カブトン

去年冬,かぶとむしの卵をもらった.
小さな真珠のようなすきとおった白い卵たち.
4つの箱に腐葉土を入れ,ぱらぱらと卵をまいて,上からそっと土をかけた.幼虫になるまでは順調だったが,ある日気が付くとそのうちふたつの箱は表面がかびが生えてしまっていた.幼虫たちを新しい箱にうつしてやったら,その中の一匹だけはなぜか土にもぐらず,土をかけてやってもすぐに這い出してきてしまう.しまいには土の上の小さなくぼみでさなぎになってしまった.あまり動かないので,この子はもうだめかなあと思っていた.

梅雨の蒸し暑い朝,その幼虫が羽化を始めた.
気が付いたときはもう頭を覆っていたからが土の上に転がっていた.智(小2)「あ!男の子だ!」.ふたりで見つめていると小さな足を一生懸命動かし,体をくねらせながらからだを覆ったからをどんどんはがしてゆく.おひるねしていた芳(幼年中)も起こし,脱皮を見せてやった.かぶとむしは足の先や体にへばりついたからを不器用そうだが,上手にはがしていく.からの内面には粘性があるらしい.胸のところがどくどくしているのは,激しい運動で心臓が脈打っているんだろうか.芳「ねえ,何してるの?」羽化はうまく説明できないので,カブトムシが赤ちゃんになってきたと説明した.ん?赤ちゃんは幼虫のうちなのかな?

最後はおしりの半分を覆ったからを後ろ足で持ち上げて抜け出した.まだ羽根は卵のときのように透き通るように白く,おしりもまだ白い.しばらくはじっとしていたがその間にも見る見る羽根が薄茶色に染まってきた.

夜,新しい虫かごに土を入れて彼の家にしてやった.
半日のうちにからだはすっかりこげ茶色になり,動きも敏捷になった.幼虫のうちはあれほど土の中はいやがったのに,すぐに土の中に隠れてしまった.

兄弟が彼の名前を相談している.芳「カブトラマンってど〜う?」 智「いや,カブトンだよ!」
結局,「カブトン」になったようだ.
うーん,いつもながら安直な名前なんだよなあ・・.

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