永平寺の年中行事

 永平寺には一年間を通して色々な行事があります。これらは仏教本来のものが主をなすことはいうまでもありませんが、四季折々の風情と一致して修行僧の一つの節となっています。

 1月 元旦
〜3日
三元と称して国家・仏法・僧宝を祝祷する。
三元とは一年の初め、一月の初め、一日の初めという意味と正月三ケ日を指す場合
がある。
元旦には三時に起床し、祝祷の諷経を始め、諸種の歳旦行事がある。
午後は、元旦 「転読大般若会(てんどくだいはんにゃえ)」
    二日 「般若講式(はんにゃこうしき)」
    三日 「歎仏講式(たんぶつこうしき)」

7日 人日筵(じんじつえん)と称して、古来中国では人と相見する日に当たっている。
この日の午後、一山清浄大海衆(雲水、修行僧)は一同に会して薬石を共にしたり、
演し物(だしもの)をして一時を過ごす。時には15日に行うこともある。

26日 高祖降誕会(こうそこうたんえ)
高祖道元禅師は正治2年(1200)の誕生、従来の伝記によって新暦に改めて1月
26日を降誕会と明治10年に制定された。
 2月 1日
〜7日
報恩涅槃攝心(ほうおんねはんせっしん)
2月15日は釈迦牟尼仏の入涅槃した記念すべき日であるから、それにあやかって
涅槃会の攝心を修行する。
一七(いちしち)日間、僧堂に詰めて攝心(せつしん)する。

15日 涅槃会(ねはんえ)
釈迦牟尼仏世尊(せそん)が大般涅槃(だいはつねはん)した日で、仏教徒は涅槃会
を修行する。
1日より14日夜半まで「涅槃絵図」の前で「仏垂般涅槃略説経誡経(ぶつしはつ
ねはんりゃくせつきょうかいきょう)」(遺教経、ゆいきょうきょう)を読誦(どく
じゅ)し、15日には正当献供(しょうとうけんぐ)および講式(こうしき)を修行
して遺徳を偲ぶ。その後に涅槃団子が参詣者にまかれる。

冬安居解制(ふゅあんごかいせい)
この日、11月15日より三ケ月目に当たり結制安居(けつせいあんご)が解制(終
わること)になって、送行(そうあん、郷に帰ること)する者もある。

下旬 暫当掛塔(ざんとうかた)
新しく修行しようとする者は諸般の手続きをして本山に登ってくる。
この者を暫当(暫く留まるから客僧とも、新当ともいう)と呼んで、旦過寮(たんが
りょう、わずかに留まるところ)に一週間前後留まって修行僧の作法を身につける。
この暫当受付は4月上旬まで行われ、これを「開旦過(かいたんか)」といい、止め
ることを「止掛塔(しかた)」(修行受付禁止)と呼ぶ。
 3月 18日
〜24日
春彼岸会(はるひがんえ)
21日は春彼岸会中日(ちゅうにち)に当たるところから、
「本山永代祠堂施食会(ほんざんえいたいしどうせじきえ)」や「玄源左エ門家回向
(くろうげんざえもんけえこう)」が修行される。
玄源左エ門は門前大工の先祖で道元禅師帰朝の折、お供して宋より来朝した人と言わ
る人である。
現在の当主は埼玉県浦和市に在住であるが、毎歳一度参詣されて先祖供養が行われる

白山神社回向(はくさんじんじゃえこう)
春彼岸の入、18日に一山大衆は、門前の永平寺の守護神・白山神社に詣でて祝祷を
修行する。門前各家および諸善神に回向する。
 4月 8日 仏降誕会(ぶつこうたんえ)
釈迦牟尼仏世尊がインドのヒマラヤ山麓、ルンビニー苑で誕生されたことを祝う日で
ある。
午前中に降誕会出班灌沐(ごうたんえしゅっばんかんもく、甘茶)が行われる。
門前地蔵院では日曜学校の先生(雲水)によって白い象に花の堂(花亭)が乗せられ
街道を園児がひいて歩く。

23日
〜24日
報恩授戒会(ほうおんじゅかいえ)
授戒会と称して戒師大禅師(永平寺貫首)より「お血脈(けちみゃく)」(仏祖正伝
菩薩戒、ぶつそしょうでんぼさつかい)が授けられる儀式である。
一般の戒弟(かいてい、善男子・善女人)は一七(いちしち)間、お籠もりして化行
(けぎょう、修行)をつみ、仏の「み子」となる。
全国各地から戒法を受ける人々が参詣し、秋の御征忌と共に永平寺の二大法要である
 5月 15日 結夏安居(けつげあんご)
この日を前後して三ケ月間、夏安居または雨安居(うあんご)と称して100日間の
修行に入る。インドの釈尊在世当時、雨期の間にすべての生きとし生けるものを殺生
しない為に一定の叢林(修行道場)に結集して修行されたという因縁によっている。
また、100日間の結制安居を無事終えるまで法堂での朝課際、楞厳咒(りょうごん
しゅ)が看誦(かんじゅ)される。

17日 首座法戦式(しゅそほっせんしき)
夏安居の100日間中の修行僧の代表を首座と称する。この首座に充てられた者が
「第一座(第一座)」と呼ばれて、修行のすべてを率先垂範する。
このために、首座が修行僧と法問(法戦)を戦わせる儀式である。
 6月 10日
〜30日
眼蔵会(げんぞうえ)
高祖大師が示衆された「正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)」95巻を一人の講師が提
唱(教えること、講義すること)する会である。
明治38年からはじまっているが、毎年、全国各地から聴講生が上ってくる。
歳によっては秋の10月1日から21日まで行われることもある。
 7月 2日 大布薩講式(だいふさつこうしき)
この日はだいだい半夏生(はんげしょう、夏至から11日目)に当り、大布薩会を修
行して、常日頃の行李(あんり)を顧み、懺悔する日である。
毎歳、多くの毘丘(びく、男の修行僧)、毘丘尼(びくに、女の修行僧)、優婆塞
(うばそく、在家の男)、優婆夷(うばい、在家の女)が参詣する。

15日 盂蘭盆施食会(うらぼんせじきえ)
お盆会の満散供養が修行される。

17日 如浄禅師祥忌(にょじょうぜんじしょうき)
道元禅師の本師、天童如浄禅師の示寂日(じじゃくび)で法堂で出班焼香(しゅっ
ぼんしょうこう)が修行される。

18日 白山拝登(はくさんはいとう)
加賀の白山と称される日本三大名山の一つ、白山(標高2700m)の山開きの日
である。この日、本山より雲水は二班に分かれて朝出発、八合目室堂(むろどう)
に泊まる。
翌朝御来光を仰ぐため、白山頂上に登る。この信仰は遠く道元禅師入宋以来の因縁
によるもので、雲水は白山明神を守護神として戴いている。
また、如法に法衣をまとい「白山妙理大権現(はくさんみょうりだいごんげん)、
仏法大統梁(ぶっぽうだいとうりょう)」と長声に唱えながら登る。
 8月 15日 月遅れのお盆
門前地蔵院や寂光苑に於いて施食会(せじきえ)や回向(えこう)が行われ、雲水
は門前各家の仏壇を棚経して歩く。
 9月 20日 松平公諷経(まつだいらこうふぎん)
松平秀康(ひでやす)公の年忌に当たる。

23日
〜29日
御征忌(ごしょうき)
道元禅師の開山忌のことで七日間、全国末派寺院が本山に出仕して報恩の誠が尽く
される。
この間、全国寺院の代表が住持に代わって焼香される。これを焼香師と呼ぶが焼香
師は壇信徒を引率して拝登される。
23日〜24日は二祖国師、懐奘禅師の示寂祥忌(じじゃくしょうき)、28日と
29日は道元禅師の示寂祥忌に相当している。
秋彼岸会も一緒に供養される。
10月 15日 達磨忌(だるまき)
インドより中国に禅宗を伝えた菩提達磨大和尚の祥忌である。
午時(ごじ)には献供諷経(けんぐふぎん)が修行され、午後より達磨講式が勤め
られる。

10日頃 秋安居掛塔(あきあんごかた)
冬安居は11月15日から始まるが、9月下旬よりこの頃に暫当が上山してくる。

秋托鉢(あきたくはつ)
11月冬制中前に秋の托鉢が幾つかの班に分かれて修行される。
その範囲は福井市、武生市、鯖江市、大野市、永平寺町、丸岡町、南条町等の地域
に及んでいる。

祖跡拝登(そせきはいとう)
やはり11月冬制中前に高祖大師の遺跡に巡拝する行事がある。木の芽峠や脇本の
御宿跡、太祖大師誕生地等がそれである。
11月 15日 冬制中
冬の雪籠の準備を一応終えた頃、冬制中の入制(にっせい、安居に入ること)行事
がある。この日は諸人事等がある。

17日 法戦式
夏と同じ。
12月 1日
〜8日
臘八攝心(ろうはつせっしん)
12月を臘月(ろうげつ)とも呼ぶが、12月8日の釈迦牟尼仏世尊、成道会
(じょうどうえ)をを記念して攝心会が七日間修行される。

8日 成道会(じょうどうえ)
午前中に献供が行われ、午後、成道会式が門前梅花講員等によって挙げられる。

27日 餅搗き(もちつき)
歳晩(さいばん)の諸準備の終えるころ、全山あげて餅搗きが修行される。
約7俵分の餅が午前零時より五時頃までに搗き挙げられる。

30日 歳晩土地堂念誦(さいばんどちどうねんじゆ)
1年間の終わりを前に、全山の土地堂、守護神に感謝の意をこめて諷経を修行する。

31日 略布薩(りゃくふさつ)
歳晩の日、梵網経(ぼんもうきよう)を諷経して諸仏諸祖に弁道無量(べんどうむ
りょう)を感謝する。


文献 「永平寺」平成8年12月20日発行。大本山永平寺の許可を得て転載(一部変更)したものです。
since "98/3/15(SUN)