第4章 こいのぼり

   こいのぼり

こいのぼり田植え終わりし我が家で青空のなか泳ぎたる

老父の想いつまりしこいのぼり四時まえ降ろせば父寂しがり

急流を登るがごとくこいのぼり五月の風に負けまいとして

   母の日

母の日は何も要らぬとうちの母「ただ何処かへと連れて行って」と

偶然に一日空いた週末日妹呼んで母と出かけし

普通車でガンガン高速走りたく大人四人で白馬へ向かう

ドライブは日常離れる時なれど出てくる話は家族の話題

新緑のなかに桜の花が咲く白馬の春に心が躍る

妹は独身以来の白馬村駅や店見てはしゃぎまくりて

ジャンプ台はじめて見たと感激す練習もなく静かなりしも

売店のりんごのソフト美味なりて車椅子のる母に手渡す

驚きしさすが白馬のマーケット、サラダオイルも一斗缶入り

三斤もあろうかデッカイ食パンもコイン一つで手に入りたる

   エコの時代に

昨年に買ったような新鮮さいまだに保てるアルデオの良さ

日々過ぎてかおり小さき時にきたアルデオすでに十一年経ち

これだけの完成度持つクルマなく距離を走れど買い換えできず

十代で読みあさりたるモーター誌スタイルメカに精通したり

レジアスは自分で選ばず来た車丈夫がとりえの商用クルマ

愛せずにただ乗るだけのクルマにはしたくはないしレジアスの君

30年乗れるクルマであるけれどエコの時代に乗れるかどうか

2台ものでっかい車使うのも後ろめたくもそれなり楽し

   ノロウイルス

聡くんが園からもらったノロウィルス瞬くまでに家中広がる

胸悪く食事進まず下痢もする爺から嫁までダウン寸前

外からの菌はそれなり注意しも中に入った菌には無防備

農協の方針なりし遅植えも連休はずれて気分が乗らず

ただでさえ営農意欲少なくてペース乱れて離農がすすむ

世界的異常気象が日常で連休なれど寒い日続く

無視できず歴史に残る大噴火必ず世界で飢饉が起こる

   右足の指

右足の指の関節外れかけこの歳なりて普通に歩けず

15分歩けるだけの足でなく車に積みしチャリにて通う

この歳で背広にカッパはないだろう雨の通勤頭悩ます

この指はいつになったら直るのか初めてのこと不安がよぎる

   折りたたみ自転車

折りたたむ自転車使い通勤す足を痛めて15分が歩けず

街中を走る自転車面白く飛ぶ鳥のごとく疾走したる

気分良くこのまま家まで帰ろうか思わせるだけチャリ面白く

   田舎の暮らし

田舎には都会に負けないものがある自然と人と満ちたる暮らし 

不思議だね「足るを知る」の言葉にて今の暮らしが豊かに変わる

   残雪の白山

この時期の白山雪で美しくとなり妻乗せ白峰向かう

新緑の山の緑が迫り来て山と自分が同化する

残雪の白山の峰悠然と仏のごとく横たわりけり

残雪の白山望む高台は熟年夫婦のくるま行き交う

走りたる車の中で熟睡す新緑妻のゆりかごとなり

   茶の苗

茶の苗を衝動買いして胸躍るお見舞い用の品買いに行き

お茶の種まだ付いているおさな苗ポット入れられ肩寄せ合わす

6本の苗植えられし庭の隅毎朝のぞく楽しみが増え

   田植え

田植え機は8条植えの大農家 我が家中古の4条植えなり

苗わたし肥料補給に箱あらい手間数思えば4条で十分

日当に弁当おやつ用意して人足頼んだ昔の田植え

飯食わず文句も言わず仕事する4条植えでも機械はうれし

さえ苗は必要ないと聞くけれどうちの親父は聞く耳持たず

四隅だけ植えて終わりし吾が田植え親父の田植えここで終わらず

トラックにさえ苗用のかご三つ気持ちわかるが誰が使うの

   育児休暇

この歳で育児休暇に挑戦す孫が風邪にて園を休みて

手渡され子供と着替えと紙おむつ今日はじいじの一日保育

真剣に付け方習う紙おむつ息子のときは確か布にて

濡れティッシュ手元においてズボン下げ 見るまで分からぬオムツの中身

テレビ付け幼児番組流れるも気にも留めずに孫這い回る

飽きたれば背中で眠るいつもの手布団に寝かせば1時間もつ

孫眠る部屋のふすまを少し開け気配みながらコーヒーを飲む

小分けした冷凍物をレンジする 離乳食もデジタル時代

昼時のおかゆの合い間に差し入れるイチゴ味するお医者の薬

いまどきのミルク作りはお手軽で固形を一つ湯で溶かすだけ

元気でちゅ。作った量を飲み干して空ビン持ちて吸い続けたり

外出ればすずめの声や川の音歩くだけでも子供は飽きず

雑草を眺めちぎって口入れる 幼き児にはどれも新鮮

夕暮れに玄関先で母を待つ本人よりもじいじ「まだか」と

孫を見る自信ついたがじいじには育児休暇も一日限度





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