2018国公立大学入試問題を予想して、渡邉が教材として使用した作品群

                                                  2018年 2月24日 二次前日に記す

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書誌情報はそちらにてご確認くださいませ。


ほとんどが、2016年の秋から2017年の秋までに発売された書籍です。





〇時間の言語学 ─メタファーから読みとく 瀬戸 賢一 著
今年の一押し。

はじめに は、以下のように始まります。

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時間とは何か。

従来の時間論は、物理学や天文学の理系であろうが、哲学や心理学や社会学などの文系であろうが、時間の「流れ」や

「進行」を口にしながら、その方向を当然のように過去から未来と想定した。ビッグパンを仮定して、あるいはそんなこ

とおかまいなしに、その始まりから未来への方向を前提とした。時間の矢印は未来へ向かう。

たしかに百人に尋ねれば、ほとんどが時間の進行方向は過去から未来だと答える。しかし本当だろうか。
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「時は金なり」のメタファーに替わる新しい時間のメタファーが要請されることを筆者は強調しています。
ことばの分析を通して論じられるこの書はおすすめです。

この本からかどうかは別として、瀬戸さんの論は出題されると思いますが、どうでしょう。



〇よくわかるメタファー ─表現技法のしくみ  瀬戸 賢一 著

こちらも、併せて読むことをおすすめします。



〇「自由」はいかに可能か 社会構想のための哲学 (NHKブックス) 苫野 一徳 著

第三章 の「ヘーゲル」の自由論 を扱いました。苫野さんが、難解のヘーゲルの思想を
かみ砕いて説明してくださっています。これは、どこかが出してくると思うのです。



〇モラルの起源―実験社会科学からの問い(岩波新書) 亀田達也 著
すでに、某大のAO入試で出題されています。
後期にも使われそう。
「共感する心」のあたりを扱いました。





〇人工知能の核心 NHKブックス 羽生 善治 著
読みやすすぎるので出題はないかもしれませんが、これを読んで自身の考えを書かせる系の大学さんなら使ってくるかと思いました。



〇ことばだけでは伝わらない:コミュニケーションの文化人類学 西江雅之 著

人間にとって伝えるとは何か。数十の言語を扱うことができる西江さんの論考です。
文学部等を受験する生徒には、問いたくなる内容です。




〇中動態の世界 國分功一郎 著
言わずと知れたベストセラー。
慶応大学文学部にて、すでに出題されています。
慶応の出題では、第5章「意志と選択」 の「カツアゲの問題」あたりを抜粋して出題していましたね。

私は、第一章の「意志という謎の誕生」あたりが、くさいと思っていたのですが、
どうでしょう。





〇子どものための精神医学 滝川 一廣 著

これもベストセラーですね。
教育関係に進む生徒に読ませたい作品です。
小論文では「いじめ」に関する辺りが扱われそうだと考えています。



〇入門 公共政策学 - 社会問題を解決する「新しい知」 (中公新書)秋吉  貴雄 著

少子化問題、商店街活性化、生活保護、学力向上などの問題を扱っています。
これも、どちらかというと小論文向けですかね。


〇不平等を考える: 政治理論入門 (ちくま新書) 斎藤 純一 著
格差社会を考える題材として取りあげました。
ここでも、自由と平等について、取り扱われています。
ただ、あまり良い取りあげ方はできませんでした。
2018早稲田教育学部で出題された、
稲葉振一郎の『政治の理論』


の方が良かったかもしれません。
反省。




★★教材化を試みたものの、上手くいかなかった作品群★★



〇データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書) 伊藤 公一朗 著
読むのには面白いのですが、現代文の読解問題には、わかりやすすぎて断念。 これも小論文では、出題されるかもしれません。



〇競争社会の歩き方 (中公新書) 大竹 文雄 著

うーん、残念。読んでいたのに、ちょっと軽すぎる、って思って教材化はしていませんでした。
担当生徒が受験した、津田塾にて出題。
(見事合格してくれたので、ほっとしています)
競争を否定的に捉えるのではなく、このような競争社会をどう生きていくか。
おもしろいです。




東山魁夷の一連の作品群

難関大のエッセー的文章用に教材研究しましたが、
担当生徒の出題傾向とは少し異なったため、断念。
非常に良い文章なので、今年かどうかは別として、いつかは出題されると思います。


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人工知能・AIに関する様々な書籍は、大量に扱いましたが、
ここには掲載しませんでした。
AIに関する背景知識はあった方が良いとは思いますが、
ちょっと現代文の入試問題として扱うには、厳しいなぁと感じたものが多かったからです。

それらの教材群については、また機会を見てご紹介しますね。