市民憲章



 なかなか元気のいい子供達である。午後のオリエンテーリングでは私語が多く説明にてこずったが、そのあとは走ってポストを探しまくっていた50人あまりの小学5年生である。
 ひとりの女の子の司会で、夕べの集いが始まった。国旗降納の後「市民憲章唱和。代表の人は前へ出てください」
 ときた。おや、市民憲章を唱和する学校は少なく、自分でさえ全文言えるか怪しいものだ。
 するすると、先ほどのオリエンテーリングでふでばこを置いていった、やんちゃな子がでてきた。大丈夫かな。
「福井市市民憲章」
「いち」
 そのあとは、並んでいる子供達が唱和する。
「すすんで親切を尽くし、愛情豊かなまちをつくりましょう」
 なるほど、代表の子は前文なしで番号だけを言う。あとの本文は他の子供達がしっかり暗唱する。これならできる。
 しかも3番まではほぼ間違いなく暗唱している。4番になるとちょっと怪しくなるが、それでも素晴らしいものである。
 あっけにとられるやら、感心するやら。そのあとの所長の話も、このことを褒めちぎっていた。なかなか、個性的なクラスである。



ロープコース



 自然の家の裏山にロープを使ったコースがある。昼休みに時間がとれたので、登ってみることにした。
 集いの広場の隅のほうに、梯子がかけてある。ここが登り口になる。何かいいものがあったら写そうと、カメラを片手に登る。梯子ごしに、蛇の穴にちょうどよい岩の隙間が見える。顔をだすなよと思いつつ、登りきる。
 5〜6メートルもいくと早くも目の前にロープが下がっている。雑木林のなかを、ロープをつたって登る。けっこうきつい登りだ。高い山には「くさり場」といって、危険な場所にはくさりがかかっているところがある。ここはそれの子供用だ。
 なかなかロープの先端が見えない。一人で来ているので少々不安になってきていたのだが、樹木のうえの小鳥がさえずりに少し心が和む。視界はきかないが、この辺はちょうどよい住みかになっているのだろう。
 突き出た枝を、手で避けながら、登る。ロープがないとちょっと登るのは無理だろう。やっと、先端が見えてきた。一息入れる間もなく、次のロープが下がっている。いい加減嫌になっているのだが、今更ロープをつたって引き返す気もしない。
 しかたなく、また登る。さきほどより、さらに小枝が多くなっている。まさに、フロンティアアドベンチャーの冒険コースだ。肩にかかったカメラが地面に擦れないように気を付けて登る。やっとの思いで2本目を登りきる。
 耳を澄ませば、左手の尾根のほうから子供達の話しごえがきこえてくる。たぶん、山越えをしてきた午後入所予定の子供達だ。別にそのつもりではなかったが、結果的には山腹で出迎えることになったようだ。
 トラバースして尾根道に合流し、ひとり遅れて歩いていた子供と一緒に自然の家への帰路についた。



たいまつの炎



 キャンプファイアーの第3部である。
 女神と営火長の間越しに見えるファイアーの炎が、まわりを取り巻く子供達の笑顔を赤々と照らしだしている。
 女神によって採火された炎は営火長から誓いの言葉の係へ、そして、生徒たちのたいまつに移された。全員のたいまつに渡ったファイアーの炎は、いま赤々と燃え盛る。  まるで、それぞれの子供達の生命が、そのままたいまつの炎に移ったかのように、子供達の頭の上でゆらゆらと燃え盛る。先程まで主役であった中央の井げたの炎は、今や完全にたいまつに移って、その存在感を主張している。
 子供達は
「い〜つまでも〜、絶える〜ことなく〜」
 と、歌いはじめる。最初ばらばらだった音程が次第に揃ってくる。 2番のハミングに変わる頃になると、順に下のほうからこちらに向かってくる。古代より、炎は人間にとって崇高で気高きものであった。いま、改めてそのことを感じる。子供達も同じような気持ちでいるのだろう。神妙な顔をしている。
 大きな水いれで1本1本消火していくのだが、子供達も惜しそうである。この気持ちを味わってくれるだけで十分である。この感動を与えてくれたこの炎に、そして、この子供達に感謝せねばならない。



きもだめし



 ファイアーの2部。各クラスの出しものが終わったあとの肝だめしの部である。
 すでに、脅かすほうの係が林のなかやお墓の所へ散っていった。1班ごとに順番に出発していく。暗やみのなかに、子供たちの背中のゼッケンが消えていく。
 「キャー」
 と、いつもの女生徒の声。その声がファイアーの回りで待っている子供達を興奮させている。走り回る子、騒つく子、騒然としている。進行の女の子が
「まだいかないでください、もう少し待ってください」
 とマイクに向かって叫んでいるが、ほどんど耳に入っていない様子だ。。待ちきれず、出発する男の子の班もいる。
 そういえば、リハーサルの時にこんにゃくを吊す針金を借りにきた子がいたっけ。今ごろ、頑張ってやっているのかな。中学生の頃っていいなあと、思わず思ってしまう、楽しそうな肝だめしの一場面である。



ロープコース その2



 数日前にひとりで登ったロープコースを、今日は子供達と登る。
 2百名を超える大きな中学校の、初日のオリエンテーリングだ。天気は快晴、木々の緑も最高である。 数班だけ、はじめにこのコースを登るよう、説明係に依頼してある。その間に梯子付近やロープの登り口にある雑草をむしりとる。いくら、アドベンチャーコースとはいえ、はじめから雑草がおい茂っていると気力が失せてしまうかもしれないからだ。
 さあ、出発だ。班ごとに梯子を登ってきた。一人一人と登っていく。ロープをみて
「オーッ」
 と驚きの声をあげる子もいるが、それほど嫌そうではない。ロープに頼って登る子もいるが、これだけの人数が一本のロープに頼ると危険だ。
「ロープに頼らず、自分の足で登りなさい」
 と一人づつアドバイスする。手に持った地図や回答用紙がクシャクシャだ。えんぴつを落とす子もいる。上のほうから、
「蛇がいるぞー」
「はやくいけよー」
 とか聞こえてくるが、なかなか進まない。普通のコースより、こういうコースのほうが子供同志は楽しそうだ。
 なんやかんや言いながら、2本のロープの登りきる。すごい所を登ってきたという満足感が、子供達の顔にあらわれている。
 登り切った所に21番めのポストがある。子供達がポストを囲み何やら話をしている。話を聞くと、ポストの番号が回答用紙に書いてないらしい。余白にポストの回答を書き込んで出発する。
 自然をじっくり味わうには、地形を利用したこういうフィールドアスレチックのようなコースが良いようだ。雨や地面が濡れているときはできないが、よく晴れた条件の良いときには、是非このコースを奨めたいものである。



キャンドル指導



 今日は3回目の宿直日。親子の団体のキャンドルサービスが予定されている。補助の経験はあるが、一人では初めてのキャドル指導である。しかも、今日は司会も頼まれている。
 前の日から手順表を確認したり、はじめの言葉を考えたりしているが、やはり不安なものである。幸い第2部のレクレーションは、以前ここにいた職員の人が来てもらえる予定なので、その点は心強い。
 準備とリハーサルは18時からだ。営火長、女神、火の守、誓いの言葉の係りが体育館に集合する。みんなでキャンドル台を中央に引っ張りだしてくる。女神と営火長を中心に、全体を流しながら説明をしていく。それぞれの係に一つひとつの動きをやってもらいながら一通りのリハーサルを終えると、不思議と自分の気持ちが穏やかになっているのがわかる。
 最後は小さなローソクにアルミ箔の持ち手をつける作業だ。全員のローソクができる頃には、他の子供達も体育館に集まってくる。時計をみると開始までそれほど時間はない。とても事務所に戻る間はないだろう。
 予定の19時になった。いよいよキャンドルサービスの開始である。廊下で待たせていた子供達をハンドマイクで誘導しながら、体育館に入れる・・・・。



溝掘り その2



 午前中に北側の側溝の蓋をいれ、午後からは南側の整備にとりかかる。
 土手の雑草がアスファルトの上に50センチ以上は入りこんでいる。側溝付近にも草がおおい。泥も結構たまっていることだろう。土手側は見るからに大変そうなので、側溝の方からとりかかる。今日は管理人のMさんという力強い助け人がいる。これで作業は3倍ぐらい速いだろう。
 まずは、コンクリートの蓋を剥がせば、案の定20センチほど泥が貯まっている。何年も開けていない蓋だ。蛇でもいたら大変だから、手を入れるのが恐い。注意しながら全部の蓋を剥がす。
 先にMさんがクワで上部をすくいとる。そのあと自分が小さいスコップで底の部分をきれいにとって仕上げる。さすがに2人の作業ははやい。一人のときより3倍は違う。みるみるうちに溝がきれいになっていく。蓋をして、周りをほうきで掃いて約1時間。
 少し時間があるので、土手の方も手を付ける。クワで雑草を起こしてみると案外簡単に起きるではないか。一人は草を剥がし、一人は竹ほうきで掃く作業。
 起こしたところを見ると全面アスファルトではない。50センチぐらい土の部分がブロックで囲んである。元は花壇にでもしてあったのだろうか。掘り起こすと作物にはいい土である。なにかに利用できそうだと内心得した気分だ。 これらを含めてやく1時間30分の作業であった。



城山に登る



 入所団体のないぽっかりと空いた連休の合間。以前から一度みんなで登ろうといっていた城山登山を決行することにした。
 メンバーはトラックの荷台にのった自分を含めて5名。安波賀の登り口から登りはじめる。足元には自然の家付近には見られない花も見られる。すかさずカメラを向ける。
 つづらおりで登る尾根はとても登りやすい。歩き古された道は、雨水を逃す溝なども掘られていて、さすが朝倉時代から利用されている古い道であることを認識させられる。
 新緑のトンネルを抜けると、高圧線の鉄塔の所にでる。主任の話では、この高圧線は黒部のダムで作られた電力が関西方面に送られるものだという。よくみるとこの地域は南北に走る高圧線が多い。眼下には宿布付近の足羽川流域がみえる。砂利採取で丸裸となった山肌が痛々しい。
 さらに登ると御茸山が全貌できる場所にでる。子供達が山越えで利用する山だ。コースの説明に使おうと4枚ほどに分けてパノラマ写真をとる。
 約一時間ほど登ると林があかるなり、右と左にわかれる分岐にでる。左は一の丸、二の丸、三の丸。右は本丸跡と遺跡への降り口だ。展望台のところで一休みして、あとは谷川を下るがごとく一気に下山した。
もどる