第4章 四万十のうた


 高知来て

道の駅寝たあとフィット横に来てドア閉め、なべ音、ラジオかけ

道の駅寝た時たしか二,三台朝起き見れば満車なりたる

高知来て肌に感じる南風ハワイと同じやわらかさ

無宿者居心地よくて住み続け人はおおらか気候は温か

市場には何でもあるぞ田舎寿司 魚もあるがシイタケものる

市場にてハンペン作る店ありてたまらず声かけ揚げたてもらう

市場裏美しき女像見つけたりしばしの間ここを離れず

おおらかな気質が生んだ大物は岩崎弥太郎、板垣退助

郊外にショッピングモールなかりせば街中こんなににぎわえり

県民のシンボルなりし高知城 板垣退助見守りけり

百円で二十分なり駐車場街中歩けば時間が気になる

 海岸にて

桂浜たいしたこともないはずに車ばかりがごった返して

名所でも時間ないからスケッチしあとで油絵仕上げるつもり

札所あり観光客とお遍路が違和感もなく入り交じりたる

海べりのハワイ風なる店見ればジェットスキーで若者遊ぶ

若者が集まり塗るは日焼け止め今から乗る舟思い寄せつつ

リゾート地なっているらし横浪区 樹海ばかりで人の気がなし

 四万十の里

峠越え源流の村入りみれば玄関先に古老が座る

山々をぬって峠を下りしも村にはびっくりコンビニの店
 
四万十の源流行くが道狭く対向車にはいつも気をはる

待っている車みんなに挨拶すガラスの奥に笑顔が見える

広げたるモミのにおいを嗅ぎながら四万十の村通り抜けたる

四万十の谷によく見る景色あり田んぼとお墓と彼岸花

お地蔵もお寺ひとつも見かけずにただ農家のみ点在したる

四万十の流れに沿って下りける手垢の付かぬ暮らしが魅力

沈下橋下に大きな淵がある手のひらサイズのフナ遊びたり

沈下橋軽トラックが通り抜けわがレジとても怖くて通れぬ

沈下橋河原で遊ぶ家族ありナンバー見れば遠方多し

四万十も中流域まで下りせばショッピングセンター人集め

焼かれたるパンの一つの大きさに地元の人の人柄見える

四万十のせせらぎ聞こゆ山あいで抱かれ眠る道の駅かな

昔から住んでいたよな心地よさなぜか感じる四万十の秋

何もなく千年平和が続くならたぶん四万の生活になる

これほどに都会のにおいせぬ場所は四万十のほか思い浮かばす

「信号機なくても見ます右ひだり」こんな標語が笑いを誘う

「こんにちは」通学途中の学生に声掛けられてあわてて返す

情報も物資も外と閉ざされし人々静かに暮らす川かな

中央の支配やいくさ程遠く人々のどかに時を経りたり

平成も江戸の時代もそれほどに変わらぬ生活ここにある

川面には小舟を並べ魚を捕る生活がある今のここには

少々の米と川での魚あれば村の暮らしはそれほど困らず

四万十の流域生活そのものが世界遺産に見えてくる

急峻な四国の山々深けれど川のひとつで暮らし支える

がけ沿いの狭き国道くだしりもすれ違う車は軽ばかり

 四万十市

四万十市南西四国の中心地、四万の川がたどり着く

開店の十時を待って入りける案外賑わう四万十の湯

ワゴン車が所狭しと並びけるこの道の駅サーファーの宿

ワゴン車でサーフボードを運び来て高知の荒波われ先向かう

足摺も予定にあれど連休の渋滞気になり四国去る

もう少し見たい気持ちを抑えつつ次に期待は旅の心得

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