夜想
初めて会った時から、わかった。
里を襲い、二親を殺した化け狐を宿す少年を、限りない愛情で包み込み、育てた人。
確か火影様から、以前にそう聞いた記憶がある。
愛する者を失った哀しみも憤りも、全てその澄んだ黒眼の奥に封じ込めて。
影ある過去を背負ったものの纏う、匂い。
自分もそうだから、すぐに察することができる。
しかし、あんな濁りない瞳をした存在は初めてだった。
誰かに頼ることも縋ることもせずに、ひとりで胸中に巣食う慟哭に耐えて。
いつもあの人は迷いなく笑っていた。
それとなく昔を思い起こさせ、傷口を抉るような真似をしても、不器用な仕草でかわすだけ。
泣けばいいのに。
声を上げて恨み言を叩きつけて、その哀傷を少しでも癒せばいいのに。
優しい彼は、そんなことを望まない。
きっと自分を犠牲にしてでも、仇と呼べる少年を護るのだろう。
そこに多分、理屈はない。
ないからこそ、彼を慕う者は焦燥を覚える。
もっと器用な人だったなら。
もう少し、辺りに思いを馳せてくれたなら、こんな感情を抱かなくて済むのだろうに。
あなたがいなくなれば、あの幼い少年は必ず泣くだろう。
涙が枯れるほどに泣き尽くして、それでもまだ悲しみが溶けることはない。
それは、自分も同じことで。
彼のように強ければ、愛する者が消えた世界でも生きてゆくことができるだろうけれど。
不安定な身体を持つ教え子に、それは通用するだろうか。
心の拠り所を失えば、人は葦よりも脆くなる。
そんな簡単なことですら、彼はきっと理解していないに違いない。
傷つかないで、血を流さないで。
後に悲しみしか残さない犠牲精神なんて欲しくもない。
だから、
…………だから、あなたは俺が護りますよ。
誰よりも不器用で優しい人。
あなたが死ねば、哀しむ者は大勢いるんです。
ああ、ナルトは後を追おうとするかもしれませんし………
それは何よりも望まないことでしょう?イルカ先生。
だったらもっと自分を大事にしてくださいよ。
あなたがナルトをかばって火の粉を被るなら、その前に俺が元を断ちますから。
死ぬ覚悟なんかより、生き延びるしぶとさを。
たとえ理にそぐわなくても、罵る者がいようとも、俺はそっちの方がずっと安心できるんです。
大切な存在を失う怖さは……あなたが誰よりもよくわかっているでしょう……?
……fin
ポエム…しかも何か違う……
これってカカイル…なのかなぁ……(汗)