台湾旅行その2  2018.12




   3日目(12月6日)
 
 三日目は夜日程が入っているが、それまではフリーである。台北駅の南方に歴史博物館を始めいくつかの施設があるので見るつもりでいたが、郊外へ行きたくて北方に35キロほど行った淡水に向かうことにした。二日目が街中ばかりで郊外の田園風景が見たかったのもあるし、地下鉄のMRTを使いたかったのもある。まずは、一番近い雙連駅へむかう。商店街を歩いて7,8分ぐらいだろうか。
 入り口から駅に入ると、それは普通に見かける地下鉄の駅だ。自動販売機でチケットを売っているが、一日券の買い方が分からない。係り人のいる窓口で購入すれば、一日券カードと地下鉄の地図と観光案内の冊子をもらえた。価格は150元なので、日本円なら500円程度。これで市内の地下鉄が乗り放題だから嬉しい。この駅は淡水線しか走っていないので分かりやすい。ホームは今風のゲートが付いていて安全だ。電車は、10分おきぐらいに来るので、ほとんど待たなくてよい。
 そして、やってきた電車は10両編成でスマートな形。それに予想外の満員状態。どうせガラガラの電車が2,3両来るかと思いきや、まるで東京メトロの電車だ。台北という都市の規模を知らされた次第だ。若い人を含め数多くの人が乗っているが、ほとんどの人がスマートフォーンを操作している。これも、東京と同じ。館内放送があるが、これは中国語なので分からない。出口に表示される駅名を見て降りることになる。


   淡水の街
 
 淡水駅までは10数駅有っただろうか。これも田舎風景を想像したが、当てが外れた。淡水駅に着くまで、家の途切れることが無かった。海辺を通ることもあるが、台湾というのは何と人口の多いことか。淡水の街自体は十数万人が住む中都市である。
 駅は海辺にあり、100メートルも行けば海岸へ出られる。公園の様になっていて、若い人には人気の場所だと言う。釣竿を垂れる人も居て長閑なものだ。期待通りの風光明美で心が休まる場所である。
 古い時代には台北へ物資を運ぶ港町であったが、砂が溜まっていまは鄙びた漁村となっていた。それが最近、旧鉄道路線をMRTとして復活し人が集まり始めたという。古い街並みや繁華街があり、旅行者を楽しませてくれる。
 海辺を歩いていると、白い船体の船を見つけた。遊覧船かと思えばそうではなさそう。その代わりに対岸までの渡船が出ているようだ。チケット売り場へ行くと往復で45元、日本円で200円程度だ。遊覧船代わり乗ってみれば、地元の人たちが乗り込んできた。岸を離れれば、淡水の街や八里(バリ)の街の概要がつかめる。対岸まで15分ぐらいだったろうか。
 八里は名前に合わず小さな街だ。小さい商店街やお寺などを見ながら歩いているとセブンイレブンを見つけた。早速缶のジュースとアイスクリームを買って、店内でのどを潤す。地の果物や生ジュースも魅力的だが、腹を心配するととても手を出せない。再び海辺へ出て寛ぐ。ここも、地元のお土産店が並んでおり楽しめる。淡水も良い街だが、更にゆったりとした時間が流れている。思い付きで乗った渡船であったが、大正解だった。
 淡水へ戻って、繁華街にて食事処を探す。ファーストフード的な店で、イカメシと海鮮のビーフンを摂る。確か55元前後だったような気がするが、200円ぐらいだから安いものだ。ブラブラと店やお寺を見たりして淡水駅へ戻る。MRTの淡水線はここが始発駅だがそれなりに人が乗り込んでくる。前向きのシートを確保し台北駅方面へ向かった。


   総統府

 中正記念堂駅にて下車。地上へ出れば中正記念堂の演劇館が見えている。当初は近くにある歴史博物館を見たかったのだが、駅の構内で閉館していることを知って見学は中止。昨日、バスでこの記念堂へ来ているのだが、自力で来ると見方が変わって良いものだ。中正記念堂を右手に見ながら総統府へ向かう。
 途中、道路の向かい側に、庭で囲まれた古いが豪華な建物が見える。迎賓館の様に思えたのであとで調べればその通りであった。外務省の建物のすぐ前であり、今でも使っているようだ。
 総統府は、東京駅と同じ設計者が作ったという。そのためか、用途は違うものの雰囲気がよく似ている。日本が統治していたときは日本が、今は中華民国の政府が使い政治の中枢部分となっている。
 植木には鉄条網が張られており、入り口にはトゲのようなものが埋め込まれ容易には車が突っ込めない。左右に2台の迷彩色のトラックが止められており、常時、監視兵が見張っている。これだけ厳重な警戒がされているということは、それだけ政府が難しい状況に置かれているということだろう。
 記念撮影を終えた後に張られた写真を見ていたら、監視兵が寄ってきた。悪いことをした訳ではないが、慌ててそこを離れる。


   台北駅周辺
 
 この周辺には、迎賓館、国の省、主要銀行など国の重要施設が並ぶ。日本の霞が関のようなところであり、一度は訪れてみたかった場所である。台北の周辺部は違った緊張感があり、台湾の中心部であることを思わせる。
 近くには高層ビルが見えている。250mを越える台北2番目の高さのビルで、十三階まで三越が入っているという。ちなみに1番は台北101で500mを越える。タピオカを飲みたくて街頭の店に立ち寄るが、どれを注文して良いか分からない。適当にメニューを指さして飲み物をもらう。座る場所もないので歩きながら飲む。65にもなってこんな姿は見っともないが、しょうがない。
 台北駅近くになると地下街の表示が見えた。台北駅と繋がっているようだし、興味本位で入ってみた。まずまずの広さと長さがあって店が並んでいるが、肝心の人が少ない。天候が悪い時は地下街も良いが、賑やかさでは地上の店には敵わない。台北では試作段階のような地下街であった。
 台湾駅は多数の地下鉄が乗り込んでおり、淡水線は地下4階まで降りる。エスカレーターにてそこまで降りて電車に乗り雙連駅に向かいホテルへ戻った。


   洛碁松江大飯店の鍋料理

 この日の夕方は夜の九分と饒河夜市へ行くことになっている。迎えのバスに乗ってまず向かったのが中山区松江路にある洛碁松江大飯店。ここのレストランで鍋料理を頂くことになっていた。牛肉と黒豚をどちらか選ぶことになるが、台湾なら豚ということか全員が黒豚を選んだ。薬味にショウガと勘違いして多量の生ニンニクをいれたため、少々刺激の強い鍋となったが味は悪くなかった。同席したのは愛知県の60代前半の夫婦。男の子3人いるが、一番上が25歳でまだ誰も結婚していないという。奥さんは少々疲れ気味で大変だなあと思う次第であった。ただ中部国際空港が近く1時間で行けるので使いやすいと言っていた。


   九?見学

 台北市内から高速で1時間ほど走れば九?に着く。宮崎監督の「千と千尋の神隠し」のモデルとなった場所らしい。 到着前から雨が降り続いていた。駐車場から歩いて坂道を登るが、それも雨の中。暗くて狭い階段を傘を差した多くの人が行き交う。何でこんなところが混むのだろうかと思う。
 途中まで上がれば、それらしき旅館がある。赤い提灯が幾つも下げられ、雨の中にたたずむ風景はまさしく千と千尋の世界だ。後で調べれば色々な店があり楽しめそうだったが、この時は何も知らず、雨と寒さで早々に引き上げた。待ち合わせ時間まで1時間ほど残していたが、駐車場の中のレストラン前で一休み。
 この九?は、19世紀に金の採掘で賑わった時期があったという。金が取れなくなってから寂れた街になっていたという。それが、千と千尋のアニメや他の映画で有名になってからは、観光客が絶えなくなり台湾の有数の観光地になった。土日の混む時期はバスを止める場所もなく、別の場所から送迎バスで入り込むという。それも1時間以上待つらしい。その点、我々は雨が降っているものの待つこともなく入ることが出来た。この地方は雨が多いらしく、雨も名物の一つと考えればそれも良い。



   饒河夜市

 最後のメインイベントは、台北最大と言われる饒河夜市の見学だ。入り口には慈祐宮と呼ばれる大きなお寺がある。中を覗けば信者の人が多数お経をあげている。後ろに回ると、壁いっぱいに立体のレリーフが張られている。何かの意味があるのだろうが、見ているだけでは何もわからない。夜市の始まりは、お寺の参道に並んだ夜店から始まったと聞いている。この寺に参りに来た人が店を楽しんだのだろう。
 夜市に入れば入り口に胡椒餅の店があり、多くの人が餅を買い求めている。実はこの日、台北駅からの帰りに雙連駅からホテルまで歩いた時、偶然にこの胡椒餅を手に入れ食べたばかりだった。味はスパイスの利いた肉まんの様なもので、それなりに旨かった。でも、ここで売っているとは驚きだった。
 人の後になって夜市を歩けば、有るわ有るわ。士林夜市では食べ物が少なかったが、ここは食べ物中心だ。トレー一杯の揚げ物や黒光りする肉など、迫力のあるものばかり。それに、腐った豆腐の様なものが鍋で煮られており、この臭いがきつい。肉をバーナーで焼いている店もある。日本人なら、よほどの強心臓でなければ手を出さないだろう。
 賑やかさ、人の多さ、店の迫力どれを見ても昨日の士林の夜市より上になる。これはこれで、面白い場所であった。小一時間ほど見学をしたが、この二日間の疲れが出たのか、ふくらはぎが痛くなってきた。膝にも刺すような痛みがある。
 これが限界と帰路についた。この日の一日券がまだ使えたこともあり、初めからMRTで帰るつもりでいた。直ぐ近くの松山駅から電車に乗り込み、中山駅で乗り換えいつもの雙連駅で下車した。ホテルへ戻ったのは10時過ぎだった。

   4日目(12月7日)
 
 空港への送迎は10時半。食事が終わったのが9時過ぎだったので少し時間が出来た。出発準備をすべて終え、ホテルまわりの散策をする。どちらへ向かっても良かったが、一度も行かない東側へ向かう。大きな通りではないので、市民の日常がみられる。不動産屋を見つける。張り紙を見れば、築30年の2LDKが3000万円ほどしている。ここの不動産は高いと聞いていたが、確かに高い。この付近は、台北市の中心部だから、東京で言えば山手線のど真ん中。これくらいしても仕方がないのかもしれないが、娘夫婦が買った東京のマンションより割高感がある。
 コインランドリーや自動車の修理工場なども並ぶ。小さな旅行社や小さな外食の店もあるし市内バスにも出会った。生活に必要な店が並んでいるが、総じてきれいな街とは言えない。古い汚い場所と、新しい建物が同居している印象だ。あと10年か20年すると、整備が進んで東京のような街になるのだろうか。暫らくの時間であったが、台北という街を知るには貴重な時間であった。
 


   桃園空港

 朝10時半ころ、少々遅れて迎えのバスが来る。各ホテルをまわって帰国者を回収し空港へ向かう。高速道路を1時間弱走るが、空港近くに見知らぬ大都市が見える。自分の頭の中では想定していなかったため不思議な感覚だ。後で調べれば、人口200数十万の桃園市らしい。台湾は人口が2500万人程度で、山岳部も多いので平地は人口密度が高い。台湾は農家が多く台北以外は殆ど田舎だと考えていたが、自分の間違いだったようだ。インドネシアやカンボジアとは比べ物にならない日本に近い近代国家であった。
 到着した時は暗くて分からなかったが、改めて桃園空港を見れば第1と第2ターミナルを持つ巨大空港だった。施設は新しく近代的なものだ。関空や中部国際に匹敵する大空港である。バス降り場が混んでおり、空港へ入場するのに少々時間がかかった。
 例によってエバー航空のカウンターで受付をするが、トラブル発生。本来エコノミー席のはずだがビジネス席だという。何回か確かめたが間違いなさそう。しかし、言葉が通じないので細かい事情が分からず、一抹の不安が残った。
 出発するB8搭乗口まえで待つと、修学旅行だろうか女子高校の団体に出会う。この便は3社の共同運航便ということを先ほど知った。高校生の大団体が入ったため、我々はビジネスクラスへ移動させられたようだ。不安を抱えての搭乗であったが、ビジネスクラスのサービスを得られるならこんなに嬉しいことはない。
 これだけの女子高生に囲まれるのは人生の中でそうあるものではない。知り合いに女子高校の教諭が居るが、毎日このような女子学生に囲まれて仕事をしている。ある面羨ましいが、緊張度が高く大変なことでもある。

   ビジネスクラス

 そして、別の入り口からビジネスクラス席へ乗り込んだ。まず、足元がエコノミーに比べてかなり広い。座席の構造も豪華だし、完全に水平になるから横になれる。座席前には20インチもあろうかという大画面のディスプレイが付いている。
 上空で飛行が安定し最初に出てくるのが、ウエルカムドリンク。ワインでもビールでも好きな飲み物を選べるが、自分はオレンジジュースをもらった。しばらくしてから機内食の時間になる。大きめのテーブルにテーブルクロスが敷かれる。前菜が出てきて、温めたパンが出てくる。もちろん、ナイフとフォークはフルサイズの金属のもの。メインの食事は中国風と洋風が選べた。デザートの小皿とコーヒーも付く。白ワインを飲みながらだったからまるでホテルのコース料理だ。ビジネスクラスの食事が済んでからエコノミークラスの食事になる。申し訳ないが、これが意外に優越感に浸れる。
 食後は、シートを倒してビデオ鑑賞だ。寝そべっていればとても航空機の中とは思えないほど寛げる。今回は3時間程度の空の旅だったが、あっという間に小松へ着いた。まるで疲労感が違うから、10時間以上かかるヨーロッパでもアメリカでもここなら大丈夫だろう。ただ、支払う金額はとんでもない額になるだろうが。

   台湾の交通事情


 台北の市内は駐車場が少ない。一般の人はバイクを主に利用しているようだ。商店街や大きな建物の前には無料のバイク置き場があり、スクーター型のバイクが綺麗に並んでいる。タクシーはすべて黄色に塗られており、傷ついても良いバンパー部分は灰色だ。合理的だし市民にも分かりやすい。路上には日本車が多いし、大型の新型車が目立つ。ただし、郊外へ出ると日産のマーチだのホンダのフィットなど小型車が多くなり、日本の郊外の道路に似てくる。
 更には、東京メトロのシステムに似たMRTと呼ぶ地下鉄が縦横に走っており、市民の交通事情は悪くない。我々もこのMRTを利用して郊外の淡水まで出かけたし、夜市からの帰りにも利用した。交通の便は東京あたりよりも良いように感じた。







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