法華真言勝劣事の概要

『金綱集』「真言見聞集」(『日宗全』13巻238頁)、『日朝本目録』『平賀本目録』『刊本録内』等所収。また中山法華経寺日全の『法華問答正義抄』に「顕密二教勝劣御書」として引文される。 但し『日蓮聖人遺文辞典』(歴史篇)は日全はこれを日向作と見ていたと推測する。
 冒頭東密の『大日経』第一・『華厳経』第二・『法華経』第三の説、台密の理同事勝を掲げ、主に台密の理同事勝が破折されている。すなわち 「天台真言宗所立ノ理同事勝ニ二難有リ。」とて、一に『法華経』と『大日経』が理同であるとの説が破され、次に事勝の義が破折される。その骨子は『大日経』には印・真言があるというが、『法華経』にはそれに勝る二乗作仏・久 遠実成の法門があること、大日如来の無始無終は法身の所論であり、『法華経』五百塵点久遠実成の釈尊は三身に約した無始無終であること、釈尊所説以外に大日如来の所説があるというのは間違いであること、華厳・真言は天台の一念三 千性悪の法門を盗んでいること、等である。本抄は『金綱集』にその全文が収録されているが、系年備考に示したように、干支入りの文永元年という成立年次と、真言破折という本抄内容とに齟齬があり、その成立自体に疑問の余地がある。