屋の広さは20畳以上あります。高級ワンルームマンションです。施設というのは住宅政策なのです。その人の家なのです。

3.介護者の圧倒的多数は女性で「嫁」の比率が高い

 3番目の棒グラフですが介護をしておられる人ですが、女性が86%と圧倒的です。直近の資料では男性が17%まで増えてきてはいます。その内、子の配偶者=嫁が高く3分の1、配偶者の妻が28%、娘が20%となっています。

4.介護者の半分は老々介護

 介護をしている人の年齢ですが、70歳以上が22%です。60歳以上では49%です。老々介護です。介護の問題は重大な社会問題化し始めています。介護離婚もあちこちであります。介護に疲れた夫が、心中するというケースもあります。ところが、これまで社会問題化してこなかった。この理由は老々介護です。我慢をする世代だからです。我慢によって問題が覆い隠されてきた。

5.介護者へのアンケートによる「驚くべき介護実態」

 図表1の一番下が連合が介護をしている人を対象に行ったアンケートの一部です(1995年調査)。要介護者に憎しみを感じたことはありますかという設問です。いつも憎しみを感じるか1・9%です。時々憎しみを感じるが32・7%です。要介護者を虐待したことがあるかという質問では、よくあるが2%です。ときどきあるが14・4%です。きわめて内輪の数字と見なければなりません。かなり深刻な数字です。総理府の別の調査では50%に近い人が何らかの虐待をしています。介護をしている人が疲れ切っているからです。現在寝たっきりの人の半分が3年寝たっきりです。家族の介護も3ヶ月くらいまでは愛情を持って接することができますが、それ以上は疲れ果てます。痴呆性の場合には家族介護は望ましくないといわれています。家族にとっては落差の違いが耐えられなわけです。尊敬していた父親がそうなると、家族はパニックを起こすわけです。痴呆性高齢者は家族から切り離した方がいい。こうして、高齢者施策が立ち後れた中で、介護保険が登場してくる理由があるわけです。

6.団塊の世代対策としての介護保険

 図表2の要介護高齢者の将来見通しです。日本の高齢化率は2020年には25%を超える。25年には寝たきりが230万人、痴呆高齢者が40万人になります。団塊の世代がそこさしかかります。団塊の世代はわがままな世代です。介護保険の焦点はこの世代にあります。現在介護されている人は間に合いません。完全施行できるのは2005から2010年ですから、60歳代の人には間に合います。団塊の世代には介護保険だけでは数が多いので対応できません。バリアフリーの町づくりが必要です。

U.介護保険の概要

1.医療保険改革の第一弾(介護と医療保険の比較)

 図表7は、介護と医療保険の比較です。一般病院に入った場合、月50万円かかります。しかし、個人負担は39000円で済みます。療養型病床群では42・8万円です。リハビリ中心の老人保健施設は32・5万円、特別養護老人ホームは21・2万円です。特別養護老人ホームの倍、老人病院は費用がかかっています。老人病院に入っている人と特別養護老人ホームに入っている人とどちらが恵まれているかというと、明らかに特養に入っている人です。しかし、コストは倍違う。老人病院は高かろう悪かろうなのです。ソ連型経済です。医者の配置が問題なのです。コストがかかります。28万人を特養に入れると年間8000億円の金が浮きます。これは医療保険改革の一環なのです。

2.措置制度の限界ー救貧主義・無権利・コスト高

 図表10。措置というのは、最高裁の判例では反射的利益だから、特別養護老人ホームに入りたい、ホームヘルパーを派遣してもらいたい権利はないということです。措置はとらなければならないと老人福祉法には書いてあります。ところが、施設は作ることができるとしか書いてない。定数の空きがある場合しか入れない。東京都全体で特別養護老人ホームに入所申し込みをし、待機している人間は12000人です。そのうちの60%は老人病院で待機しています。ものすごく金がかかっています。

3.現在の措置制度と介護保険制度との違い

 図表8ですが、措置制度では税金が市町村に集まり、その税金で福祉予算を作ります。直営であれ、第三セクターであれ介護サービスを持っている人からサービスを買い取るわけです。これを措置委託といいます。介護サービスを市町村が独占的に買い占めます。予算の範囲内で。買い占めたサービスを措置という行政処分で配分していきます。順序は困窮度の認定によります。貧しくて困っているものから配分するということです。資源は限りがあります。予算がなくなった時点で配給は打止めになります。市町村はサービス提供事業者に対して非常に大きな影響力を行使できることになります、

 介護保険は図表9ですが、保険者は市町村です。税金と介護保険料が市町村に集まります。市町村は介護の必要な人の認定をするわけですが、措置では困窮度でした。介護保険ではこれが、要介護度の認定です。所得とは関係がないわけです。介護を必要としている人すべてに介護サービスを渡していくことになります。それを直接介護を必要とする人に渡すのではなく、たとえば痴呆性の要介護者には23万円分のサービスを差し上げますというように、1人1人財源を保障するわけです。その範囲内でサービス事業者からサービスを買うわけです。ショートステイ、入浴サービスなどとして買うわけです。1割は自己負担でサービス提供事業者に直接渡します。残りはサービス提供事業者が保険者に請求します。この事務は国保連合会がします。審査請求と支払をするわけです。

 介護保険では主権を持った消費者になります。保険制度では保険料を払った以上サービスは当然あるものということになりますから権利意識は非常に強くなります。介護保険が導入されてサービスの提供がないと保険者である市町村の首長の責任が問われることになります。

 いままでは行政がサービスを買い占めていましたから、行政が買い占めるだけのサービスしか生まれてこなかった。しかし、介護保険ではニーズがあってお金があってということになりますから、そこにサービスが現れることになります。マーケットができ民間セクターのサービスがどっと出てくることになります。痴呆性高齢者が1000人いれば1人23万円として、2億3千万円のマーケットができるわけです。

V.介護保険のサービス提供システム

1.要介護認定と不服審査

 介護保険のサービスの流れですが、図表11「介護保険制度の概要」を見てください。要介護者は保険者である市町村にまず保険給付申請をします。保険者の認定担当者は訪問調査をします。この認定担当者は自治体の職員です。7000人から1万人くらいの自治体職員が増えることになります。チェック表がありそれを客観的に記入できるよう研修を受けた職員です。このチェック表はマークシートになっておりコンピューターで処理されどの程度の介護が必要かという分類に使われます。

 それとは別に医者が診察して所見が出されます。その集まったデーターを介護認定機関で複数の人間で認定をしていきます。では誰が認定委員になるかですが、介護の専門家ですから、医者はどうしても入ってくると思われます。ここで、認定されなかったり、重いと思うのに軽い認定をされ不服がある場合に、介護保険の審査会に申し立てることができます。措置制度では争いは全く出来ませんでした。審査会ではねられた場合には裁判に訴えることができます。

2.定額払い方式の給付

 介護保険は定額払い方式をとります。これが医療保険と異なる点です。医療保険は医者の判断で無制限にお金をつかっていいわけです。介護は治療ではなく生活の保障ですからある程度定型化できる。定額払い方式をとることができる。虚弱、軽度,中度、重度、痴呆、最重度の6ランクに分かれている。水準は虚弱で6万円程度、ホームヘルパーの家事援助が中心となるでしょう。中度で17〜18万円、ヘルパー、デイサービス、訪問看護、ショートステイをこの金額の範囲内で組み合わせてサービスを受けることができる。図表15が組み合わせのパターンです。

 そのようなサービスを自分で選んで、自分で組み合わせて、自分で買ってきてもいい。しかし、高齢者、家族には知識がない。ケアプランをつくるためにケアプラン作成機関というものが作られる。行政が置くほか介護サービスをする事業者が置くことができる。ケアマネージャーが本人、家族、環境を見ながら本人にあった適切なケアプランを作っていく。ケアプランに沿ってサービス機関からサービスを調達し提供することになる。非常に重要なことになる。介護保険以上のサービスが欲しい場合は、自費で上積みすればよい。そうしたケアプランも作ってくれる。

3.ドイツの介護保険との違い

 日本の介護保険はドイツの介護保険とはかなり違います。ドイツの介護保険はあくまでも本人が自分の意志でいろんなサービスを選択し、自分で購入するということです。契約社会だからです。痴呆性高齢者は代理人が行います。日本の介護保険は北欧型なのです。認定をして定額払いのサービスをもらうことはドイツ型です。財源の構成の仕方はアメリカ型です。

 ドイツの介護保険ですが、貧しいです。虚弱、軽度などは対象になっていません。中程度以上でないと保険は出ません。中程度で750マルクです。6万円から7万5千円程度です。日本は17〜18万円ですから、3倍です。重度でドイツは14万円、日本は21〜22万円です。それとドイツ介護保険の最大の失敗は痴呆を忘れ、身体的判断だけにしたことです。たくさんの不服審査が出ています。

4.サービスの種類と水準

 前の図表11を見てください。どんなサービスが受けられるかですが、ホームヘルパーの家庭訪問、デイサービスへの通所、施設への短期入所等です。住宅の改修は簡単なものだけです。有料老人ホームにおける介護は自宅扱いになります。介護施設は特別擁護老人ホーム、老人保健施設、療養型病床群です。療養型病床群は老人病院です。私どもはこれを入れたことは不満ですが、ベッド数の辻褄を合わせるためです。日本医師会では老人病院で経営を成り立たせているところも多いわけです。

W.保険料負担とサービス給付

1.第1号被保険者(65歳以上)・第2号被保険者(40〜64歳)

 図表11の真ん中は被保険者です。年齢で線が入っていますが、65歳で1つ40歳でもう1つの線が入っています。65歳以上の人を第一号被保険者といい2500円という基準額の保険料を支払います。原因がなんであれ認定されると保険が支払われます。40歳〜65歳までの人=現役を第2号被保険者といい、2500円という保険料をはらいますが、サラリーマンは労使折半です。国民健康保険者は2分の1を国庫負担します。しかし、40〜64歳の人は年を取ったということが原因の病気(高齢疾病)しか認めないということです。

 脳血管障害、初老痴呆、骨粗鬆症、リュウマチです。それ以外では介護保険から給付は出ません。介護保険は正確に言うと高齢者介護保険だということです。40歳未満は介護保険には入れません。

 65歳以上の第1号被保険者は基準額が2500円ですが、5段階に分かれます。所得によってですが、一番低い老齢福祉年金受給者は基準額*0.5です。住民税でかなりの所得がある人は基準額*1.5です。取り方は年金から源泉徴収されます。65歳以上の高齢者の70%がこれに該当します。のこり30%の人は国民健康保険料とセット徴収することになります。65歳以上の方の国民健康保険収納率は99%です。第1号被保険者の保険料は100%取れると考えられます。現役は医療保険とセットで取ります。月収の千分の4がプラスされます。所得比例になります。保険の徴収について市町村は大きな不安を持っていますが、それほど不安を持つ必要はないと思います。

2.財源システム

 財源の仕組みですが、半分を公費負担で、残り半分を保険料でまかなうということです。その中身は国が20%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%です。図表16の中央にあるのが標準的でその他に国が5%出し、国は合計25%を出すことになります。40歳から64歳までの人の保険料が33%、65歳以上の方の保険料は17%です。

 図表16の左側の図はは貧乏な高齢者が集まっている市町村の場合です。2500円の保険料が取れないわけです。第1号被保険者からは12%ぐらいの保険料しか取れない場合、国が5%分さらに負担することととしています。金持ちの多い成田市、武蔵野市などでは2500円ではなく3750円の保険料が集まり22%も集まることになります。このように調整します。

高齢化率が違う市町村の場合はどう調整するかが図表17です。高齢化率が一番高い市町村は山口県の東和町です。高齢化率47%です。高齢化率が一番低い市は浦安市で5%くらいです。自分のところだけの保険料で賄おうとする東和町は1月で破産してしまいます。図表17で点線が人口規模、高齢者の数は網かけしたとことろです。高齢者の数かける2500円というのが17%になるという前提を置くわけです。第2号保険料は診療報酬支払基金に全国プールします。高齢者の保険料17%に対して、33%分を交付しますというかたちでつけるわけです。残り50%は公費負担です。そうすると格差は消えてしまいます。高齢者数を基礎にするからです。

3.最後まで介護保険に反対した市町村

 市長会と町村長会は介護保険に最後の最後まで消極的でした。今でも本音で賛成している首長は1割もいないといえます。首長が何をいったかというと財政負担に耐えられないからだといったわけです。図表18は現行の措置制度と比較して、介護保険制度がどう変わるかを示しています。措置制度は全額税金で負担しています。それは国が2分の1、都道府県が4分の1、市町村が4分の1です。特別養護老人ホームの市の負担は2分の1です。老人保険制度は利用料金を除き、半分を医療保険で賄っています。残り半分が公費で国12分の4、県12分の1、市町村12分の1です。措置制度は1兆円、老人保険制度は1.1兆円くらいで賄われています。市町村の負担は介護費用全体の6分の1です。介護保険になると2分の1が保険料で残り2分の1が公費になります。国が8分の2、県が8分の1、市町村が8分の1です。6分の1と8分の1と比較すればどちらが大きいかは明らかです。

4.市町村は財源には文句のつけようがない。

 図表19ですが、現行制度から介護保険にするとどれだけ公費が変わってくるかというと、国庫負担が一番少なくなり5000億円減ります。市町村負担は2200億円減ります。都道府県は400億円増えます。市町村は国保の拠出金も200億円減ります。我々が保険料を出す分税金部分が低くなるということです。しかし、このままでは大蔵省が得をしますから、あまった5000億円を基盤整備に使えというのが条件です。施設の建設、ホームヘルパーの研修などに使えということです。そうしないと詐欺です。

 保険料が取れないのかといことですが、そうした市町村の声に私か示したのが図20です。国庫負担、都道県負担、市町村負担ですが、これは自動的に市町村のポケットに入ってきます。第2号保険料も集まろうが集まらなかろうが出さなければならないことになっていますから、自動的に市町村に入ってきます。第1号保険料のうち7割は社会保険庁が年金から徴収します。市町村が自分で集めなければならないのは年金から徴収できない高齢者=全体の5%です。しかもその人たちの国民健康保険の収納率は99%です。徴収に対する危惧はほとんどないと見て良いわけです。図表21は後年度負担ということで、使った分だけお金を出す制度です。国庫負担、都道府県負担、市町村負担、第2号保険料は、予定よりも多く介護給付を出してしまった分はくれるということです。第1号保険料分は都道府県に財政安定基金があり、ここが無利子でお金を貸してくれます。第1号被保険者の滞納が明らかであれば、財政安定基金からお金がもらえることになっています。これほど市町村に都合のいいシステムはありません。ここまでしなければ市町村は納得しなかったわけです。市町村は財源については文句のつけようがないわけです。

 しかし、今後の危惧としては、これから介護サービスの絶対量は上がって行くわけです。1000億円の6分の1よりも1兆円の8分の1の方が大きいわけです。それをいやだと市町村がいうとすれば、介護サービスは今よりも増やさなくても良いという論理になります。これ以上介護サービスをやりたくないというのが市町村の本音です。しかし、それは口が裂けてもいえない。だから、財政問題をいったわけです。

5.不足している基盤整備の問題

 図表29、基盤整備ですが、新ゴールドプランが達成されても4・3兆円のサービスしかできません。新ゴールドプランが出来たとき、在宅介護サービスと特別養護老人ホームは税金で賄われていますから全部税金です。老人保健施設と療養型病床群は半分が税金で賄われています。介護保障ににかかわるもののうち3兆円が税金で賄われているわけです。3兆円を全部介護保険に引き継ぐと、介護保険は2分の一公費負担ですから、6兆円のサービスが出来ることになります。しかし、現実のサービスは4・3兆円しかない。そこで、介護保険を5兆円くらいとすると、公費負担が7000億円程度余ります。それを基盤整備につぎ込んで、新ゴールドプランをスーパーゴールドプランにしてサービスを増やしていくというものです。

X.超高齢化社会と社会的コスト

1.OECD諸国の租税・社会保険料負担と日本の比較

 参考1の主要税の各国比較ですが、日本のように市民の社会保険料や税金の負担の低い国はありません。欧米ではだいたい3グループに分かれます。オーストラリア、フランス、カナダ、アメリカなどが24%、25%、それについでイタリア、イギリスで27%、ドイツ、スウェーデンが36、37%です。ドイツはこの36%に介護保険料が入りました。1%程度ふえて37%くらいになります。稼いだ所得の内、ドイツは37%を税金や社会保険料で持って行かれますが、日本はたったの15%です。ものすごく安いのです。その下が付加価値税(消費税)です。一番低いのがドイツで15%です。カナダは7%ですが、州が8%あります。アメリカは州の付加価値税が7〜8%です。日本はこの4月から5%です。これだけ安い税金でこれだけのことをしているのですから、日本の行政はたいしたものです。といいたいのですが、それには秘密があります。

2.低い国民負担率の裏にある500兆円の国の借金

 なぜ、税金が安いかというと借金でごまかしているわけです。国債残高ですが、これに地方の債務、国鉄債務がありますので、日本全体で借金をどれだけしているかというと、500兆円です。20年かけて(無利子を前提に)返済するとすると、消費税を何%にすればよいかというと、15%にしなければなりません。10%消費税を上げると25兆円のお金が入ってきます。500兆円の借金がありますから20年、利子を入れると30年かかります。

3.負担率と高齢化率の関係

 負担と高齢化率の関係ですが、各国とも高齢化率が12〜13%ぐらいのところから急に負担が重くなってきています。これは当たり前のことです。子供の世代はこのような重い負担を引き受けていかなければならないということです。ところが、借金残高が500兆円もあるということは、大変な税負担、社会保険料負担の上に、親の借金まで返さなければならないという状況にあるわけです。だから、段階的に負担率は上げなければなりません。ところが、おれが生きている間は安くしておいてくれというのは50歳以上の世代のエゴイズムです。この議論をちゃんとすべきだと思います。

 マスコミの介護保険のあなたが負担していい金額はというアンケートでは、もっとも多いのが月額3000円、次が月額5000円です。これは個人の負担のことですから、保険料は6000円でもいいということです。しかし、厚生省が出してきた案は2500円なのです。政府よりも市民が高い負担を引き受けようといったはじめての事例が介護保険です。

4.現在の国会情勢(この講演時である4月17日現在であり、5月22日に40歳〜64歳までの加齢条項は修正できずに介護法案は与党3党と民主党の賛成多数により、衆議院を通過した。)

 国会の情勢ですが、沖縄の特別措置法をめぐって保保連合が形成されかかった。その中心が梶山官房長官と中曽根元首相です。かれらは介護保険反対派です。自民党も当初は今国会で医療保険は通すが介護保険は潰すつもりだったのです。保保連合に青ざめた加藤紘一グループと民主党が部分連合を組んだわけです。

 国会での修正は1万人委員会が軸になりました。樋口恵子さんが代表です。自前の力で介護保険をより市民の期待に近づけていこうという団体です。3つの修正が軸となって議論されています。1市民団体が修正案を対案として出し、国会の中で実現するというのは政治的に大きな意味があります。本来、連合がやればよいという議論がありますが、介護保険に対して最後まで粉砕を叫んでいるのは、新進党の中野寛成氏です。旧友愛会なので連合は非常に動きにくい。この中で、専門性の高い市民団体が中心になっており、これをどこまで修正できるかが民主党の役割です。

 

Y.「医療保険改革について」

自治労本部 藤井博健康福祉局次長(報告のメモ)

1.健康保険法の一部改正

厚生省の考え方

 政令で定める審議会「医療保険構造改革審議会(仮称)」において、医療保険制度及び老人保険制度の在り方やその全般にわたる改善に関する基本的事項等について調査審議する。

 医師会、健保連など利害関係者をはずす。そうしないと議論がまとまらない。各審議会を一本化しようと考えている。

与党3党プロジェクトチーム

 4月7日 構造改革の方向

 全般的改革

 情報公開、効率化

 提供体制と保険の両面から検討

 機能分担と連携

 外来については、病院指向が強くなっている。高度医療の大病院集中 改善が必要なのでは。ホームドクター制をつくるのか?

 必要を上回る病床数の適正化

 社会的入院ーー在宅医療などが重要

 地域医療の充実ーーかかりつけ医師

 医師の収入面の検討

 医師の研修体制の充実ーー大学病院をかかりつけ医師に開放

 国民に開かれた医療

 3分間診療という内容の改善

 薬の効能等の情報開示ーーレセプト上には書くが利用者には知らされない

 医療機関の規制緩和の問題ーーどのような診療が得意なのかの情報公開が必要

 医療情報システムの問題ーーレセプト、請求の問題とか

2.医療保険制度改革の方向

(1)高齢者

 高齢者の所得や年金を含めて、高齢者の高額所得者に自己負担を求めるべきではないか。どこで線を引くか、事務上の問題を含めて

 低い医療給付しかうけれないのはどうか。

 高額資産保有者の問題、所得把握の問題

(2)診療報酬

 現在出来高払い制

 老人特例病院ーーまるめ払い制ーー定額制

 与党3党は出来高払い制と定額制の両立をめざす。医師会は反対

(3)薬価の問題

 薬の使用を押さえる。診察単価が低くて薬が3割を占める。大きな議論

 28兆円中5〜10% 薬価差益最低1兆円 ブラックの部分 大きな割合

 与党3党も具体案を出し切れていない――医師会の圧力

(4)老人医療費

 *A案 全高齢者を対象とした独立の保険制度を創設する

 *B案 高齢退職者等が被用者保険制度・国保制度それぞれに継続加入

 *C案 医療保険制度を全国民を対象とするものへと統合し、その中に高齢者を位置づける

 *現行体系 

 自治労としてはまだ分析しきっていない。与党3党プロジェクトチームはA.B案並列となっている。

   

Z.質問に対する回答

1. 訪問調査

池田省三

 市が派遣して訪問調査を行う。この訪問調査はマークシートになっていて、軽度〜の割り振りをする。これを要介護認定審査会で専門家が複数で合議するわけです。政令で決めるわけですが、医者、看護婦、保健婦、OT,BT,社会福祉士、介護福祉士などです。被保険者などもいれろという議論もあります。一番入れたくないのは医者ですが。

そこで認定をし、不満がある場合には、都道府県ごとに介護保険審査会で不服審査をしてくれます。さらに不服の場合には裁判所に訴えることができます。

 審査会はサービス提供側、被保険者側、公益委員です。

2.ケアプラン

池田省三

 自治体もサービス機関も作ることができますが、一定の資格者がケアプランを作ることになろうと思います。医者、看護婦、保健婦、OT,BT、社会福祉士、介護福祉士などです。

3.現金給付

池田省三

 現金給付は日本の介護保険では当面採用しないことになりました。論理的にはあってもおかしくはない。

1 家族の介護のご苦労さん賃 の考え方です。東京都の寝たきり手当。現在55000円くらいです。

2 本人にお金を渡して、本人が家族や友人知人の労働を買うというスタイル これはドイツ型です。

3 介護している者に賃金として現金給付をするやり方 スウェーデン型です。家族を臨時の地方公務員としてヘルパーの賃金を払うわけです。

 日本の場合、社会保険ですから本人以外に給付を渡すことはできません。家族に対する慰謝料は不可能です。保険事故に支払うわけです。ドイツのような形にせざるをえません。ところが、いまの日本で現金給付をすると自治体が基盤整備をさぼることは日を見るよりも明らかです。町村会代表で茨城県東町の成毛町長というのが老健審で最後の最後まで現金給付でなくてはだめだと強力に主張しました。東町は老人福祉サービスはなにもありません。これでは現金給付しかないなと思います。しかし、現時点でやると取り返しの付かないことになります。2005年からサービスが一定限度回り始めた段階で検討すればよいというのが自治労の意見です。

 介護法案をじっくり読むと、バウチャー方式=チケットで福祉サービスが買えます。離島という特定のところでは可能です。これを強く求めているのが新進党です。バウチャー方式をすると非常に得をするグループがあります。農協です。創価学会、共産党の人もそうです。それ以上に広げるのは2005年以降がよいと思います。東京都はチケット方式をとっています。お歳暮、お中元に使われたりもしており危険です。

4.ヘルパー

池田省三

 ヘルパーですが、現段階では難しい。医療保険に診療方式があります。介護もどのような介護がいくらかという公定価格がつく。ドイツの介護報酬ですが、1つ1つのパケージに値段が付く、ドイツでは専門家がやると1時間当たり51マルクになるようになっている。専門家でない人は35マルクになる。介護の程度により交通費がつく。これは加算です。1日400マルクから450マルクになる。ドイツの場合にはわりと高い。日本は家事援助は2100円、これが介護報酬への第一歩です。ヘルパー業務は家事援助と身体介護は分離する。1件時間で家事援助と身体介護をやる、そのほとんどは家事援助である。これでは値段のつけようがない。民間サービスが入ってこれない。高すぎるわけです。そこで、家事援助と身体介護を分離し、家事援助は1週間のサイクルでわりと安く、身体介護は1回では何時間もいる必要は全くない。10分程度で十分である。それをスポットの巡回型で回していく。これを2000円として1時間で10000円になる。2級ヘルパー1級ヘルパー、介護福祉士などの専門性の高い部門は身体介護中心になるのでは。

 いったいだれがやるかですが、35%は社協ですがここに民間が入ってくるかどうかですが、高ければ民間がどんどん入ってきて、民間中心に移っていく。ベンチャービジネスでコムスンというのが福岡で展開している。北海道ではジャパンケアサービス、ベネッセ、セコムも展開し始めている。大手では損保、生保系です。損保は東京海上火災です。明治生命、松下、雪印などが展開している。ヤクルトや日本生命などは女性の使い方のノウハウを持っている。このままでは行政関連は負けてしまう。外務員を集めてホームヘルパーの研修をやっています。

 地方と都市圏ではいろいろ違います。地方では社協、や公社などが中心になります。

 措置制度で行われているホームヘルプサービスは家事援助が中心であるにも関わらず、埼玉で調べると1時間7000円です。東京都の三多摩では6700円、横浜では10000円以上と、行政中心では非常にコストが高くなる。また、1時間10000円などという、それほどまでの介護報酬はとてもつけられません。もしそれをすると、ここらへんは超過負担として赤字を抱え込む可能性がある。

5.医療保険改革で開業医の収入

藤井博

 開業医の収入の問題は議論していてもらわなければなりません。勤務医との関係もあります。どこまでが収入として妥当なのかを医師会としても議論してもらいたい。

定額払いの拡大についてはそのとおりと思います。定額払いの拡大がなければ、医療の増大は避けられません。医療の高度化や薬剤の高額化もあり、入り口は定額医療で、その後高度医療へ進むというような患者側の意識改革も必要です。今回の改革で、医師会は薬価のところで高齢者のところを除けと主張していますが、これは一応理にかなった主張ではあります。患者負担で医療費を抑制しようとする考えは基本的には間違いと思います。

 老人医療費のあり方についてですが、老人保険制度へ相当の持ち出しをしていますが、A案でそれがカットされれば保険制度が成り立っていくのかどうか。連合はb案でと考えているようです。

6.要介護認定基準の判定

池田省三

 要介護認定基準の判定ですがコンピュータ処理では、20%〜25%の誤差が出てきます。要介護認定の判定委員の判断が大事です。

藤井博

 社会福祉主事は対象とならないと池田さんはおっしゃっていますが、自治労としては入れていきたいと思っています。

7.ヘルパー

藤井博

 ヘルパーが今後どうなっていくかですが、ヘルパーの形態は多様で、常勤、非常勤、登録、パートなどに分かれています。スッポット型=巡回型の報酬体系が作られていきます。今は家事援助型、巡回型、綜合型の3形態があります。自治労としてはケアマネジメントにヘルパーも係わって欲しい思っています。綜合型のヘルパーは市町村の場所で必要かと思います。全部が全部必要かどうか、実務型と分けていくかは今後の課題です。

 介護福祉士ですが、これまで、資格によって差別をしないという方針でした。今後は処遇場の差別が出てくるかと思います。待ったなしで議論をしてまいりたい。

8.チェック表

池田省三

 チェック表は現在モデル事業で実験中であり今後手が加えられると思います。

 ケアマネージャーの育成ももモデル事業で具体的に詰めていくことになります。

9.保険料の徴収

池田省三

 保険料の徴収もアメリカ型のように社会保険庁と国税庁が合体したような組織でやればいいでしょうが、ヨーロッパでは労働組合が強いのでそうはなっていません。しかし、所得税を中心にして市町村が自前で徴収し自前でサービスを実施するというのが北欧ですから、日本の基礎自治体とはかなり違います。

 保険料は段階別定額方式、40〜64歳までの勤労者は所得比例方式です。ヨーロッパでは所得比例方式です。ドイツでは1.7%などとなっています。所得比例方式が一番いいに決まっていますが、日本では自営業者の所得の補足がきちんとできていないために、定率法式を一律にすると自営業者が非常に特をしてしまいますので、定額を入れたり定率を入れたりとややこしくなっています。これは大蔵省の責任です。スウェーデンでは国民総背番号制ですから所得の補足は完全にできます。

10.再度 ヘルパーの問題

池田省三

 ヘルパーの問題ですが、在宅のヘルプはまずケアプランですが、メディカルケースワーカーがかなりできます。訪問看護婦、社会福祉士が標準的な介護プランを作ります。ケアプランは非常に細かいアセスメント表にチェックしこれをコンピューターで処理して出します。次にその家の事情に合わせ、現場の訪問看護婦、介護福祉士が中心になって作ります。それに合わせて巡回ヘルパーなどが動いていくということななります。やる気の問題もあり、現場のヘルパーにもフレキシブルな権限を与えることです。行政マンであるものはどうすべきかですが、現場のヘルパーにはそう高い賃金は払えません。パート労働者が現れてきます。どこを直営、どこが三セク、どこが民間かは今後の課題です。

 ただし、すべて民間とすると水準が落ちることがありますので、モデル的に超過負担覚悟である部分を持つことは必要です。

11.要介護認定での市町村の役割

池田省三

 要介護認定は都道府県なので安心したという声がありましたが、市町村では訪問調査はしなければなりません。市町村の役割はかなりシビアです。かつて、島根県では施設措置権を市町村に委任したところ県への逆委託という事態になりました。それは結局もとへ戻りました。市町村で構成する広域連合に県が支援するするというパターンではないかと思います。