君には見せない手紙


 …そう、今日も、泣いていた。
 誰にも見つかることなく、湖面に涙を落としながら。
 声を掛ける術も見つからないまま、俺はただ見守っていた。
 …正確に言えば、なんと声を掛けていいか、わからなかったんだ。
 おかしなものだな。
 口説く台詞なら、すぐに出てくるっていうのに。
 こんなとき、悲しみのふちからも救ってやれない俺だ。
 だから、声は掛けられなかった。
 多分、声を掛けたところで、お嬢ちゃんは、無理に笑顔を作って、言うはずだ。
「なんでもありませんから、オスカー様」と。
 そう言われたら、俺は、もう何も言えなくなってしまうに違いない。
 お嬢ちゃんは、いつも限りないもの(それは、時に、優しさや勇気や励まし、だったりだが)を、俺に与えてくれるのに、こんなとき、お嬢ちゃんに何もしてやれない自分に、どうしようもなく、腹が立って、そして、胸が張り裂けそうになる。
 お嬢ちゃんは、こんな気持ち、知らないだろうが、な。
 それでもいい。ただ、一つだけ。
 これだけは知っていて欲しい。
 俺は、いつでもお嬢ちゃんの味方だ。何があっても、だ。
 いつも見守っている。
 だから、忘れないでいて欲しい。
 君は、独りではないのだと。


 ここまで書いて、オスカーは、頬杖をつき、ため息を一つついた。
 そして、無造作にその紙をくしゅくしゅと丸めると、くずかごに捨てようとし、ためらい、近くの暖炉に投げ入れた。
「証拠隠滅のつもりか?」
 自嘲気味に、その端正な顔を歪め、オスカーは笑った。

                                   ≪了≫



まゆさまのサイトにて、2500ゲットした記念に
いただいたお話です。
なんともオスカーさまらしいというか、私
このお話大好きです。(^^)

まゆさまのサイトでは、素敵なお話が公開されています。
ぜひ行ってみて下さいね!