京福電車を引き継いだ
えちぜん鉄道の新装車両
豊かな地域、持続可能なまちづくりに電車・バスは欠かせません
クルマ社会の真っ只中の福井県で公共交通の発展を考えています
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これまでの「公共交通を考える」その2 (2005.1〜2013.10)




電車通勤とモードの切換え (2013.10.1)

 慶応大学のある研究室が都内で調査した結果、電車に乗っている時、携帯電話などの電子メディアを使う人の割合が4割近くまで増え、何もしない人の割合と逆転してトップになったと、東京新聞(2013.9.22)が報じた。2004年から、同じ路線で毎年調査を実施している。
 調査は、昨年10月から約1ヵ月間、地下鉄丸ノ内線やJR山手線など、東京都内の鉄道4路線の車内で、学生約10人が朝夕に一定の駅間で乗客を観察したもので、延べ約2万2千人の行動を利用するメディアによって分類した。分類は、(1)携帯電話やスマートフォンなどの電子メディアを使う、(2)新聞や本、雑誌などの紙メディアを読む、(3)睡眠または何もしない、(4)車内で広告を見るなどそのほかの行動、の4種類。複数の行動をした場合は、それぞれを1カウントとする。
 その結果、今回は電子メディアを利用する人の割合が、前回の34%から39%に増加し、04年の17%から毎年上昇して初めてトップとなった。前回まで8年連続で最も多かった睡眠または何もしない人が、今回は2ポイント減の35%で2位になったという。「紙メディア」は、前回と同じ約13%だった。9年間の変化を見ると、電子メディア以外はいずれも減少傾向にあり、「何もしていない人」は04年から6.1ポイント減っているという。電子書籍には今ひとつ馴染めず、紙メディアに郷愁を感じている感覚からすると、今回の結果で電子メディアの増加が紙メディアから移行した訳ではなさそうなことは、取り敢えず安堵できる結果のように思えた。

 ところで、朝夕の電車と言えば通勤通学のラッシュ時間帯だ。この所要時間が10分とか20分とかの人にとってはどうなのかよく分からないが、毎日、片道1時間近くかけて電車通勤してきた私から考えると、通勤時間というのはそのお陰で短縮を余儀なくされている睡眠時間や読書時間を少しでも取り戻す代償の時間帯であったり、もしくは職場と家庭のモードを切り換える緩衝帯であったように思う。
 しかし、「ながらスマホ」などという言葉が作られるほど、近頃は歩いていても、電車を待っていても、電車に乗っていても...スマホをいじっている人が目立つようになった。カメラ機能も付いているので「盗撮」したと言い掛かりを付けられる人もいるとかで、モードの切換えどころか、四六時中スマホでコミュニケーションし、ゲームし、調べごとをし、という人が多くなったということになると、これから一体全体どうなるのか。寝不足も勉強不足も解消できず、モードの切り換えもできずにやってくる職場や学校で、果たしてどのような結果が残せるものか、何とも心配になってしまった。


モーダルシフトの取組み・続報10 (2010.6.26)

 読売新聞(2010.6.19)によると、キリンビール仙台工場が15日から青森県内向けの製品輸送について、その全てをトラックから鉄道貨物輸送に切り替えた。最寄りの貨物駅から特約店までは短距離のトラック輸送になる。同社は、2012年までに二酸化炭素排出量を1990年比で60%削減する計画で、全国的に鉄道輸送への転換を進めている。
 同紙の記事によれば、同工場は東北6県と新潟県に製品を出荷していて、同社の11工場中で唯一、鉄道の引き込み線が敷設されているという。既に昨年の出荷量約37万トンの内13.5%の約5万トンがJR線を経由していたが、日本経済新聞(2010.6.18)によれば青森県分を全量鉄道に切り替えたことにより、鉄道輸送の割合は15%になる見通しだそうだ。


規制緩和から10年、地方鉄道廃止のなりゆき (2010.1.10)

 ここ約10年間で、廃線となった鉄道(路面電車含む)は一部区間の廃止を含め30路線で、総延長が635kmにのぼることが国土交通省のまとめでわかった。共同通信から配信(2010.1.5)され、翌日付けで各地方紙などでも報じられたと思うが、これは「東海道新幹線東京−新大阪間を上回る鉄道が消えた計算」で、このうち約半分は旧国鉄線を引き継いだ三セク鉄道だという。
 この期間は、2000年3月に公共交通にかかる参入・撤退の規制が緩和され、地元の合意なしに鉄道の廃止が可能になってからの10年弱にあたり、公共性を有するにもかかわらず民間経営として独立採算を迫られた鉄道会社が、十分な公的支援を得られない中でやむなく廃線を選択した結果であった。一度撤去された鉄路を再建することは極めて難しく、そうなる前に廃線の結果が何をもたらすか、民間会社の採算以外に地域社会としての費用対便益から見たらどうかなど、公共的観点からの慎重な検討が必要なはずなのだが、市場原理主義者の声高な「規制緩和」論に押しまくられて、取り返しのつかない事態を生んでしまった。将来に向けて、この損失はあまりにも大きいと思う。今もまた、高速道路料金の週末引下げで利用客を減らした各地の交通機関の悲鳴をよそに、一方的に無料化だけを実施する愚策が進められることになれば、常軌を逸しているとしか言いようがない。

 常々思うことだが、国や地方の一つの政策を採った結果責任を、政治家の場合は次の選挙の当落でしか取らなくていいということにどうも疑問がある。会社の経営者は株主代表訴訟などで賠償責任を問われるのだが、十分検討もしないで「規制緩和」した結果、公共交通はガタガタになり、タクシー運転手の生活を苦境に追いやり、航空や鉄道などの安全性が現実に脅かされるといった、国民の受けた、そして今後さらに受けるであろう大きなダメージは一体どうしてもらえるのか。確かに自然科学のような実験はできないのはわかるが、この頃は「社会実験」なるものも結構行われているし、シミュレーションの手法も発達しているのではないだろうか。政治行動に制約を加える危険性は認識しているつもりだが、社会に与える影響をろくに事前評価もせずに、明らかに失政を行った政治家の責任を問えないというのもいかがなものだろうか。
 もちろん、地方鉄道を壊滅させるつもりかとさえ思えた交通行政にもかかわらず、各沿線ではそれぞれの生活の足を守ろうという人々や、その声に応えようとしてきた自治体、鉄道関係者の頑張りがあったことも決して忘れてはいけない。それがあったればこそ、こうした苛烈な逆風の中でこの程度の廃線ですませることができたとも言えるのであり、是非ともこの10年の教訓を生かして、長期的、総合的な視点に立った公共交通政策を打ち立てる必要がある。


広島電鉄が契約社員を全員正社員に (2009.12.12)

 日本経済新聞(2009.12.7)の「地域総合2」面で、広島電鉄が10月に、運転士や車掌などの契約社員ら300人全員を正社員化したと報じられた。これまでは、労働組合に守られた正社員の高い給料を回避するため、分社化して低い賃金体系の会社に業務を移したり、非正規社員を安く雇ったりという方法で電車やバスの運行を継続するところが多かったし、昨今もそのような対応を取る自治体などのニュースが報道されている。しかし、広電はそうした動きに逆行して、従来「3つに分かれていた雇用形態をすべて一般正社員に統一」(同紙、以下同じ。)し、「社員間の格差や契約社員の将来不安の解消に踏み出した」というのだから、これは刮目に値する話だ。
 注目しなければならないのは、一つは労働組合の動きであり、もう一つは全員正社員化に当たって元々正社員だった人たちの賃金が引き下げられたことである。多くの労働組合は正社員中心に組織され、企業が正社員を非正規労働者に置き換えて人件費を削減することに有効な対応を取れずに来た。いやむしろ、自分達の生活を守る=企業の収益を守るために、他者の劣悪な労働条件を見過ごしてきたのではなかったか。ところが、「私鉄中国地方労働組合広島電鉄支部は制度導入時から非正規社員も組合員にし」、「06年から契約社員の正社員化を目指し」てきたというのである。この結果、世に言う“同一価値労働・同一賃金”などは飛び越して、全員を正社員化するために古株の社員には賃下げを呑んでもらうしかなかった。ここでは、労働組合は正社員の既得権的な賃金水準を守るより、非正規労働者の「将来不安の解消」を優先したのである。これまでどちらかというと労働者の分断に手を貸し、働く者からの信頼を損ねる一方であった労働組合が「日本の雇用論議に一石を投じた」意味は大変大きい。したがって、この取り組みの結果には大いに関心を持ち続ける必要があるが、それとともに、労働者をまともに雇えないような事態に追い込まずとも公共交通を維持発展させることができるように、鉄道やバス会社をしっかり支える社会の仕組みづくりが欠かせないと思う。


フランスで今度は貨物専用鉄道網の整備 (2009.9.22)

 今年の5月22日付けで、フランスでの“公共交通倍増計画”について紹介したが、今度は「鉄道貨物輸送のインフラ整備」方針が明らかになった。日本経済新聞(2009.9.20)によると、同国政府は「貨物専用の高速鉄道網を国内に張り巡らし、トラックや航空輸送からの移行を促す」ため、2020年までに鉄道網と列車の整備に80億ユーロ(約1.1兆円)を投資するのだそうだ。
 これによって「鉄道貨物輸送の割合を現在の14%から22年に25%まで引き上げる」という目論見だが、トラックに比べて鉄道の場合の二酸化炭素排出量は約8分の1というからその効果は大きい。我が国では民主党政権が誕生し、20年までに温室効果ガス排出量の90年比25%削減を目指すというが、一方で高速道路無料化もマニフェストの目玉だった。両政策が矛盾しないためには、早晩、環境税(炭素税)の導入と鉄道へのシフト策を採らざるを得ないと思うのだが、来年に参院選を控えて“良薬”の処方はできそうにない。欧州に比べて、環境政策は言うまでもなく、議会政治の成熟度もまだまだ劣っているということなのだろうか。


モーダルシフトの取組み・続報9 (2009.6.30)

 神戸製鋼グループの距離500km以上の海上・鉄道輸送の比率が、鉄鋼部門で2008年度に97%に達したという。同社のホームページ(下記)によると、同グループでは「これまで、製品の最適輸送ルート、輸送手段の選択、配船システムなどの物流情報システムの高度化を進め、製品の輸送効率向上を図ってきました。2003年度以降は、トラック輸送から海上輸送、貨車輸送への輸送手段の変更(モーダルシフト)を一層進めています。具体的には、新日本製鐵(株)、住友金属工業(株)との提携の一環で、内航船の共同運航により空船回航を低減しています。」としている。このほか、相積みによる積載効率の向上も実施し、グループの物流会社間でも船舶の相互融通を行うなど、船舶の運航効率向上に取り組んだ結果が頭書の成果につながったという訳だ。
 また、溶接カンパニーでも、製品輸送についてグループ会社との共同配送に取り組んでいるが、これに加えて「例えば、西条工場においては、トラックから鉄道・船舶へのモーダルシフトを進めて、現在、北海道・仙台方面への輸送は100%、関東方面は82%の実績となっています。」と、モーダルシフトの推進でも高い実績を誇っている。

<参考>神戸製鋼所の公式サイトから「環境・社会報告書2009」のページ
 http://www.kobelco.co.jp/environment/kaiji/report/2009/index.html


フランスでは“公共交通倍増計画” (2009.5.22)

 フランス政府はこのほど、今後3年間で既存の公共交通網を倍増させる「持続可能な都市交通計画」を発表したそうだ。EICネット(2009.5.13)によると、同国エコロジー・エネルギー・持続可能な開発国土整備省が4月30日付けで公表したもので、08年10月から募集していた都市交通の整備計画50件(イルドフランス、すなわちパリ中心の首都圏を除く)を選定した。これらのトラム、特定地域のバス、地下鉄などを整備する計画の実施には、11年までに国が地方自治体に8億ユーロの補助を行って支援するという。
 この計画により「新たに整備される交通網は365kmに及び、既存の交通網を倍増するもので、総額約60億ユーロの工事が今後3年間で」実施されることになるらしい。この記事を見る限りでは国の支援措置がいかにも小さいように思えるが、地球環境を守るために「脱クルマ」が目指されているときに、公共交通経営への配慮もなく高速道路の割引を実施する国と比べると、先を見通した政策の着実な実行という点で随分と大きな差が見受けられる。第2回目の計画募集は、さらに10年の終わりから開始するとされている。


モーダルシフトの取組み・続報8 (2009.3.29)

 日本経済新聞(2009.3.18)によると、日本製紙は新聞紙などを生産する岩沼工場(宮城県岩沼市)の製品について、2009年度中をメドに生産量の約3割に当たる年間20万トン程度をトラックから鉄道による輸送に変えるという。このシフトによって年間の物流コストを約2400万円削減できるとしている。
 同社は日本貨物鉄道(JR貨物)と契約して、岩沼工場と石巻工場(石巻市)の引込み線から、同社の倉庫があるJR貨物・北王子駅(東京都北区)まで専用直行列車を1日2便(1便当たり約500トン)運行しているが、鉄道による出荷率は石巻工場の約55%に対し、岩沼工場は約25%と低い。直行列車の増便はすぐには難しいが、同社では当面は岩沼工場からJR宮城野駅(仙台市)までトラック輸送し、JR貨物の列車に積み替える方法で、新たに約2万トン分をトラックから鉄道に切り替える考えだという。


モーダルシフトの取組み・続報7 (2008.10.27)

 今回は、三洋電機の取組みを紹介しよう。毎日新聞(2008.10.21)によると、同社は10月から「埼玉〜福岡間の約1200キロで往路は三洋が、復路はヤマトがコンテナを共同利用する」という形で、両社ともに鉄道輸送コンテナを他社と共同利用する初めて試みを開始したという。「JR貨物によると、同様の取り組みは、住友電気工業と古河電気工業が大阪〜栃木間で10月から導入しており、企業同士の共同輸送が広がりつつある」(同)のだそうだ。
 これまで三洋は、業務用の空調機や冷凍冷蔵庫などの厨房機器といった大型の業務用機器を、東京製作所(群馬県大泉町)から九州物流センター(福岡県久山町)までトラック輸送していたが、今後は週1便をJR貨物の越谷貨物ターミナル駅(越谷市)から福岡貨物ターミナル駅(福岡市)まで鉄道輸送する計画。サイズがまちまちの製品を31フィートコンテナを使用して輸送するが、コンテナの往復利用が課題で、九州から関東への宅急便輸送で鉄道を利用したいヤマトと共同輸送することにした。
 全区間トラック輸送した場合に比べ、1往復約3.7tのCO2を削減でき、年間では200tの削減が可能になるとしていて、朝日新聞(2008.10.21)によれば、三洋は今回の取組みの効果を検証し、今後は北海道や東北地区でもモーダルシフトを推進する方針という。こうした取組みにより、同社は大型業務用機器輸送で2010年度に1000tのCO2削減を目指す、としている。


モーダルシフトの取組み・続報6 (2008.7.6)

 久々に、鉄道へのモーダルシフトの動きを紹介する。日本経済新聞中国版(2008.7.3)が報じたところでは、JFEスチール西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)は、鋼材製品を鉄道輸送するため、このほど自社専用のコンテナ44個を製造した。製鉄所近くの水島臨海鉄道東水島駅まで製品をトラックで運んでコンテナに積み、JR線を使って北陸、東北、北海道などに片道2日程度かけて輸送する。
 鉄道の場合はコンテナ輸送になるためサイズや重量に制限があり、運べる製品が限られるが、CO2排出をトラックの3分の1に抑える効果があるが、さらに、近年の原油高騰に伴って、コスト面で鉄道がトラックより有利になる地域が、以前の東京圏から今は中京圏まで近付いてきていて、今後の製品輸送はほぼ独自コンテナでまかなうとしている。

 また、北海道新聞(2008.7.4)によると、北海道の自動車部品製造業・ダイナックス(千歳市)が、今秋、主力製品の自動車用クラッチ盤の本州への輸送の一部を鉄道に切り替え、燃料高騰の中でコスト削減に取り組む。
 同社は、現在は大半の製品をトラックで苫小牧港まで運び、フェリーで関東・関西方面に輸送しているが、港よりも鉄道駅の方が納付先に近い場合が多く、その後の配送効率化が見込めるという。また、これまで工場への空容器の輸送と製品の集荷を別々のトラックで行っていたが、製品の出荷時間を調整して1台のトラックで済ませる仕組みも導入することにしている。これら一連の取組みで、従来のフェリー輸送に比べCO2の排出量は約37%削減できるとしている。


「ぬれせんべい騒動」の先に見えてきたのは? (2008.4.23)

 千葉県の銚子電鉄に「ぬれせんべい騒動」が巻き起こったのは、2006年11月のことである。電車の法定点検費用が捻出できず、そのままでは本州最東端・犬吠埼で初日の出を拝もうという乗客を運ぶ、年末恒例の「初日の出運行」に支障が出る事態に陥ったのだ。窮余の一策で、一社員が同電鉄の副業(と言うより、こちらの利益で電車が動いている!)で販売している「ぬれせんべい」を買ってくださいと、インターネットに悲痛な呼び掛けを掲載したところ予想外の大反響があり、購入申込みが殺到して予約を断らなければならなくなったのである。
 ところがその直後、同電鉄は国の保安監査に基づく改善命令を受けて、さらに枕木の腐食対策などを迫られる事態に追い込まれる。この廃業の危機を救ったのは、インターネットを通じた支援の盛り上がりと、これに触発された地元有志の素早い活動だった。向後功作著『がんばれ!銚子電鉄 ローカル鉄道とまちづくり』(日経BP社)は、同電鉄の鉄道部次長の職にある著者が、この「騒動」の顛末を報告したものである。

 「騒動」によって一時の危機は脱したものの、著者が指摘しているとおり、銚子電鉄存続の見通しがこれで開けたわけではない。しかし、この「騒動」を通して見えてきたものがある。一つは、インターネットの威力である。実は、「ぬれせんべい」が話題になったのは今回だけではなく、1997年頃にもテレビで取り上げられてブームが起こったのだそうだ。しかし、「そのときのブームは、まさに一過性のもの」で「テレビの効果は、ほんの数日しかもたなかった」という。ところが今回は違った。社員の悲痛な訴えは掲示板「2ちゃんねる」でさっそく受けとめられ、ブログ、SNSへとたちまち広がり、しかも、効果的な支援方法を具体化しようという深まりを見せたのだ。
 もう一つは、まちづくりとの連動である。著者はまちづくりへの関心が高じて、社会人入試を受け03年4月から地元大学で学び、「騒動」後、立派に卒業している。大学を目指した時の、銚子の活性化は銚子電鉄にもつながっているという思いは、今度の「騒動」で確信に変わった。今回の本では、まだ十分展開されてはいないが、コンパクトシティの社会基盤としての公共交通、観光資源としての地方鉄道など、地域活性化と絡んだ重要な問題提起が行われている。著者も関わっている銚子のまちづくりが、今後、どのように発展し、銚子電鉄がその中でどのような役割を果たすのか、大変気になるところである。


道路特定財源の議論に不足するもの (2008.1.27)

 ガソリン価格の高騰で、えちぜん鉄道(福井市)や、福井の中心部を走るコミュニティバス「すまいる」の利用者数が伸びているという。福井新聞(2008.1.18)の報じたところでは、「ここ3カ月のえち鉄の通勤定期利用者数は、10月は前年同月比5%増だったが、レギュラーガソリンの店頭価格が7円程度引き上げられた11月は9%の伸び。150円の大台に乗った12月は8%増加し」、1月も8〜9%の増で推移しているそうだ。
 さらに「すまいる」は、「10月は前年同月を973人下回ったものの、ガソリン価格高騰に連動するかのように11月は344人増え、12月は1709人増加した」という。このことは、期せずして公共交通への移行実験を行ったようなもので、ガソリン価格を上げるなど自動車の使用に一定の負荷を掛ければ、通勤などの交通手段のモーダルシフトが起こることを実証したことになる。

 一方で、今、政界は道路特定財源の暫定税率継続を巡り大騒動が起こっている。民主党は暫定税率の継続反対を打ち出しているが、道路が本当にどれだけ必要なのか、道路関係予算の財源としてユーザーにどれだけ負担を求めるべきか、特定財源の一般財源化はどうなったのか、など肝腎な話はあまり聞こえてこない。これでは、継続反対はガソリンの高騰に悲鳴を上げる国民におもねるものだと批判されても仕方ないが、もう一方の与党などの継続論も、「もっと道路を」という地方の声をバックに道路財源を守れの一辺倒だ。一体、どれだけ道路を造れば満足できるのか、道路をどれだけ造っても自動車が増えるだけで渋滞解消などできていない現実をどう見るのか、自動車への過度な依存でどんな弊害が出ているのか、など根本的な議論がないまま、あまりにも感情的な主張ばかりが飛び交っている。暫定税率の期限切れが、総合的な交通政策を考える絶好の機会だと思うのだが・・・・。


モーダルシフトの取組み・続報5 (2007.9.30)

 日立物流が、海上コンテナの内陸輸送に鉄道を活用することになった。日刊工業新聞(2007.9.27)によると、同社が中国やタイで生産した冷蔵庫、エアコンといった家電品を東京港から日立アプライアンス栃木事業所(栃木県大平町)まで運ぶ手段として海上コンテナの輸送の一部を鉄道に切り替える。これにより、二酸化炭素(CO2)排出量の半減と物流効率化につなげる考え。
 モーダルシフトは、伸縮式のコンテナシャシーを導入し、20フィートと40フィートのコンテナを混在して運べるようにし、08年1月をめどに東京港−栃木間で鉄道とトレーラーを併用した家電品輸送を始める計画。20フィートと40フィートの海上コンテナの混在輸送は経済産業省などが推進する07年度グリーン物流パートナーシップ推進事業(2次募集)の普及事業として決定した。


モーダルシフトの取組み・続報4 (2007.7.7)

 今度は、マツダが7月2日から、広島と東海地区を結ぶ部品物流で専用コンテナを使った鉄道の往復輸送を始めたというニュースを紹介する。日本経済新聞(2007.7.2)によると、日本通運のトラックが愛知、三重、静岡、岐阜などのメーカーから部品を回収し、名古屋貨物ターミナル(名古屋市)に集め、JR貨物で広島に運ぶ。広島からはマツダ車専用の補修部品を運搬する。
 同社では、2006年4月から一部の調達部品について鉄道輸送へ転換しているが、今回、対象取引先を広げるとともに、新デザインの専用コンテナ(全長31フィート)を採用して鉄道による往復輸送を開始したもの。従来に比べ同区間の輸送にかかるエネルギーを年間で27%引き下げ、燃料コストと二酸化炭素(CO2)排出量の削減につなげる。

<既報>
■モーダルシフトの取組み・続報3 (2007.5.27)
■モーダルシフトの取組み・続報2 (2006.12.11)
■モーダルシフトの取組み・続報 (2005.12.11)
■地球温暖化防止に鉄道へのモーダルシフト促進策を (2004.3.7)
■鉄道復権へ少しずつ前進  (2003.5.25)


続3・鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり (2007.6.30)

 3月末の鹿島鉄道の廃止に伴う代替バスを運行している関鉄グリーンバスは、このほど鉄道からバスへの乗換え率は約4割にとどまっていることを明らかにした。毎日新聞(2007.6.21)によれば、同社は記念乗車券や1日フリー切符を発売するなど増収に取り組んでいるが、厳しい収支状況が見込まれ、今後、運行系統の見直しなどに早急に取り組みたいとしているそうだ。
 調査は、5月22日に調査員が全便に添乗して実施したもので、1日の乗客は876人、うち定期券利用が449人(通学定期が78%)、定期外が427人だった。一方、鹿島鉄道線の05年度の輸送実績は1日当たり2125人で、定期券利用が1195人(うち通学定期が70%)、定期外が930人だったので、これを元に計算すると、鉄道からバスに乗り換えた人の割合は41.2%になる。通学定期の高校生には夏休みなどがあるので、通年でみるとさらに乗換え率は減少すると同社は予想している。

<既報>
■続々・鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり (2006.11.26)
■続・鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり (2005.8.17)
■鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり (2004.1.26)


米国の通勤で公共交通利用はたった5%弱 (2007.6.20)

 このほど米政府が発表した調査結果によると、公共交通機関を利用して通勤していた労働者は4.7%に過ぎず、約9割は自家用車を使っていたことがわかった。
 米統計局の2005年時点の調査についてJST−CNN(2007.6.14)が報じたもので、マイカー通勤の77%は運転者1人だけしか乗っていない。わずかに公共交通を利用している労働者のうち約半数はボストン、サンフランシスコ、ニューヨークなどの大都市の住民という。
 これが「クルマが鉄道を滅ぼした」(ブラッドフォード・C・スネルの著作の日本語版表題)国の実態ということだが、京都議定書の批准を拒んでいるこの国は、環境保全でも交通政策でも最後進国と言われて仕方がなかろう。


モーダルシフトの取組み・続報3 (2007.5.30)

 久々に、貨物輸送の鉄道への取組み事例を報告したい。富士通が携帯電話など一般向け製品について鉄道輸送を開始したというニュースだ。日刊工業新聞(2007.5.25)によると、同社の鉄道貨物輸送はこれまで企業用パソコンなど事業系製品がメーンだったが、これを携帯電話と家庭用パソコンの一部にも広げようというもので、トラック輸送と比較して年間10%程度のコスト削減効果を見込んでいるという。
 同社は短納期が求められない製品について、トラックと比較して輸送コストが同等の場合は鉄道貨物への切り替えを進める考えで、今回始めたのは那須工場(栃木県大田原市)で生産しているNTTドコモ向けの携帯電話の一部を北海道、九州、中国エリアへ輸送するもの。現状は5トンコンテナで月10台程度の輸送規模だが、今後は輸送量の拡大や他製品への適用も検討するとしている。

<既報>
■モーダルシフトの取組み・続報2 (2006.12.11)
■モーダルシフトの取組み・続報 (2005.12.11)
■地球温暖化防止に鉄道へのモーダルシフト促進策を (2004.3.7)
■鉄道復権へ少しずつ前進  (2003.5.25)


モーダルシフトの取組み・続報2 (2006.12.11)

 ちょうど1年前に「モーダルシフトの取組み・続報」をお伝えしたが、前回の日産自動車系の変速機メーカーの話に続き、今回はトヨタの取組みを紹介する。

 トヨタ自動車は11月15日から、JR貨物、日本通運、トヨタ輸送の協力を得て、専用列車による自動車用部品輸送を開始した。輸送時間の短縮とCO2排出量の削減が目的で、鉄道を利用した部品輸送は同社では初めて。JR貨物は、2005年4月から試験輸送を行ってきた。
 LNEWSのプレスリリース (2006.11.17)によると、輸送区間は名古屋南貨物駅(名古屋臨海鉄道)−盛岡貨物ターミナル駅で、輸送距離約900kmを1日1往復、年間244日の運転を予定している。輸送個数は、20両編成1列車に31フィートコンテナ(10トントラック相当の積載量)40個を積載し、名古屋−盛岡間は自動車部品、盛岡−名古屋間は部品積載空容器を輸送するという。
 FujiSankei Business i.(2006.10.31)によれば、トヨタは愛知県内の各工場で生産したエンジンやトランスミッションなどの主要部品を、盛岡貨物ターミナル駅まで鉄道で輸送し、そこからは日本通運のトラックでグループの関東自動車工業岩手工場まで運ぶことになる。同工場への輸送はこれまで、名古屋港から仙台港まで海上輸送し、仙台港からはトラックで運んでいたが、今回の鉄道輸送により、輸送時間は現行の3日から2.5日に短縮、CO2排出量も年間約5000トン削減できるという。

<既報>
■モーダルシフトの取組み・続報 (2005.12.11)
■地球温暖化防止に鉄道へのモーダルシフト促進策を (2004.3.7)
■鉄道復権へ少しずつ前進  (2003.5.25)


続々・鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり (2006.11.26)

 国土交通省中部運輸局の調べでは、9月末で廃止された小牧市の桃花台線(ピーチライナー)を利用していた通勤・通学客のうち、3割はマイカー通勤や自転車通学にシフトしたとみられることが分かった。中日新聞(2006.11.23)によると、廃止後に桃花台周辺で実施した自動車走行調査でも、渋滞悪化を示すデータが得られたことから、同局では利用実態をより詳しく把握するとともに、バスの利便性向上を模索する考えだという。
 調査は、10月2日から1ヵ月余の間の平日の平均利用者数を集計したもので、桃花台線の元利用者の72%(2600人)が新設の代替バス「ピーチバス」や既存の路線バスなどに移行していた半面、28%(1000人)はどのバスも利用していなかった。公共交通機関の利用者総数は、6350人から5350人へと減少していた、とされている。
 この調査結果は約1ヵ月程度の集計であるから、もう少し長い期間で利用実態の推移を注目する必要がありそうだ。

<既報>
■続・鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり (2005.8.17)
■鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり (2004.1.26)


えちぜん鉄道全面開業3周年、通勤客確保に照準を (2006.10.23)

 この19日で、えちぜん鉄道が全線開業してから丸3年たった。この間、乗客数は03年度下半期に約138万人、04年度は約242万人、05年度は約280万人と順調に増加してきた。06年度上半期は約147万人となって、降雪のため利用者増を見込める下半期分を加えると、今年度目標の年間300万人を達成できそうだという。
 これまでの好調さを支えるのは、アテンダントの配置や地道な乗継改善、増発などのほか、地元と連携しての年間50件を超えるイベントの開催などが要因とされるが、県立高校の学区制の撤廃で通学定期客が増えたといった事情もあるようだ。学区制の効果は3年たって一巡したことから、今後はむしろ少子化の影響で減少を懸念する声も聞かれる。

 同社は、08年度目標を330万人として黒字化を目指すが、これからが胸突き八丁を迎えることだろう。以前から、最も実効の期待できる利用促進策とされてきた、三国芦原線の福井市内での新駅設置が、ようやく07年度に実行に移され、これで約16万人の増加が見込めるそうだが油断は禁物だ。
 社長は「マイカー通勤を電車通勤に切り替えてもらうための努力が不可欠」と述べているが、まさにそのとおり。先日、「公共交通トピックス」で名古屋市交通局が市営地下鉄や市バスの通勤定期客の増大を目指し、団体購入に取り組む企業などに購入額の2%を還元するサービス(この適用を最初の6ヵ月だけ、としていることが何んとも納得しがたいのだが)を発表したが、CO2排出削減の対応とも絡めて、何とか企業の強力な取組みを促すべきだと思う。

<既報>
■えちぜん鉄道全線開業から2年、通勤者確保に重点を (2005.10.20)
■全面開業2年目を迎えた「えちぜん鉄道」 (2004.11.8)
■えちぜん鉄道・前途多難な経営黒字化 (2003.7.30)


乗用車と飛行機利用の1割を鉄道にすればCO2を1%削減 (2006.9.12)

 NPO法人・気候ネットワークの試算で、乗用車と飛行機の旅客利用の1割を鉄道にシフトすれば、二酸化炭素(CO2)の排出を1%減らせるという結果が出た。朝日新聞(2006.8.20)の報じたところでは、その削減量1232万トンは、京都議定書が定めた日本の基準年(90年)の排出量の約1%にあたり、大きな削減効果があるというわけだ。同ネットワークは「鉄道へのシフトを早急に進めるため、炭素税の導入や、出張で鉄道利用を求めるなど温暖化防止の制度が必要だ」と提案している。
 同紙によれば、京都議定書で日本はCO2などの温室効果ガスの排出量(2010年度)を基準年比で6%減らすことを課せられているが、04年度で8%超過している。このうち運輸・旅客部門では、04年度のCO2排出量は90年度に比べて42.5%と大幅に増えているそうだ。これは、1人を1km運ぶのに排出するCO2量が多い乗用車(鉄道の9.5倍)、飛行機(同5.8倍)の利用が進んだためだという。

 少し古いが、共同通信(2004.5.19)によると、国土交通省の交通政策審議会環境部会が01年度時点の実績を踏まえた推計で、貨物を含む運輸部門から出る10年度のCO2排出量が、政府が地球温暖化対策推進大綱で定めた抑制目標の2億5000万トンを500万〜1400万トン上回るとの結果をまとめている。大綱では、このうちモーダルシフトで910万トンの削減を見込んでいるが、01年度時点で約210万トンの削減ができただけといった状況だった。
 この状況が04年度時点でどうなったのか、冒頭の朝日の報道ではわからないが、モーダルシフトが目標よりも遅れているどころか、逆モーダルシフトが進んでいるのではないだろうか。単位輸送あたりの環境負荷は、自動車、飛行機と船舶、鉄道とでは大きく違い、冒頭のようなわずかなモーダルシフトでも大きな効果が見込めるわけだから、目標達成のためには具体的な削減対策を強力に進める必要がある。


路線バス運転手の危険な実態  (2006.9.5)

 路線バスの運転手の約8割が乗務中に事故につながりかねない「ヒヤリ、ハット」の経験をしていることがわかった。毎日新聞(2006.8.17)の記事によると、北海学園大学の講師が昨年12月〜今年1月、札幌市内と近郊の路線バス運転手298人を対象にアンケート調査を行ったもので、有効回答は63%、回答者の8割は20〜30代だった。
 回答結果(複数回答)によると、「乗務中によくある出来事や負担」として「乗務中、周囲の車両の動きにヒヤッとしたりハッとする」と回答したのが78%、「乗務前や乗務中に寝不足や疲れ、体調の悪さを感じる」と答えたのが73%あった。定刻通りの運行をしようと焦った経験のある人や、自家用車のバス専用レーン進入にいら立ちを感じる人も半数を超えたそうだ。

 一方、休憩を含む1週間の拘束時間は「60〜70時間」が47%と最多で、また、勤務日の睡眠時間は1日5時間台が30%と最も多く、4時間台以下の人も16%あったという。
 安部誠治編『公共交通が危ない−−規制緩和と過密労働』(岩波書店、岩波ブックレット)では、鉄道、航空、タクシーの“危ない”現場が紹介されているが、路線バスの運転手さん達も例外ではあるまい。今度の調査では、長時間の拘束を強いられている路線バス運転手の勤務実態の一端が明らかになったものだが、疲労による集中力低下が8割もの人の「ヒヤリ、ハット」体験につながっていると見るべきだろう。経営改善のために安全が損なわれたら元も子もない。利用者としても、バス会社の運営に無関心ではおれないのである。


やはりクルマ依存脱却にはガソリン値上げが効きそう (2006.4.29)

 原油高騰の影響でガソリン価格が上昇し、米国で通勤客がマイカーから鉄道に切り替える動きも出ているという。
 朝日新聞(2006.4.27)によれば、米政府が毎週発表する全国平均ガソリン価格は24日時点で1年前と比べて68セント高い1ガロン=2ドル91セントとなり、過去最高水準(05年9月の3ドル07セント)に迫っているそうだ。ワシントン市内を中心に地下鉄・鉄道を運営する公共交通機関メトロレールでは、4月に入って目立って乗客が増えていて、延べ客数は20日と18日にそれぞれ過去6位と9位を記録したというのだ。これまでの上位記録は大統領就任式や「桜祭り」など特別の日なのだが、今月は普通の日に記録を作っていて、同社では「車から電車に乗り換えて通勤する人が増えているようだ」としている。サンフランシスコやソルトレークシティーなどでも公共交通機関の客数が増える傾向にあるという。

 米国大統領には、原油備蓄の積み増し停止などという場当たり的な対策ではなく、是非とも中東地域の安定のために抜本的対応を講じてもらいたいものだ。しかし、ガソリン価格の急騰のおかげで、期せずして社会実験ができてしまった面もある。クルマ依存から脱却するにはこの程度の値上げでも効果があるということがわかったのである。
 喫煙者のたばこをやめさせるのに価格の引上げが有効ということは明らかになっていて、どの程度上げれば喫煙率がどの程度減るかといった研究も行われている。炭素税なり環境税なりという形で課税してガソリン価格を引き上げれば、公共交通への切り替えを進めることができるのだから、これは一挙両得だ。その半面で、果たしてどのような損失が発生するのか、この際、冷静に見極めておきたいものだ。


政権交代でドイツに“公共交通網の危機” (2006.1.12)

 与党が大勝した日本と違って、昨年のドイツ総選挙の結果、政権の樹立は大混乱の末にキリスト教民主社会同盟と社会民主党の大連立で収まった。そして、11月に発足した新政権は矢継ぎ早に財政支出削減のための施策を打ち出し、その一つ、近距離交通に対する連邦政府からの補助金の削減構想が物議を醸しているそうだ。
 JanJan(2006.1.7)によると、「連邦政府の案は、現在毎年70億ユーロ(約1兆円)近くにものぼる近距離交通(バスや鉄道)への補助金を、2006年度には35億ユーロに半減し、さらに2009年までに30億ユーロに圧縮するというもの」だという。ドイツでは、国鉄民営化後の1994年に近距離鉄道、バスの維持運営が国鉄から各州へと移管され、それと引き換えに連邦から補助金が支給されるようになったものである。

 ドイツでは公共交通網がよく維持され、マイカーへの過剰依存を排して持続的発展型の地域づくりを行っている点でモデル的な取組みが行われているが、そうした各州や都市の近距離交通網の運営を下支えしてきたのは連邦の手厚い補助金であったことは間違いない。したがって、連邦補助金が削減されることになれば、運賃を値上げするか路線を縮小するか、重大な決断をせざるを得なくなる。いずれにしても国民の生活を直撃することになるとして、メディアは「補助金削減」のニュースを大々的に報じているという。
 公共交通機関はエネルギー効率もよく環境保護の観点からも望ましいのは明らかで、昨年の総選挙までのように緑の党が与党であったならば、このような大胆な補助金削減策が採用されることはないだろう。政権交代の影響がこんなところにも現れたということなのだが、新自由主義的な「小さな政府」志向がこんな形で具現化することを、キリスト教民主社会同盟に投票した有権者はどこまで了解していたであろうか。大与党成立のツケがどこまで回されるのか、今後の動きに注目する必要がある。


モーダルシフトの取組み・続報 (2005.12.11)

 以前(2004.3.7)、運輸部門での温室効果ガス排出削減のためにどうしても必要な「モーダルシフト」の取組みについてお知らせしたが、今回はその続報。

 日産自動車系の変速機メーカー・ジヤトコは、12月から部品輸送の一部をトラック輸送から鉄道によるコンテナ輸送に切り替えた。レスポンス(2005.12.6)によると、これによって年間の二酸化炭素排出量の83.3%を削減できるのだそうだ。
 同社では、広島県のメーカーから部品を集荷して広島貨物駅でコンテナに積み合せ、生産拠点のある静岡県内まで約780kmを鉄道輸送し、富士駅から中継センターまでトラックでコンテナを運搬、センターで納品場所別に荷物を分割してトラックで配送する。
 1日の輸送量は10tトラック6台分が、鉄道輸送では約13コンテナになるとしている。時事通信(同上)によると、これによる二酸化炭素削減量は、東京ディズニーランド6〜8ヵ所分の森林が吸収する量に匹敵する2730tに上るという。

<既報>
■地球温暖化防止に鉄道へのモーダルシフト促進策を (2004.3.7)
■鉄道復権へ少しずつ前進  (2003.5.25)


えちぜん鉄道全線開業から2年、通勤者確保に重点を (2005.10.20)

 昨日で、えちぜん鉄道が京福電鉄越前線(一部除く)を引き継ぎ全面開業して2周年を迎えた。中日新聞(2005.10.17)等の報道によると、同社の本年度上半期の輸送人員は約137万人(前年同期比14.8%増)と順調に回復を続けている。下半期は降雪などでさらに利用客が増えると見込まれ、これまでの予想を上回る実績を受けて、同社は本年度の年間目標を260万人から275万人に上方修正した。
 利用者の内訳をみると、通学定期が47万8千人(同26%増)、通勤定期が20万9千人(同12%増)、回数券が15万4千人(同8%増)、定期・回数券以外が52万3千人(同9%増)となった。路線別では、勝山永平寺線が56万7千人(同10%増)、三国芦原線が79万7千人(同15%増)となっている。

 利用者増の要因としては、同社は今年2月発足した「えちてつサポーターズクラブ」の会員が9月末までに3450人に達するなど、沿線住民や行政の支援が成果に結びついたとみているほか、通学定期客の伸びは、昨年4月からの県立高校の全県一学区制導入などが主な要因と考えている。通勤定期客も、京福時代の00年度上半期の実績(19万7千人)を既に上回ったというから、まずは喜ばしいことに違いない。
 しかし、同社は08年度の利用者数330万人(00年度は約300万人)を目標にし、同年度での黒字転換を目指している。単年度だけではなく継続的に黒字を確保するためには、少子化が進む中で今後は通学定期の増加を見込むことが難しいので、通勤客の利用促進を対策の主軸に据えるべきだと思う。通勤客の雇用主である各企業・団体に、地球環境保全と社会貢献の観点から是非協力してもらえるよう仕掛けることが重要だ。


送迎無料バスと公共交通の競合 (2005.10.17)

 福井大学医学部が11月から、えちぜん鉄道松岡駅と同学部付属病院を結ぶ無料バス「げんきくん」を試験運行すると、日刊県民福井(2005.10.13)が報じた。運行は平日だけだが、1日計21便の運行で同駅発着の全電車が、無料バスか路線バスかに接続することになるという。来年3月末まで試験運行を行い、その結果をもとに増便などを再検討するのだそうだ。
 午前中に同駅に発着する電車は11本あるが、京福バスの付属病院行き路線バスは3本しかなく、通院患者や学生、教職員らから便数増加を求める声が高かった。このため同学部は、行政側にはコミュニティバスの新規運行を、京福バスには路線バスの便数増加などを働き掛けたが、採算面などで交渉が暗礁に乗り上げたため独自に運行することを決めたという。観光バス事業者に委託して、同駅−同学部間の直結コースで小型バス(29人乗り)を運行、片道所要時間は約6分で、電車接続の待ち時間は15分以内にする。

 ところで、なぜ大学医学部がここまでやるのか・・・・それは法人化した旧国立大学の生き残りがかかっているためだという。大学法人の経営を成り立たせるには「地域サービスの充実が問われ」、したがってその一環として、同付属病院の患者らの利便性を向上させ、併せて学生や教職員の通勤通学環境を整えようという考えなのだそうだ。
 しかし、路線バスが走っているところに無料バスを運行したらどうなるか・・・・大抵の人はただの方に乗ろうとするに違いない。そうすれば路線バスの採算性が一層悪化して、場合によっては路線が廃止されるようなことにもなりかねない。大学は行政やバス事業者と交渉したがうまくいかなかったとしているが、どのような内容の交渉だったのだろうか。京福バスも、大学が今回支払おうとする無料バスの委託料の額の範囲内で大学側から赤字補てんを受けて、1日21便を増発できなかったのだろうか。行政側も、コミュニティバスの新規運行は難しかったにせよ、公共交通を維持発展させるために何か調整はできなかったのであろうか・・・・大きな問題を抱えながら無料バスの試験運行が始まろうとしている。


現金購入切符の値上げは効果を上げられるか (2005.10.8)

 ロンドン市は来年1月2日から、地下鉄やバスなどの運賃を大幅に値上げするようだ。UK Today(2005.10.5)によると、地下鉄ゾーン1内における片道運賃は現在の2ポンド(約400円)が3ポンドに、バスの運賃は現在の1.2ポンドが1.5ポンドになるという。しかし、ここで興味深いのは、プリペイド方式のオイスター・カードを利用した場合は、地下鉄ゾーン1の片道運賃は現在の1.7ポンドから1.5ポンドに引き下げられ、現金支払いの場合の半額になるほか、バス運賃も現行料金(朝のピーク時=1ポンド、その他の時間帯で0.8ポンド)に据え置かれることだ。なお、定期にあたるトラベルカードについても約4%の値上げにとどまるという。

 というのは、この値上げは現金でその都度乗車券を購入する場合の運賃を高くし、乗客をプリペードカードなどの利用へ誘導して、ラッシュアワー時に駅の切符売り場やバスの乗車口が混み合うのを防ぐことが市の狙いだというのである。しかし、この大幅値上げは公共交通機関の利用を阻害し、低所得者には特に打撃が大きいとの批判がさっそく寄せられているほか、7月のテロで市内への観光客が減少しているのに状況をますます悪化させるのではないかと、関係業界からも強い懸念の声が聞かれるという。
 市の方策はなかなか思い切ったものだが、利用者や業界側の批判や懸念もうなづける。果たしてこの運賃値上げの結末はどうなるのだろうか、大いに関心を持って見守りたい。


続・鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり (2005.8.17)

 先日の朝日新聞(岐阜版、2005.8.4)の記事によると、学校の近くに名鉄揖斐線の美濃北方駅があった岐阜高専では、同校が全校生徒約1100人を対象に行った通学方法調査の結果、04年4月の名鉄揖斐線の利用者が175人いたのに対し、岐阜乗合自動車(岐阜バス)が旧揖斐線に沿って路線を設けた代替バスの利用者は、今年4月は85人にとどまった。学年の入れ代わりはあるものの、概ね半減しているということになる。
 岐阜市の調査でも、朝の通勤・通学時間帯に運行された揖斐線の5本の電車の利用者数が03年11月に738人だったのに対し、今年4月の同じ時間帯の代替バスの推定利用者は443人で、約4割の減少になっている。3月末に名鉄が路面電車3路線を廃止したのに伴い、危険を冒して自転車通学に切り替えた高校生たちも多いようで、乗継ぎがうまくいかなかったり、常態的に遅れが生じたりが原因のようだ。同じく岐阜市の交通量調査で、午前8時台の4月の道路渋滞がひどい所では3月の2〜3倍になっていて、代替バスも最大30分ほどの遅れが出ているという。路面電車の廃止で、利用者の自家用車への切替えと道路渋滞=代替バスの遅れなどの悪循環が起きているのだが、遅れや客の積残しについて、市とバス会社はいずれも「移行期の一時的なもの」と楽観視しているという・・・・。
 ここでは、「鉄道廃止に伴う代替バス乗換えの歩留まり」(2004.1.26)以降のデータをまとめておくことにする。

路線
運行停止・廃止
代替バスの利用歩留まり
京福電鉄越前線
(福井県)
2001年6月の2度目の正面
衝突事故を受けての運行停止
01年7月から年度末まで9ヵ月間の「電車代行バス」
の利用者は、前年同期の鉄道利用者数と比べ、
50.2%の減少
JR西日本可部線
(広島県)
2003年12月からの
可部−三段峡間の廃線
廃止から1ヵ月間(平日の平均)の代替バス利用者は、
03年2月の鉄道利用者数と比べ、32.7%の減少
日立電鉄線
(茨城県)
2005年3月末の廃線 05年4月(平日の平均)の代替バスの利用者は、
04年8月の電鉄線利用者数と比べ、58%の減少
名古屋鉄道揖斐線
(岐阜県)
2005年3月末の廃線 05年4月の朝のラッシュ時の代替バス利用者は、03年
11月の同時間帯の電車利用者数に比べ、約4割の減少



マイカー通勤抑制の取組み・続報 (2005.6.12)

 以前(2003.9.7)、トヨタ自動車のマイカー通勤自粛を促す「足進(そくしん)キャンペーン」についてお知らせしたが、今回はその続編。
 5月20日付けで中日新聞が報じたところによれば、同社は今年3月から、鉄道駅や社員寮と本社地区を結ぶ通勤用シャトルバスのうち、名鉄豊田市駅−本社間について朝夕それぞれ6便ずつ増便。運行時間帯も、出勤時は午前6時台から9時までに、退勤時は午後5時台から10時台までへと、従来に比べてそれぞれ40分〜1時間ほど広げた。また4月からパークアンドライド通勤への補助額の上限を3千円から1万円に引き上げたほか、特にマイカー通勤が多くなる雨天時の対策として、愛知環状鉄道三河豊田駅につながる本社工場構内の道路のアーケード化も予定しているという。

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<参考1>CO2削減へ「エコ通勤」奨励策を実施/ヤマハ発動機(2004/12/4)
 ヤマハ発動機(磐田市)は05年1月から、通勤時の乗用車利用を抑制するため「徒歩通勤手当」を支給するなどの奨励策を実施することになった。日本経済新聞(2004.12.2)や静岡新聞(同日)が報じたところでは、国内の運輸分野での二酸化炭素排出の削減が遅れているため、自動車関連企業として率先して社員の通勤手段の変更を促すことによりCO2削減に貢献するとともに、社員の環境への関心を高めることなどをねらう。
 同社によると、本社と周辺事業所に通勤する1万人のうち四輪通勤者は約73%で、このうち15%が二輪車や自転車、公共交通機関などに切り替えると、約1100tのCO2が抑制できるという。
 「エコ通勤」の奨励策としては、直線距離で2km以上を徒歩または自転車で通勤する場合に毎月1千円、自社の通勤バスや公共交通機関を使う乗り継ぎ通勤には同2千円の手当を支給する。また、同社の電動スクーターを月3150円で貸し出したり、二輪車を購入した場合に社員価格からさらに5〜10%をキャッシュバックする。このほか、本社などの駐輪場を現在の150台分から380台分に拡張し、通勤バスも増便する。

<参考2>「ノーマイカー」へ手当を支給/フジキン(2005/6/12)
 精密バルブ機器メーカー・フジキン(大阪市)が「ノーマイカー制度」を始めたのは1992年。もともとは公共交通機関を利用することで、マイカー通勤による事故や遅刻の防止などを狙っていたが、今では環境への配慮も重要目的になってきた。読売新聞(2005.6.8)が報じたもの。
 制度を利用する社員には、3ヵ月目から月1500円の手当が支給され、年数に応じて12段階で増額、満10年で最高額の月1万2000円に達する。社内でも制度の活用が盛んな大阪工場(東大阪市)では、制度開始前はほとんどの社員がマイカー通勤だったが、現在は約120人の正社員のうち25〜27%が「ノーマイカー」を実行しているという。

<その他既報>
マイカー通勤“節減”への取り組み (2002.12.22)
マイカー通勤の廃止をトレンディに (2002.9.4)(2003.10.11追加)


鉄道と道路を比べてみれば... (2005.4.10)

 韓国開発研究院(KDI)の研究者が行った調査で、道路を通行するときに負傷する確率が鉄道に比べ100倍も高く、貨物運送のエネルギー効率も鉄道がトラックに比べて15倍以上高いことが明らかにされた。

安全性、効率性の比較(2002年)・・・・朝鮮日報(2005.4.1)から

鉄道
道路
道路/鉄道
100万通行km当たり負傷者数
4.9人
518.8人
負傷危険度105.9倍
100万通行km当たりの死者数
3.6人
10.7人
死亡危険度3.0倍
単位輸送量当たり
エネルギー消費量
1

バス=5.5、タクシー=15.7
道路貨物=15.8


 こうした韓国での状況は、日本においては様相が多少異なるかもしれないが、道路交通に伴う社会的費用が鉄道と比べて格段に大きいという事実関係は違いがないと言えるだろう。問題は、そうした費用を道路の利用者が正当に負担していないのではないかということだ。負担の回避を前提にして、利便性、快適性ゆえにクルマが選ばれているとすれば全く理不尽である。鉄道は独立採算を厳しく問われて各地で撤退を余儀なくされているのだが、費用をまともに支払っていない相手と競争しても勝ち目がないのも当然だ。もし道路交通に社会的費用を転嫁できないというのなら、逆に鉄道の社会的価値を相対的に評価して、鉄道事業者に運営補助するのでなければ公正ではあるまい。赤字鉄道に補助金を出すなんて国民(住民)の理解が得られない、などという議論がなされているが、鉄道の多面的な効用をあえて無視し続けることの方がよほど理解しにくいことである。


地方鉄道76社中74社に安全性の緊急指摘 (2005.1.20)

 先日、京福電鉄が運営していた越前線で2000年12月に起こった電車衝突事故について、当時の幹部職員に一審で有罪判決が言い渡された。同線では01年6月にも電車同士の正面衝突事故が相次ぎ、国土交通省はこうした事態を受けて02、03年度に全国の地方鉄道の安全性を緊急に評価したが、この結果、76社中74社がレールの傷やブレーキ摩耗など延べ246項目で「5年以内に改善すべきだ」とする緊急指摘を受けた。指摘がなかったのは上毛電気鉄道と井原鉄道だけという。
 読売新聞(2005.1.13)が報じたものだが、同省は各社に改善策を盛り込んだ保全整備計画書の作成と実施を義務付け、その費用の最大3分の1を補助する制度も整えたものの、「乗客数の減少に悩む鉄道会社の負担は重く、沿線自治体の協力が不可欠の状況」と指摘している。

 緊急評価では、軌道、橋梁など11項目で破損や機能低下について点検し、緊急(5年以内)、中長期(10年以内)に分けて改善の必要性を指摘したが、松浦鉄道と高千穂鉄道は11項目中7項目で指摘を受けたとされる。
 項目別では、軌道(レールの傷や枕木腐食など)が最も多く62社で、車両(ブレーキの機能低下、車軸の摩耗など)56社、橋梁(サビ、腐食など)53社が目立った。中には「近い将来レールが破断する可能性がある」「(橋げたの一部で)粘着力が弱くコンクリートの体をなしてない」といった恐ろしい指摘もあり、同省では「旧国鉄から受け継いだ施設を長年使用している設備の老朽化が進んでいる」としているそうだ。

 同紙の記事では、読売新聞が行った全社アンケート(65社回答)の結果、緊急の改善が必要な個所の補修費は「未定」「不明」を除く56社の総額で約64億6千万円にのぼり、中長期分を含めると約230億円に達するという。
 それでなくても利用者の減少などで苦しい経営を迫られている地方鉄道の各社にとって、今後避けることのできないこうした設備改善への投資が大変な重荷になるのは言うまでもない。

 毎日新聞(2005.1.15)によると、宮城・福島両県を結ぶ第三セクター鉄道の阿武隈急行(福島県梁川町)では、国の指示を受け施設点検を行った結果、橋梁やトンネルのコンクリートがはげ落ちたり、路盤が変形するなど緊急に工事が必要な場所が数多く見つかった。このため同社では、来年度から9年かけて13億6200万円の改修工事を実施することを決めたという。国および沿線自治体からそれぞれ2億6500万円の補助を受ける計画だが、残りの8億3200万円は会社負担になる。
 しかし、同社の累積赤字は04年度末に7億700万円にのぼる見通しで、新規投資をする経営体力はない。そのため、沿線自治体である宮城、福島両県と宮城側の角田、丸森、柴田、福島側の福島、保原、梁川の計6市町は、会社負担分も負担せざるをえず負担割合の調整を進めている、ということだ。

 京福電鉄・越前線のように事故を起こして死傷者を出し、息の根を止められてしまわないうちに、公共交通の「公共」たる由縁を十分踏まえて的確な交通政策が確立される必要がある。赤字が出るから税金で補填するというやり方が一体いつまで続けられるのか、納税者の理解にも限度があろう。環境、福祉、街づくり、教育、文化など多方面にわたる公共交通の役割を正当に評価し、公共負担のルール化を急がなければならない。

★これまでの「公共交通を考える」その1 (2002.8〜2004.12) は、こちら


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