81  漆について


漆塗料は漆樹液から作る。
漆の木の葉が開き活動期に入る6月下旬から10月中旬にかけ漆の樹に傷をつけ5日目ごとに約 20回 維管束の篩管部から流出する樹液(130〜150g/本)を採取する。
樹皮をはぎ、幹を傷つけて滲出する樹液は乳白色で水/油型のエマルジョンである。
漆液の成分はウルシオール(アルコール可溶成分,60〜65%)・ゴム質(アルコール不溶 で水可溶分,5〜7%)・含窒素物(アルコール不溶で水不溶分,3〜5%)・水(20〜30%)で、その成分・組成は採取する地域、季節、時間などにより異なる。


ウルシオール 【英仏 urushiol】         
                                                                                 21342  
沸点 約210℃
(0.5oHg)
液体                                                                             

 デヒドロウルシオール【C21H32O2】とともに漆の主成分である。
 真島利行の研究によって知られた。



また漆の代用品として次の合成漆塗料があります。

カシュー(商品名)  

カシューナッツシェルから抽出したシェルオイルの化学構造が、漆とよく似ており、これに他の合成樹脂を化学的に合成することで、漆の性質に近い漆塗料が作られている。


参照文献

 「理化学辞典」                岩波書店
漆−文化財との関わり「化学と工業」 36・3 日本化学会別冊
 淡交   「漆の美」          淡交社
「漆の本」     永瀬喜助 著       研成社
「漆芸の伝統技法」 佐々木英 著       理工学社