第11集 カメラ騒動




   

   第2章 六月の出来事

   六月の出来事

この歳でDVDやらライブやらマイブームなり加山雄三

老親に孫に猫やら手がかかり定年終えどストレスの日々

晴れ間見て端のジャガイモ試し掘る白き芋達並んでいたり

雑草で稲が育たぬ我が田んぼ除草の薬2回撒けども

昨年の籾殻撒きが原因か草種混って田が草だらけ

この雨で伸び放題のカボチャ蔓ジャガイモ畑に侵略中なり

事情あり外へ出られぬ家の猫外気吸うのも網戸越しなり

雨続き湿気が抜けぬジャガ畑早く掘らねば病心配

自治会や防災会や田に畑連休あれど遊びに行けず

多忙にて当分使わぬキャンパーの発電用のエンジン掛ける

三世代上と下とに挟まれて疲れ溜まりし中年夫婦

   野菜連中

込み入った葉っぱめくればスイカ玉畑作業の嬉しい誤算

マクワウリ接木でないと育たぬか3本植えても蔓枯ればかり

4年目で気持ち入らぬカボチャ達交配せずとも実が付き出した

はち切れんばかりに付きし桃太郎カラスにやれぬと網を被せる

元々は原種に近いミニトマト相も変わらずジャングルになる

黒々と葉っぱ広げるナスの株10本ともに絶好調なり

順調に実を連ねたるインゲンは母が作りし煮物に変る

しばらくは見るも無残なサツマ苗梅雨に入って勢い付ける

春先に親父に焼かれたヤーコン種じわりじわりと背丈を伸ばす

熟すれば赤か黄色のパプリカをピーマン代わりに早採りをする



   肺炎

還暦を越えて肺炎掛かりたり手足震えて高熱が出る

昼寝ても夜また寝れる肺炎は老若男女の体力奪う

多忙時の1週間の休養は有象無象を開放したり

入院も家にいるのも同じことベッドの上でひたすら眠る

   今が盛りの夏野菜

巻き蔓が枯れてきたぞと我がスイカ受粉してから日数足らずも

全株が枯れ上がりたりマクワウリ苗が悪いか土が悪いか

この夏は絶好調のナス科達トマトもナスも採れに採れたる

気が入らず受粉怠るカボチャ株放って置けど実が付き出した

追肥済み気分良くしたヤーコンが勢い付けて背丈を伸ばす

焼きものや煮物にしたり炒めたりナスさえあれば夕食出来る

切るだけで一品出来る熟トマト採れたてトマトはそのままで食う

日差し浴び延び放題のサツマイモ畑一面蔓にて埋まる

   2年目の憂鬱

定年後再任なって2年目よ家業に家事に忙しき日々

海外や国内旅行に夢馳せる現役終えても夢は夢なり

キャンパーも使わなければ只の箱風雨にさらされ侘しき姿

還暦は身体にとっても節目なり仕事が出来ぬ老人となる

定年後無駄に過ごすな我が時間夫婦で活かせば金にも等し
 
   アミノインデックス検査

採血で発生分かるがん検査負担かからず経費も安い

血液に多種含まれるアミノ酸バランス見ればがんを特定

アミノでは最先端の「味の素」時代変わって医療に活かす

胃に肺に前立腺に大腸とこれだけ分かれば嬉しい限り

胃カメラや生体検査や腸カメラ苦労の多いガンの検査よ

   体調不順

還暦を過ぎた身体に厳しかりエアコン頼みの今年の暑さ

この夏は体調不順が続きたり急性肺炎完治すれども

田や畑は元気な体があってこそ当たり前だが実感したり

   休耕田

稲作を続けたほうがずっと楽手間隙かかる休耕田よ

雑草の生命力のたくましき刈れど起せど再生をする

縦横にトラクターにて掻き回し深水すれば雑草絶えるか

   夏の一里野

夏フェスに海援隊がやって来た緑溢れる白山麓へ

白髪が大型バイクで走り来る鉄矢目当てに一里野目指し

30度超したる夏の一里野にギターの音が響き渡りし

聞き馴染む武田鉄矢の太き声 還暦過ぎの耳に心地よし

おしゃべりと曲と入り混ぜ1時間 鉄矢ワールド夢のごとくに

パラソルも日傘も禁止の会場は年寄り夫婦に厳しき世界

揚げ物と氷イチゴでしのぎたる熱気と日差しの公演時間

   ツバメの巣立ち

留守中に巣から落ちたる雛一羽老いた親父は元へ戻せず

無常にも打つ手持たない親ツバメ巣から落ちたる我が子見れども

十数羽ツバメ集まり宙を舞う旅立ちまだかと迎えに来たり

雛たちの重み耐えかね巣が落ちる巣立ち出来たか姿が見えず

朝日受け屋根で休みし群れツバメ巣立ちし雛が中に入るはず

電線に一羽のツバメ残されし群れ飛ぶ力1日では無理



   ヒエ騒動

気がつけばヒエだらけなり吾が田んぼ覚悟を決めて長靴を履く

田に入り鎌で刈り取るヒエの株二日かけても半分行かず

刈り取ったヒエの多さに驚くも種がこぼれて始末に困る

手伝いの手刈りに慣れぬ吾が息子ヒエ刈りすれど束纏まらず

刈り易い田の縁にあるヒエ株は米寿迎える親父に任せ

   農作業

体幹の筋肉鍛える農作業鍬を振ったりしゃがんでみたり

長生きの秘訣はいつもの田畑よ身体と頭がフル回転さ

天候と野菜の育ちと我が調子全て含んで右脳が決める

農業は命と向き合う面白さデジタルだけで分からぬ世界

定年で晴耕雨読の生活よ農と読書で贅沢の日々

   全委託

農薬に雑草取りに畦草と稲作管理は全て吾が肩

定年を過ぎれどわが身時間なし畑に田んぼに家の家事にと

農機具の償却費用に物材費手間賃も無く収支は赤字

米作の作業自体に苦は無くも報いなければやる気が起きぬ

割り合わぬ農家経営嫌気差し定年を機に全面委託

半世紀肩にかかりし農家業止める決断意外に早し  



   最後の稲刈り

長雨で稲の刈り取り泥の中機械動けど悪戦苦闘

1トンの車体が沈む軟弱地前進出来てもターンができず

増えすぎた地表付近の雑草に高刈り維持で急場をしのぐ

作業終え隣田迂回で這い上がる出口付近の泥に阻まれ

苦闘後の泥にまみれるコンバイン洗浄するのに半日かかり

ドラム開け籾を落として拭き上げてご苦労さんと言葉をかける

清掃を終えて細部に注油する今秋放すと分かっていても

   この秋に

コンバイン父から孫まで四世代名残り惜しくて代わり代わって 

今秋の家族総出の臼摺りは心に残る祭りの如く

田の縁の我が家最後の籾殻が燃え続けたり三日三晩も

トラクター繰って半日秋起こし農家稼業の最後の仕事

丁寧に水道水で清めたり仕事終えたる古トラクター

   上越路

田んぼ終え連休使って新潟へ弥彦遠くて途中下車する

高田市の前島密の記念館子が郵政で見る目が違う

江戸の世に越後納めた高田城今はキャンパー優しく泊める

謙信の堅固居城の春日山整備済ませて客足絶えず 

立ち寄りし名立浜の道の駅海鮮丼も景色もグーよ

水産の世界巡った練習船陸へ揚げられ第二の人生

   納屋始末

祖父建てた築七〇年の納屋一つトラクター入る車庫で存在

蚊帳張って中で寝たとも親父言う震災遇いて本家使えず

農機具を放す機会に取り壊し自分でやるか業者頼むか

赤錆の祖父が使いし道具達 昭和の農家を寡黙に語る

農機具の奥に溜まりし廃棄物年に一度も人の手入らず

農薬や使い残した古肥料廃ゴミ出せず頭悩ます

   下屋壊し

下屋の奥ホンダ二台が鎮座する定年後の復活願い

農舎空き下屋の役目も尽きにけり借地の上では解体必至

自力にてトタン剥がして柱切る素人造りは壊しも容易

軽トラの荷台一つに収まりし解体終えた廃材や鉄

休日は軽トラ繰って遠乗りよ廃棄扱う他市の施設へ

   親父の米寿

身内にて親父の米寿を祝いたり田んぼも済みし日柄良き日に

「していらぬ」親父の言葉が気になりて兄弟皆で米寿を祝う

この土地で生まれ育った父だから米寿の酒宴は地元の魚屋

名前入る米寿祝の額贈る話しせずとも兄妹揃い

米寿では欠かせぬ道具チャンチャンコレンタル無くてネット注文

魚屋が米寿祝いに焼いた鯛魚体大きく焼き釜入らず

焼き鯛を親父夫婦の前に置き全員揃い記念写真よ

   納屋解体

九時過ぎに納屋の姿はすでに無く足元広がるトタン廃材

ユンボーの鋏が材を打ち砕く70年の歴史諸とも

解体は敬意を表し人託す親父の想い詰まりし納屋の

半日で平らになりし納屋跡に椅子一つ置き静かに座る

   委託手続き

定年を過ぎて田圃に本腰も朝と休みで作業をこなす

畔草やヒエ対策に四苦八苦休耕田も手間がかかりし

机上にて損得見れば割り合わず家業と言えど空しき思い

農機具の寿命それぞれ異なりてここで止めると決心つかず

半町の耕作規模の我が家では何をやっても赤字経営

知り合いと作業委託の話にも全面委託にワクワクしたり

稲作の経費削減必須で集団化する国の方針

我が家でも施策に乗って集団化離農となれば補助金も出る

請負と国と我が家の意見合い離農手続き一気に進む

農機具を引き取る業者は数あれど丸ごと取りは近くの業者

車庫として主なくした古い納屋時を経ずして解体となる

   古い農薬

納屋の奥年に一度も覗かねば古き肥料や農薬溜まる

農薬は廃棄に出せぬ問題児始末できずに途方にくれる

農協の年に一度の回収日忘れてなるかと暦書きとめ

回収日専門業者引き取るも処理費高くて買うほどかかり

離農にて一気に進む納屋整理農薬始末でこれにて終わり


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