法衣抄

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法衣抄の概要

【弘安三年、聖寿五十九歳、真筆完存】 
御衣布並に単衣布給ひ候ひ了ぬ。
抑食は命をつぎ、衣は身をかくす。食を有情に施すものは長寿の報をまねぎ、人の食を奪ふものは短命の報をうく。
衣を人にほどこさぬ者は世世存生に裸形の報をかんず。六道の中に人道已下は皆形裸にして生る。天は随生衣なり。
其の中の鹿等は無衣にして生るのみならず、人の衣をぬすみしゆへに、身の皮を人にはがれて盗みし衣をつぐの(償)うほう(報)をえたり。
人の中にも鮮白比丘には生ぜし時、衣を被て生れぬ。仏法の中にも裸形にして法を行ずる道なし。
故に釈尊は摩訶大母比丘尼の衣を得て正覚をなり給ひき。諸の比丘には三衣をゆるされき。
鈍根の比丘は衣食ととのわざれば阿羅漢果を証せずとみへて候。殊に法華経には柔和忍辱衣と申して衣をこそ本とみへて候へ。
又法華経の行者をば衣をもつて覆せ給ふと申すもねんごろなるぎ(義)なり。
日蓮は無戒の比丘、邪見の者なり。故に天これをにくませ給て食衣ともしき身にて候。
しかりといえども法華経を口に誦し、ときどきこれをとく。譬へば大蛇の珠を含み、いらんよりせんだんを生ずるがごとし。
いらんをすててせんだんまいらせ候。蛇形をかくして珠を授けたてまつる。
天台大師云く「他経は但男に記して女に記せず」等云云。法華経にあらざれば女人成仏は許されざるか。
具足千万光相如来と申すは摩訶大比丘尼のことなり。此れ等もつてをしはかり候に、女人の成仏は法華経により候べきか。
要当説真実は教主釈尊の金言、皆是真実は多宝仏の証明、舌相至梵天は諸仏の誓状なり。
日月は地に落つべしや、須弥山はくづるべしや、大海の潮は増減せざるべしや、大地は飜覆すべしや。
此の御衣の功徳は法華経にとかれて候。但心をもつてをもひやらせ給ひ候へ。言にはのべがたし。

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