黎明の策略(前編)


 

 ある日ある朝、床のなか。
 愛弟子の濃厚なキスで眼が覚めた。





「うわあああああああああ
セセセセセセセっ!!」
 げしぃっ!
 あらん限りに絶叫して、道徳は思いきりその不届き者を寝台の外へと蹴り飛ばす。
 条件反射で足が出たが、頭ではまったくその状況を把握できていなかった。
「なっ、なっ、なっ………」 
 ばくばく鳴る心音とともに喉までが振動し、まともに声が紡げない。
 目覚めが悪いとか言う、そんな生易しい衝撃ではなかった。
 毛布を抱きかかえながら、真っ青になってひきつっている道徳に、
「いっつー……あーもう、それが久しぶりに帰郷した弟子に対する態度さ、コーチ?」
 悪びれた様子なんて爪の先ほどもうかがえない彼
セセセセ黄天化はそう言って、パンパンと膝をはたいた。



 天化。
 素直で負けん気が強くて可愛かった俺の弟子。
 そう、昔は本当に可愛かった。可愛かったのに……
 なのになんで今、その弟子相手に貞操の危機なんかを覚えなきゃならないのか。

 



「なんでお前がここにいるんだっ!?」
 やっと思いで道徳は天化に罵声を浴びせる。多少裏返ってはいるが、そんなことに構ってる余裕はないらしい。
 噛み付きそうな勢いで食ってかかる道徳に、天化はいたってのほほんとした口調で、
「んー?そんなの大したコトじゃないさ。地上がひとまず一段落ついたから、里帰りしたいって言ったら、太公望は問題なく許可してくれたさ」
「ひ、一段落って……」
 そんなあっさり?
「そうさ。それとも何、コーチ?俺っち、帰ってきちゃいけなかったさ?」
 懲りもせずに寝台に手をかけ、ずずいっと天化が詰め寄ってくる。いささか、寂しそうな匂いをただよわせて。
 もちろん、そういう言いまわしをしたら、道徳が困るのを見越してだ。
「そ、そうじゃな……」
 その期待に違わず、情に脆い鈍感真君は、弟子の狙い通りにガードの手を緩めてしまう。何度、同じような状況で辛酸を舐めさせられたかしれないというのに……まあ、色事に関する、道徳の学習能力なんてそんなものだろうが。
「じゃあ、なにさ。……そんなに迷惑そうな顔されたら、俺っちじゃなくても腹が立つと思うさ……ね、こーぉちっ!」
「へっ……わ、うわ、ぁっ!」
 ばさっ!
 しどろもどろになって言葉を探していた隙に、毛布を引っ張られて寝台の上に転がされる。そこに待ってましたとばかりに、全体重をかけて天化が覆い被さった。
「ちょっ……おいっ!」
 間の悪いことに、手首は毛布に絡め取られて、道徳の背の後ろ。肢はといえば、これまた天化の肢と交差している。
 ………早い話が、まったく抵抗できなかった。
「ホントにコーチって、学ばない人さねー……まあそこが可愛いんだけど」
 と、天化は嬉しそうに笑って、ばふっと道徳の首筋に顔を埋めた。
 本当に久しぶりの、大好きな人との邂逅。

 ……ずっと逢いたかった。

「コーチって、やっぱりいい匂いがするさ……」
「や、やめっ……くすぐった……ァ!」
 ふぅっと耳朶に息を吹きかけられて、道徳は思わず甘い声をあげてしまう。
 ハッとなったが、唇を覆う手がなかった。
「へえ、コーチ。相変わらず感度いいさ」
「バ、バカ!いい加減に退け、重いんだっ!」
 過激な挨拶はもう充分だ、と道徳は上体を起こそうとする。
 が、天化は一向に彼から降りる気配を見せなかった。
 それを訝しく思って、道徳は顔を上げれば、にやにやとなにやら妖しく笑む弟子の顔。
「天化?もういいだろう、俺は……」
 ちょっと身体の調子が悪いんだ、そう告げる前に、
「なーに言ってるさコーチ。まだ始まったばかりなのに」
 さらりと言われた爆弾宣言に、道徳は一瞬思考がついていかなかった。いや、ある意味そちらの方が幸せだったのかもしれない。
「………は………?」
 やめておけばいいものを、思わず聞き返してしまった道徳に、天化は変わらず人なつこい笑顔を浮かべて、
「だって、俺っちずーっと我慢してたさ?だからコーチ、早く抱かせて」





「どこの世界に帰郷するなり師匠を襲う弟子がいるんだ
セセセセセセセっ!!」
 などと、そんな常識的な理屈で、この若弟子が引いてくれるならば苦労はない。
 そう。無論、引いちゃくれなかった。
「コーチが知らないだけで、多分たくさんいるさ。そんなに照れなくてもいいさー、コーチ」
「照れてるんじゃないっ! 本気で嫌がってるんだっ!」
「またまたぁ、そんな嘘ついたって駄目さ」
「わ
セセセセセセセセっ!!」
 釈迦に説法、馬に念仏、何を言えども効果なし。
 寝ている最中に脱がされかけてた服が、さらに遠慮なく剥ぎ取られていく。
 何を言ったって無駄だとはわかっていたが、だからってこのまま大人しくヤラれるなんて冗談じゃない。
 普段はともかく……なんて口が裂けても言わないが、今回は本当にやばいのだ。
 ……なにせ、玉鼎との悪夢から、まだ五日ほど。さんざっぱら痛めつけられて泣かされて、今だって休養中の身で……
「ぅ………」
 そこでさらに天化なんかの相手をしたら……いや、それ以前に身体中に散らばってる痣を数々を見られたら……!
 何をどう言い訳したって、真相は明々白々。その後の天化をはっきり言って想像したくない。
 道徳は、手首の擦過傷が消えかかっていたことと、熱があったために厚着をしていたことに改めて感謝して、
「てっ天化!待て!ちょっと待ってくれっ!!」
「……もーさっきからうるさいさね、コーチ。何言われたってやめないから、説得なんて無駄さ?」
 先に痛いところに釘を刺されて、道徳はぐっと言葉に詰まる。
 が、既に肌に残っている衣服は一枚。
 道徳はそれこそ必死になって、言葉を探した。
 そこでふと思いつく。
 昔、天化とよく一緒にした遊び。
「いや……ぁ、だ、だからっ……て、天化、そうだ! 賭けをしないか!?」
 道徳の言葉になんて聞く耳すら持たず、また行為を続けようと最後の一枚にかけた天化の手がピタリと止まる。
 そして、少し目を見開いて道徳を見つめた。
「……どーゆー風の吹き回しさ?堅物で有名なコーチが」
「そ、それは………」
 お前を追い払うため、なんて正面切って言えるはずもない。
「ふーん………まあいいさ。で、何の賭け?」
「え?……えっ…と……その……」
 何やら言いづらそうにごにょごにょとくちごもる道徳の顔を、天化はおもむろに掴み上げた。
「……もしかして、ただの時間稼ぎさ?」
 ギラッと天化の瞳に良くないものがよぎった気がして、道徳は慌てて言葉をつぐ。
「ち、違うっ!俺は…………その、お、鬼ごっこをしよう、って……」
 鬼ごっこ。
「………は………?」
 そのかなり突拍子もない発言に、今度は天化の眼が点になる番だった。

 



「何で言うに事欠いて鬼ごっこさ……ふざけてんなら、俺っち怒るぜ、コーチ」
「ふざけてなんかないっ!俺は至って真面目だっ!」
 そう、思いっきり切実だ。こんなときにふざけれるような、図太い神経を道徳は持ち合わせちゃいない。……幸か不幸か。
「わかったわかった……それで?」
「そ、その前に天化!俺が勝ったら、もうこんなことするんじゃないぞ!絶対にだ!」
「まだ内容も聞いてないのに、そんなこといわれても困るさ……でも、俺っちがその賭けに勝ったら、それこそコーチのこと、いくらでも好きにしていいんさね?」
 いくらでも、のあたりに力をこめて、天化はにいっと笑う。
 ザワザワと首筋の辺りの産毛が逆立った気がして、道徳は気持ちがくじけそうになるが、なんとかそれを奮い立たせた。
 ここで折れたら、言葉通り悲惨な結末が待っている。
「ね、コーチ。返事は?」
 道徳は相も変わらず不自由な体勢のままで、そんな台詞を囁いてくる天化を睨みつけると、
「……〜〜わかってるよ、なんでもしてやる! ……でもそれは俺に勝ったらの話だぞ!」
「だ〜か〜ら〜、いったい何の賭けさ?鬼ごっこってだけ言われたってわかんないさ」
 呆れたように説明を促す天化に、道徳は汗しながらもびっと不適に人差し指を立てて、
「簡単なことだ。……昔、いつもしてたじゃないか」


 

 


「……要するに、この青峯山のなかで、俺っちがコーチを捕まえればいいわけさ?」
「そう。それでお前の勝ちだ」
 ようやっと道徳は拘束を解かれて、今は洞府の前で準備運動中。
 説明、というほどでもない説明をし終わった後の天化の反応である。
 道徳の持ちかけた賭け……というか勝負は、至って簡単なものだった。
 青峯山中を道徳が逃げ、それを天化が追いかける。それで道徳が逃げ切れたら道徳の勝ち。天化が道徳を捕まえたら天化の勝ち。それだけのことだ。
 ……それだけのことだが、この内容は天化にとって相当不利なはず、だった。
 腕力面では既に似通ったものになってしまったが、脚力では道徳の方が上。更には天化の知らない裏道にも精通している。
 確かに、片方にとってはいい条件の賭けだ。
 ただひとつの欠点は、天化がそれを拒否して、先程の行為に逆戻りされる可能性が大だったことだろう。
 道徳はびくびくしながら、説明をして……それでさっきの天化の台詞だ。正直言って驚きを隠せなかった。
「………いいのか?」
「あーもちろんさ。でも……」
 と、何となく不穏さを帯びた語尾に、道徳は少なからず警戒を覚えるが、
「これじゃあ思いっきり俺っちが不利さ?だからー……コレ」
 じゃんっとばかりにどこからか取り出されたのは、かなり厚みのある鉛色の輪。
 それを合計四つ、天化は手に持ち替えた。
「なんだ、それ?」
「俺っちの修行用アイテムさ。これ一コで十五キロ。ハンデで、コレ全部コーチにつけてもらうさ」
「十五キロ……六十キロか」
 道徳はさして驚かなかった。そのくらいの負担、別にどうということもないらしい。
「そうさ。手出して、コーチ」
 言われて道徳は素直に腕を差し出す。その輪はぱかっと二つに分かれ、道徳の両手首にかっちりとはめられた。
「次は足……っと、相変わらず細い足首してるさ、コーチ」
「どっ、どうでもいいだろ、そんなこと!」
「ハイハイ。おとなしくしてるさ」
 パシ、パシッ。
 ………そしてすべてが道徳の身体に架せられる。
 自分が囚人にでもなったっようで、あまり気分の良いものではなかったが、まあこのくらいのハンデは仕方ないだろう。
 道徳はそんなことを思いながら、少し身体を動かしてみる。
 多少重くは感じられるものの、動きにさしたる支障はなかった。
「準備いいさコーチ?」
「ああ、バッチリだ!絶対負けないからな、天化!」
 ヤケ気味な思いを胸に秘めながら、道徳はぐっと拳を握る。
 天化はそんな道徳の様子に、微かな笑みを浮かべて、
「………それじゃあ……」
 二人とも、スッと姿勢を低くする。
 遠い昔から、幾度も共に走りあった青峰山。
 ………果たして、
「行くさ、コーチ!」


 

 


「なかなか面白いことになっているようだねぇ……」
 玉泉山金霞洞。
 上品に煎茶を口に運びながら、太乙真人は呑気にそう目の前の仙人に話しかけた。
「ああ、そうだな……」
 と、物静かに聞こえる口調とは裏腹に、恐ろしげな光を眼に宿すのが、道徳の天敵、玉鼎真人。
 今更言うまでもないが、道徳の服にはこの二人によって発信機が取りつけられている。
……それには見事といおうか、非人道的といおうか、盗聴の機能も兼ね備えられていた。
 すなわち、道徳と天化の今までの会話も全て筒抜けだったわけで……
 ……当然、玉鼎の怒りはとうに臨界を超えていた。
 弟子との関係は以前から怪しんではいたが、もしやあそこまで熱烈に求愛されているとは……。
 侮りがたし、黄天化。
「こんな不利とわかってる賭けに、あっさりと天化君が便乗したんだから、何もない方がおかしいねぇ……道徳は押しに弱いし、今度は相手が変わってまた外で……って、あれ?玉鼎?」
 太乙があからさまな煽り文句を言い終えぬうち、玉鼎と発信機の追跡装置が卓上から消え去っていた。
「やれやれ、独占欲強いんだから……ってまあ、本当に道徳ヤバそうだったしなぁ……彼の身体まだ完治してないんだし、そりゃ心配か……」
 ぼんやりとひとりごちて、太乙はひとり優雅にお茶をすする。自分が諸悪の根源であることは百も承知だが、だからといって反省の念がうかがえるわけではない。さすがはあの玉鼎の類友である。
「……でも、気になるなぁ……」
 太乙は空っぽになった器を置いて、ふうっと嘆息しながら頬杖をつき、
「天化君の言う、『修行用アイテム』ってもしかして……」
 その先の自問は、どこからか飛び立った黄巾力士の轟音に掻き消された。


 

 


「……っふー、さすがに迅いさね、コーチは……」
 ザザザザザァッと茂みに分け入りながら、天化は早くも弱音をこぼしていた。
 潅木の密集する、ひどくスピードを軌道に乗せづらい界隈である。
 視界を流動する木々の遥か向こうに、目で追うのすら危うい道徳の後姿。
 すでに大きさが米粒だ。
「これ以上離れたらさすがに
セセセセセセセ!」
 などと呟いた側から、唐突に天下の眼中から道徳の影が消え失せた。
「な……っ」
 ざざっ!!
 慌てて立ち止まって耳を澄ますが、既に気配の余韻すら掴めない。
 ……普段はああいう性格故に、あまり意識することがないが、さすがは十二仙といったところか。
「………」
 ざっざっざっと草を鳴らしながら、天化は道徳を見失った周辺の土を踏む。
 ドドドドドドド………。
 途端、清冽な涼気が肌にぶつかってきた。
 天化はちょいと足をひねって、霧中の奥の早瀬に顔を向ける。
「なるほど、ここから降りたから……」
 そこはちょっとした崖だった。とはいっても、十数メートルほどは落差があり、瀑布が穿つ滝壷は生い茂る木々と霧とに邪魔されて、まったく見えなかったが。
 ……そう。つまりは、この視界の悪さを利用して、道徳は行方をくらましたのだ。
 一旦崖を降りてしまえば、上方からは姿を隠すことができる。それで時間を稼ごうとしたのだろう。完全に天化を蒔くために。
 ……果たして、そこまで計算していたかどうかは知らないが、結果的にそういうことになる。
「さて、そこに行ったんだか……」
 捕まえるべき相手を完全に見失ってなお、天化には根拠ある余裕があった。
「ま、いいさね。適当に探していけば……」
 意味深な台詞を口にして、トン、トンッと崖下の岩の凹凸を頼りに、天化は急斜面を駆け降りていく。
 結構、危険な場面に身を置きながらも、にやにやと口元が緩むのを抑えられないようだ。
 上機嫌で口笛まで吹きながら、天化は青葉を蹴散らし、突き出ている枝を掴んでは落ちる速度を調整して、
「……どうせ、もうそろそろ動けなくなっている頃合さ……」

 

 



 厳然とそびえ立つ、果てしなく広大な幽仙山。
 濃霧立ち籠める林の中を、道徳は少しペースを落として突っ切っていた。
 その肌には、きらきらと真砂を散らしたような露が光っている。
「フウ………」
 ザッと踵を返して道徳は立ち止まった。
 眼を閉じて追手の気配を探るが、あるのは清閑とした緑林の薫香だけだ。
「さすがについてこれないか……随分と、天化も鍛えられたものだが……」
 それでもまだまだ、と尽きたも同然だった師匠としてのプライドが満たされたのか、「ふふん、天化の奴め。少しは師匠の偉大さがわかったか。ハッハッハッ」などと、ひとしきり快笑して、道徳は再び地を蹴ろうとした。
 が、しかし。
「ん………?」
 何となく勝手が違うことに気づく。
 心持ち、身体が重いのだ。
 いくら病み上がりの身で、このところ修練らしい修練も出来なくて、まだ腰には鈍痛が残っているとはいえ、この暗いで疲れるはずもない。
 はずがないのだが………
「やっぱり、筋力が落ちたのかなぁ……」
 誰かさんのせいで……などという愚痴はひとまず置いて、道徳は黒い枷のついた足を軽く動かしてみる。
 やはり、おかしい。
 脚の内部に鉛を食んでいるような感覚がする。
「…………」
 道徳は胸に小さなしこりのようなものを抱いたが、だからといってどうなるものでもないので、不調をわきまえて身体を急がせる。あまりぐずぐずしていると天化が来てしまうかもしれない。いくら進路が無数にあるとはいえ、天化ほどの使い手になると、どうしても残留気配を追われてしまうのだ。
 だが、
「………っくっ………」
 道徳は数メートルも進まぬうちに立ち止まる。いや、立ち止まざるを得なかった。
 それ以上、脚で身体を支えることが出来なかったのだ。
 がくりと膝から力が抜け、前のめりに湿った地へと倒れこむ。
 肌を濡らす雫が、露ばかりではなかったのだと、そのときにようやく気がついた。
 悪寒か発熱か、とにかく発汗している。
 体に負担がかかっていた証拠だ。
 そこまできてやっと、道徳は何かがおかしいと感じたが、時すでに遅し、である。
「……っ……く……そっ…」
 ハア、と白い息を吐いて、ぐっ……と震える指で草を掴み、道徳はなんとか上体だけでも起こそうとする。いくらなんでも、そのままでは格好悪すぎだ。
 しかしたったそれだけの負荷にすら、肘の関節は耐えきれなかった。
 まるで感電でもしたかのように、ぶるぶると神経が震えて……力がまったく入らない。
「な、ん………」
 突発的なアクシデントに、道徳の気は動転しかけた。
 そう、天化の『修行用アイテム』とやらが、ふと霞んだ眼にうつるまでは。
「………まさか」
 道徳は荒く浅く呼吸を繰り返し、もう動かすことさえも辛い手首を凝視する。
 不利とわかっていたはずの賭けに、あっさりと同意の念を示した天化。
 偶然を装って差し出された鉛輪。
 姿を消した自分を、慌てて追う気色すらなかった……
 そこまで状況証拠がそろえば、いくら道徳とはいえ、ひとつの結論に行きつく。
 すなわち、
「……あんの……性悪弟子めぇっ!」
 してやられた悔しさに、道徳はぎりっと歯を食いしばり、
「………ヤバい」
 次の瞬間にはサーッと幕引くように青ざめていた。


 
セセセセセセセセセコーチのこと、いくらでも好きにしていいんさね?


 
セセセセセセセセセわかってるよ!なんでもしてやる!


 そう。売り言葉に買い言葉とはいえ、自分は確かにそう断言したのだ。


「どっ……どうしよう……」
 冗談でなく、絶望を胸に抱いたとき。



 ゴゥ………ン。




 なんとなく聞きたくなかった金属音が、頭上から響き落ちてきた
セセセセセセセセ







わぁ〜、尻切れトンボな終わり方ですみません!爽やかなギャグを書こうとしたんですが……(大失敗)
でも、やっぱり天道はいいですな!(逃げ)

 

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