刹那


コトの後のけだるい空気が辺りを満たしていた。

「・・・・疲れた・・・・」

ポツリ、と呟かれた台詞。言ったのは、今だ一糸纏わぬ姿のまま寝台にうつ伏せている太乙真人に他ならない。

うつ伏せた状態で顔だけを横に向け、見るともなしに雲中子を視界に捕らえていた。

「・・歳だな」

煙草を咥えたまま、雲中子は無造作に言い放った。直接床に座り込んで、寝台に背を預けている。

発せられたその台詞に、太乙は眉根を寄せた。

「よく言うよ・・・。申公豹より年上のくせに」

「ああ・・・・そうだっけ?」

漂っていた煙が揺れる。笑ったのかもしれない。

「自覚ないわけ?」

「或るわけないだろう。そんなもの」

あきれたような溜息とともに煙が吐き出される。

「・・・生憎と、ココで『年齢』に拘ってられるほど暇じゃないからねぇ・・」

時間が止まった『空間』で、時間の積み重ねに執着する意味なんてどこにもない。

時間感覚なんて煩わしいだけ。

「刹那的な生き方になんて興味ない。・・・せっかく『永遠』を手に入れたんだし、勇んで生活する事もないだろう?」

煙草をもみ消すと、最後の煙を吐き出して音もなく立ち上がる。

明かりもない部屋に、雲中子の――日に当らないせいだろうか――太乙に負けず劣らず白い肌が浮かび上がった。

どこか中世的な躯のライン。

「なに?」

太乙の視線に気付いて、雲中子が問う。

「別にぃ~・・・」

むっくりと躯を起こすと、ポンポンと空いたスペースを叩く。

座れ、という事か・・・・。

二人分の体重を受け止めた寝台が、ギシリと耳障りな音を立てた。

「雲中子ってさぁ、着脹れするタイプだよねー」

何が楽しいのか、雲中子の髪をくるくると弄びながら笑う。

「こんなんでよく男なんて抱けたもんだよね~」

「・・・あのね」

さらりと発せられた台詞に雲中子の肩がコケる。

「・・(クスクス)・・冗談だよ・・」

「どうだか」

心底楽しそうに笑う太乙に、雲中子は深い溜息をついた。

大体、ふとすれば折れそうなほど線の細い太乙にそんなコト言われたくない。

雲中子も大概細いが、太乙のそれはもはや病的である。

「・・・ちゃんと食べてるのかい?」

「?なぁに、突然・・」

心底驚いたような顔で雲中子を見る。

「・・・・・いや・・」

らしくもない事を言った、と雲中子は軽く首を振った。 太乙相手に、今更でもある。

それに、不摂生はお互い様だ。 まともに日中活動する事なんてめったにない。

焼けなくて当たり前・・・。

「・・・ねぇ、雲中子」

「ん~?」

「も一回しようか?」

「・・・・・疲れてたんじゃなかったのかな?」

「んーでもさぁ、もう一回くらい良いでしょ?」

「私は構わないけどね・・・」

あきれ半分。雲中子はその誘いに乗った。

 

まだ夜は長いらしい・・・。

 

                                                fin.

 


≪いいわけ≫

つーか自分・・・何がしたい? いきなり異色なカップリングで・・。

いや、書いてる分にはとっても楽しかったのだけれど。雲中子、ムチャクチャ好きなんで。

ゆめ見ながら生活できたら楽しいでしょうね。きっと。

ええと、蒼月さま。8000HITおめでとうございます。はい。

                      99’Sep xxx. 魅雁 拝

≪管理人の蛇足≫

きゃ~ッ!!雲乙!雲乙っっっ!何だかとってもオトナ(漢字で書けよ)の二人ですねっ!

こうゆう関係って、ひどくそそられるものがあります……ふふ。

そして、このお話の前と後を非常に気にしている大馬鹿者がひとり……(オイ)

 

 

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