bP3 名物裂の種類

表具・茶入の仕服・出し帛紗などにいろんな裂が使われています。
目的によって使われる裂も決まってきます。
ここでは一般的な裂の種類をご紹介いたします。

◎ 金襴

金箔糸を織り入れて、金色に輝く文様を織りあげた金襴は、その豪奢な特色から多様な名物裂の中で最も尊ばれ最高の位置にある。中国では織金とよばれ、ほぼ宋代に織り始められたと考えられている。日本へは禅僧の伝法衣として渡来し、名品の数々が伝えられている。

◎ 緞子

緞子は金襴に次いで注目される裂地で金襴とは対照的に深く沈む、落ちついた風合いと優しくやわらかな趣きが尊ばれた。
先染めされた経糸(たていと)・緯糸(ぬきいと)を用い、本来は繻子組織での、表・裏組織によって文様を織る。
時には経・緯の色を異にし文様を明らかにしめすもの、あるいは綾組織やわずかの金糸を加えるものがある。

◎ 錦

錦は複数の色目の経・緯糸で文様を織りあらわしたもので、金襴とは異質の重厚な豪奢さで、また織物の代表ともされる。
古く漢代には経糸で文様をあらわし(経錦)、ほぼ唐代には緯糸で文様を織る方法(緯錦)が西域より伝えられて今日に至っている。

◎ 風通(ふうつう)

風通は二重織に分類される。 
例えば、経糸に白、紺を交互に並べ、緯糸も同様に白、紺を交互とし、白経は白緯と、紺経は紺緯とのみ組織する。
したがって表に白が表れているときには裏に紺の模様が見えるという、表裏で全く色替わりとなる織物。その二色の間に袋状の空隙が出来るわけで、風を通すとみるところからこの名がある。
それぞれの文様が明確にあらわされるのが特色である。

◎ 金羅・金紗(きんら・きんしゃ)

金羅・金紗はいずれも捩(もじ)れ組織の羅、紗を基本として、それに金箔糸を織り入れて文様をあらわしたもの。 
それらはいずれもいわゆる薄物で、透ける効果が目的とされた物であろう。

◎ 印金

中国では、金襴などのように裂地に金色を加える施工が完成する以前は、糊・膠、特殊な場合は加工された漆などで金箔を貼って型文様を裂面にあらわした。それを銷金(しょうきん)とよぶ。  
名物裂の場合では、羅、紗、綾地に施すことが多い。  
金襴とは異なって、金箔の輝きがそのまま表現されるので、金色の効果がいちじるしい。

◎ 間道(かんとう・かんどう)

名物裂で、縞・段・格子などの特色ある文様の裂地を間道とよび、広東・漢東、その他各種の字をあてる。  
その産地については諸説があるが、洗練された意匠、良質の素材、素材をよく生かす技術・処理などに注目されるものは、当然中国の織物である。

◎ モール

インド、ペルシャ渡来の特色ある織物。  
いわゆるモール糸が用いられている。モール糸は絹糸を芯として、金銀の薄板を細く裁った截金(きりかね)を、全く自由に巻きつけたもの。  
金襴などの平金糸づかいとは異なる。この金銀が織物に胡麻を蒔いたような特殊な趣きをしめすこととなる。なおモールは、インド、ムガール王朝が訛って「モール」になったと考えられている。

◎ 更紗

インド、東南アジア渡来の文様染裂を更紗とよぶ。  
蝋防染を駆使した藍や茜の、時には金を加えた華やかな裂地が、日本でも大いに好まれ、むしろ日本から意匠の好みを注文した場合もあったと考えられている。
この異国趣味に満ちた名称はインド西岸の輸出港スラートによるとか、スペイン語・ポルトガル語に源があると説かれる。

                 


 参考文献

切畑健 著 「名物裂」  日本の染織19 京都書院美術双書
 《原色茶道大辞典》      淡交社
                              


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