16j フォーラムC 精密農法

2002.11.16 Sat. 15:40~17:40 110教室

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フォーラムC
 「生産環境をITで管理する精密農法」

コーディネータ:梅田幹雄氏(京都大学農学部)

パ ネ リ ス ト:澁澤 栄氏(東京農工大学農学部)、宮本久美氏(和歌山県果樹試験場)、坪川典史氏(JA福井市)

1.話題提供

梅田:循環型社会を構築していくために、農業の存続を前提とした農村・農業の活性化は必要であり、ITを利用した精密農法PFはその為の有効支援ツールである。ビデオでPFを紹介の後、現在PF研究を行っている産官学3人のパネリストから概要を紹介いただく。

澁澤:精密農法の定義、並びに大規模経営の米国式農業と経営規模の小さい日本農業の特色をふまえた精密農業の日本型モデルを提唱。日本では土地利用や営農形態、圃場間、一筆圃場内でのばらつきがあり、諸外国と比べてPFを普及されていくことは難しい。しかし知的営農集団を形成することにより技術プラットホームを通して、情報付き圃場か情報付き生産物のデータベース化を作っていくことが望まれている。

宮本:ミカン農家がもつ、(1)おいしいミカンの安定した生産、(2)安全なミカン、(3)納得出来る価格の諸課題を達成するために、ITを利用した精密農業や品質管理、情報インフラの技術開発等、知的支援が必要である。現在一筆圃場ごとの生産者台帳や園地台帳、選果データ、売上単価等、農家の知りたいことがすぐわかるデータベースづくりを始めている。

坪川:アグリらんど喜ね舎でA-GISを使用して農地利用調整支援システム、農作業受委託システム、生産調整推進対策支援システム、地域振興作物育成支援システム、農家基本台帳管理システムを作っている。農地台帳と地図とのミスマッチが多い、などの問題点がある。

2.討論(要約)

・精密農法や情報化は手段であって目的ではない。

・精密農法はバラツキやムダをなくすシステム

・精密農法によって結果的に生産物に付加価値を与えることができる。

・精密農法の研究は細分化された研究者や他業種を一つにまとめるには良い機会である。

・良いものを安定して作るにはどうしたら良いかを考えた結果、精密農法に取り組むようになった。

・GISでは地図情報と他の情報のマッチングをとることが難しい。農家収支の改善に寄与するにはまだ時間が必要。地図情報など基本となるデータの整備を行政にお願いしたい。

・精密農法の技術的問題としてセンシング技術の開発が遅れているため自動的にデータ収集が行えず問題である。センサーをどうするかとともに解決を急ぐ必要がある。

・精密農法を日本型と米国型で比較すると、米国ではコストさえ下げれば売れるが、日本ではまずマーケティングから入る必要がある。この点で日本の研究開発はズレている。

3.まとめ(梅田)

 研究の細分化により、研究室の連携がこれまでなされてこなかった。PF研究により産官労の結びつきが深まるメリットがあった。圃場内のばらつきや一筆内のばらつきは、これまでも言われてきたが、具体的なデータが現状では少ない。実際の応用までには時間がかかる。IT化の研究を進めて欲しい。精密農業はあくまで手段と考えるべきである。研究を続けていけば解決出来る。

4.討論(記録)

 梅田:精密農業はこの5年発展。農業の情報化を必要としている部分など自由に発言願いたい。

 町田(茨木大学):宮本さん、3年前と比べてセンサー情報や処方箋データが増えたようだが、生産面での成果とか経営面の収支などでどのような進歩があったか?

 宮本:データベースの管理は終了しつつあるが、地図とのマッチング及び解析には更に時間が必要。来年あたりには成果がでそうである。

 町田:携帯型近赤外センサーによる現場測定の目的は?

 宮本:ミカンの栄養管理、特に肥料と味の関係を把握するのに使用。篤農家は知恵をもっているが、一般農家のために技術の普及が必要。

 町田:ミカンの樹齢管理は?

 宮本:樹齢は品種毎にカルテ化。1圃場1品種で樹齢管理する。

二宮(中央農研):GISシステムの運営主体は?行政か?

 宮本: JA農協の選果物が行っている。地図データの作成は本来行政側でやるべきと考える。

二宮:?

宮本:営農指導員である。個人が使うことを考えていない。個人情報をどう扱うかにも問題がある。選果情報はJA。地図は行政か。中山間地はできていない。

 岡山県:一枚の圃場に何種類もの樹木がある場合、どのように地図と整合させるのか、DBはどう扱うか?

宮本:表示の仕方はいろいろ。データは1対1対応なので便宜上でわける。

 ? :土中センサーの原理と方法?

渋沢:チゼルで水平穴を掘り、鉄板を入れて、ECを測定(米国)電磁波によって土の組成を測る

梅田:生育センサーがネック、衛星データのばらつきが多い、SPAD値のばらつき、土壌は難しい、広い範囲を調べたいが、人海戦術でやっているので限界ですね。

澁澤:リモートセンシングによる土の色、水分を含め、土表面から5cm位の情報は得られる。したがって表土と下の層の関係が分かればリモートセンシングのグランドツルースに利用でき有効な情報が得られる。

中田(宮崎大学):アメリカと日本農業の経営規模の違い、作物の相違を踏まえて、PFの日本モデルを作成。地域を単位とした作物の品質を上げることが重要(産地化)だと思っている。日米で苦労の仕方の違いがあるか?

渋沢:日米とも農家の勉強会で普及は比較的簡単にできると考える。米国ではいかにコストを削減できるかが問題。日本は今でもコストが高い。日本は売ることを考えるのでマーケティングシステムから始めていかないとPF普及がはじまる。農家と農水省の研究機関との間のギャップが多すぎる。

中田:地域の農産物に対して付加価値ができるか?澁澤先生の方法に産地化に貢献できるか?

澁澤:それは農業の本質。自動的に処置できるかが問題。センサー開発が必要で幅広い分野の協力が必要。

二宮:付加価値をつくるとは?

澁澤:外部経済の価値、環境負荷を測るときの情報、農業と地元の産業とを結ぶなど

酒井(福井農試): 意志決定支援ツールの製作法は?

 渋沢:気象情報・・・流通関係モデル、市況情報を含めたモデルの作成が必要

 小林(中央農研):情報に振り回される、情報付加は手段で目的ではない。大区画化、規模大により情報化が不可欠。情報がついているからといって安心ではない。安全な作物を作ろうとするのが原点。安心、安全_情報は農産物面_データの把握が可能。精密農業にすれば、どのようなメリットがあるのか?肥料が10%_減少しても、どのようなメリットがあるのか?

 宮本:産地レベルでミカンが販売、流通している。その意味で圃場内のばらつきを減らすことは重要。栽培部門の人がセンサーの研究開発にもっと入ってくるべき。光センサーの効果大

町田:諸外国を含めて他作物への応用例を聞かせて欲しい。

 渋沢:ワイン用のぶどう(フランス)、野菜、トマト、リンゴ、ブロッコリー、メロン、など鮮度を含めた情報、客を捕まえる戦略。3年ほどで成果が出始める

宮本: バーチャルコーポレーション化、バラバラの農家一会社のように・・・


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