映画「長崎ぶらぶら節」製作に
  助言と協力指導で参加

「長崎ぶらぶら節」映画撮影裏話

イ、映画作製の協力依頼

 昔は映画一本撮ると言うと資料や関係者を捜し出すのに時間と労力を掛けたのでしょうが、今はIT(情報技術)革命とやらで時間と距離をアッと言う間に短縮してしまう手を使ってでしょうか? それともご贔屓筋の旦那様からの口コミによるご紹介でしょうか?
  撮影の進行と並列して突然Eメールで東映の助監督から現在撮影中の「長崎ぶらぶら節」に付いて、幇間(太鼓持ち)とお座敷遊びに付いてお問い合わせが入り、少し質問に答えたら「是非助言と撮影協力・指導にお越し願えませんか?」と来ましたヨ。

 即、好奇心一杯の太鼓持ちですから、そりゃ〜勇んで東映京都撮影所に行きましたヨ。

ロ、初日、幇間(太鼓持ち)とお座敷遊びに付いてのご質問

 考えてみりゃ〜歴史学者でも風俗考証学者でも何でも無く、只の助平な太鼓持あらいて〜事をスカーと忘れて、偉そうにも映画や落語に出て来る様な、派手な衣裳で尻端折りして「ど〜です旦那今晩当たりは?」なんて廓の中の太鼓持ちは言わないし、政治・宗教・思想に係わる事なんぞも発言しませんし、あれもダメこれもダメで、本来はこ〜だあ〜だと監督や助監督・スタッフを前に文化・歴史・お座敷遊びまで偉そうにもお喋りして、撮影に立ち会い助言と協力・指導させて頂きますと、お偉い方々をお相手に田舎者の太鼓持あらいが、とうとうとのたまって参りましたヨ。

ハ、撮影現場

 当日朝から勇んで行きました所が、最初一通り撮影所内やスタジオ内を案内された後は、それぞれご自分の仕事で目一杯。
 太鼓持ちごときはほったらかし、何時誰から何を質問されるか判ら無い無防備の状態の中、コリャ〜いけないってんで、常にスタジオの中を勝手に邪魔しない様に動き回わり、自分で考えて仕事を見つけて処理して行かなくては、な〜んて言うとカッコ良いですが、好奇心一杯で好き勝手に動き回っておりましたヨ。
東映京都撮影所 NO4スタジオ内
長崎料亭花月の大広間セット入口正面にて
(助監督に撮って頂いたもの)
 しかも幇間(ほうかん)役の芦屋小雁さんや花ケ前(はながさき)さんの衣裳たるや、派手な衣裳に尻端折り、台詞の中にも政治的発言ありで、先日の私の助言はどこ行ったの?
 お座敷の造り、芸妓舞妓さん役、お座敷遊び、旦那役の渡哲也様の動きなどどれを採っても、おかしい点が沢山有り、初めは真面目に指摘してもほとんど却下されてしまいます、アリャ〜マ〜どないしよう〜。
 でも、考えてみれば、いけない・しないと言っても所詮太鼓持ち、旦那様から衣裳をご用意され「派手な格好でバカをやれ」なんてご祝儀握らされて言われた日にゃ〜何だってやっちゃいますからネ、絶対そんな事しないなんて断定出来無いもの......

 それに、なにも記録映画を撮っている訳じゃ〜無く、娯楽映画を撮っているのですから「マッ楽しければ良いか」てな訳で直ぐに納得して協力致しましたが、それでも「太鼓持ちがしない事はしない」と言ったり、所作や座る位置や言葉遣い心くばり等こまごまとした事の助言を出来る限りして参りました、それを採用するかどうかの最終判断は監督様ですからネ、こっちは言いっぱなしの気楽なもんですナ〜。

ニ、お座敷遊びについて

 江戸初期に伝来したと言われる長崎拳(本拳)も、文政13年の本「拳独稽古(けんひとりまなび)」には、互いに出した数合わせの拳と紹介され、数も中国語で数えておったのが、色々な方法が考え出され、遊び方も変化してましてネ、今回採用された拳は長崎では「五と十」、関西では「相場拳」と言われているものを採用されましたネ、絵面的にはその方が判り易いですネ。

 足角力も京都の芸妓・舞妓さんはしないとおっしゃっておりましたし、長崎でもしないとは思いますが、私は座ってお着物を膝の所で両手で押さえて、足首でお互いに倒し合うのは見た事は有りますが、幾ら酔って対立意識があり、盛り上がっているお座敷とは言え、芸妓様が相手の太股まで足を入れた角力は見た事は無いですネ、でもひょっとしてビックリする程ご祝儀が出ていれば話は別かも知れませんよネ、何でも娑婆の事には臨機応変に対処して、何にでも例外て〜のがございますからネ、絵面的には色っぽくてツイ覗きたくなる心理は掴んで居りマス。



長崎拳の本番練習と位置決めリハーサル行司役の(幇間捨八役)芦屋小雁様と丸山芸者と町芸者役の女優様の方々に助言中
(助監督に撮って頂いたもの)

 旦那様役の渡哲也様の大散財のお遊び場面も、割り箸に弐拾圓札を一枚挟んで配るなんて〜事をしておりましたが、私が実際体験しておりますのを考えますと、大散財される旦那様方は一枚二枚なんてケチ臭い事などせずに、束で配るし撒きますネ、又そうしないと財産は無くなりませんヨ、でも絵面的にはその方が派手やかに見えるのでしょうかネ。
 色々とおかしな点は多々有りましたが、完成して映画をご覧になられたお客様から、間違いを指摘され「それでも助言したお前は本当に太鼓持ちか?」なんて言われるのを楽しみに致しておりますデス、ハイ。

ホ、俳優さん方について

 初めは吉永小百合様始めトップスターの方々が何時も澄まして居られるので、何故なのかな〜? と思っておりましたが、よく観察致しますて〜と、少しでも動いたりお話されたりすると、頭師さんや顔師さん着付け師さんが直ぐに直しに来られます、暑い最中に冬の設定スタジオ内での撮影では、前後とのつながりが違わ無い様に細心の注意と心配りがされているのです、でも御本人は大変でしようナ〜。

 本番までには大道具・小道具・照明・音声・カメラマン・監督・助監督・スタッフ・方言指導・所作指導・頭師・顔師・着付け師・付き人・換気クーラー係等の大勢の人達の総合力によって何時間も掛かってやっとの本番なのです。


セット長崎料亭花月の大広間で
丸山芸者と町芸者総揚げ場面
俳優様全員の位置決め中
(スタッフに撮って頂いたもの)

 スタッフの方々に出来る限り負担になら無い様に、本番は一回でOKになる様にすごい重圧の中でジッーと絶えて維持され、ご自分の役割を果たしておられるのですネ、 高島礼子様は拳の打ち方を何度もスタッフ相手に練習され、本番では一発で決めましたヨ、さすがプロは違いますネ〜。
 でも1シーンでも、あちらこちらから同じシーンを何回か撮りますから、形・言葉・動作・足位置など全て同じにしなくては....タガの外れた私なんぞには到底出来ませんし、だ〜れも「やってみな」とも言ってはくれませんがネ。
芦屋小雁様からはご祝儀を頂いたからヨイショする訳では有りませんが、相手の気持ちを掴むのがお上手で、さすが太鼓持ちのポイントを外さずに聞いて来ますし、内海桂子様も大勢の俳優さん方をお相手に、昔のお話や知識を聞かれると気安くお答えしておりましたネ。
 やっぱり芸能界の修羅場を潜って来られた方は、それだけの魅力を備えて居りマスですナ〜。

 只ボーとしているだけでは無いですが、撮影の仕事のほとんどは待機労働です。


(丸山芸者音丸役)内海桂子様と御一緒に記念撮影
(内海佳子様の旦那様に撮って頂いたもの)

 待機中撮影セットの有るNo.4スタジオの前を水戸黄門様や八平(はちべい)さん達が通りましたので、思わず土下座しなくてはとも思いましたが、印篭ご持参して無いので、挨拶だけ交わしましたら、黄門様は気楽にセットの中を覗きに行かれましたナ〜、さすが諸国を漫遊されておられる方だけはあります。
 撮影所内は、芸妓衆が引きずりのお着物を汚れない様に腰までたくし上げておられたり、お侍様がトレパンで自転車に乗っていたり、マ〜異次元の世界を垣間見て参りましたヨ、泣かずに遊べる楽しい所でしたネ。

ヘ、監督様について

 監督 深町幸男様はご年輩にお見受けいたしましたが、とってもタフな方で朝早くから夜遅くまで、全工程の流れを把握した上で場面事の決断をされ、全スタッフや俳優さん達に気を使い、一つの目標に向かって能力を引き出して行く、大変なお仕事だと感心しました。

監督 深町幸男様とスタッフの面々との打ち合わせ中(助監督に撮って頂いたもの)

 原作と脚本と史実とを考えて、娯楽性にも富みプロの人達にも納得させ、興業収益も上げなければ能力を疑われる、イャ〜本当に御苦労さんなお仕事ですナ〜。

 

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