多宝寺への御状
| 多宝寺への御状の概要 【文永五年十月十一日、多宝寺侍司、聖寿】 日蓮故最明寺殿に奉りたるの書、立正安国論御披見候か。未萠を知て之を勘へ申す処なり。 既に去る正月蒙古国の簡牒到来す。何ぞ驚かざらんや。此の事不審千万なり。 縦ひ日蓮は悪しと雖も、勘ふる所の相当るに於ては何ぞ用ひざらんや。早く一所に集て御評議有るべし。 若し日蓮が申す事を御用ひ無くんば今世には国を亡し、後世は必ず無間大城に堕すべし。 此の旨方方へ之を申せしめしなり。敢て日蓮が私曲に非ず。委しく御報に預るべく候。 言は心を尽さず。書は言を尽さず。併ながら省略せしめ候。恐恐謹言。 文永五年十月十一日 日蓮花押 謹上 多宝寺〈侍司御中 |