第1章 小春日和に

   小春日和に

窓越しの強き日差しにブラインド冬に感じる温暖化かな

悠然と北谷の道走りたる小春日和の休み取りし日

勝山のマイログハウスポコアポコ、ランチもらって雑誌をめくる

オーナーになった気分で支払いすログハウスにてランチ食べ終え

ポコアポコ自分に似合いのイタリア語「何とかなるさ、ゆっくり行こう」

  帰宅せば

帰宅せば夕飯作る若嫁と孫抱く妻とじいばあ迎え

世の中の幾多の宝石あるけれど孫の笑顔に優れるものなし

初孫は抱くたびごとに重くなりしばらく抱いて布団にもどす

初孫を抱いて風呂に入れてやる石鹸使うも手から落ちそう

にゅるにゅるとわが腕の中動きたる初孫抱きて風呂に入れれば

腹の上乗せたる孫は無邪気なりじじいの顔をおもちゃにしたる



  初冬のある日

鏡見て五十六なる我が姿どこの誰だと聞きたい気持ち

短歌詠み自分で打って印刷し本に仕上げて一人満悦

誰にともあては無くとも印刷し製本しては思いをはせる

車庫入れし車のエンジン上に乗り朝まで暖とる野良のネコかな

シャッターを一〇センチ残し閉める子はネコとすずめのことを思いて

窓越しの白椿には白き物 早いと思えどタイヤを換える

   母の実家

お歳暮を届けにくる伯父せわしなくカブのエンジン止めずに来たる

実家にて地震に遇いしうちの母、おい抱き外へ慌てて飛び出る

裏庭の真んなか居座るモミジの木、盆に登って遊んだ記憶

里帰りいつも迎える叔母さんの声は今でも耳に残れり

実家にて食卓に出るご馳走は家でもあたらぬムツの切り身

お風呂場へ魚のときは入れられるタヌキのような実家のオス猫

日中は近所の遊び忙しく余り見かけぬいとこの姿

深き井戸バケツ引き上げ水を汲む覗き込む先スイカが浮かぶ

台所隅に置かれた水がめに実家の神が住んでいるよう

老祖父が母と見つめる囲炉裏の火 煙草ふかせて話を聞かす

里帰りかすかに記憶残りしは母と連れ行く盆踊りなり

待ちに待つ盆正月の里帰り母の心と体を癒す

  高校の仲間たち

高校の軟式テニスの先輩は記者経ていまは社会部部長

昼休み惜しみ勉強したる奴、医学部入り病院いるらし

友人と思っていた奴頑張って芦原で歯医者開業したる

陸上も成績もよく顔もよし結局そいつも病院の医師

目立ちたる学校一の変わり者トヨタに入り小説を出す

剣道の勇姿が残る彼氏あり京大出たあと県会議員

クラスでは付属の連中幅利かす競争のなか育ちし彼ら

この校もすべてエリートなるでなしこぼれた奴も人生歩む

タレントになれそな美人の後輩も今は何処かの奥さんとなり 

卒業後何があったか同窓の名簿を見れば卍のマーク

久しぶり同窓会の女性陣50の男を君付けで呼ぶ 

もう少し人格できていたならば高校生活楽しく在りし

  大学で

大学の部屋に置かれし模型機の教授五十もひとり独身

黒板に黄ばんだノート書き込むも新入学生ただ写すのみ

最新の技術に置いて行かれたる大学過去の博物館に

学生と高額の機器使えども研究成果は何やら分からず

専門書いずれは役に立つはずと小遣いはたき買いためる

振動が少ない時間と深夜にて実験進める友と二人で

その時代プログラム書きカード打ち電算室にて計算依頼

専門で学びし友の半数は別の分野で家族養う

専門を離れし仲間多けれどその精神は消えることなし

  学生運動

学生の運動盛んな時期なりて妨害ありて入試遅れる

入れども式も授業も出来なくて5月末までクラブで過す

出入りする友人下宿危なくて刑事見張ると噂が流れる

友人のデモに出かけた話聴く横から押され出れば叩かれ

議論好き在籍したるワンゲル部いつしか話題も政治になりし

ワンゲルの先輩ひとり熱心で加藤登紀子の別荘で襲われる

卒業し十年経てど街角でビラを配りし知り合い見つけ

講座室隠れて卒論提出し証書筒入れ送られ来たる

あの時代大学過せし学生は何をするにも腰が据われり
  
  ログハウス

山小屋の木の温もりが肌に合うここが原点ログハウス好き

10万も出せばカーマで手に入るカナダ輸入の一坪ハウス

一度だけ展示のログを見学しそれから届く見本カタログ

別荘地素敵なログが並びたる素敵な生活想像したり

実際は電線引くも何吊るも使いにくいよ丸太の家は

時経れば隙間風やらひびのログ覚悟の上で住むなら良いが

住む家は普通の家で十分とわかりし歳になりたる自分

たまに行く喫茶たいがいログハウス丸太背にしてコーヒーを飲む

十年も経てば丸太も風化せど中はしっとりあめ色になる

好きな時モントリオール喫茶店丸太じゃないがログの雰囲気

温かき白熱灯と薪くべるストーブあれば冬は過ごせり

  他国の娘

予備校の寮はきびしく親とても5月以降は男厳禁

季節物届けかえりぬ寮の前娘の顔に寂しさを見る

携帯に送られ来たる合格の画像の顔にこみ上げしもの

時計台前の大きなくすのきで母と妻とで子待つうれしさ

大学の病院前に住む娘一人暮らしに心強しと

峠越え銀閣過ぎて電話するマンション前には娘の迎え

病院の駐車場に停めたるも一晩置けばお札三枚

夫婦にて娘のマンション泊まりたる駐車代も安く思えて

学祭のボランティアにて物を売る娘のテント遠くでながめ

マンションの片隅置かれた男物無視は出来ぬが言い出しもできず

妻連れて娘とまわる学校祭呼び込み楽しテントをまわる

学部ある古き建物驚くも伝統威厳納得したり

法曹は本人選びし道なれど若き娘にきびしき道なる

他国にて独りけなげに頑張れし娘の姿に目が潤みたる

  沖縄の思い出

今はなき東亜国内航空機タラップ降りたら滑走路なり

サンルーフ付のレンタで走りたる 屋根も気持ちも沖縄全開

屋根の開く車を借りるも最初だけ 残り三日は一度もあけず

家族での最初の食事ホテルにてTボーンステーキ贅沢気分

市場には豚の頭や手が並ぶここはまさしく沖縄なりし

赤に青、黄色のさかな並びたる食えると思えぬ南の魚

食堂でゴーヤチャンプル注文も階段つたい魚貝の臭い

「シャー、シャー」と沖縄伝統エイサーを踊る若人熱気に押され

エイサーを踊る若者感動も就職きびし沖縄思う

遠慮して首里城裏とタクシーに 降りたところは本当に裏

琉球の王朝復元したる城、明るさゆえかテーマパーク風

沖縄は海が綺麗と言うけれど泳げる浜は人工の浜

ドライブの途中見つけしビーチにて子らを泳がすホテルに内緒で

ひめゆりの洞窟名所になりたるも悲しき話に中へ入らず

道沿いの畑見つけしサトウキビためしに一本かじってみたり

ちゅら海の水族館に悠々と泳ぐジンベイ子らに見せたし

  デジタルカメラ

初めてのデジカメなりしコダックは液晶もなく画像8枚

カメラ撮り現像出してスキャンするそんな手間からデジカメ救い

定評のフジのデジカメ電池が持たず電池代にてフイルム買える

長年の経験生きるニコン製、手に良くなじみ画像増えたる

他社の奴カードサイズでポケットにニコン無骨でおにぎりサイズ

デジカメは安くなったら買い換える無理はせずともすぐに旧型

デジカメで撮った画像をページ載せまるで自宅が放送局に

  シンクパッド

名機とは世界の巨人IBMが技術集めしシンクパッド

ずば抜けて高いシンクの信頼度シャトルの装備に使われし

15年経った今でも動きたる90メガのシンクパッド

感触は今でも一流760は文豪気分で文字打てる
                     760:シンクパッドの上級機種
キーボード開けてディスクや電池換え軍が求めた信頼の形

古くてもサービス万全シンク達金なきマニアのコレクション

オークション漁って集める古シンクいつの間にやら片手に余る

古くてもネットと入力だけならば今でも現役シンクの力

足元に落としていいのはシンクだけ聞いているけど落とせない

人間の作った名品数あれどシンクパッドは一つに入る

仮にもしシンクこの世になかりせば世界の仕事今と違えり

人類の発明3つ挙げるならクルマにシンクに携帯電話

シンクにはコストかけすぎIB社経営斜めに傾けたりし

今はもう中国移りしブランドは昔の面影薄くなり

  初めてのバイク

通学に使えと父が買い与え6万円の新古のバイク

あれこれと車入れ替えしたけれど親の資金はこのバイクだけ

朝夕の通学だけのはずもなく下宿に本屋電気屋まわる

初めてのエンジン付のうれしさに海や山へと動き回れり

オイル換え布で磨いて錆を取るそのときバイクは親より大事

雪の日もバイクで通う大学路 斜めに線路横切り転ぶ

1万も回転上げて走りたる2万キロにてピストン逝かれ

ブレーキの急に掛けたるトラックの荷台にタイヤぶつけしことも

山男深き山道怖くなくひとりバイクで入り込みたる

合コンの彼女荷台に乗せしことあったような記憶もあるが

単純なエンジンゆえにあれこれといじり倒せた入門バイク

エンジンの調子のかわる面白さ気化器をいじり濃いの薄いの

走りたる砂利道、山道、峠道 二輪の扱い体で覚え

それからの車ライフの基礎になりあれこれ使いし得た経験で

  白峰の食堂

白峰に博物館へ行かずとも昭和の時代に戻る店あり

店入りて黄ばんだ品書きよく見ればここしか食べれぬ熊肉料理

ラーメンにどんぶり焼肉おでんあり田舎メニューで村人満たす

常連か中年夫婦あとに来て手馴れた手つきで焼肉を焼く

奥座敷、村の行事の打ち上げでにぎわう様子ビールが語る

夜なれば村の居酒屋早変わり年季の入りし床見りゃ分かる 

山中で作業を終えし作業服、昼飯食いつつテレビのニュース

ポットにて置かれた無料のコーヒーは客をもてなす主の気持ち

七十のおばちゃん気さくで人絶えず白峰魅力は山だけでなく



第2章 餅つきへ

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