■15000HIT御礼トーク■
1・
(青峯山、の一角)
天化「コーチ。俺っちと玉鼎真人サマと太乙真人サマと雲中子さんと師叔と楊ゼンさんとまさかとは思うけど親父の中で誰が一番好きさ?」
道徳「(唐突すぎて頭がついていかない)………………はっ?」
天化「だーかーら、コーチの一番好きな人って誰?」
道徳「オレの……?好きって、そりゃたくさんいるけど………?太乙とか玉鼎とは親友だし、太公望は仲間だし………」
天化「だーっ!そういう意味合いのスキじゃねーさ!愛してんのは誰かってこと!」
道徳「あ………ど、どうしたんだよ天化、そんなこと突然聞いてくるなんて………何か悪いモンでも食ったか?」
天化「(……何でそーなるのさ、この鈍感コーチ……)だって、俺っちコーチのこと一番好きなのに、コーチはちっとも何も言ってくれないじゃんか。今日こそはっきり聞きたいさねー。ね、それで誰?もちろん俺っちさ?」
道徳「(決め付けてるんなら、世話ないよな……)も〜天化………なんだってお前はそうなんだっ?もうちょっと違うコトに頭を……」
天化「コーチに育てられたからさっ!(きっぱり)」
道徳「そーゆうミもフタもない返答するなっ!(その通りだけど)第一、わかりきってるコトなんて、聞く必要ないだろ!」
天化「え………?じゃあホントさ?コーチ、俺っちが一番好きさ?」
道徳「ぅ……だ、だからっ!わざわざ聞くなって言ってるんだっ!(赤面)」
天化「ちぇ、残念さ。でも嬉しいさ〜、じゃあコーチ。ちょうど修行も一段落ついたことだし」
道徳「え?」
天化「早速、恋人同士がするようなコトしてほしいさ」
道徳「(がくっ)天化………お前な、あんまりストレートすぎるのもどうかと思うぞ」
天化「え〜なんでさ?俺っちコーチと違ってまだ若いし、健全な証拠さ(どこがだ)」
道徳「………(頭痛のしてきたこめかみを抑える)……まあ、一言余計な気もするが、お前がしたいっていうんなら構わないけど………仕方ないなぁ(言って、天化を抱き寄せようとして)」
天化「ホントさ!わ〜い、やっとお許しが出たさ〜っ!(がぁばっ)」
道徳「…………………………えっ?(逆に抱き寄せられて固まるコーチ。当たり前だが)」
天化「あ〜、やっぱりコーチあったけぇ〜、今昼だし外だけど………まぁ、いいさね(よくねぇよ)」
道徳「(そして更に地面に押し倒され、ようやく現状を把握する)うわっ!………って、ちょ、ちょっと待て天化!なんだってオレ『が』組み敷かれなきゃいけないんだっ!?」
天化「え?何でって?そんなの俺っちがコーチを抱くんだから、当たり前じゃんか」
2・
道徳「……………なっ」
天化「というわけで、いっただきま〜す!!」
道徳「ぎゃーっ!!!待て待て待て待て待て待てぇっ!!じょ、冗談じゃない、ないったらないぞ!!オレは絶対に下なんかしたくないからな!第一師匠が弟子に、なんてどー考えたっておかしいだろうがっ!(すげぇ必死)」
天化「あ〜あ、ダメさコーチ、そう規則に縛られちゃあ。従来の規律を勇気を持って破ってこそ、世の中は発展していくもんさ」
道徳「脱線したへりくつをこねるなぁっっ!!とにかく嫌なもんは嫌だからな!どーーーーーーしてもやりたいんだったら、オレに勝ってからにしろ!」
天化「え?」
道徳「オレに勝ったら、潔く認めてやるって言ってるんだ!そうじゃない内はお預け………だっ!(隙をついて天化の下から抜け出す)」
天化「えーっ!!そんなのずりーさっ!俺っちがコーチに勝てるわけないさ〜っ!!」
道徳「そーか。だったら諦めなさい(苦くも勝利の笑み)まぁ楽しみにしてるよ」
天化「ちょ……コーチ……!(余裕で去っていく道徳を、天化は慌てて止めようとして)」
道徳「あぁ、逆ならいつでも大歓迎だぞ。なんたって、俺は天化のことを一番好きなんだからな」
(乾元山金光洞)
太乙「……へぇ、それはまた随分と面白い……じゃなかった、大変なことになってるね」
道徳「だろー?もぉ焦ったよ。ちゃんと清く正しく育ててきたつもりだったんだけどなぁ」
太乙「……(何か言いたそう)………ふーん………まあいいけど。それで?わざわざそれを私に言いに来たの?」
道徳「ん?……んー、まあ………それより太乙、お前の方こそ弟子との関係、ちょっとは発展してるのか?」
太乙「(いきなり矛先を移され言葉に詰まる)……えっ?ナタク?あ、ああえーとそりゃもう……」
道徳「…………してないんだな」
太乙「悪かったねっ!!どぉせ言葉を交わすどころか、顔合わせる度に攻撃されてる仲さっ!唯一近づけるのは、僕の宝貝に閉じ込めてるときだけだしねっ!(叫んで自滅)」
道徳「……いやあの、そんな怒んなくても………」
太乙「ふふふふ……いいんだ、もう私なんか………どーせ受け顔だし体力はないし、昔は君や玉鼎に好き放題されてた身だしね」
道徳「な、なあ太乙、そのアヤシイ目つきで、卑屈な正論言うのやめないか……?(でも結構耳が痛い)」
3・
太乙「まあいいんだけどさ(そうか?)君達が羨ましいよ、堂々といちゃつけるんだからさ〜……なんでナタクってああなのかなぁ……ふぅ」
道徳「(お前が生みの親だから…)ま、まあ、えーと、照れ隠しなんじゃないのか?あれで素直な子だと思うぞ」
太乙「ふ〜ん。僕を殺そうとするのも素直だからかい?」
道徳「うっ………」
太乙「否定してよ、頼むから………(泣)ますます立ち直れなくなるじゃないか〜」
道徳「わ、悪い。……でも、オレを羨ましがられても困るぞ。なんたって、いつもとは逆の立場なんだからな〜……ああ考えただけで、頭痛くなる」
太乙「………う〜ん………確かに君に受けなんてねぇ……玉鼎あたりだったらともかく……まあでも、大丈夫だよ。天化君は、あの歳にしては随分と強い子だけど、君にはまだまだ適わないからさ。安心して構えてれば?」
道徳「……ああ、そうだよな………」
(更に玉泉山。なぜかそこで剣を振るってる天化の姿)
玉鼎「よし、そろそろ休息しようか」
天化「え、ホントさ!?玉鼎真人サマって優しいさね〜、コーチはノルマこなすまで絶対休ませてくれないのに」
玉鼎「それが君が可愛いからだよ。早く強くなってほしいんだろう(にっこり)」
天化「……まあ、そりゃわかるけど……(一応)」
玉鼎「だろう?ああ見えて良い奴だからな………しかし、どうしてまた、突然私の元なぞで修行する気になったのだ?いきなり洞府まで書けこんでこられたときには驚いたぞ」
天化「あ〜……そうさ?」
玉鼎「ああ、道徳が厳しすぎたのか?」
天化「(…コーチをどうにかして負かして、好き勝手扱うため……なーんて言えっこないさね)いやまあ、一気に強くなってコーチを驚かせてやろうと思っただけさ。迷惑かけて申し訳ないと思ってるさ」
玉鼎「いや、そんなことはいいんだが………しかし、先程から楊ゼンを見ないな。君が来ていることを知らせようと思ったのに」
天化「……さぁ、楊ゼンさん?俺っちは知らねーけど………あ、そうだ玉鼎真人サマ、ちょっと眼ぇ瞑ってくれないかんね」
4・
玉鼎「眼?何故だ?」
天化「いいからいいから。ちょっとしたお礼だとでも思ってくれればいいさ」
玉鼎「……礼………?あ、ああ、別に構わないが………(言って、素直に眼を閉じて)」
ざすっ。
玉鼎「………………ん?(腕にミョーな痛みを感じて、思わず瞼を上げる)」
天化「おしっ、成功!これでバッチリさ!それじゃあ玉鼎真人サマ〜ありがとさね〜」
玉鼎「ちょっと待てっ。一体なんなんだ、この針はっ!(上機嫌で立ち去ろうとする天化を、慌ててわしっ、と掴み抑え、自分の腕に刺さった一本の針を指差す)」
天化「何、って言われても……ハリはハリさ」
玉鼎「わざと論点をずらすな!何の為にこんな………!」
楊ゼン「僕の為ですよ、師匠」
玉鼎「!!!(いきなり木陰から現れた楊ゼンに、玉鼎真人は驚いて立ち竦む)」
天化「よぉ楊ゼンさん。あの通り薬針はオッケーさ。これで取引きに応じてもらえるさね」
楊ゼン「うん、そうみだいね、勿論引き受けたよ」
玉鼎「待たんか、そこ。何をわけのわからぬ話を展開している!悪戯にもほどがあるぞ!(激昂しつつ、ばきっと引き抜いた針を割り折る)」
楊ゼン「ああ申し訳ありません、師匠。いえね、少しこの平坦な日常に華を持たせたいと思いまして」
玉鼎「……何……?」
楊ゼン「(訝しげな顔になる玉鼎に、至ってさらりと)だって、僕はこんなに才能に溢れてて顔も良くてスタイルもいいのに、周りに色恋沙汰のひとつもないのは寂しいじゃありませんか」
玉鼎「ほぉ……そうか。しかしお前なら老若男女問わずよりどりだろう?(純粋な皮肉)」
楊ゼン「ええ、そうですよ(平然)でもやっぱり僕の好みとしては、数多の雑草より一輪の麗華なんです」
天化「それって、すげぇヒドイ例えさ………」
楊ゼン「それで師匠(無視)あなたに大人しくしてもらうために、天化君に協力してもらったんですよ。彼なら、あなたも警戒なさらないと思って」
玉鼎「だから、話の要点が見えぬと………」
楊ゼン「ええそうでしょうねぇ……今からお話しますよ」
(で、話は数刻前に遡る)
楊ゼン「やあ天化君、どうしたんだい、君がここ(玉泉山)にまで来るなんて」
天化「あ、ああ楊ゼンさん、久しぶりさ〜。いや、ちょっとアンタの師匠に稽古つけてもらいたいと思って」
楊ゼン「え?どうして?道徳師弟と何かあったの?」
天化「うん、じつはかくかくしかじかで、コーチを負かさなきゃいけねーのさ。でも今の俺っちじゃあ、コーチには歯が立たねーから、こうして腕を磨きに来たわけ。悪いけど、あの奇麗なお師匠さま、貸してもらってもいーさ?」
楊ゼン「ふーん、すっごい話の展開の仕方だね。でも、それなら僕が相手になるけど?」
5・
天化「あ、そりゃダメさ〜。楊ゼンさんは性格通り全然容赦ねーから、俺っち多分殺されるさ」
楊ゼン「……随分とはっきり言い切ってくれるねぇ。まあ、君が嫌ならいいんだけどさ……師匠なら洞府に居るよ。確かにあの人は優しく的確な手ほどきをしてくれるから、思う存分習ったらいい」
天化「ホントさ!じゃあ早速……」
楊ゼン「待った(がしっ)」
天化「え?何さ?」
楊ゼン「わかってるとは思うけど、付け焼刃で修行したって、十二仙である道徳師弟には到底適わないよ」
天化「………そんなことわかってるさ。でもしないよりはした方がマシだかんね。絶対にコーチより強くなってやるさ!(ぐっ、と拳を握る)」
楊ゼン「……不純な見返りがあるってステキなことだね。そうじゃなくて、天化君、確実に君の師匠を負かす策があるって言ったらどうだい?(悪魔の囁き)」
天化「(ぴくぴくっ)えっ………?って、それ本当さ!?」
楊ゼン「勿論……教えてほしい?」
天化「当たり前さ!そこまで言っといて隠すなんてナシさ!」
楊ゼン「……まあ……そうだよね………別に教えてあげてもいいんだけど、それなら一つお願いがあるんだ」
天化「お願い?」
楊ゼン「うん」
天化「何さ………またロクでもねーこと?(胡散臭そうな目つきで楊ゼンを見る)」
楊ゼン「嫌だなぁ、そんなんじゃないよ。ただこの薬を僕の師匠に飲ませてほしいだけ(言ってハリと薬瓶とを懐から取り出す)」
天化「………薬」
楊ゼン「うん」
天化「たぐいは?」
楊ゼン「飲んでみる?」
天化「……いや、いいさ。じゃなくてっ!やっぱりロクでもねーこと企んでるさ!なんでこんな異常なシロモノを、玉鼎真人サマにもらなくちゃいけねーのさ!(正論)」
楊ゼン「うん、それがねぇ、あの人ってどう見ても組み敷かれるタイプじゃないだろう?」
天化「……………へっ?(話が突飛すぎて一瞬呆ける)」
楊ゼン「昔は太乙サマとかとよろしくやってたみたいなんだけど………僕は受けなんてしたくないんだよねぇ。そんなわけで、先に無理にでも規制事実さえ作っておけば、それを弱みに出来て後々楽かなー、って」
天化「ちょ、ちょっと待つさ。……えっと、それっていうのは………つまり、アンタと玉鼎真人サマが………」
6・
楊ゼン「そうだよ。百年以上かけてようやく口説き落としたんだ(至極あっさり)」
天化「ふ、ふ〜ん……そりゃよかったさ………で?」
楊ゼン「うん、陥落させたのはいいんだけどね〜、あれで強情な人だから、僕が攻めにまわるのを許してくれないんだ。困ったものだよね(ふぅっ)」
天化「いや、それ当たり前さ………弟子が師匠に、なんて誰だって抵抗あるさ(他人事)ましてやカタイので有名な玉鼎真人サマじゃあ」
楊ゼン「そこなんだよね、だから考えたんだ」
天化「えっ?」
楊ゼン「落ちてくれないのなら落とせばいい、ってね(外道の極み)」
天化「………だから、その薬を…………?」
楊ゼン「うん、でもこの頃師匠の警戒が激しいから………だから君に実行してもらいたいんだ」
天化「………成程。やっぱりアンタのただれた知略には適わねーさ………ま、でもありがたくこの取り引き受けるさ。玉鼎真人サマには悪いけど(ホントにな)こんなチャンス滅多とないかんね」
楊ゼン「それでこそ天化君、物分りのいい子は好きだよ………じゃあ、よろしくね………」
楊ゼン「と、そんなわけなんですよ師匠」
玉鼎「………そうか。話は理解できた。だが、私が大人しく納得するとでも思うのか?」
楊ゼン「いいえ思ってませんよ。だからこうして薬に頼ったんじゃあないですか」
玉鼎「っ………この弟子……は……ッ!(くらくらする頭を必死で抑える)」
楊ゼン「ほらほら効いてきたでしょう。即効性の上、かなり強力ですからね。いかなあなたでも抵抗するのは難しいですよ」
天化「……えらく嬉しそうさね、アンタ………」
楊ゼン「そりゃあ嬉しいからね。悲願が叶うんだもの。じゃあ天化君………悪いけど、これで。策はまた後日授けるよ」
天化「ああ、わかったさ。……でもあんまり本性出しちゃダメさ?玉鼎真人サマ壊れちまうさ」
楊ゼン「え?なんのこと?」
天化「……ふーん、自覚ないさ………?玉鼎真人サマも気の毒に(共犯)ま、いいさね。それじゃ」
楊ゼン「うん………さて師匠(くるぅり)いざお楽しみの時間へともつれこみましょうか」
玉鼎「嫌だ(どきっぱり)」
楊ゼン「ええ嫌でしょうねぇ、僕も受けなんて嫌ですから、お気持ちはよくわかります(サイテ)………まあ、せいぜい洞府につくまでお悩みになってください(満面の笑顔で微笑む)」
玉鼎「………そうか……いっそ清々しいくらいに殺意が湧いてくるよ、楊ゼン(あくまで静か)これから、月のない夜は気をつけることだな」
楊ゼン「さすがは師匠、少しも怯みませんねぇ。………そういうあなたが、僕は大好きなんです」
7・
(とまあ、人為的な紆余曲折を経て数日後)
天化「コーチ!いざ勝負さ!(いきなり筋トレしていた道徳に向かって叫ぶ。顔コワイ)」
道徳「はぁっ?な、なんだ突然?」
天化「コーチ、あの時に勝てば何でもさせてくれるって言ったさ(そこまでは言ってない)忘れたとは言わせないかんね(ずいっ)」
道徳「(ざざっ)わ、忘れたわけじゃないが……だってまだ数日しか経ってないんだぞ?いくらお前が成長早くたって、こんな短期間でオレに適うようになるわけ………」
天化「ふふん、やってみなくちゃわからないさ。そーゆーわけで、行くさコーチ!」
道徳「うわっ!ちょっ………天化!(笑いながら突進してきた天化をどうにかかわして、道徳は慌てて宝剣を構える)待てって言ってるだろ!」
天化「闘いに待つも何もねーさ!ほらコーチ!ちゃんと相手するさ!」
道徳「てん………!…………って、あ、あれ?(どうも、いつものように天化の剣が払えずに焦る。速度も重さも比較にならなくて)」
天化「ほらほらどうしたさコーチ!傍線一方なんてらしくないさ!(挑発して、なおも猛攻を繰り返す)」
道徳「っ………!!!なっ……何でこんな………っ!うわっ!(ギィンッ、と剣の片方を弾かれ、その隙に莫邪の宝剣が喉元にあてがわれた)」
天化「これで、文句ナシに俺っちの勝ちさね(にやり)」
道徳「………(信じられないような表情)………て、天化?一体どうしたんだ?いきなりこんなことって………」
天化「それがあったさ?さて、コーチ………男に二言はないさね(嫌味な笑い)」
道徳「(ぞくッ)ちょ、ちょっと待て。やっぱりこれはどう考えてもおかしいぞ。お前、絶対に何か細工を………」
天化「あーハイハイ、余計な詮索はいいさー。それとも何さ?俺っちにはいつも約束は守れって厳しいくせに、自分はそれをはねのけてもいいさ?それはちょっと師として問題あるさ」
道徳「(正論をまくし立てられて、真面目な彼は何も言い返せず)…………で、でも………」
天化「もー往生際悪すぎさ、コーチ!コーチは俺っちに負けたんだから!………てなわけで、俺っちの寝室に行くさ(くるぅり)」
道徳「わーッ!!!!待て待て待てぇっ!!展開が早すぎだバカ!」
天化「コーチにそんなこと言う権利ないさー。敗者は潔く従うもんさ」
道徳「だからそれが納得いかないって言って………!」
天化「さーて、数日は動けなくなるの覚悟しとくさ、コーチ」
道徳「人の話を聞けーーっ!ぎゃーっ!嫌だぁーーっ!!」
(そして無情に鳴る扉の音)
8・
(1週間後の紫陽洞。そこに来客がひとり)
太乙「ねえねえ聞いてよ道徳っ!やっとナタクが僕と向かい合っても、宝貝ぶつけてこなくなったんだよっ!その代わり首絞められるんだけど、それはおいといてっ!嬉しい進歩だと思わないっ!?(そうか?)」
道徳「……ふーん……健全な純愛か………羨ましい限りだなぁ……(うつろ)」
太乙「そ、そうしたの道徳。何か身体から生気が抜け出てるよ(今気づいた奴)」
道徳「………ああ、(弟子に負けたり組み敷かれたりで)ちょっと今までの修行の意味と、観念とに疑問を持ってな………」
太乙「そ、そう?何かよくわかんないけど………私にできることがあったら、何でもするよ?(善い人)」
道徳「…………なんでも?」
太乙「うん、もちろん」
道徳「そうか…………なら太乙(こもった声で呟いて椅子を立つと、道徳は彼の肩をがしっと掴んで)」
太乙「なに?」
道徳「抱かせてくれ」
太乙「…………………………………………………えっ?」
道徳「ちょっとこのトラウマを解消するには、これしか方法がなさそうなんだ………と言うわけで、すまんっ!(がばっ!)」
太乙「うわぁっ!ちょちょちょちょっと道徳っ!すまん、じゃなくてっ!何がどうなってこーなるのさっ!」
道徳「弟子が天化で、あいつが勝って、まあそーゆーわけだ」
太乙「全然わかんないよーっ!(半泣き)じょ、冗談じゃないからねっ、もうごめんだよ!離してったら!」
道徳「あー………やっぱりオレこっちの方がいいなぁ……うん(聞いてねぇ)
太乙「どっ道徳ってば!どこ触ってるのさっ!第一今真昼で………ちょっ、や、やめっ……!」
ごぐん。
道&太「………………へっ?」
(そのままで固まりつつ、窓辺を見れば、そこには完全に陥没した窓枠だけが残っていて)
ナタク「………『一応』迎えに来てやったのだが…………オレはどうも邪魔のようだな太乙(言って宝貝の照準を二人にきっちりとあわせ始める。かなり怒ってるもよう)
太乙「なっ………なたっ………(ハッ)いやッ、あの誤解………!」
ナタク「まあいい。オレには関係ない。…………だがまあとりあえず………
………死ね」
(そして響く爆音と絶叫。もち二人ぶん)
9・
楊ゼン「………でも、あんなに上手くいくとは思ってなかったねぇ」
天化「本当さねー、コーチが俺っちの偽者だってわかってくれなかったのは、ちょっち寂しかったけど」
楊ゼン「仕方ないよ。それだけ僕の変化が完璧だったってことだしね」
天化「でも何だかなー……楊ゼンさんって、コーチを手玉に取れるほど強かったんさね(何か面白くない)」
楊ゼン「ああ、あれ?そんなことないよ………純粋に剣の腕前じゃあ、良くて互角だろうね」
天化「え?じゃあ何であんな簡単にコーチに勝ったさ?」
楊ゼン「ふふ、僕は勝算のない勝負はしないタイプなんだよ………だから、これを使ったんだ(言いつつ取り出されたのは白い粉末)」
天化「これは………?」
楊ゼン「相手の感覚を鈍らせる薬………これを風にまかせて散らせれば、自然と君の師匠も吸い込んじゃうってわけ。僕は前もって抗生物質を飲んでおいたから平気だったけど」
天化「はー、なるほど。やっぱりアタマいいんさねー楊ゼンさん、どうやったらそこまで人道に背けるのか不思議でなんねーさ」
楊ゼン「喧嘩売ってるの?天化君(にっこり)」
天化「まさか。そんな自殺行為誰もしねーさ………ああ、それで?そっちは玉鼎真人サマとうまくいったんかい?」
楊ゼン「勿論。でもまあ、これで当分夜道は気をつけなきゃいけないけどね」
天化「ふーん………?まあ、お互いうまくいって何よりさね。感謝してるさ、それじゃあ、俺っちはこれで帰るさ」
楊ゼン「あ、待ってよ天化君」
天化「え?」
楊ゼン「確かに、念願はかなったんだけどね………感謝してくれるんなら、もうひとつお願い聞いてくれないかな?」
天化「もうひとつ……?そりゃ、俺っちにできるんならするけど………」
楊ゼン「そう?どうもありがとう………それじゃあ(笑いつつ、天化の腕をぐっと引いて)」
天化「?楊ゼンさ…………」
楊ゼン「あのね………僕、黒髪にすごく弱いんだ」