セスナ操縦体験記 in SAIPAN

 

いつかは自分で飛行機を操縦してみたい。そういう夢はもっていても、今からではもう無理とあきらめてしまっている人も多いとおもいます。僕もそういう一人で、フライトシュミレーター(以下、FS)でバーチャル大空を楽しむのが限界だと思っていました。でも、できたんです。外国へ行けば。旅行でサイパンへ行くことになり、ガイドブックで見つけたセスナ体験操縦の案内。こんな素敵なオプショナルツアーが存在するとは。ということで、johnny's青空デビュー報告書のはじまり、はじまり〜。

00年9月17日、晴れ。約束どおりの時間に、迎えの車がホテルのロビーに来てくれました。お、エスティマだ。でも、違う名前のエンブレムがバックハッチに付いてるなぁと思いながら、後席に乗りこむ。そして、陽気なレゲェをBGMに、車は体験フライトをする空港へ。いったいどこの空港から飛ぶのかなぁ、もしかして運動場みたいな土のランウェイなのかなと窓の外を眺めていると、なにやら道の向こうにコンチ機の尾翼が見える。エ〜!サイパン国際空港から飛ぶの!?

このオプションはイマイチマイナーな為か、ガイドブックにも詳しい内容が書いてなく(それ自体が載っていない場合も多い)、日本で予約はとれましたが、いったい何処からどれくらいの時間を飛んで、どの程度の操縦をさせてもらえるのか、全くわからない状態で挑みました。当日の朝、ホテルのツアーデスクへ予約の確認をしに行っても、案内パンフも無し。でも今思えば、サイパンは狭い島なので空港が1つしかなくても当たり前か。

で、車は空港ターミナル横、なにやら飛行機の整備工場みたいなとこの裏門へ。フェンスの鍵を開け中にはいり、ハンガー内を通ってミーティングルームへ案内されました。ハンガー内にはエンジンカウルを外されたレシプロ軽飛行機が。まさか、あれで飛ぶんじゃないだろうな。。映画6day7nightsのハリソンフォードが登場するシーンが脳裏をよぎる。

ミーティングルームにはいると、カウンターの奥に体のでかいおじい様が。着ているパイロットシャツは汗でシミになっており、動きは超スロー。多分、承諾書と思われる用紙に名前や住所を記入する。それを提出すると、漢字で書かれた福井県の文字を指差し「Oh!フクイケン。トオイネ。」お、このじい様、漢字が読めるじゃないか。しかも、机の上を見ると、ポスターかなにかの厚紙で作られた、ハリセン改造うちわが。日本ツウだなぁ。。もしかして、元GHQか?でも、片言でも日本語が通じるからちょっと安心。

そして、小さい飛行機は初めて乗るのか?と聞かれ、NOと答える。座学でもあるのかと思ったら、部屋を出ていきなりエプロン上のセスナへ向かい、チョークを外して機内へ。ヨメさんは後席、僕は憧れの左席へ。う〜ん、ボロい。まるで20年落ちの中古車に乗ったようだ。え、右席はおじ様?この人本当のインストラクターだったの?ま、日本語通じるしいいか。機内は暑いから、ドアを開けたまま説明開始。

まず左右のラダーペダルを交互に踏み、ラダーペダルの説明を聞く。ちなみに、ラダーペダルを上から踏みこむと車輪のブレーキがかかります。普段FSをジョイスティックでしか遊んだことのない僕には、それだけで驚きでした。次にヨークを左右に動かすと、エルロンがギコギコ。地上ではラダー、浮いたらエルロンで方向を変えましょう。次にヨークを引く。う〜ん、思ったより軽いなぁ。あ、今は抵抗がないから当然か。。あと、スロットルレバーや燃料レバーなどを説明。離陸滑走中や上昇中500フィートまでは、スロットルレバーが戻ってこないよう奥まで手で押さえつづけなければならないそうです。

続いて、計器類へ。ここからは質問形式にかわる。速度計を指差してこれは何?って。さすがに計器類は普段からFSで見なれているからバッチリ。水平儀と高度計は特にしつこく質問と説明をうけました。ここに黄色いマークがきてたら機体はどういう姿勢かとか、機体が上を向くと速度はどうなるかとか。ちなみにサイパン国際空港の海抜は210フィート。高度計は海抜からの高さであって、地上からの高さではないということを何回も繰り返す。関空は海抜25フィートで来年は24フィートです、というアメリカンジョークまでかましてくれました。

今回の体験操縦は、VRが70KN、上昇角8度で1500フィートまで上昇、水平飛行にうつってからは80KN巡航、15度のバンクで旋回するそうです。バッテリーSWをON。キーを回す。が、エンジンがかからない。2回目、3回目でガクンとプロペラが45度ほど動く。どうやら、車のセルと同じで、しばらくスタート位置でおさえておかないとダメなようです。4回目で成功!バルバルとペラが回りはじめる。無線を入れて、ATIS(だと思うをチェック)。う〜ん、英語が流暢過ぎて聞き取れないぞ。ま、いいかと思っていると、隣でおじ様がスロットルを押し込む。ググっと機体が動き出し、さあ出発だ!

エプロンからまっすぐに進むと、隣席から「ペダル」のお言葉。あ、タキシーは僕がするのかとペダルを踏みこむが、これがなかなか難しい。黄色い線の左右をフラフラと。そしてタワーからクリアードフォーテイクオフが。聞きなれた単語だけど今日はとても新鮮です。本日のR/Wは07。さあてR/Wに進入という時になって隣席から「窓!窓!」。え、この窓どうやって閉めるの?窓に気をとられると足の力が抜けてラダーが。。もっと早く言ってくれよぉ。R/Wの途中地点から進入し、まっすぐ機体が向いたところでフルスロットル。奥まで手で押さえ込んでると速度計がじわじわと上がってくると同時に、エンドもだんだん近づいてくる。50、60、70。。振動がだんだんと大きくなっていく。これはエンジンの振動か、車輪からの振動か?と思っていると、隣席から「引く。引く。」あ、離陸も僕がするんですか?

ヨークを手前に引くと、いとも簡単にリフト。まさしくFSと同じだ。え〜と、機体が浮いたら脚を引きこんで。。あ、このセスナは固定脚か。と、300フィートくらいから機体が右に傾く。水平に戻してもまた。それに気をとられ、知らぬ間に右手がスロットルレバーを離し、見ると手前に戻ってきている。。隣席からは笑い声が。あんたは怖くないんか?後席もいたってご機嫌。高度が上がるにつれエメラルドグリーンの海が視界に広がっていくのでした。

きっちり1500フィートで、レベルオフ。すると当然速度は上がる。機首を上げ速度を抑えると高度があがる。ちょうど具合のいいところでスロットルを根元のネジで固定し(なんとも原始的)、トリムを回してピッチ調整してもらいやっと一安心。ここで、おじ様がサービスでトリムとヨークでの舵の効き具合の違いを見せてくれ、上昇と降下を繰り返す。トリムはFSより実機のほうが反応早いような気がするなぁ。

そのあとは、ライトターン、レフトターンの練習。当然ながら機体が傾く。う〜ん、操縦してるって実感がジワジワと沸いてきたぞ。あとは、隣席の指示に従いながらターンをして、島の海岸線沿いを逆時計まわりに遊覧飛行。ヨメさんは後席で空撮カメラマン。上空からいろいろと島を案内してもらってました。でも、島の西側にまわると所々に上昇気流が。いきなりフラリフラりと機体が傾く。水平儀を見てると、だんだんどっちに傾いてるかわからなくなってくる。そういう時は、計器から目をはなし、目の前に広がる水平線を見て修正。そうすると知らぬ間に高度が下がる。あぁ、やっぱり三軸を操るって難しい。

30分ほど(だと思う)で、島を1周。気がつけばベースレグにのっており、左手に空港が見えてきました。あ、これがエアポートインサイトなんですね。たしかにホッとします。だんだんランウェイが真横へ移動していくと、隣から手が伸び、スロットルレバーを戻して出力を絞る。あぁ、楽しかったと感動していたら、ヨークに力がかかり機体がガクンと左へバンク。さすがベテラン、するどいバンクでアプローチするなぁとヨークから手を離し右を見るとおじ様の両手はひざの上に。え!今のは気流?えええ!着陸も僕がするんですか!!

僕のFS着陸成功率は最近70%くらい。しかも、アプローチコースにのせるのがヘタだから、遠くからまわってストレートインが原則なのに。だんだんと高度は下がり、ランウェイが近づいてくるが、正面にまっすぐこない。なんとかまっすぐ、そして水平にと思えば思うほど機体は左右にフラフラと傾く。そう、FSと一緒だ。いつもはこのままランウェイを斜めに突っ切って片翼を地面に引っ掛けるパターン。でも、隣にベテランが座っているし(おじぃ様だけど)、なんとかなるだろうと覚悟をきめてラインにのせる。だんだん地面が近づいてきた。さぁて、タッチダウンだ!と思った瞬間、ヨークが手前にククッと動く。あ、さすがにフレアだけは隣でかけてくれるのね。

3回ほどのフレア動作のあと、軽い衝撃とともにタッチダウン。あ、やっぱりまっすぐじゃなかった。機体が徐々に右に寄っていく。思わずヨークを傾けようとすると、また隣から「ペダル。ペダル。」そうです、地上ではラダーでした。あとは、さっそうと国際空港ターミナルの前を通過して元のエプロン区域へ。え〜と、機体を止める時は両足のラダーペダルを上からギュッ!。燃料を切って、キーをオフ、バッテリーもオフにして終了です。

こうして僕の初操縦は終わりました。はじめは、体験操縦といっても高度の高いところにあがってから、旋回や上昇なんかをさせてもらえる程度と思っていました。しかし実際は、無線・スロットル調整・フラップ(操作したのも気がつきませんでしたが)、最後のフレア動作はインストラクターがしてくれた程度で、あとは離陸から着陸まで操縦でき、もう大満足の内容でした。欲をいうと、最初からどの程度までの操縦をさせてもらえるのか教えて欲しかったですが。参考までに料金は操縦体験者が$150。同乗者が$50です。約22000円(当時)で二人が遊覧飛行して、そのうちの一人が操縦まで体験できると考えると、かなりのお値打ちツアーだと思います。みなさんもサイパンに行って、普段FSで鍛えた腕を試してみませんか。