第15回ちょっといって講座

地方分権と政策法務      阿部泰隆 神戸大学法学部教授

1998/12/2 PM 6:00−      福井県国際交流会館 2f 

 

要点 地方に権限が委譲され、自主的に決定される余地が増えることから、住民自治の観点に立った自主立法を工夫すべきである。そのためには、国法の制約を乗り越えることと自主的なアイデア、それを煮詰める理論的努力が必要である。

 

第一部 地方分権

地方分権推進の動き

中央集権体制の弊害と地方分権の必要

 今日は、地方分権が進む中、自治体にどのような法的工夫ができるかを考えたい。

 政策法務とは政策課題を立法化するのはどうしたらよいかを考えようとしています。立法の提案もなかなか実現しないわけですが、その原因に、どこかでやると真似ようかという日本人の性癖があります。みなさんには一番最初にやろうという元気で頑張って欲しい。

 余談ですが、日本の自民党筋の政治家は新しい法律の提案にはなかなか乗らない。諸外国ではどうなっているかと聞く。そのため、ずるずると遅れる。OECDの中で最後だといわれて、しょうがないからやるかというのです。環境影響評価法も行政手続法も先進国中の最後になりました。恥ずかしくて先進国といえたものではない。情報公開法はまだ国会で店晒しです。自治体レベルでも、まともな先進国なら、住民が議論して制度を作っている。

 スウェーデンは人口800万人で、日本からみれば小国ですが、「寝たきり老人のいない国」として、日本人はたくさん見物に行く。たしかに、寝かせっきりにしていない。この国は環境も先進国。情報公開法もスウェーデンが模範です。自分たちで考えるわけです。100点の答案でなくても80点の答案は書けるのです。

 今、地方分権推進法が出来、委員会で勧告してもらって(これは拙著『行政の法システム下(新版)』(有斐閣)に出ている話です)、地方分権推進計画を閣議決定し、今度は法律を改正していくことになる。いまのところ、中央官庁が都道府県に権限委譲していく。都道府県から市町村への権限委譲はこの先だということになっています。ただ、一部、市に権限を委譲しているものもある。機関委任事務を自治事務にする。国と地方の関係は対等の関係であるが、国の方で縛りたいものがある。それを法定受託事務という新しい名称の事務にします。通達というわけのわからないものではなく、法令で縛る。そこで、自治体の役割はちょっと増えた。財源が無くてもできる政策も一杯ある。

 そうすると、これから、地方で自主的に決定できるものが増えるはずです。そこで、住民自治の観点に立った自主立法を工夫すべきです。今でも自主立法はできるが、可能性がもっと高まる。国の法律には縛られるから、国法の制約を乗り越えることと、自主的アイデアが必要です。アイデアだけではだめで、理論的にきちんと出来ているかどうかも重要です。

中央省庁等改革基本法、補助金の見直し

 中央では中央省庁等改革基本法ができました。各省庁設置法改正はこれからですが、まもなくできる。補助金の統合と公共事業の見直しなども検討されている。総合補助金になり、個別補助金をやめれば、中央官庁のかなりの課が要らなくなり、自治体の方で工夫ができます。

 イギリスの被災者対策を調べました。西の海岸が崩れたときに、そこの自治体が弁当を出すとか被災者をいろいろ助けました。日本なら災害対策基本法で国が知事への機関委任事務として金を出すわけです。そこで、弁当代をいくらにするかも厚生省の課長が決めることになる。阪神・淡路大震災の時、最初弁当代は850円だったので、不満が多かった。神戸市はもっと上げたかったが、厚生省はなかなかうんと言わない。(1月17日の震災から)3月になってようやく1200円になった。

 これが自治事務であれば、もっと早急に改善できたはずです。川西市は自分の判断で弁当の質を上げたらしいが、神戸市は被災者が多かったから、とんでもない負担になるということで、厚生省がうんというまで値上げできなかった。

 ただ、日本人は神戸・尼崎・芦屋の弁当の値段はみな同じという考え方をしやすい。神戸が1200円、芦屋が1000円の弁当だったらどうか。みんなで決めた自治事務ということで納得するだろうか。日本は弁当代いくらまでということも中央官庁の指示ですが、これで何とかなっている面もある。自治事務にして、総合補助金にすると、ここが悩みです。

 このように、日本の仕組みは、縦割りの補助金行政です。イギリスは違う。災害対策補助金は個別に積み上げずに、全体なかの一定割合でぽんと出す。使い方は自治体で自由に決めるのです。

 ところで、仮設住宅は基本的に無駄だったと思っている。民間住宅を借上げて家賃補助をしたほうがよかった。イギリス流なら、各自治体の判断でこのような方法も採れる。

自治体の政策法務

条例制定権の限界

 地方分権の推進で、地方の自主性は増大するでしよう。機関委任事務は国の事務ということで条例が制定できなかったが、このかなりは自治事務化するので、条例制定権が拡大し、自治事務にならないのは法定受託事務では、法令の授権がなければ条例制定権はないとされるが、国の監督が通達ではなく、法令で行われます。また、法定受託事務でも、上乗せ・横出し条例の可能性は残ります。官によるコントロールから住民による自治への時代です。

 これまでは、たとえば、建設省がうんといわないということで住民を抑えてきたのですが、これからは、市役所で決められるのだから、住民のことを聞けという圧力がかかる。議会を活性化させて考えることになる。

 しかし、依然として、「条例は国法の範囲内」、国法の枠内に縛られる。国法の授権も、どこまでかはっきりしない。うっかりすれば違法になる。よく検討しなければなりません。条例事項かという議論があります。住民の権利や義務に関係する場合は条例をつくらなければなりませんが、住民の権利義務に関係なくても、条例化する動きがあります。

第二部 政策法務

一 政策法学とは

 1.政策法学

 政策法学とは立法学のことである。法律学の中心はこれまでは解釈法学です。特定の法律の意味はどうなっているかを解釈するのが仕事である。法律が明確に出来ていれば法律学などはいらない。しかし、法律が明確ではない、矛盾している、抜けている等、立法者の不十分なことの尻拭いをやっているのが法律学者と法曹です。

 解釈の余地のない法律をつくるべきです。かっちりした、内容のいい法律をつくる必要がある。これが立法学になる。そのさい、政策課題を法制度化につなげようというのが私の主張している「政策法学」です。

 2.解釈論と立法論

 法律をつくるのは法律家の役割だと思っている人が多いのですが、間違いです。法律家はいままでの法律の運用しています。これを正しいと思っている。ちょっとぐらい不合理があっても、解釈で直そうかなという発想です。法律が間違いだ、全部改正しようという場合、いままでの法律で飯を食っている者は損するという気がすることもあるので、かれらを入れれば、泥棒に金庫番をさせるようなものなのです。

 日本では裁判官は中立だと思っていますが、いまの法律を運用してうまくやっているから、いまの法律でいいと思っている。彼らは立法には向かないのです。

 私は、定期借家権や司法改革を提言しています。司法改革とは、国民が司法にアクセスしやすいようにしようということです。司法自身では自分たちがめしを食える改正しかしない。諸悪の根源は最高裁の官僚人事だといわれていますが、かれらは変える気はない。弁護士会はといえば、弁護士が増えると飯を食えなくなるのではと反対する人がいる。行革会議では行政官を外して会議をした。「まな板の鯉が包丁を持つのはおかしい」と私たちは提案しています。

 現在の借家法では、いったん貸せば更新・更新で、貸した人が使いたいといってもなかなか返ってこない。だから、なかなか貸さない。私の家のそばでは18年も空き家になっている家もあります。

 定期借家権では、他に高く借りてくれる人がいれば、期限がこればこれまでの人に出て貰って、そちらの人と契約してもよい。それなら貸す人も増える。転勤で空けているとか、老人で部屋が余っているとかいった人は永久に貸すわけではないので、必要になればいつでも戻れるというのなら貸してもよいと考えている。こうした家の多くは償却が済んでいるから安く貸せる。借家は余っていますから、貸す人が増えれば、まともな借家人は、たとえこれまでの借家からは追い出されても、困らない。

 分譲マンションを買って、ローンを払う時代はすぎたのです。定期借家権を導入すれば、分譲マンションはつぶれるというのが私たちの説です。借りる方が得ですから。

 しかし、ここに弁護士が入ると、まともな議論をしません。弁護士は借家法で儲けています。家主が借家人に出て行けというと、トラブります。弁護士に頼むと、着手金40万円等々といって、すぐ100万円くらいかかる。地価が上がっているときは、立退き料だといって、地価の3割くらい取る。1500年分の家賃を立退き料として取られた家主もいます。1億円を家主が払えば、何百万円を弁護士が取ったりする。弁護士が高額所得者だといっても、何百万円何千万円と儲けているわけではなく、何十万の小口をたくさんやっているのが普通です。そう難しくない案件で100万円というのは悪くない。

 こういうことですから、定期借家にして、期限が来たら黙ってでなければならないとすれば、弁護士の仕事が減りますから、彼らは本能的に反対に回る。こういう職業集団には借家法の立法を任せるわけにはいかないのです。

 このような紛争は社会の無駄です。社会の富が増えるわけではない。そのようなことが必要のない社会の方がよい。

 「製造物責任法」ができた。製造物に「瑕疵」があれば責任があることになる。この立法当時、瑕疵とは何ですかとメーカーが聞きましたが、裁判官は、これでいい、何か起きたらわたしが判断してやるというのです。しかし、我々としては、どういうルールがあるのか、どうしたらルールに引っかかるのかを事前に知りたいわけです。神様である裁判官が判断してやると言われても困るわけです。しかし、裁判官には国民に分かりやすい法律を事前につくるという発想がないのです。彼らは法律家ですが、法律を作る資格に欠けます。

 

二 政策目的

1.政策目的の点検

 政策をつくるときは、その目的が妥当か、吟味する必要がある。みんなで議論すれば目的の妥当性は分かることが多い。その例を挙げます。

2.福祉施策の点検と困った順に支援するシステム福祉施設

 福祉施設は本当に必要な人に供給せず、それほどでない人にも供給しているのではないか。重度障害者・知的障害者・痴呆性老人などは福祉施設で介護することになっている。福祉事務所がこの人をお願いしますといえば、福祉施設はこれを受託しなければならないことになっています。契約自由ではないのです。私的サービスではないからです。

 ところが、実際は福祉施設はいやだといえる。福祉施設は、1人定員が空けば、いろんな福祉事務所に聞くわけです。福祉事務所は入りたい人を一杯抱えていますから、頼んでくるわけです。そうすると、福祉施設は好きな人を選べるという殿様商売になるわけです。我が大学もそうですが。選ぶ立場だといばっています。

 病院は違います。是非うちに来て下さいということです。常に定員が満杯になっているわけではないからです。厚生省の方針では、新しい50人の施設をつくらなければならなしとして、この地域は30人しかいないのでつくれません。70人いればつくれるでしょうというわけです。常にお客が多いわけです。だから、福祉施設は、軽い・中くらいの症状の人を選べるわけです。収入は定額制で、みな同じ額だからです。もちろん重度加算もあるが、重度にも幅がありますから、夜、職員がたりないから、夜騒がない人・縛られても我慢する人を選ぶ。本当に重い人は在宅となる。話しは逆です。

 この解決策としては、本当に重い人も施設が受入れるようにしなければいけない。重い人でも引き受けて損をしない、最重度加算のしかけをつくる必要があります。老人病院も定額制になってきますから、3ヵ月で出て下さいということで、病院をたらい回しになる。本当に重い人は余分に金をつけるしかない。人が足りないといわれるが、遠くの施設にやるから家族が行けないのであり、近くに施設に入れれば、家族が交代で手伝う方法もある。

 失業者が失業手当てを貰って仕事をしないで遊んでいるのも無駄です。失業手当が高すぎる。失業手当を減らして、福祉施設で働けば手当てが貰えるようにしたらどうか。

 犯罪人を刑務所に入れておくのももったいない。アメリカでは刑務所が足りなくて、捕まえたのに犯罪人にしないケースもいっぱいある。作業刑というのがあって、福祉施設で作業したら刑務所に行ったことにするのはどうか。岡光前次官が刑務所に何年か行くのはもったいない。福祉施設で老人のおむつをちゃんと取り替えるということをすれば、看護婦やケースワーカーよりやさしくやりますよ。

 年金暮らしの人も暇で困っている。週に半日3回ぐらいならば手伝ってくれる人はいっぱいいると思います。そこで、働いた労働を貯金しておく。将来自分が介護を要するようになれば、その貯金で余分のサービスが受けられるという案もある。ホームヘルパー週2回来てもらえるサービスがあって、5日来てもらいたいというときに、昔の貯金を出しなさいといったことです。

 小中学校ではいじめがあるので、川西市は教育オンブズマンをつくるそうです。福祉施設内のいじめは、だれもいないときに行われるから、なかなか表に出ない。本人たちにはものを言えない人が多い。告発すれば、犯人探しが始まって、出て下さいと言われてしまう。出れば次に行くところがない。福祉オンブズマンをつくりたいが、どうつくればいいのか。

 対策は難しいですが、中を開放する。外の人と昼間もっと交流する。普通の人が入れるようにするといったことが考えられます。

 役人も、職員と金がたりないので、動く人は「抑制」と称して、縛らなきゃならないという。金と人をつけるしかない。国からくる措置費は安いからこれ以上は出せませんというが、自治体が上乗せするとか、家族を使うとか工夫できる。そのためには、出来るだけ自宅近くの施設に入所して貰うようにすべきです。遠くの施設に入れると、ちゃんと世話ができない。

 神戸市などは老人市内無料パス制度を持っています。元気な老人はパスを持って遊ぶ。ところが、その老人が痴呆になったときに自治体は何をやってくれるのか。施設は縛り付けで、2年待ちですからなどという状況で、家族はお手上げです。これでは逆です。元気なときバスに乗りたければ片道200円くらい出せばよい。老人が金が無いというのはうそです。若い人より可処分所得は多い。冠婚葬祭と孫の小遣いで金がかかっているだけです。

 老人パスをやめるというと、福祉の後退だといってたたかれるからできない。無料パスをやめるかわりに、ホームヘルパーをいっぱい雇って、週1回ではなく2・3回しますよということであれば、住民も納得すると思う。しかし、市長はそれを説明する勇気がないわけです。無料パス廃止反対、ホームヘルパーを増やすなら、金は別なところからもってこいということを言う人がいっぱいいるからです。老人医療費の軽減も同じです。兵庫・大阪・東京は65歳から医療費を安くしています。兵庫県は140億円をかけています。たかがかぜの老人医療費をやめればよいわけですが、やめるというと知事の政治生命にかかわる。140億円あれば福祉施設も相当できるし、ホームヘルパーもたくさん派遣できる。病気になればそれなりの負担をすればよい。

 福祉の基本条例をつくれば、福祉の見直しができます。ホームヘルパーか老人医療費を出すか、無料パスかという並列では、施策の順位が全然分からない。困った人を助ける、軽いときは自分で頑張りましょうというルールをつくれば見直しにも納得できるのです。

 3.交通取締り

 バス停用側道ですがバス停にはならなかったので遊んでいる空間に駐車したところ、一帯の道路が駐車禁止だったので、駐車違反で捕まりました。この行為は憲法上禁止できるのかが問題です。駐車禁止は交通妨害になるとか交通事故の発生のおそれがあるという理由だからです。側道に停車した車は交通妨害をしていない。駐車禁止の必要性がないから違憲無効というのが私の主張です。警察は交通事故防止が目的であるにもかかわらず、それを忘れて、どこで捕まえても1台は1台だという発想でやっている。鼠取りも安全なところでやっているわけです。目的の転移です。こんな楽な仕事をやっていても、交通事故は一向に減らない。

 事故に繋がりやすいところで取り締まりをすべきです。危ないところを捕まえて、危なくないところは捕まえないようにするにはどうしたらよいか。

 「道路交通取締法」というのが悪いのであって、「交通事故撲滅法」にすべきです。交通事故を減らすという目標を与えて、それを達成すれば、交通課長、署長を誉めてやる、勤勉手当てを増やせばよい。結果責任でもよい。そうすれば、交通標識も見やすくするはずです。今のように、標識をいっぱいつくっても、運転者の立場を考えて作っていないので、見れるはずがありません。

4.公共事業

 公共事業が伏魔殿になっています。対策としては、私は評価基準をつくるべきだと思います。目的をはっきりさせ、費用対効果などいろいろ分析して、その上で決めるべきです。合併浄化槽の設置義務を例としますと、下水道は都市では効率がよいのですが、田舎では家が点在していますので、効率が悪い。一人当たり110万円かかるとかいわれていますし、施設整備に時間がかかる。大阪の寝屋川などは、下水道が来るといってずっと遅れてなかなかこない。合併浄化槽を義務づけなかったので、ひどく汚れてしまったわけです。水道水として飲めないわけです。淀川の水はまだ飲めます。

 合併処理浄化槽(1つの家で台所・風呂・トイレの水をいっしょに浄化する。)なら一軒ごとにつけるので、早い。60万円ぐらいでできます。単独浄化槽(トイレの水のみ)しかつけないと30万円ぐらいです。厚生省がこの差額を基準に合併浄化槽に補助をだしています。下水道よりはずっと安い。時間と金のファクターを考慮すべきなのです。

 ついでに、今の都市計画法とか役人の考えには時間と金の要素がない。道路を広げるといって、自分で勝手に線を引いて、いつできるのかわからないが権利制限だけはするというのが、今の都市計画法なのです。こんなものは計画の名に値するのでしようか。

5.図書館の事業の評価

 図書館はどんな仕事をしているかというと、何万冊ありますという。だれも見なければ意味がない。そこで、年間貸出し数何万冊という。では、みんなが借りる雑誌や漫画をおけばいいのかです。冊数ではなく、何万円分貸したかを評価基準ににしたらまだましだ。冊数で比較されては、私の本は7000円ですので、1冊350円の漫画の本には対抗できません。しかし、金額なら漫画20冊分になる。バーコードで計算すればよい。こうすれば、図書館は高い本も買ってくれる。本当に必要な本が図書館に充実し、その図書館は高く評価される。

6.震災対策−早く、安く、公平にみんなの生活を取り戻す

 阪神大震災の後復旧策の多くは基本的に間違いというのが私の考えです。マンションの再建の話しですが、建て替えるのに何年もかかって、被災者は非常に苦労をしています。建て替えは4/5の賛成で良い。1/5の反対があってもよいということとになっていますが、4/5の賛成を得なければ何にも出来ない法律となっています。売るには全員合意でなければなりません。しかし、全員賛成なんてめったにないですから、時間を食う訳です。みんなくたびれているのに、それでは生活復興はできないでしょう。

 私の説では、みんなが同じ場所に戻らなくてもよい。みんな元の家に戻りたいというのはうそです。隣のところで家を買ったり借りたりして住んだ方がよっぽど早い。マンションの共有権を売ってローンを外して、次の頭金にした方がよい。

 法律学者の多くは多数決で売るのは人の物を売ることになるから憲法違反だという。全員合意でなきゃいけないという。そうすると、マンションの敷地は売れないから、土地が死ぬ。共有地は、売るか建物を建てる以外は何の値打ちもないからです。マンションの共有地の財産権を守るのが目的ではなく、その財産権を活用することを目的にすれば、多数決で売ってよいはずです。これは一種の収用のようなもので、土地を有効活用するという公益のために強制的に取り上げるが、その代わり代金を貰えるので損はしないのです。そうすれば、早くみんなの生活を公平に取り戻すことができます。

 

三 政策実現の法的手法の工夫−そのさいの留意点

1.既存制度の仕組みの理解

 たとえば、土砂放置禁止条例を例にしますと、各地で条例をつくっています。廃棄物なら廃棄物法で取り締まれる訳ですが、土砂というのは廃棄物ではなく、規制する法律がないので条例をつくる。

 しかし、条例をつくる直前に駆け込みで土砂の廃棄を始める業者がいる。先手必勝で行政が負けてしまう。困ったなあとなる。

 しかし、条例施行前に事業を開始した業者にも、改善命令は出せるのです。現在迷惑をかけているからです。そういう条項を入れればよいのです。

2.法律や条令の委任の範囲−昼窓手当条例を例に

 熊本市で昼に1時間窓口を開けることを市民から要望された。これをやろうというさいに、組合からいわば慰謝料として昼窓手当を要求された。建前は特殊勤務手当てです。金額は一回1,000円です。

 周辺自治体でも手当を出しているのでうちでもとなったようです。しかし、周辺の自治体では条例に書いてある。ところが、熊本市は市長決裁で決めてしまった。大雑把すぎる。 委任立法の範囲を超えたということで、熊本市は裁判で負けました。条例で決めても額には問題があると思いますが。

 周辺自治体でやっているかどうかを調べるのではなく、条例で決めているか、規則で決めているか、また裁判で通るかを考えながら制度をつくる必要があります。

 茅ヶ崎市の第三セクター職員派遣事件ですが、茅ヶ崎の商工会議所へ給料市持ちで専務理事を出したというものです。市の給料持ちでなぜ商工会議所の仕事をさせられるのということで、裁判になり、市は高裁では勝ったものの最高裁では差し戻しになり、市が負けそうです。周辺自治体を見回したら商工会議所へ人を出しているので出したということですが、他の自治体は仕事があって出している。茅ヶ崎市は専務理事なのです。一番偉い人が市の職員では独立の組織として筋が通らないという気もします。

3.条例制定権の限界

 ラブホテルについては、国の法律(風営法)では一部だけ禁止されています。国の法律でのラブホテルの定義は、回転ベッドがあるとか全身を写す鏡があるなどです。外からいかにラブホテルに見えても法律にひっかからない訳です。そこで、国の法律で禁止されていないところで条例で禁止する必要があります。ここでは、この条例は法律に違反しないのかという議論になります。国の法律で禁止していないところでも、地域的に合理的理由があれば禁止できる。全国的には、規制の必要性は高いところもあれば低いところもある。法律で禁止する場合、一番低いところで禁止するしかないない。そこで、必要性が高ければ地域的に禁止することは許されるわけです。

 しかし、宝塚市のパチンコ店条例は大阪高裁で敗訴してしまいました。長崎の飯森町事件というのがありますが、「学校付近」というだけで学校から700m離れたラブホテルを禁止しました。学校付近で700m先までもかとなる。旅館業法は100m以内だけ禁止ですが、そばではなくても通学路とかがありますから、上乗せして規制することは合理的だと思いますから、条例で出来る。ただ、禁止して良いことと禁止しないところを現場で振り分けよということになりますが、住民は自分たちの地域はみな禁止しろと言い出しますから難しい訳です。しかし、全部禁止は法的に無理です。ラブホテルもつくる自由がありますから。

 私は外観で規制すべきだと思います。客観的規準はありませんが、みんなが見ていやらしいとかいう基準です。回転ベッドなどは誰にも迷惑をかけている訳ではありませんから基準にはなりません。警察はラブホテルには必ず回転ベッドがあるといいますが、逆は必ずしも真ではありません。

 今自治体がやっているのは、客観的であるために、食堂がないもの、ロビーがないものと定義していますが、ではカプセルホテルはどうなるのか。やはり、外観で規制した方がよい。

 4.公共性

 犬猫補助金がありますが、飼わない人の税金でなぜ補助金を出すかは疑問です。しかし、出さないと野良猫野良犬がいっぱい増えて困る。補助金で少しでも子猫・子犬を減らせば助かるというわけです。犬猫を飼う人から税金を取って、補助金を出すべきだと思います。犬なら出来そうです。犬には登録があるから、登録料を高くして、それを財源に補助金を出せばよい。猫の登録は出来ないでしょうが。

 ごみ有料化が最近導入されるようになりましたが、日本の場合はまともな有料化ではない。50円くらいでは捨ててもたいした金ではない。ドイツではゴミのポリバケツの大きさで金額が違う(従量制)。ゴミ行政は独立採算制です。いっぱい出すとたくさんお金を取られるからゴミを減らそうとなっている。日本は無料がいいということでやってきたが、基本的に間違いです。ゴミ以外に無料のものは何かあるでしょうか。生活に不可欠な水道の料金も独立採算制です。

 ゴミ無料を正当化する理屈はシビルミニマムなどではなく、不法投棄対策です。ゴミ料金を高くしても不法投棄しないようであれば取った方がよい。その代わり、市民税をまけるという方法も筋がとおる。これには地方税率を条例で自由に上げ下げできるように改正するのが先決ですが。

 5.政治的な実際の分析

 私はアンケート調査は嫌いです。どういった政策を採るかというときに、アンケート調査するのは衆愚政治です。まじめに考えている暇がないからです。無料パス廃止というと、反対が多いはずです。代わりにその財源でホームヘルパーでも出せなどと考えている人はいっぱいはいないわけです。意見という欄はあるが、いちいち書く暇はない。ホームヘルパーを出せというのは数人、無料パス廃止反対は何万人となり勝負になりません。

 その前に100人か10人かの住民に集まってもらって、議論して、その上でアンケート調査するならまだ分かります。

 議員ならもう少しわかるだろう。議員が当てにならないというなら、住民を10人程度集めて熱心に議論してもらえばかなりのことがわかると思います。

6.代替案の比較

 制度をつくるときには代替案を比べるべきです。昭和40年代に水が汚れた、汚いということで水路に蓋をしたところが多い。ところが、水はますます汚れ、車は増えて渋滞は少しも良くならない。路面電車も邪魔だと廃止して、車がすいすい走れるかというとそうではない。水をきれいにするという当たり前の代替案を忘れたためです。

 私の故郷の阿武隈川の水が汚れてきた。その水を水道水源に使うのは良くないということで、支流の摺上川にダムを造って、その水を飲むのだという。何を馬鹿なことを考えているのでしようか。汚れた阿武隈川の水をきれいにしてその水を飲むというのが本来の代替案です。ダムではなく合併浄化槽や農村集落排水事業ですよ。

7.法の明確性の要請

 法制度をつくるときには明確にすることを肝に銘ずべきです。不明確な法制度が多いですね。 

 水質汚濁防止法が改正されました。「有害物質に該当する物質」を地下に浸透させたとき、浄化命令を発することができるとなったのですが、これは何でしょう。「りんご」ではなく「りんごに該当する果物」です。メロンですかというと、違うという。内閣法制局によると、排出したときは有害物質ではなくて、あとで有害物質に指定されたものが「有害物質に該当する物質」だそうです。それなら、「排出したのち有害物質に指定された物質を含む」と書けば良いわけです。

 「妻に該当する女性とデートした」と考えると、デートしたときはまだ妻ではなく、後で妻になったという意味ですが、そのような日本語の分かる人は法制局以外にはいないでしよう。だから法制局は要らない。普通の人が分かる日本語で書くべきです。注釈書がないと意味がわからない法律ばかりだから、注釈書が儲かるのですが、これは異常なことと考えるべきです。

 私たちの提案した定期借家権法も、法案は議院法制局でつくったので結局分からない条文になってしまいました。分かりやすい条文を提案したのですが、それを通すほどのエネルギーがありませんでした。

 

四 具体的な制度設計

1 政治倫理条例

 資産公開条例はまず堺から始まりました。汚職なんて資産を公開してもわからない。正直に申告する人はいません。川西市でつくるときに私に意見をもとめてきたので、政治倫理条例ということで、くだらない個別案件で行政に口をだすなとした。つまり、「議員は公務員の昇進・採用、公共事業の入札などで不当に圧力をかけてはならない」という条文をいれてもらったのです。その後、隣の尼崎市は川西市の条文を知らなくて、昔ながらの条文をつくってしまいました。今回の和歌山市の例でも、選挙民から頼まれてどんどん職員を採用するという無茶苦茶なことをやっています。「ともかく話しを聞いてやれ」と議員が頼んでくる。

 そんなことを議員にいわせないようにすることこそ、政治倫理条例です。うちは政治倫理条例がありますと一言言えば良い。そういう条例がないと、職員は筋の悪い依頼であれ、うっかり断れば干されちゃう。

 議員は個別案件の処理が必要なら、オンブズマン条例をつくるべきです。

2.福祉の基本条例

 老人は弱者ではないのです。資産と所得をしっかり捕捉する必要があります。特に資産を捕捉しないで福祉の給付をやっているからインチキがいっぱいあるわけです。大蔵省は「クロヨン」はないと言っていますが、ある自営業者は所得税をあまり納めていないらしいのですが、2600万円のベンツに乗っているのです。バーに行ったら、ママさんに月給50万円を払っているのに源泉徴収はせず、消費税を払いたくないといっています。国家の運営費は一円も納めたくないということですが、これでは国家はうごきません。

 ドイツに災害被災者の支援の調査に行ったら、所得だけでなく資産も調べるのだそうです。日本では我が市町村所在の資産だけはわかりますが、他の町にある資産はわかりません。自治体が連携して、よそに資産があるかどうかのデーターをつくっていけばいいのではないか。財産がある人は自分で生活せよとすれば、福祉は豊かに公平にやれる。

 老人の福祉サービスですが、ホームヘルパーが事故を起こしたら、役所はホームヘルパーを斡旋しただけでというし、受ける方は、ホームヘルパーを派遣したのだから市の責任だともめます。保険をつけるとかしなければなりません。ホームヘルパー派遣条例などできちんと決めるべきです。

老人の年金などの解決策はリバースモーゲ−ジです。老人になったが現金がない。早く死ねば良いが、長生きすると金がなくなるからということで、貯金して金を使わなくなった。死ぬ時期がわかっていれば、それに合わせて金を使う訳ですが、それはわからない。金を死ぬまでちびちび使って、結局財産をたくさん残して死んでしまう。

 そこへ親の面倒を見ない馬鹿息子が相続するわけです。生活保護を受けていた老人が死んでも100万円・200万円残っているとよく言われるのです。 そこで、死ぬときにちょうど財産がゼロになってマイナスにならないようにするのがよい。その制度がリバースモーゲージです。

 60歳の男で、金利4%、2000万円の土地があるのを例にすると、土地を担保にこの人はお金をいくら貰えるかですが、800万円をこの人に貸せるのです。この人が80歳までいくとちょうどちゃらになる。もっと生きると利子が嵩んで、2000万円では担保割れになる。それでも担保割れしないようにするのがこの制度ですが、代わりに、800万円借りて直ぐ死んだ場合には、1200万円を捨てることにするのです。親の面倒を見ない馬鹿息子には相続させない。長生きした人はそれを貰うわけです。生命保険の逆です。生命保険は早く死んだ人への贈与ですが、今度は長生きすると大変なのですから、長生きする人に贈与する。これなら、長生きしても安心できる。無理して貯める必要はありません。法律を作らないでできるかですが、自治体でも土地を預かって、死んだら返しませんということで、売って現金にしますということにする。

 金利の問題がありますが、その分のリスクを税金でみる。地域振興券よりはよっぽど良い。

 福祉手当を貰っている市民税非課税世帯ですが、遺族年金を貰っている世帯も非課税世帯になっています。所得があるのに、手当てを貰えるのは不合理です。非課税だが所得のある人を外せば福祉は公平になる。

 何とか手当が年50万円出る制度があるとして、年400万円までは手当がでるが、ちょっとでも所得が増えるとゼロになる制度がある。これは憲法違反です。自然災害被災者用の被災者支援法にも同じ問題があります。解決策は、401万円稼いだ人は手当を49.5万円とする。ということで5千円よけいにやる。自治体でやっているような福祉手当なら自治体でできる。

 どこかの自治体でこういう制度をもうければ、厚生省も現在の制度を直すはずです。

3.情報公開

 情報公開の閲覧手数料を無料にしろという人がいます。しかし、1年分の接待費を全部見せろとかいって来る人が出ます。役所は全部見せる訳にいかないから、コピーしてあちこち黒く塗りつぶして見せる訳です。膨大な作業量であり、コピー料も大変です。それなりに費用を取ってよいのではないでしようか。

 それで、いんちき接待がばれて何億円返せと決まれば大変な貢献になります。そのような人から閲覧手数料を取るのはおかしい。取りあえず、一定の金額を預かり、それが公共目的に寄与したと認めたとき還付する。だれが決めるかですが、情報公開審査会あたりで決める。さらには、報奨金を出したら良い。

4.補助金基本条例の提唱

 補助金はいいかげんなのが多いですね。納税振興組合に補助金を出していますが、税金は自動振り替えで黙って納めてくれているのに、補助金をいつまでも出している。 補助金を全部年に10%づつ削ればよい。10年で0になる。どうしても必要なら復活折衝すればよい。そうすれば、必要でないものはがんばらないから、無駄な補助金は自然になくなる。

5.教育活性化条例

 教育活性化条例を提案します。公立学校の競争ですが、校長に特別昇給査定権を与えて、優秀な先生をよそから引っ張ってきて、学校が良くなれば校長が誉められるという制度です。校長の評価はPTAとかなんかでやることにします。

政策評価条例

 政策評価条例を作る。政策を費用対効果で分析するとかです。

行政事務削減条例

 政策評価条例の一種ですが、行政事務削減条例はどうでしようか。くだらない事務が多すぎます。部の中に仕事を削減するだけが仕事の人を置く。その成果を公表するべきで、仕事を削減できないとその人のボーナスを削ればよい。裁判官も判決を書かないで転勤してしまう人が多いので、成果を公表する制度を入れるべきです。

住民サービス条例

 住民サービス条例ですが、役所でこの仕事はどこの課の仕事かと聞かれてもわからないことがいっぱいある。組織図に何々課はこの仕事と書いてあるが、この仕事は何々課と書くべきです。「猫」と押せば「何々課」と出るようなものを考案すればということです。

このほかにも、放置二輪車対策条例、青少年保護条例、水不足マンションお断り条例、職員業績評価システム、住民からの意見具申制度、広報の改革、審議会の改革などいろいろありますが、時間が来ましたので、この辺でやめます。私の本をご参照下されば幸いです。

 

「参考文献」 阿部泰隆「政策法学の基本指針」(弘文堂)、「行政の法システム」新版(有斐閣)、「政策法務からの提言」(日本評論社)、「論争 提案 情報公開」(日本評論社)、「大震災の法と政策」(日本評論社)、「行政の法システム入門」(日本放送協会)。

 

質問

 

Q:講演要旨の4.廃棄物処理場・焼却場規制条例という案ですが?

A:廃棄物処理法では国が全国統一規準を決めていて、これで十分だ、自治体で規制するものはないと厚生省はいってきた。しかし、天下のザル法だったとばれてしまった。

 国の法律は最低基準を決めているのであって、地域ではもっと厳しく規制できる。たとえば、管理型処分場はシートを下に敷く。破れるので、地下に浸透するのではということで、浸透が一定以上なら作らせないという規定はある。厚生省は大丈夫だと言うが、地下水が流れているから心配だとなる。それで、水源地帯を外すとか。この地域では管理型はだめだとか。作るのならこれだけの監督をするとか。法律で決めていない監督、たとえば、住民と業者が公害防止協定を結ぶ、トラックで運んできたものを住民もいっしょに見る、処分場から出てくる水も住民が一緒に検査してということを書けば、業者もいやとは言わないでしょう。安定型にも有害物質が入っていないか、ちゃんと検査する。これは法律に書いていない上乗せですが、「協定を結ぶことができる。」という条例に基づいてできる。

 宗像市の焼却場は団地の山の上にできるということでしたが、法律で規制されていない小さなものだった。そこで、条例で規制したら、裁判所は法律で規制しているのに条例で規制するのはけしからんというわけです。あとで厚生省の施行令も改正されて、小さなものも規制されることになりました。だから規制する必要があったわけですが、条例が先取りをしただけです。それを先取りしてはだめだ、後から必要になっただけだと厚生省はいうわけです。そんなはずはありません。政令ができるということは、もっと前から必要だったのです。

 条例に基づいて協定を申し込むというのは、ただ住民が協定を申し込むというのとは雰囲気が違うのではないでしょうか。それを蹴る業者は「あやしい」ということになります。みんなオープンにして議論しましょうということはいえる。

 

Q:条例と法律の関係ですが、後から出てきた法律が条例を規制するということがあるが。法律が最低基準ということには実際にはなってなくて、法律が条例より上位に位置づけられていいるのでは。環境アセス法ですが、川崎や大阪では環境アセスメント条例が既にあって、後から出てきた環境アセスメント法が、条例を変えさせるようになってきているのでは。

A: 条例は先でも後に来た法律が勝ってしまうというのは、やむをえない。国の法律は立ち入るべからずと言う権限は自治体にはないのではないか。さもないと、縛られる方がどちらに従って良いかわからないからです。

 たとえば、神戸は崖崩れが多いので、宅地造成等規制条例をつくった。それを、国が吸い上げて宅地造成等規制法をつくった。仕組みが少し違う。

 国の法は一番下に合わせないと、地域によってはどうしても過剰規制になる。そこで、条例の制定の余地はあるが、同じ国の中で適用する法律が違うところがあるというのはおかしい。神戸で特にこの法律で足りないところがあるというのを条例でプラスアルファできる仕組みが合理的ではないか。

自然保護条例が各地であったが、自然環境保全法ができ自治体の条例が全部潰されましたが、法律で足りないところを条例で上に乗っけることはできる。

 

Q:上乗せ的なものも法律で規制されているのでは。

A:一番ひどいのは廃棄物処理法です。都市計画法もそうです。条例に委任していない。条例にもっと委任すべきです。解釈で条例に委任できるように、条例に委任して、安心して自治体が条例をつくれるようにすべきです。地方分権ではそういうようなことが書いてあります。ミニ開発の規制ですが、低層住居専用地域と地区計画以外はミニ開発は規制できない訳です。神戸の長田区では30uという敷地が沢山あります。

これからはそういうような開発ができないように条例で規制してというが、法律で縛ってできない。法律が全部独占していると言う訳です。そういう解釈はおかしいと私たちは主張しています。

 

Q:福祉のまちづくり条例ができていますが、認証を受けるケースがほとんどないと聞いているし、罰則は名前の公表がほとんどで、どれだけの効果があるのか。また、違反した場合の罰則の質量は自治体で勝手に決めれるのか。

A:罰則は刑法の問題で自治体ではできない。空缶ぽいすて条例も罰金何万円といってつくっても、処罰するのが大変だから、だれもやっていない。争われたら、目撃証言だけだから、それで証人は裁判所まで行かなければならないというのではだれもしない。やるとしても、金払って終わりになる。

 名前公表も自治体は慎重です。障害者雇用法で障害者を雇わない企業を公表したが1回しかやっていない。何度もやっても効き目が無いのと、障害者を雇わない企業はゴロゴロあるからです。

 あめしゃぶらしてやるしかないのでは。自治体が一番最初にやるべきですが、自治体もなかなかやらない。

 

講師紹介  あべ やすたか

1942年 福島県生まれ 1964年 東京大学法学部卒業 1967年 神戸大学法学部助教授

1977年 神戸大学法学部教授

著書に「フランス行政訴訟論」「行政救済の実効性」「国土開発と環境保全」「行政の法システム(上・下)「行政訴訟改革論」「政策法務からの提言」「大震災の法と政策」「〈論争・提言〉情報公開」「政策法学の基本指針」等多数