続:夏 夏を読んでから…
天化はあの後、楊ゼンの風呂場で汗を流してきた。
「ふぃ~っ、やっぱシャワーは気持ちいーさね。」
そういって、まだ濡れた髪を肩に掛けてあるタオルで拭いていた。
「天化君、ハイ、冷たい飲み物だよ。」
楊ゼンにコップを渡されると天化はソファの真中を陣取る。
楊ゼンも自分のコップを持ち天化の横に腰をおろす。
「これで1と2はOKだよね…?後は3だけど…。」
天化の様子を伺うように聞く。
なにしろ3の条件だけは直ぐに守るという事はできない。
いや、寧ろ楊ゼンの気持ちを言えば守りたくなどないのだ。
「いやさ!」
答えは直ぐに返ってきた。
「オレっち、暑苦しいのは嫌いさ。」
どうすればHまで持ち込めるのかと、楊ゼンは真剣に悩んでいた。
「…あっ、」
と、ついに楊ゼンは何か閃いた。
「じゃあ、避暑地にでも行くかい?涼しいよ。」
「ひしょち…?」
「そう避暑地。父が前大学の入学祝にって買ってくれた別荘があるんだ。 そこならここよりは断然涼しいと思うよ。」
「…なんか楊ゼンさんてヤになるくらいお金持ちなんさね。」
「えっ、イヤかい?」
名案だと思っていたので天化の反応は予想外だった。
「そうじゃないけど、まっ、いーさ。行ってみてーさ!」
すぐに天化が首を振る。
「そうと決まったら、今すぐ行こう!」
楊ゼンは立ち上がり天化の腕を取る。
「今すぐ?だって荷物の準備とかは?」
「週に一度使用人が別荘の管理をしていてくれてるはずだから、食べ物も何でも揃ってるはずだよ。」
驚き顔の天化ににっこりと微笑む。
「わかったさ。でも……Hはなしだかんね。」
念押しされた楊ゼンだが予想はしていたのか、
「わかってるよ。」
と、言っただけだった。
連れて行ってしまえば天化君もその気になるかもしれない。
かくして二人は楊ゼンの車で別荘へと向かったのであった。
楊ゼンの別荘についたのはもう夕方から夜になろうとしていた頃。
別荘の横に車を着け、天化の荷物を持って車を降りる。
涼しい山の空気が夏の熱を融和させている。
ここは別荘地としては有名なので周りには数軒家が立っている。
「どうぞ。」
楊ゼンが鍵を開け、天化を中に促す。
天化が中に入ると楊ゼンもそれに続く。
ドアに錠をして振り返るとそこに呆然と立ち尽くす天化がいた。
「どうしたんだい?」
楊ゼンが尋ねる。
「だって、楊ゼンさん『普通の家だよ、あまり期待しないで』って何度も言ったから…。」
「ほら、別荘って聞くと皆すごい豪華なイメージ持ちすぎだから、」
「十分すごいと思うけど…」
天化がそう言ったのは、玄関がとても広い上、そこを照らしているライトがシャンデリアだったから。
(落ちてきたら一発で死ぬさ。)
天化は密かにそんなことを考えていた。
「玄関じゃくつろげないよ。ほら、リビングに行こう。」
そう言って天化の背を押す。 ソファの横にバックを置くと、楊ゼンは窓を開けて網戸にした。
「ほら、涼しいだろう。」
楊ゼンは薄いレースのカーテンを閉めながら言う。
「うん、風が気持ちいーさ。」
天化の髪が風に優しく揺れている。
「気に入ってもらえてよかったよ。長い車の旅で疲れてるだろうから、ゆっくりしてていーよ。 夕飯はすぐ作るから。」
天化が楊ゼンのところ泊まりに来ているときはいつも楊ゼンが作っているのだが、天化は初めて来た場所に落ち着かないらしく自分も手伝うと言ったのだった。
二人で協力して作った料理はどれも皆おいしかった。
食後にと楊ゼンが用意したワインも天化の気分をよくしたようだった。
少し酔っているようで頬が薄く赤みを帯びている。
「天化君、」
と名前を呼ぶと自ら体を寄せてきた。
楊ゼンは天化の肩に手を回して顔を近づけた。
右手で彼の顔を撫でる。
「楊ゼンさん…」
甘えた声で名前を呼ばれて体が熱くなってくるのがわかる。
自分でも気が付かないうちに天化の口を貪っていた。
「…んっ~…」
天化が珍しく自分から舌を絡めてくる。
楊ゼンが天化の味を楽しんでいるとすぐに口内は唾液で溢れ、天化の顔が唾液で汚れる。
楊ゼンがさりげに天化のシャツの中に手を入れると、天化の体がビクンとなった。
指先が体をなぞったようだ。
楊ゼンは唇を放してまだ深く呼吸を吐いている天化に言った。
「3の約束守れそうにないけどいいよね。」
天化の返事も待たずにまた彼の唇を塞ぎ、ソファへと体を倒す。
天化の肌を左手で撫でながら、右手でシャツのボタンをはずしていく。
天化の腕が楊ゼンの頭へとまわされる。
前が開いたところで楊ゼンは舌先で天化の首筋をなぞる。
「んっ、…くすぐったいさ…」
天化が快感にかすかに体を震わせる。
「僕も体中が天化君を欲しがってて、体がやけに熱いよ。」
愛撫を続けながら楊ゼンは言う。
「こーゆー時…オレっち…あっん…なんて言ったらいーさ?」
手を天化のズボンの中に滑らせながら、首筋に長くキスをおとす。
「僕が欲しいって言ってよ。」
楊ゼンがズボンの中のものに軽く触れる。
「うっ…ん、…あっ…もう一度キスくれたらね…」
天化が楊ゼンの唇をせがむ。 その言葉に答えるように楊ゼンが口付けをする。
口の中でピチャッと唾液の離れる音がする。
「んっ、…ハァ…もっかいさ…」
楊ゼンが唇を離すと天化は言った。
楊ゼンは何度も口付けを落としながら自分のシャツのボタンを解いてゆく。
「…ハァ…ハァ…んっ、ようっぜ~…がほし…さ。」
楊ゼンの胸板を指先でなぞりながら言う。
「いーよ、君の為なら何だってあげるよ、」
そう言って天化の胸の突起を舐め上げる。
「っあ…ハァ…」
急に背筋に快感が走る。
楊ゼンは天化の固くなったものを握りながら、天化が大きく反応を示した胸の小さな突起を赤子のようにしゃぶる。
「やっ…っ…くっぅ」
楊ゼンが歯を立てると苦痛の声を出した。
「痛っ~っ!」
「ごめん、痛かったね。」
「んっ、…いーさ。」
「じゃあ、今から気持ちよくさせてあげるからね。」
そう言ってまだ乾いている天化の中に人差し指を挿した。
「いたっ…!…痛いさ…」
天化が痛みを訴える。
「なにかで濡らさないとね」
と楊ゼンが周りを見回した。
すると先程二人で飲んでいたワインに目が止まった。
「そんなに変わらないかもしれないけど、少しはマシになるかも。」
ワイングラスを手に取り、そっと天化の中に流し込んだ。
「んっ、…冷たっ、」
思っていたよりも断然滑りが良くなって、楊ゼンが指を動かすとピチャピチャと音がする。
「…っ、あぁ…んっ、くぅっ…」
「もう一本入れるね。」
と断ってから指を挿し込む。
天化の中が熱いせいか、せっかく流し込んだワインがすぐに蒸発する。
楊ゼンは先程より多量にワインを流し込む。
「…くっ…ハァ…ハッ…やっ、…ああっん」
楊ゼンが指を動かす度に艶やかな声が漏れる。
その声の度に楊ゼンの指は締めつけられた感覚を得る。
「…てんかくんっ…」
楊ゼンは天化に長いキスを施して、我慢できなくなり片手でズボンのベルトをはずす。
天化の中で起こる音を楽しむかのように無造作に指を動かす。
「はぁ…んっ……あぁ…ごめっ…ん、ようぜっ、…さ…」
と言うと天化は白濁した液を楊ゼンの胸に引っ掛けた。
と同時に横でガシャンという音がしてテーブルから食器が落ちる。
天化の腕が当ったようだ。
「えぇっ、そんな…僕はまだ…」
手の動きが止まると快感が足りなくなった天化の体はきゅーっと楊ゼンの指を挟んで放さない。
楊ゼンは泣きたい気分になったが、割れた皿を見て気を取り直して言った。
「…場所替えようか。」
寝室のベッドにそのまま天化を引きずり込む。
「僕の気が済むまでちゃんと最後まで付き合ってもらうよ。」
そうしてようやく自分のものを取り出す。
もう一度天化の中に指を入れて滑りを確かめるとまだ中は十分に湿っていた。
「んっ…はんっ~…」
その動きに応えてまた熱い声を漏らす。
「滑りはいいけど、ちょっと狭いかも…」
自分のものの先を押さえながらわざとそう言って、指を大きく広げる。
「やっ……っ……ん~…っ」
そして勢いよく指を抜く。
「やっあ…!」
楊ゼンは自分のものを天化の穴に宛がう。
しかし楊ゼンの固くなったものは入り口に入らない。
「てんかくんっ、力抜いてよ…。先だけ入れば後はいいんだから。」
受け入れてくれない天化に焦って言うと天化は涙を浮かべながら答えた。
「だっ…て…できねー…さ。」
楊ゼンはそれを聞くともう一度指を入れて穴を広げる。
「くっ、ぁっ~……んっ」
楊ゼンが素早く指を抜き、ものの先を天化の中に入れる。
「いっ、…やっ…痛っ!」
「んっ、…我慢して…」
入り口できつくしめられて楊ゼンはなかなか奥へ進めない。
無理矢理入れてもいいんだけど天化君すごく痛がるだろうな。
けどこのままじゃ中途半端だし…
「天化君、…ごめんね。」
そういうと力任せにねじ込んだ。
「あっ~…!……いっ、…いたっ…やぁっ~」
とてつもない快感が楊ゼンを襲う。
楊ゼンは身を震わせてその中に放つ。天化の中はもう楊ゼンのそれだけで一杯である。
天化は相当痛いのか楊ゼンの背中を爪でかじる。
「…ふぅ、てんかくん…、ごめんね…」
天化が苦痛を感じているのに、楊ゼンはそのしめつけに快感を得ている。
楊ゼンが天化の涙を舌でそっとすくう。
「あっぅ…や……」
楊ゼンの体が動いたせいで天化の中に刺激が伝わる。
「…動かせばじきに慣れてくるから…」
随分と適当な事をいい、自らの快楽を得るためにゆっくりと動かす。
「痛っ……っんっ…いた…ようぜ…さ」
天化が必死に痛みを堪えているのが愛らしい。
天化の熱さまでもが快感となって楊ゼンを襲う。
「…好きだよ、天化君」
楊ゼンが欲望に任せ我を忘れて動かした時、楊ゼンは二度目の絶頂を迎えた。
ことの後、二人はベットに転がっていた。
「久しぶりだったけど、大丈夫かい?」
半分体を起こし、天化の様子を窺う。
「めっちゃ痛ーさ。」
嫌味たっぷりに楊ゼンを見上げる。
「頻繁にしてればそんなに痛いこともないんだろうけどね。」
さりげにもっとHしようと言う。
「オレっち日常の生活に支障があんのは嫌なんさ。」
天化は大きなあくびをしながら言う。
「それならいっそ毎日にして日常に取り込んじゃおうか?」
「ねむ…、冗談はよすさ。」
天化の髪を指先でいじる。
「…もしかして天化君てH嫌い?」
「ん~、…今頃気がついたんさ?それに…あんな痛いの好きな奴いるんか?」
天化は眠気に目を擦っている。
「僕は好きだけど…(その痛みで涙目になってる天化君が)」
「…その括弧は何さ?」
「冗談だよ、今度はもっと痛くないようにするから」
「ぅ~ん…そーするさ」
「じゃあ、僕は片付けでもしてこようかな」
おもむろに立ちかけた楊ぜんの腕を天化が素早く掴む。
「明日にするさ。オレっちもう眠い…」
これは片付け等をしたくない訳ではなく(体動かすと痛いから結局しないけど)、
隣がいなくなると淋しいからと言う事である。
楊ゼンは皿が割れたのを思い出しながらも天化の顔を見ると、またベットに戻った。
「…そーだね。ただ朝は冷えるからなんか着ないと…」
「んっ…楊ゼンさんが抱いて寝てて…」
「わかった。いーよ、おやすみ。」
楊ゼンが天化の体を抱き寄せるとすぐに腕の中から整った寝息が聞こえてくる。
「今日は珍しく甘えんぼさんだったね…。」
天化の髪に優しくキスをすると楊ゼンもようやく眠りについた。
次の日、楊ゼンが風邪を引いたのは言うまでもない。
<作者様コメント>
おっ、終わった…。長い、長かった…。
夏を送った次の日にはもうこのネタはとっくに出来上がっていたと言うのに…
遅くなってすみません。
それにしても全然っ、夏じゃないし。
前回よりも遥かに内容がやばいような…
もーいいや。
逃げちゃえ。
<管理人の蛇足>
ひ~素敵~!結局のところ甘甘な二人が非常にイイです、何だかんだ言って、
結局楊ゼンがリードを取るのも……ふふふふ。
いいですね~、パラレル。蒼月も書いてみたいです。
ご、ご指導くださいませんか、みづきさま。