第十六回日蓮正宗法華講全国大会

 
      現況報告    佐々木秀明御尊師

 第十六回法華講全国大会まことにおめでとうございます。

 ご承知のごとく昨年、大石寺は開山七百年を迎えました。さかのぼれば、昭和四十七年の正本堂建立のあたりから、池田氏が、「舎衛の三億」を引いて正本堂を本門寺の戒壇と定義してほしいと日達上人に圧力をかけました。しかし日達上人は、いまだ広宣流布の時ではないという理由で、たいへん苦心をされて正本堂の定義をあいまいにされました。

 昭和五十四年に日達上人が遷化され、阿部宗門になって昨年、大石寺開創七百年を迎えたわけですが、我々正信会代表は、大石寺の「本門寺」改称を阻止すべく慶祝法要を前にした三月十一日、大石寺への抗議登山を実施しました。そのせいか、抗議登山のすぐあと、それまで黙っていた宗門は「宗務広報」において「本門寺」改称を公式に否定しました。 阿部師は「池田先生の教学は完璧です。僧侶の指導方法を教えてください」とまで言った人ですから、池田氏も「本門寺」改称はできるだろう、と思っていたのでしょう。ところがこれができなくなり、またお目通りに行けば、なんだかんだと阿部師から難癖をつけられる。すると池田氏も頭にきて阿部師に言い返す、ということがつづいたようです。

 そのうち法華講連合会の総会が七月の末に四万数千人を集めて本山で開かれます。池田氏はこの時はまだ法華講総講頭ですから総会に呼ばれるかメッセージを送るかするはずですが、それもなかった。そしてこのとき、法華講から四十七億ものご供養が本山に上がりました。

 これを聞いた池田氏は「いよいよもうダメだな。宗門とはやっていくことはできない」と思ったでしょう。それから種々の会合で阿部師の批判をはじめます。

総講頭解任劇と以後の応酬

 九月二日、学会が本山で開催した大石寺開創七百年慶祝文化祭は当初の予定より大幅に縮小して参加者は二千名でした。そして学会は十一月十八日、横浜のアリーナに一万数千名を集め、創価学会六十周年記念の大文化祭をハデに開きます。

 いっぽう、十一月十六日の学会本部総会での池田発言を問題視した宗門は十二月十六日、学会に「お尋ね」を送付し、これに対して学会は開き直り、「お伺い」を宗門に送付しました。

 いよいよ宗門と学会が決裂か、と思っていたところ、宗門は正月も間近な十二月二十七日、臨時宗会を開いて、突然、総講頭・大講頭を任期制にし、これによって池田氏を自動的に総講頭職から解任しました。

 今年の一月六日、十日の教師指導会で阿部師は、創価学会の五十二年路線の背景には、昭和四十七年の正本堂建立の定義に関して種々の問題と経緯があったと述べ、事の戒壇「たる」「べき」などの文法をあげて池田氏を批判しています。

 阿部師は、創価学会が正本堂建立のころからおかしくなってきたと言っています。しかし阿部師が教学部長だった当時、正本堂が建立される数か月前に、「法華講総講頭池田大作先生の発願による正本堂は世界に冠たる大殿堂の勇姿を現し」「宗門僧侶の信心の表れとして、全員一致し事の戒壇を建立して広宣流布に邁進することこそ大切である」と言って池田氏を賛嘆しているんです。

 創価学会の過ちを指摘し、是正していこうとした僧侶の前に立ちはだかったのは、いま創価学会を批判している阿部師自身だったのであります。

 宗門の教学を研究する「富士学林」が出している「富士学報」に、当時千葉蓮生寺住職であった菅野憲道師(現大阪池田市・源立寺住職)が論文を発表しました。その論文で菅野師は、創価学会の広宣流布観、本門寺構想は間違っていると批判しています(第五号。原題は「公布」と「本門寺」についての所感」で、同誌は発行後、創価学会の圧力によって回収され、別にこれに代わって第五号が再発行された=編集部注)。日達上人からもお褒めの言葉のあった立派な論文です。私は今でも覚醒運動の原点はここにあると確認していますが、そこに次のように論じられています。

菅野論文では創価思想破折

 「日蓮正宗信徒がふえるにつれて、一部には大聖人の仏法の一断面を恣意に解釈し、枝葉に拘泥して本幹を忘れるが如き本末転倒の我慢偏執の輩がでてきたのも事実である。創価学会の中では会長本仏論などという事が半ば公然と言われた事もあった」

 「正本堂建立と関連して、本門戒壇の建立即広宣流布という考え方によって、三分の一という現実的な定義づけがなされたのではないかと考えられる。つまり、ここでは戒壇建立に重点がおかれ、広宣流布はそれに付随して定義づけられたものと思う。しかし、このような意味においての広宣流布は限定つき広宣流布であって、本来の広宣流布のすべてではない」

 「かつて、折伏闘争の成果主義は、本尊流布をもって折伏であるように錯覚し、為に行き過ぎや誤った折伏闘争が頻繁にあった事実を我々は知っている。それによって、本尊が実に粗末に扱われた事を、我々は深く反省しなければならないのではないだろうか。これはまた、信徒の広宣流布の概念の中には、数のみが問題であって質という事が全く省みられなかったためもあろう」

 また創価学会と公明党との関係についても、

 「言論問題によって、公明党の綱領から「王仏冥合の大理念」を削除し、政教分離を行って来たのであるが、公明党の後退によって再び創価学会の強力かつ密接な支援がなされている。この事は一般信徒において、公明党の闘いが即広宣流布への戦いであると解され、法戦の言葉のもとに、選挙中は一切の学会の精力が注ぎ込まれている事を見ても明らかである」

 「そのために一般信徒は、選挙運動即宗教活動の如く考え、折伏活動と票の獲得を同価値のように考えているものが多いのである」

もろに創価学会の間違いを指摘した論文で、日達上人も「その通りだ」と。

 この論文を、当時教学部長だった阿部師が、わざわざ創価学会の方に持っていき、「池田先生に牙をむくような論文をかく者がいる」と。それまで学会は論文の存在を知らなかった。ところがこれを読んで、「とんでもない。吊し上げよう」ということで、菅野憲道師が本部に呼ばれて吊し上げられた。そのとき同席していた阿部師は、本来なら菅野憲道師を応援する立場です。しかし、「君、謝りたまえ」。そして不本意な詫び状まで書かされた。

 この菅野論文に対して、創価学会では反論を発表した。

 「創価学会の中で会長本仏論が半ば公然と言われたとあるが、根拠を示せ。明確な証拠を挙げてもらいたい。これはかなり明確な事実があって初めて言えるはずだ。単なる推測で済まされる問題ではない。この言葉を使用した責任上、彼には我々の要求に答える義務がある」(要旨)

 創価学会のいう「主師親の三徳を兼ね備えている」「本門弘通の大導師である」「池田先生に帰命しよう」など、どれも会長本仏論の表れですが、そのときにはまだはっきりとは判っていなかったので、そんな反論を出してきたんです。

 また選挙の問題についても、

 「一般信徒は選挙運動即宗教活動と考え、折伏活動と票の獲得を同価値のように考えている者が多い、などというのも全くの憶測に過ぎず、大聖人御遺命の折伏をも否定する大罪だ。もし憶測でないというなら、学会員の誰と誰が考えているのか、氏名を挙げて指摘せよ。最後にこれだけはいっておく。我々青年は君を一生涯信用しない」(要旨)

 そしてこのあと、菅野憲道師をクビにしないならば、毎日本山に五千人の青年部が押しかける、とまで言ってきた。

 そこで我々は、ここまで馬鹿にされたのでは黙っていられない、学会と対決しようと腹を決め、その決意を日達上人に報告申し上げたところ、上人からはご理解をいただいた。そして始まったのが正信覚醒運動であり、それが原点なんです。

富士の本流を自覚し精進を

 この運動が盛り上がると、僧侶を侮っていた学会も、菅野師に書かせた詫び状をわざわざメロンをつけて返してきたんです。

 さて、学会の方では「地涌」というアングラの怪文書をファックスで毎日送って阿部師を攻撃しています。まあ副会長クラスが書いているんでしょう。その第七十一号にはこう書いてある。

   「近年、日蓮正宗の僧侶の生活が金満化の一途を辿っているが、日蓮正宗の法主が少欲知足を旨とする本宗の宗風をないがしろにする贅沢三昧の超豪邸の建築を計画していることは驚愕すべきことである。この情報を伝えて来た者は日顕上人の成り金的な生活感覚を慨嘆し、日顕上人の生活ぶりはとうてい日蓮大聖人の仏法を奉ずる者として許されることではないとしている。また日顕上人の夫人の浪費癖はとどまることを知らない。東京の三越デパートで一度に億を越える買い物を見積もりもとらないでするなど、そのありさまは空恐ろしいほどだとも伝えてきている。もちろんそれだけの金額となれば、その買い物には私的なものだけではなく日蓮正宗としての買い物も含まれているのだが、それを夫人が見積もりもとらないで行うのは社会的にもあってはならないことだ」

 なんとも次元の低い、みっともない攻撃をしている。

 七月一日からは宗門は学会の登山を廃止し、各末寺の添書をもらった檀徒・法華講の人たちだけに登山をさせるようになるそうです。これから先、いろいろとモメるでしょう。この登山方式に対しても学会では、

 「納得できない。開始期日を延期してほしい。運輸関係者に補償金を支払ってもらいたい。大島海運の富士丸は東海汽船の借船なので改造費として四十億円、JR契約の違約金として十億円、大富士バスの補償金として十億円、合計六十億円を補償せよ」

 と大石寺に迫った。大石寺は払わない。大変なことになってきました。総本山も学会もまことに情けない状態です。

 我々正信会がこの覚醒運動を始めてから十数年になります。この時にあたり「我等こそ富士の本流」であるということをもう一度再確認して、本日を契機になお一層の精進をしていただきたいと念願いたします。

 編集部よりーー全国大会当日の「現況報告」で、副議長は宗門と創価学会の紛争経過についての諸資料・文献を多数引用されていますが、副議長の了承を得て資料紹介を割愛し、要約させていただきました。

   

     

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